特別じゃない? 代わりはいる? 冗談じゃない、やめてくれ……俺を失望させるなよ



忍ルート、駐日アメリカ大使館近く……そこで『長官』からEAの核心に迫りうる存在―Type-0―その情報を受け取るエヴァン。
それに対し彼は「あくまでゲーム(・・・)の中の事」と関心薄い様子であり、任務の標的にして、
最高の獲物と執着してきた桐原零示を、実験台(サンプル)として捕える段階か……そう思考を次の段階に向けていたが、その耳に予期せぬ言葉が飛び込む。

代わりは利く(・・・・・・)」「キリハラ・レイジは特別な一人ではない」

既に彼と同じ最初期感染者(ゼロナンバー)は、確認できる限り確保済み。こちら側優位で研究は進められる。
よって、速やかに君の手で「ゲーム(・・・)」を閉じ事態を我々の完全な管理に置く――

命令を伝え、通話は終わった。
……受け取った事実が、少年の中から破壊工作員《ラプター》と、血に飢えた獣《エヴァン》を乖離させた。

キリハラ・レイジは、娯楽に興じ生温い平和に浸かった集団の中に隠れながらも、命を削る闘争に特別の才覚を有している人間。
幼い頃から本能的に血生臭い闘いを欲していた己と同類の存在だと、磨き抜かれた嗅覚によって見出した男。
それら素晴らしい、愛しい輝きが、娯楽の……ゲームの中だけの次元に留まると?

天使のように麗しい美貌が、悪鬼の如き凶相に塗り替わって……


「話が違うじゃないか。えぇ、レイジ?
特別じゃない? 代わりはいる? 冗談じゃない、やめてくれ……俺を失望させるなよ」


おまえこそ、散々見てきたつまらない奴らとは違う……己の同類じゃなかったのか。
『期待外れ』の現実(クソゲー)に憤るエヴァンは、しかし次の瞬間昏い妄執に唇を歪め、危険な望みを語り出す。


「いいや、そんなことはないだろう? 俺はまだおまえを信じているぜ?」


「いいぜ……やってやるよ。この生ぬるいゲームを、一切合財ブッ壊してやる。
そうすりゃ、はっきりするだろう?試してみようじゃないか……おまえが俺の同族かどうか。
生と死をブッちぎったあの世界を駆け抜けられる、俺と同じ本物(オオカミ)なのかどうか……」

「もしも……もしも……おまえも他と同じ、
娯楽(エサ)を貪るだけの偽物(ブタ)でしかなかったと言うんなら……」


天使の姿をした戦場の悪魔は、喉の奥で狂気めく嗤いを木霊させるのだった。




  • このシーンとかエヴァン絡みは「いつまでもジャンル違いがのさばるんじゃない!」って台詞が頭に浮かんだわ -- 名無しさん (2019-07-31 10:30:05)
名前:
コメント:

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2021年03月19日 17:13