初出はPV4。大切な仲間達の奮起と覚醒に引き寄せらんとする戦鬼に対し、
己の陰我と向き合う覚悟を固めた男が、研ぎ澄まされた殺意と共に放った言葉。
ジュン√、肉体に刻まれた過去の経験を急速に“思い出し”、熟練の兵であるイヴァンと互角に渡り合っていく礼。
そんな滅多に巡り会えない互角の敵手と成った彼への返礼として、ついにイヴァンは己が
影装を発動。
異形の魔獣に変貌しその並外れた機動性と火力によって、未だ影装制御に至れない礼を蹂躙、
そのまま
緋文字礼は完全に敗北してしまったかに見えたのだが……
仲間達がギアーズの戦士達の持つ影装により苦境に立たされる中、
彼らに送り出された
凌駕と
ジュンは仲間との絆、未来を信じて、
心身を重ねたからこそ可能となった、相互の“共鳴”を果たす。
二人の覚醒を離れた場所から感じ取ったイヴァンは、様々な人物を見てきた彼でさえ見たことのない、
彼らの心の強さ、輝きに魅せられ、その感覚を抱いたまま次なる戦場へと足を伸ばしかけたが―――
「――何処見てやがる戦闘狂。縊り殺すぞ、逃がさねぇ」
彼の足を止めさせたのは、先程葬り去られたはずの緋文字礼の殺意であった。
既に礼の身体は、荷電粒子砲の掃射により炭化した箇所が幾つもあり、四肢も外側を整えただけで、
内部回路はズタズタになっているという、襤褸切れのような有様だったが……
「へぇ……お前さん、そういうキャラしてたかい? 戦友」
冷静さ、穏やかさを常に備えていた礼、
今の彼の総身からはそれまでには見たことのない、ドス黒い凶暴さと殺気が放たれていた。
「五月蝿ぇんだよ屑鉄機造魔獣が。友人だァ?口を噤めや、これから鏖殺してやるからよ。
オレをそう呼んでいいのは、愛しい仲間だけなんだ」
貴様などが、あの誇るべき仲間の輝きを見るんじゃない、と。
「ああ、そうだな……こんなものは総じて遅かれ早かれだった。躊躇して、取り逃して、いつまで愚図だよ緋文字礼。
お前は生まれ変わったんだろう? なら、ネンネの時間にはまだ早い」
「ここで自分に怯えたまま、それでテメェをあの場に行かせた……なんて方がよっぽど二人に顔向け出来るか。
ああそうだとも、誇らしいんだよオレは。こんな自分より、糞ったれのなんかより、何万倍何億倍も大切な連中が出来たってことが」
「だからよ。今こそオレを、この手に捻じ伏せ――」
「彼らに誇れる僕としてッ」
「認証――汝が陰我を問う」
「―――ここに、真の転生を果たしてみせる!」
そうして、礼は凄まじい肉体の苦痛を押し込め……“己を乗り越える”ための詠唱を開始したのである。
無意識の闇を表す文言を連ねる毎に、彼の精神は過去の影から来る痛みに軋む。
傷は消えない。目を逸らすな。貴様にそんな資格はないぞ。
装甲各所から散るは拒絶の火花。
自己の変革への怯え、その先には苦難しかないという恐れ。
だからどうか目を逸らしてくれ、そうすれば穏やかに、絶頂のままに消えられると。
その囁きを振り切り、礼は詠唱を続ける。
立ち向かい、受け入れるという事の強さを知り、大切な友や仲間が居てくれる今、
親友と肩を組んで笑い合うために―――
仲間達と胸を張って歩むがために―――
変えなければならないのは、いつだって自分なのだ。
だからこそ、礼は過去の情景に向かって決然と立ち向かう。
貴様は邪魔だ、黙ってろ。
そして、礼は己の内の影と戦い続ける道を選び取った。
受け入れず、認めることが出来ずとも、苦しみを抱きながら抗い続けるという苦難の道を。
その決意に呼応するが如く、心装永久機関が唸る。
「心装ォッ―――」
《影装・黒影罪牙》
今此処に、修羅同士の決着をつけるべく……
緋文字礼は凶悪無比たる己が“黒の牙”をその手に掴むのだった―――
- 彼には見せれない裏の顔はヒロインの特権 -- 名無しさん (2017-06-18 09:45:52)
- ↑影装使った時点でさらけ出しちゃってるんですがそれは… -- 名無しさん (2017-06-18 11:09:25)
最終更新:2021年01月11日 08:46