やちるルート、周囲を欺き真意を隠し続ける真理が死にゆく共犯者・尾崎に言い放った言葉。
財団から身を隠し、
戸野坂への『復讐』を狙う真理は、尾崎と閉鎖されたバーのカウンターにて向かい合っていた。
バロックの発生源と目される男、神代直を殺し、過去の世界を変える事で未来を変える……
そんな仮説に基づいた自らの行動が失敗に終わり、これからの行動を問う尾崎に、「手は打ってある」とだけ答える真理。
彼女の胸には今どのような思いが渦巻いているのか……
尾崎は、標的である戸野坂と真理の出会いから、
バロックとの出会いであっさりと女は男に捨てられた事、
そして己に、真理はバロックを消し去ることを依頼しているという現在までの経緯を確認する。
ありふれた復讐をしようとしている女のために、見返りもないのに一生懸命となる貴方は一体何が望みなのか……
真理は尾崎にその答えを求める。
それに対し尾崎は、吐き捨てるように語る。
「女に惚れた男ってのは総じて馬鹿になるもんだ。
そして馬鹿のやることに、目的だの見返りだのともっともらしい理由なんざないんだよ」
男のこの言葉は本心だった。己が報われることに興味などなく、愛とは別物なのだろうが……そんな虚無的な献身が妙に馴染む感じがあると。
「……確かに馬鹿よね。女の言葉を額面通り鵜呑みにするなんて」
「あなたたちの言う平行世界とか、過去を変えるだとか。
本当にあるかどうかもあやふやなSFまがいに本気で賭けるほどロマンチストじゃないのよ」
その発言の真意を問う間もなく。バーに突然、財団警備部所属の特殊部隊が突入してきた。
完全に包囲された……目前の兵士だけではなく、外にも多数の兵員が待ち構えていることだろう。
それでも尾崎は、真理を庇うように動き、異能力を発動させるべく臨戦態勢に移ろうとしたが……
――そんな尾崎の躰を背後からの銃弾が撃ち抜いていた。
振り返った先には、硝煙をくゆらせる拳銃を握った銹川真理の姿が。
驚きとも絶望ともつかぬ表情を浮かべる男の額に淀みなく、真理は銃口を向け直す。
「理由も見返りもいらないんでしょう?――なら何も訊かずに逝ってちょうだい」
頭部を凶弾が貫く。大量の脳漿と血を流し、痙攣していた尾崎はピクリとも動かなくなった。
そのまま、絶望のまま朽ちた男の亡骸を
振り返る事もなく、
女は怖じることもなく、兵士の持つ端末越しに状況を監視する
指揮官へと語りかけ、
バロック能力者の全力の抵抗を未然に防いだ事を功績に、投降に際しての交渉を要求するのだった……
- 理由も見返りもいらない利益零でと良いと言う意味であっては別に助けた相手から攻撃されたい(マイナスになりたい)と言う意味ではございません -- 名無しさん (2020-06-15 22:28:26)
- ヒーローだって見返りは求めないけど助けた相手に罵倒されたり殺されたいわけじゃない。 -- 名無しさん (2020-06-15 23:33:19)
- でも実際こうなるケース、捨て駒にされて使い潰される可能性までも想定しておいて然るべきだよね。「愛してるから以外の理由はないし、なんの見返りもいらん!」という台詞を吐くのなら -- 名無しさん (2020-06-16 23:12:10)
最終更新:2021年04月25日 06:40