分かった、訂正するよ草笛さん――君は仕事が出来る女性だよ。格好いい、素直に僕はそう思う

発言者:緋文字礼
対象者:草笛 切


反抗勢力(ロビンフッド)ギアーズ……両勢力の間で繰り広げられる“命”の火花散る戦い。
その最中に訪れた束の間の休息、
過去を持たぬ空虚な男から、紫煙のように本質を掴ませない女への“素直”な言葉……その一つ。


凌駕が輝装を身につけて敵を撃退した陰で、
一人の仲間が去り、一人の少女がマレーネ一行の仲間として加わった激動の夜が明ける……。
各自、別の目的を以て動き出す中、拠点となるトレーラーでは、
鬼気迫る表情で電算機の制御盤と睨みあっているマレーネと、静かにそれを見守る礼と切の姿があった。

少女の“調べ物”について尋ねた礼に対し、切はいずれ彼女の側から話すでしょ……と、
個人的事情には我関せず、契約違反は犯せないという、ビジネスパートナーに過ぎない自分の立場を示す。

それについて、礼は一言「大変だね、君も」……短く気遣いの念を表し、
切はスケコマシだね、礼クンは。女も男もどっちもはべらすのが得意そうだし、ね。と茶化し、
凌駕との関係性を引き合いに出し、「二人は妖しい」と薄く笑うのであった。


そして、「ちょっと焦げた」(固形物の)切の珈琲を置いておいて、
二人は敵対するギアーズの用いた兵器、その輸送経路に話題を移す。
彼らの出した結論はシンプル、完成品である巨大兵器を収容できる、更に巨大な移動可能な拠点を保有しているというもの。
既にその推測に至っていた切によって、敵拠点の探査は開始されていたとのことであった。


彼女のエージェントとしての能力の一部を理解した礼は、
「そこはほら、流石のいい女って口説くところ」と、冗談で告げた切の言葉に対し……


「分かった、訂正するよ草笛さん――君は仕事が出来る女性だよ。格好いい、素直に僕はそう思う」


――そんな、どこまでも真っ直ぐな尊敬の念を表明するのであった。
その言葉に、いつも飄々としている女は不意を突かれたかのように、
一瞬動きが停止した後、じっと先の発言をかました男の顔を見つめて……


「参ったね、本気で言うとは……もうそんなこと言われる人間じゃないってのに」


そう、本気で困ったという表情を浮かべ、

「それと、そっちもワタシのことは切でいいよ。
 なんだかそうまで慕われると、苗字で呼ばせてるのが心苦しい感じだから」

照れを隠すように、彼の純真な瞳から逃れるように、自分の淹れた(・・・・・・)コーヒー(こけいぶつ)を流し込んでいった。
……当然、

「…………忘れてた。スーパーブラック、超にがい」

と顔を顰める結果となったのであるが、
そこで礼は気を利かせ、彼女に珈琲を振る舞うこととした。
“知識の上では知っている”というが、彼は澱みない手際で、完成度の高い珈琲を淹れていった。

そうして、礼の珈琲の上品な味と香りを味わい、先の動揺から元の調子を取り戻しつつあった切は、
執事、いや喫茶店のウェイターかマスターでもやっていたんじゃないか、と告げてから
いずれにしろ、自分の予想は大当たりだろうと言う。

その「予想」を尋ねる礼に向かって、いつもの調子で女は――


「この味で女性を落としまくっていた、というやつだよ」


――穏やかな雰囲気の中、そんな冗談を言うのであった。


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