機人同士の戦闘に巻き込まれた
親友の命を救う為、イヴァンに立ち向かうカレン。
多種多様の
迷彩欺瞞の重ね掛けに加え、重力を味方につけた超加速。
一対一に長けた
殲機を用い、殲機同士の相性差もあり確実に敵に負傷を刻んでいくカレンだったが……
イヴァンの優れた技量故か致命傷には至らず、さらに徐々にではあるが交錯の際に反撃を合わせられてしまう。
「そこに居るんだな……いいぜ、信じるさ身体。お前は俺を裏切らねえ。
積み上げてきた全て。魂ごと、その直感に預けてやるとも」
―――“見られている”。
それは、どんな相手、どんな場所でも色を消して溶け込もうとするカレンの
希求を、
闘争存在としての自らを強く信じ戦場を支配せんと猛る、
イヴァン・ストリゴイの覇気と希求が呑み込み始めた証でもあった。
―――それでも。
紅い血を流し、刻一刻と死神に運び去られる時が近づくジュンの姿に、
そして、今も必死にこの場所へ向けてひた走っているはずの、もう一人の少年の事を思い。
「ジュン───私に力を貸して。あなたを守りたい……その願いを叶える力を、私に」
カレン・キリシマは、怯懦を振り払い、
「――――ハアアアアアアアッ!!」
過去最大の加速でただ真っ直ぐに。敵を断つべく刃を振った―――
「……そうだよなァ。そうするしかない。お前さんの勝利はそこにしかない」
……今のカレンにとって真の敵とはイヴァンではない。時間である。
自らの足元に頽れた瀕死の少女、その身命を拾い贖う為の時間が必要だった。
だからこそ、カレンの攻撃は時間経過と共に苛烈さを増していく道理。
時間制限というこの戦闘を貫くルールは、彼女に対して力を与えるもの。
だからこそ、イヴァンは待った。カレンの加速が自身の最大値を極めるまでに達する局面を。
何故ならばそこにこそ最大の勝機は存在するのだから。故に、死と隣り合わせの中で待ち続けた。
最速という名の単純化――その陥穽にカレンが自ら嵌る瞬間を。
……そして、飛び込んだカレンの肉体は、イヴァンの生身の拳によって砕かれる。
それは速度に優れた迎撃などではなく、加速と共に単純化し読み切られていた軌道上に
置かれただけの罠。
左の
鉄爪をフェイントとし、その死角から繰り出された生身の戦闘技術による
迷彩欺瞞返し。
拳の移動、その基礎中の基礎、それを幾度となく繰り返して昇華した、彼の勤勉さの証であり……
失敗すれば両断されていたという事実すら、この戦の鬼にとっては馴染みの賭けでしかなかった。
「あばよ別嬪さん───愉しかったぜ。
あんたと戦い、勝利したこと。イヴァン・ストリゴイは誇りに思う」
―――かくして勝負は決する。カレンはもはや動けぬ的でしかなく。
魔爪に内蔵された必滅の荷電粒子砲が、彼女の肉体を焼き尽くすまで一秒もない。
その中で、カレン・キリシマが思いを馳せたのは―――自身の死ではなく、ジュンの命を救えなかった悔悟であった………
- 少佐とイヴァンさんだけでも強すぎるなぁ……(手数やら索敵は乱丸が必要になるだろうけど -- 名無しさん (2020-08-05 23:27:28)
- 追い詰められた人間は無駄なことが出来なくなるから行動が読みやすいってのは色々な作品で見かけるな -- 名無しさん (2020-08-06 22:16:46)
- ジュンがいなきゃ勝てた可能性ありってカレンさん強すぎね?影装使われたら即アウトってのは分かってるけど -- 名無しさん (2020-08-06 23:10:35)
最終更新:2020年09月13日 05:00