ずっと一緒よ、誠。分解して、切り刻んで、中身を覗き込んで。永遠に、私だけを見て……

発言者:銹川 真理
対象者:戸野坂 誠


加護ルート、暴走した異能力の焔で焼き尽くされ、復旧救助作業が続くあかつき新都
その惨状に一片の感情も向ける事無く、街を二人の男女は乗用車で駆けてゆく。

真理が全力を注ぎあらゆる方面に手を回し入手した、優理への人体実験をはじめとした、財団の暗部を告発する多数の資料は市外に持ち出されていた。
バロック能力者をこれまで管理下においてきた財団、そして財団とは別に個人的に行動してきた戸野坂も、今や達に手出しできず、真理の要求も呑まざるを得ない状況へと追い詰められていた。

しかし、真理が財団に要求したのは、戸野坂の独断専行を不問に付し、代わりに彼を新都に閉じ込めバロック研究を続行させる事だった。
戸野坂は、“自らへの復讐”を望んでいた元婚約者である真理が何故、
自分の立場を守らせるような条件を提示したのか……そこに興味を引かれていた。

複雑に入り組んだ人の精神を解明するために、あらゆる事を躊躇なく実行する虚無の男……
彼に心惹かれた女は、そもそも研究できるバロック所有者は一人もいなくなっただろうと語る戸野坂に全ての答えを明かす。
――たった一人、あなたの前にいるではないか。異能力を発症したばかりの、銹川真理という女(サンプル)が。
彼がバロック研究を続けるのならば、自分がかつて捨てた真理という女に向き合うしかない
もう、彼女の手の中から逃れることは許されない。

ここに、周囲を騙し、欺き、偽りに偽りを重ねた真理の望みは叶った。
理想家の仮面に隠した憎悪さえ、偽りだった。
すべては、欲しい男を自分一人のものにするため。
現状を苦に思うどころか、あらゆる人の生を狂わせ、利用して憚らない独占欲……
そこから生まれるバロックの形に、今戸野坂が好奇心を刺激されているという事さえ、狙い通りとして。
――男の側もまた女の狙いを理解してはいたが、己の欲求には抗えず
恋人同士だった頃以上の関心を抱き、喜んで女郎蜘蛛の糸に絡めとられていく。


「さあ、これで二度とあなたの心は離さないわ。ずっと一緒よ、誠。
分解(こわ)して、切り刻んで、中身を覗き込んで。永遠に、私だけを見て……」


「真理……君は素晴らしい。
やはり人の心という物は深淵だ。だからこそ、探求する価値がある」


歪な彼らの眼には、数多の焼死体と崩落する建物などは、目的のために積み上げた踏み台、無価値な燃え滓程度にしか映らず……
これからも決して交わることのない一方通行の執着心。
互いにそれを理解していながら、男女は自己満足の幸福へと陶酔していく。



  • ……どうぞ、お幸せに -- 名無しさん (2020-01-15 20:55:22)
  • 真理さん声がナギサちゃんと同じだからなんかちょっとだけナギサちゃんオルタ感があって聞いていてゾクゾクする -- 名無しさん (2020-01-15 21:23:10)
  • 水銀・糞眼鏡「へ、へんたいだー!?」 -- 名無しさん (2020-02-19 23:04:03)
  • 焼死体と崩落建物なければこれもひとつの愛だよね!ってハッピーエンドに出来るんだけどそう言う配慮出来ないから狂人なんだよな -- 名無しさん (2020-07-02 19:56:07)
  • ……なぁんだ、中に誰もいないじゃないですか -- 名無しさん (2022-01-03 23:40:20)
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最終更新:2022年01月03日 23:40