そこら中で命が消える
邪法街に降り立ち、“キャロル”と名付けられたばかりの
“魔女”の少女。
街の中をさまよっていた彼女は突然、
同じ存在……サンディから襲撃される。
「欠けていた最後の一人」「“魔女”の運命」……何を言っているのか理解できないまま
キャロルは異形の武器で両脚を切り飛ばされ、体中を殴打された上に窒息させられそうになる。
以前の記憶も何も持っておらず何らかの恨みや憎しみ、痛めつけられる理由にも覚えがないのに……
「……なぜ?」少女は、己が身に降りかかった理不尽な痛苦の理由を問わずにいられなかった。
そんな痛みに苦しみ戸惑う末っ子の姿に、サンディは嘲笑いながらも苛立ちの籠った言葉を吐き捨てる。
何人も同じように痛苦を齎してきたであろう彼女の貌には、直接的な暴力への愉悦だけではなく、あるいはそれ以外の……憎悪のような感情がうねっていた。
本編より
「なぜ? さて……なぜ、ねえ?」
「なら、なぜお前は生まれてきたか判るのか?そんな質問に答が用意されていると思うのか?」
「判らないことは、全部誰かが説明してくれると思ったら大間違いってことだぜ」
「この世ってのはな、そんな風にはできちゃいねえんだ。訳が判らないなら判らないまま、あがくしかねえってことさ」
「しょうがねえよなァ……それでも生まれてきちまったんだからなァ」
「死ぬのが怖いか?けどな、死ねないってのはそれよりもっと最悪なんだぜ?」
「ひでえもんだろ? 言わなくても気持ちは判るぜ。俺も同じ身の上なんだからなァ……」
「さて、最初の挨拶としちゃこんなもんか。
まあ、とりあえず一回死んでおけや。その後でまた会おうぜ」
最終更新:2021年04月12日 00:37