――最初から全てを奪われていたのに、何を今さら。
――吸血鬼に勝てる訳なんかなかったんだ。
シェリル・アンヌ√共通部……
アルフライラの罠に嵌り、
尻穴の奥に至るまで肉体を凌辱され、誇りを砕かれた
アリヤ。
意思の光を失いつつあった少女に、退廃の味を知り尽くした地下の女王は、毒を染み渡らせるように語り掛ける。
「見事にへし折れたなァ。おまえはもう狩人としちゃ使い物にならねえよ……」
「どうする……?楽になっちまうか?」
蹂躙された痛みで思考を放棄していたアリヤは、これ以上の痛苦に壊れてしまう前にと……ライラの声に頷きかけてしまっていた。
「一度でも折れた奴は何度でも折れる。おまえはここで終わったんだよ」
――そうかもしれない。この身ではもはや戦えなどはしない。
諦観に身を委ね、瞼を閉じようとしたアリヤの耳に……決して揺らがぬ、鋼鉄の肌触りを持つ声が届く。
いいや、違うな。
折れたのならば、何度であろうと立ち直ればよい。
諦めぬ限り、人間にはそれが可能なのだから。
その声を聴いた瞬間、アリヤの心と体に“杭”としての装甲が蘇る。
声の主を探すアルフライラの視界に、ビルの屋上に立つ、一つの人影が映り込む。
忽然と出現した戦闘者は、巌の如く張り出した肩に、二本の丸太を担いでいた。
その意図を掴みかねながらも、両腕が塞がった隙だらけの状態をこちらは狙い撃たせてもらおうと……
アルフライラは手中で弄んでいた鞭を、人間の限界を軽く超えた速度で放ったが。
それは標的を捉えるどころか、突き立てられていた杭の一本に虚しく絡みつく結果に終わっていた。
―――油断などしていない。
―――それが、何故にこんな間抜けを晒してしまった?
捕捉される前から、老人は既に構えに入っていたなどとは、彼女の思考の埒外に置かれており……
止まった思考が動き出した瞬間、ライラは自らの背後に立っていた闇よりも冥き気配に戦慄する羽目となった―――
「闇を欺き影を盗む呼吸こそ、我らが積み上げし神髄───夜は貴様らだけの領域ではないと知れ」
「ぐッ……はぁ……ッ……!て、てめえ……は……?」
吸血鬼の肉体に叩き込まれたのは、もう一本の杭。
規格外に過ぎるその質量の直撃に、ライラの胴は上下に泣き別れとなり、褐色の貌は驚愕に凍り付いたままであった。
「ほう───心臓を逃れるとはな。その生き汚さの代償は、恐怖と新たな苦痛だが」
獲物を見下ろしながら、老人――クラウスは、傷つき蹲ったままの少女を見やる。
「未熟者なれど、我が不肖の弟子――返礼はさせてもらうぞ、吸血鬼」
決着の杭を振り下ろさんとするクラウスに、ライラの一味が乗るヘリが急襲する。
機銃掃射の嵐から動けぬアリヤを抱え、遮蔽物の影に身を隠すクラウス。
その間に、上半身のみとなった頭目はヘリから降ろされた縄梯子を掴み、地上の戦場から離脱。
同時に、近代兵器が唸りを上げて狩人師弟に襲い掛かるが。
「返礼はするといった──二言はない」
仁王立ちしたクラウスは、杭をヘリへと向けて投擲する。
如何な超人の怪力が付与された業なのか……単なる巨木であるはずの杭は、飛来した直下から機体を貫通。
操縦席内部を血の棺桶へと変えていた。
不可視の魔の手に引き戻されたかのように、串刺しにされたヘリは屋上へと墜落……炎を上げて爆発炎上した。
残骸と化した機体を貫く巨木が天を指し、紅蓮の炎に包まれた墓標めいて夜空を焦がす。
―――ライラ達のもう一つの標的であり、ようやく負傷から復帰した
アンヌは、
その一連の殲滅劇を引き起こし、今は己に向かって近付く老人から目を逸らす事ができなかった。
先程までのアリヤの襲撃の際には、その烈しさに戸惑い、その炎の熱さから逃れようと足掻いてみせた
縛血者の少女。
だが今、アンヌの身体は抗う事すらしてはいなかった。
それは、悟ってしまっていたから。
人はどれだけ走り続けようとも、闇を焼き尽くす巨大な炎――太陽からは逃れる事は出来ないという事に。
- 糞眼鏡の台詞かと思った -- 名無しさん (2020-10-30 00:54:48)
- 糞眼鏡はそもそも折れなければいいだから -- 名無しさん (2020-10-30 18:27:45)
- 心が折れ立ち止まった?これはいけないマイナス100点 -- 名無しさん (2020-10-30 19:19:11)
- 糞眼鏡じゃないんかい -- 名無しさん (2020-10-30 23:03:58)
- 糞眼鏡理論は「折れることがおかしい」だから…… -- 名無しさん (2020-10-31 01:49:20)
- 折れるなksだろあいつの場合 -- 名無しさん (2020-11-01 02:03:04)
- 折れてももう一度立ち上がれるだからアッシュに近い在り方やな。光勢はそもそも死んでも折れないだから。 -- 名無しさん (2020-11-01 02:22:13)
- 「涙しながらでも、未来(あす)へ」て言葉がアッシュの本質だよなぁ。どん底に落ちてなおかつそこで大切な輝きを手に入れられた者だから重みがある。 -- 名無しさん (2020-11-01 13:02:32)
- (◦ ∀ ✧)無限の希望も絶望も、重ねた全てが俺の力だ -- 名無しさん (2020-11-01 13:11:10)
- 言う資格自体はあるんだろうけどなぁ...汚れた主人公属性が何よりも痛いしその千年がスポットされていないからあまりプレイヤーは感銘受けんのよな… -- 名無しさん (2020-11-01 13:19:56)
- 悪の敵になりたいのださんも主人公属性強いけど感銘受けた奴ほとんどいないのでok -- 名無しさん (2020-11-01 13:28:37)
- ワイ、あのシーンで喝采してた -- 名無しさん (2020-11-01 13:33:57)
- クッソかっこいいけど俺も悪の敵になりてえ〜とか危険すぎる -- 名無しさん (2020-11-01 13:36:20)
- ↑4 プレイヤーからは全く見知らぬ元帥殿との絆によって覚醒されるのとか、主人公の絆による覚醒シーンを敵サイドで見るとこんなにワケ分かんなくて理不尽なんだなぁとちょっと感慨深くなった。 -- 名無しさん (2020-11-01 16:00:53)
- 総統閣下の気持ち体験セット -- 名無しさん (2020-11-01 17:18:10)
- 妖怪丸太師匠は近い人いるかなぁ…… -- 名無しさん (2020-11-02 22:40:53)
- ヴァルゼライド閣下 -- 名無しさん (2020-11-02 22:42:39)
- みんな!丸太はもったか!? -- 名無しさん (2020-11-02 22:52:01)
- クラウス的には神祖はどうなんだろ、紛れもなく人の究極ではあるし生物学的には人以外の何者でもない不老不死の人外だけど -- 名無しさん (2021-02-06 21:42:53)
- 人間食い物にしてるし神天地成ったらクラウスが言ってる人間のいいところ全部ぶっつぶれるから否定するでしょ -- 名無しさん (2021-02-06 21:44:18)
最終更新:2021年03月17日 23:08