懐刀からの報告で
モノリス内部にも兵士達が侵入した事を知った
綾鷹は、この突然の襲撃に不可解な点を感じながらも……
ここまで守り抜いてきた自社の宝、己の夢を奪われる訳にはいかないと―――王の武装、
マスターアームを顕現させる。
その威容に対し、
略奪者としての強欲を瞳に爛々と輝かせながらエヴァンは嗤う。
綾鷹の意思に従い正規の究極の力を以て、猛禽を無力化せんと第八のアームズは猛ったのだが。
「祝福するよアヤタカ……君は紛れもなく正気だ」
「────だから俺に届かねぇんだよぉ!」
お前には“執念”が足らぬのだと。
決められたはずの敗北はエヴァンに訪れない。戦場に降り立ったもう一人が、侵入者に向けられた数多の砲火を受け止めていたから。
「GIIIIIAAAAAAAッ!!!」
鼓膜を貫くほどの慟哭を迸らせて、喉が裂けんばかりに嘆きを振り撒き現れた真栄城は、格好こそ学園の制服ではあったが……
その肉体には血管のような毒々しい色のラインが幾つも奔り……その目はどこまでも虚ろだった。
思わず瞠目する綾鷹。まともな人間を凍り付かせるような光景が……
米国のType-C実験体として選ばれた果て、血臭と慚愧と暴虐の産物がそこにいた。
「この能力値……やってくれたな貴様ァッ!」
元一般プレイヤーである少年を前に、彼の辿った経緯や叩き込まれた絶望……それは判らぬし心は僅かも痛まない。
だが、己の築き守ってきた
宝を無残に穢された事だけは我慢ならず、綾鷹は激昂する。
そして―――
かつて自分が望んだはずの非正規の塊となった真栄城は、バラバラの心と壊れかけの肉体を駆動させながら、王に襲い掛かる。
「Hey!頑張れツカサもう一歩ォ!キリハラレイジは目の前だぜぇッ!」
「でないと──今日は三本、四錠だ。螺子もキリキリ巻いてあげるよ、耐えられる?」
「アァァッ……退け除け解けよ!」
今の真栄城司の、限界まで強化された肉体は既に改竄の塊である。
物理的に、そしてシステム的に高められたのみならず、意図的にバグだらけなまま放置されている始末。
結果、マスターアームに、彼の肉体は抵抗できてしまっていた。
正規の攻撃は通りにくくなり、狂乱する戦士は王の絶対性を突き破る。
ただの一般人だった少年が、苦難の果てに管理者と拮抗する光景………
そこだけを抜き取れば、まるで物語の主人公のようではあったが────
「邪魔だお願い死んで死にたく
死にたく死にたく───痛い、
痛い、いたいイタい嫌だァァッ!!」
……極めて平均的だった真栄城司という少年が、辿り着けた末路はこれだ。
錯乱した世界の中、敵意と懇願と絶叫が、絞り出すように破壊の力を生み出し続ける。
- やっぱ憧れになるのにも才能いるんだなアイザックとかダインスレイフとか -- 名無しさん (2020-07-14 11:57:13)
- 特別な物語の主人公じゃなくて、改造された元人間のモンスター、悪い人の格好の餌食にされた悪い子供のソレなのが -- 名無しさん (2020-07-14 13:03:22)
- 何かよこせよ!←じゃああげるね^ ^の果てにこれ -- 名無しさん (2020-07-14 13:17:47)
- 普通はこうなるだろうにまだ自分の意識で戦うことを選べたルーファスとリチャードはかなりすごいんだなって思う -- 名無しさん (2020-07-14 14:31:34)
- 感情が高ぶるとさ頭ん中ピカーってなってさ……はは、ゲームみたいだろ? -- 名無しさん (2020-07-23 08:40:48)
最終更新:2020年12月18日 01:43