EAを荒らす
“猛禽”と、“正義”を振り翳し暴走する
神埼……
影としての両者との邂逅を経て、各々の抱えた問題に向き合った
零示と忍は、寄り添い合い……遂に結ばれる。
そして一夜が明け……
すっかり作戦会議部屋と化した保健室で、不審なプレイヤーの捜査を手伝った後輩の凪風と、クエスト関連で情報提供者となっていた
さつきを交えた4人は、混沌とするEAの現状を再確認していた。
殺傷能力を持つType-Cのパッチの流通。
危険なパッチを蔓延させているブリューナクを諸悪の根源と断じて、“リアル”も巻き込んだ抗争も辞さない構えの、神埼率いる神風士道団。
それら不穏な空気は一般プレイヤーの恐怖を煽り、黒幕の思惑通りEAの存続を危うくさせているという事実。
さつき達がそんな現状に顔を曇らせる中、零示は、パッチに対する『秘策』はあると告げ、立ち向かうべき問題はクラン同士の紛争をどう処理すべきか――であると語る。
「EAの中の揉め事をリアルに持ち込んでんじゃねえ」「そんなダサいやり方でなく、EAプレイヤーならゲームの中で決着付けろ」と。
零示の言葉に、忍やさつきもそれぞれの立場から力強く頷く。
「その通りだ。ゲームマスターの立場からも私は零示に賛同しよう」
「うん、あたしも零示に賛成。あの場所はもっと大事にしたいな……
いっぱい稼がせてもらったし、これからも稼がせてもらうつもりだし」
「私もたくさんEAで怖い目にも遭ったっすけど……何と言っても零示先輩と出会えた場所ってのが大きいっすよね~♪」
……そして、凪風も彼女なりの感想を告げながら、何時ものようにさりげなく零示の腕に引っ付こうとした、のだが。
「こら、凪風!」
「うひぇっ!?す、すいましぇんっ!」
――零示の動きを待たずして、忍先輩からポンコツ後輩へお怒りの叫びが飛んでいた。
そしてすぐに、忍は自分の無意識の行動に赤面してしまうが……
「……あげないぞ?」
昨日までとは違い、覚悟が決まり開き直った忍センパイは強かった。
恥ずかしげに、しかしきっぱりと言い放ったのは独占宣言。その上、しっかりと零示の左腕を物理的に抱え込んでいた。
そんな見てる方が「壁殴りたくなるぐらいイチャイチャして」いる(バ)カップルの姿に、おしゃべり好きのオカンと後輩は黄色い声を上げる。
「かーっ!見たっすか今の?見ちゃいました?見せつけられちゃいました?」
「ええ完璧デキちゃってる雰囲気よねぇコレって……」
「きっともうずっぽりヤっちゃってるんでしょうねー。ベッドの上であふんあはんと……おぅわぁ……」
「な、なんか生々しいわよね……知ってる人がそのそんな関係になるって……」
「想像しちゃうっすよねぇ……」
何やら審議中の二人と寄り添ったままの忍を見て、苦笑するしかない零示であった……
最終更新:2022年01月30日 21:01