真魚ルート終盤……
自身が
生命と呼べる存在ではなく、かつて生命であったことすら一度もない
『幽霊』以下の存在であることを突きつけられた天願。
「まったく、どいつもこいつも……そんなに俺に消えてほしいか。まあ、皆が皆それで得をするんだろうしな。八方丸く収まるってやつだ」
「確かに、おまえらの言う通りだよ。俺も自分でそう思う。
無くなって惜しいと思えるような命じゃねえ……記憶どころか人生がゼロスタートだったとはな」
照、
ウォン、
ジプシーQ……その場にいる者達から
消滅を望まれる中、彼は
ぞっとするような生々しい笑みを浮かべ語る。
「だがな……不思議なもんだ。誰からも消えろ消えろと言われているうちに、なぜか猛烈に消えたくはなくなってきたぜ」
「いいか。この肉体は、この命は、"俺" のものだ」
「たとえほんのわずかだろうが、俺には"俺"として生きた日々がある。
飽きるほど女も抱いたし、旨い飯や酒の味も知ってる」
「友達と呼んでくれた奴だっている……おまえらと俺の何が違うって言うんだ?言ってみろ!」
「たとえ消えて死ぬにしろ、てめえらの思いどおりにはいかせねえ……いかせてたまるかよ!」
“天願壮吉”でも“リチャード・タツミ・ウォン”でもない、絞首台で産声を上げた何者か――命というものの恍惚を知る第三の男が今そこに立っていた。
最終更新:2022年01月13日 21:10