それじゃあ、また未来(あした)………美汐

発言者:万里也 ジュン
対象者:青砥 美汐


「やだ……もう、やだよぉっ…………」

「ジュンと一緒にいるの……傍にいるのっ……まだ、謝れてないからぁ………」

「ダメっ、離して秋月っ……ジュンを置いていくなんて、嫌ぁっ………!」



強がってばかりで、でもそれがとても辛そうだった、放っておけない仲間であり友達の少女。
そんな少女がようやく伝えてくれた本心に応え、
その命を捨てても守りきった、どこまでも明るく前向きだった少女が最後の瞬間友達に伝えた、“彼女らしい”別れの言葉。


強制的に覚醒させられた己の影装に振り回され、一人の弱い少女へと戻った美汐は、自分に迫る暴威に対し、両親を亡くして以来初めて「助けて」、そう声に出した。
果たしてその願いは、彼女を思い駆けだしたジュンによって聞き届けられたが……その代償に捧げられたのは、ジュン自身の命であった。


心臓を貫かれ、胸から流れ出る昏い色をした血……もはや手の施しようもない程に傷付いたジュン。
眼前の冷たい現実に、美汐は震える声で怒る、

「やめて……なんでよ、私、こんなこと望んでない……!
 万里也――馬鹿、馬鹿だ、お前は本当の大馬鹿だ!何してるんだよ……私の戯れ言なんて。
 助けて(・・・)なんて、どうして聞いた……切り捨てろって言ったじゃないの!

涙を零しながら、なおも強がろうとする彼女に、ジュンは優しく微笑みかける……

「だって……ほら、言ったじゃん。
 友達だって、さ……はは。身体が勝手に動いた、ってやつで……」

自分を庇って、今まさに命の灯火が消えんとするジュンの姿に、今まで、“弱さ”と断じ目を背け打ち捨てたはずの美汐の想いが止め処なく流れ出す―――


「どうして、何で……ふざけるなッ!
 見たでしょう? あんな様なのよ本当の私は、意地っ張りで、臆病者で、
 何もできないまま強がって……幻滅したでしょう。放っておいてよ。」

「青砥美汐に、守られるような価値なんてないの!
 ……お前はお前で、仲間達と陽の当たる場所で楽しくやってればよかっただろ……」

「私には出来なかった甘い戯言、ちゃんと形に出来るんだろ?
 もう馬鹿なんて言わないから、邪魔もしないから、お願い見せてよ。
 今まで嘘ついてたけど、本当は私もそういうものが大好きだからさぁ」


「お前みたいなやつが、私の……私なんかのために。
  命なんて賭けないでよぉっ……ジュン――


言葉とともに大粒の涙が、力を失っていくジュンの身体に流れ落ちる。
その様子を微笑みながら見つめるジュンの心は穏やかであり……
美汐はもう大丈夫だと感じ、こうして愛されて死んでゆけるのなら、自分に命を託してくれたカレンにも顔向けできるだろうと思ったがゆえ―――


「よかった、最後に(・・・)、美汐が守れて……」

「泣かないで……美汐……ほら、わらって?
 最後ぐらいは……やっぱ、笑顔で見送られたいじゃん……?」


泣き叫ぶ美汐の腕の中……万里也ジュンという少女は、静かに瞳を閉じていく。
その最後の瞬間―――


「あいつのこと――お願いね。それじゃあ、また未来(あした)……美汐」


そう微笑みを絶やすことなく、目の前の少女と、気になっていた少年の未来を思いながら、力尽きるのであった……
もう動くこともない冷たいジュンの身体に向けて、まだ伝えきれていない想いがあるのだと、必死に美汐は言葉を継ごうとする


「……ジュン? ねぇ……返事、してよ……お願い……

 素直になるから。友達になるから。大切だから、本当は好きだから。

 ああぁ……う、あぁ、ああぁぁぁっ……!」


だが、きつく抱き締めた少女の身体からは、もうどんな声も返ってはこない。

もっと早く、こうすることが出来たら。
自分の気持ちを伝えることが出来たなら。
そんな胸の張り裂けそうな想いを抱えて後悔が氾濫する。

もう、何も考えられない―――



「ああああああぁぁぁぁぁっ! 

  うああぁっ、あぁぁっ……

  いやぁぁ……いやああああぁぁぁぁぁっ……!」



美汐の慟哭が、感情の全てを込めた悲痛な叫びが。
戦場の暗闇に響くのだった―――



  • あれだなー、なんていうか、素直になれば最初から丸く収まったのに、って考えるべきなのか、人間そうそうそんなすっぱり割り切れられねぇから仕方ないよ、って考えるべきなのか。どっちにしろやりきれんなー。でも、グランドルートではわだかまりは解けて二人とも生き残ったんだよな。どこに差があったんだろ。 -- 名無しさん (2019-01-11 15:36:22)
  • 恐らくはカレンの助力と、ジュンが美汐の内面を知った上で真っ向から抱きとめようとしたかの差じゃないかなーと。まぁそういう形になるかどうかの流れに関しては……美汐√は巡り会わせが悪かったとしか言えないのかも。 -- 名無しさん (2019-01-11 18:30:54)
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