陥れたはずの零示との二度目の闘いに破れ、クランも崩壊し……負け犬として
負の感情を抱えたまま夜の闇をさまよう真栄城。
彼はそのまま路地裏で、クランぐるみでかつて嫌がらせを加えていたEAプレイヤーから鬱憤晴らしに暴行され続ける。
――散々に貶され、挑発され、しかし言い返せない。
――気が付けば、謝罪の言葉は屈辱の涙へと変わっていた。
殴られ蹴られ、全身の感覚が麻痺しかけてきた頃……ソレは現れた。
「やあ、久しぶりツカサ。なんだか大変そうだねぇ……いっちょ手伝ってやるよ」
そのまま、瞬きをする間にエヴァン・アーマライトは不良連中を叩きのめしてしまう。
彼の強さは異様であり、禍々しさを感じさせるものだった。
……愉悦の表情で倒した男達を眺めるエヴァンに、司は呆然と立ち尽くす。
「こーんな三下連中にさ、ボコられ、蹴られ、蔑まれ───辛かったろ? 惨めだったろ?」
「でも安心しろ。もう我慢する必要なんてないんだぜ」
「このままでいいなんて、そんな訳ないよなツカサ」
そう語る笑顔にぞっとした。なぜなら、それは提案なんかじゃなく単なる通達だったから。
「いつか言ってたよな。レイジを倒すって……
トモダチの願いを果たしてやるよ。その願い、俺が叶えてあげるとも」
まるで天使のように手を差し伸ばしてくる目の前の相手に、司の身体は小刻みに震えていた。
その異常性に、生物としての本能が反応した、というべきか。
覗き込んでくる瞳が、今は何より恐ろしい。
だが、すでに呑み込まれてしまっている少年には――震えながらも、その手を握り返す事しかできなかった。
「さあ、一緒にレイジに勝とうじゃないか。
ツカサにはきっと素質がある。おまえをバカにした連中全員に目にもの見せてやろうぜ」
新しい玩具を見つけ、喜色に塗れたエヴァンの声が徐々に遠ざかっていくのを感じながら。真栄城司はただ震え続ける。
もういい、分かったから。あいつに負けたままだっていいから、構わず放っておいてくれ。
僕は小さい人間で、後悔に塗れる人生こそがお似合いなんだ。
だから、おまえらみたいな化け物に関わらせないでくれ。
情けなく逃げさせてくれ、追いかけてこないでくれよと心の中で絶叫する。
―――そのまま二人は、溶けるように路地裏の闇に消えていくのであった。
- 拒絶も積極的な挑戦も出来ず、ただ流されるまま悪魔に手を引かれて苦痛と絶望に溢れた怪物に…。 -- 名無しさん (2020-08-05 21:15:40)
最終更新:2021年04月25日 06:39