目が、離せない。胸の内にある、狂おしく愛おしい過去が叫んでいる。
この命無き少女を前に、俺の魂が泣いているのだから………
グランド√、ついに物語の表舞台へ現れた、単なる
縛血者では相手にすらならない、最強の
『柩の娘』である
スカーレット。
その性能差でヒロイン達を撥ね退けながら、トシロー……いや
杜志郎に向けて彼女が
拗ねるような視線と共に告げた台詞。
そういうとこやぞトシローさん
――
《伯爵》から
“娘”である
ニナへと明かされた血族の
真実。
『裁定者』により混乱する夜会を前にして、若い公子は仲間と共に滅びを食い止める為に動き始める……
……だが、突如としてトシローの呪われた心臓が、何かに共鳴するように跳ねる。
予感を感じてノーマ・ジーンの外へ飛び出した彼の前には、ニナを狙っていたスカーレットの姿が。
―――目の前の人形が危険な存在だと理解しているはずなのに。
胸がひたすらに、苦しい。他には何も目に入らない。
トシローの躰は、理性が不可解だと訴えるのも構わずに黒髪の人形へと吸い寄せられる。
気づけば、両者の距離は手と手で触れ合えるほどに近く。
トシローの誰何の声に、スカーレットは口付けるかのように唇を動かそうとして……
「ねぇ、トシロー。あんた、このお嬢ちゃんに何したのさ? 気のせいかすっごい熱視線送ってるぽいけど……」
「誑しこんだのなら、今直ぐその方法を教えて。……今の私なら制御できるか、試してみるから」
だが、スカーレットは僅かの手傷も負っておらず、無機質な瞳は変わらずトシロー・カシマ一人だけを見つめ続ける。
仲間二人の冗談めかしたただし目は笑っていない問いに、トシローも戸惑うしかない中
ただ一人、「少女」の小さな体躯は既に疾走を始めていた。
「ああ───いま、おそば、に」
シェリル達の攻撃は全て空を切り。
「お退きに、なって───くださ、い」
途切れ途切れながらの言葉には、明確にトシローだけを欲する意図が籠められ。
「いとおしい───その御方から、はなれて」
そのまま軽く二人の女縛血者の身体を押しただけで、闘いは終わってしまった。
ニナとシェリルの身体は高速で吹き飛ばされ、手足の骨は砕かれ筋肉も断線。動きを完全に止められていた。
ふわりと舞い上がるドレスが止まり、物言わぬ無表情が再び男を見つめ始める。
その姿は、儚い程に美しく、陽炎のように物悲しい。
「───いけない、御方。女子の心を、捉えて」
スカーレットの垣間見せたその言葉と仕草が、トシローの心を大きく揺さぶる。
仄かな嫉妬が混じった物言いに、脊髄へ痺れが走る。
拗ねるようなその視線。見覚えがあるぞ───記憶の内に焼き付いている。
動きを止めた彼女に……ニナは
アンヌへ最大出力での
賜力発動を命ずるも―――
その抵抗は、掠り傷にもならない。攻撃者の姿さえ目に入れてはいない。
弾き飛ばされるアンヌに目もくれず、ただただ少女の瞳は、愛しい誰かを捉え続ける。
だから、ああ……これで、真実二人きり。
トシロー・カシマと、スカーレットとの間を遮る者は、本当に誰一人いなくなった。
- やっぱり正妻には勝てないんやな… -- 名無しさん (2020-05-21 06:46:44)
- だってヒロインとの個別ルートでもヒロインと話してるときでさえ美影のこと思い出してるんですもの -- 名無しさん (2020-05-21 07:28:27)
- 見た瞬間にヒエッってなった項目 -- 名無しさん (2020-05-23 15:46:50)
- 女性関係にもだらしない、トシローさん…(シェリル:肉体関係あり、恋人ではない、ニナ:断り切れず一度だけ関係、お互いに拗らせ、アンヌ:憧れ、トシローは庇護対象として見てるが…、アリヤ:語るに及ばず) -- 名無しさん (2020-05-23 15:56:01)
- アリヤに関しては向こうが迫ってくるのが悪い俺は悪くないって言ってた -- 名無しさん (2020-05-23 16:43:03)
- 肉体関係結んでいる以上その言い訳は通じないんだよなぁ -- 名無しさん (2020-05-25 19:24:38)
- (『うわみかげつよい』) -- 名無しさん (2020-05-25 19:26:56)
- アリヤとの初回は、身体動かなくなる毒使われてたから…… -- 名無しさん (2020-05-29 05:34:24)
- ???『エッチなこと、されたんですね 杜 志 郎 様 ?』 -- 名無しさん (2020-06-08 01:10:13)
- 「他の女の名前を言いましたね。――急段、顕象――」 -- 名無しさん (2021-11-29 22:54:57)
- ↑おっ、ドス声通り魔ヒロインのエントリーか(震え -- 名無しさん (2022-01-30 23:06:01)
最終更新:2022年10月09日 21:24