故に、私は自他の行為に意味を問わない。意味は常に、行為の後を追いかけてくる影に過ぎんと判っているからだ



己の賜力の中で《伯爵》の残したマジェンタと繋がり、姿を消した彼の望みに対し想いを募らせていたバイロン。
そんな彼の前に三本指(トライフィンガー)を名乗る包帯男が正面から堂々と襲いかかるも、
そのあまりに無計画で執念を感じさせぬやり方に、バイロンはその男は本物の三本指ではないと容易く見抜いた。

「茶番」は終わりだと告げ、殺意も滲ませながらバイロンは、
かつて自分を狙ったという“三本指”、異形なる者の名前を名乗ったその男の真意を問い質す。
それに対し、男はこの邂逅の真の目的をあっさりと告げる―――

『本物の三本指(トライフィンガー)に逢いたくはないか?
 もし、あんたが奴と闘って勝つ自信があるのなら……その正体を教えてやってもいい』


藍血貴(ブルーブラッド)の中でも、《伯爵》を除けば最も永く生き、血の力を蓄えてきたバイロンに対して、あまりにもあからさまな挑発。
年功序列、血統の尊さが何より優先される鎖輪社会の常識から言えば、自殺行為のような物言い。
だが、その言葉を吐いた男はそんな“暫定”最強格の藍血貴を前にしても、平然とした調子を崩しておらず……
そして何より、バイロンの興を惹いたのは、自分と同類の匂いを感じさせる、夢見る童のようなその無邪気さであった。

結果…バイロンは、この素性の知れぬ男の誘いに乗ってみることに決めた。
客観的にみれば不明な点ばかりで疑いしか抱けぬであろう、新たな“踊り”の相手に、バイロンは告げる―――


「“行為”に予め意味を問うのは、怯懦の表れだ。
 その者の価値を保証するのは、何を考えたかではない。何を為したかということでしかないというのに」

「……故に、私は自他の行為に意味を問わない。
 意味(それ)は常に、行為の後を追いかけてくる影に過ぎんと判っているからだ」


数多の命を喰らい、同時に見下ろしてきた過去を背に、彼はそれが当然だとする。



そして――包帯の男が語った真の三本指の名前を聞き、バイロンは

「なるほど……その者が正体ならば、確かに私と因縁がある訳だ。それだけではなく(・・・・・・・・)────な」


まだ見えぬ血の香り、嵐の兆しを感じ取り……その魔性の麗貌に深い笑みを浮かべていたのだった。


「おまえと私は似ている。憧憬という灯火を翳し、
 縛りなき荒野を流離う旅人……共に、目指すは己を魅了し導いた超越者との再会」

―――後にバイロンは、包帯の奥に真実を隠す男にこう告げて、自分と《伯爵》との因縁を語り聞かせる。


不死の命に驕れる血族を罰する真の“王”の到来を求め、あらゆる悪逆非道を躊躇いなく実行する魔人。
弱者でありながら妄執で縛りを超えた“先駆者”の復活を望み、同族の血を喰らう贋物の鬼。

引き起こすは無秩序と破壊。恋焦がれるは、偉大なる吸血鬼・超越者(ヴァンパイア)
他者の輝きに目を灼かれた狂気の二人が、掟、縛りの象徴たる鎖輪を「儀式」の場とすべく動き出す―――




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