都内某所の公園で、その戦闘訓練は行われる。
夜間、一般人も使用する公園での「暗殺」行為はとても難しいものとされている。安全が保障されている公園内で事故を装って暗殺する事はまず出来ない上、何より24時間一般人に解放されている「公園」という場所で、人を殺める事はとても難しい事なのだ。
それ故に、この訓練の必要性があるのだ。
夜9時、部隊で犯人役に抜擢された1人が公園に放たれた。彼の任務は、「夜10時まで1人の暗殺者から逃れ続ける事。そして生還すれば、犯人役の勝利」とされた。その際に、暗殺者役を迎え撃つ事も良しとされた。
犯人役、暗殺者役とも武器の所持は1発の弾が装填された麻酔銃のみとされた。
「さて、どう攻めましょう。私に与えられた時間は1時間ですね?」そう上官に言ったのは、今回の暗殺者役のKarenだ。
Karenは青いロングヘアーの上に黒いベレー帽を被り、腕や太股の露出の多いレザー戦闘スーツに身を包んでいた。
「いけ。」上官はKarenの体を直視せずに言った。「了解。」Karenは一瞬で公園の闇の中へと消えていった。。。
「見つけましたわ♪」訓練開始から丁度10分が経過した時、Karenはターゲットを確認した。ターゲットは、全身を黒の迷彩服被い完全に闇と同化していた。
しかし、完全に<黒い>戦闘服は公園に取り付けられた街灯の明かりや、月明かりから自らをより際立たせてしまう。よって犯人役は必然的に「真っ暗闇」の中を移動し続けなければならなかった。
Karenが開始10分でターゲットを確認出来たのも、公園の中にある「真っ暗闇」を重点的に捜索すれば良かったからであった。公園の中で光が当たりずらい場所、それは公園の森の中だった。
「さて、どうしましょう。」Karenは考えた。Karenが着ている戦闘スーツは過度に露出が多い。少しの明かりでもあれば、遠くからでも黙視出来てしまう程のものだ。
犯人役とKarenとの距離は約10メートル。Karenはそこから犯人役を狙撃する事も考えたが、森の中にいるために木々などの遮蔽物が多すぎる。更に装填されている弾は一発しかないのだ。
犯人役は周囲を警戒しながら、闇の中を移動し続ける。時間制限があるために、一カ所に留まらず、移動し続けているのだ。
犯人役はこちらには気づいていないだろうが、向こうもただの素人ではない。犯人役の10メートル圏内に入れば確実に、Karenの存在に気づき、姿を消すであろう。
「仕留めるチャンスは、一回だけって事みたいね、、、」そう言って、Karenは犯人役から遠ざかり、やがて暗闇の中に完全に姿を消してしまった。
53分経過_____
移動し続ける犯人役も、一向に暗殺者役が現れないので集中力が途切れ始めていた。更に、通常の訓練とは違い暗殺者から逃亡しつつ、尚かつ「一般人からの目」にも神経を張らなければならなかったので、神経がすり減り注意力が散漫になり始めていた。
前にも聞いた事がある。決して過酷な訓練ではないが、「一般の目がある公共の場所」における暗殺訓練はセンスのある者でなければクリアーする事が出来ないと。「暗殺」という非日常的な行為を行う事と、日常的な公園という場所が暗殺者に迷いと混乱を引き起こさせるのだ。事実、この訓練を成功させている戦闘員は数える程しかいない。
犯人役は、暗闇の森の中で、月明かりの当たる草木の生えていない、ちょっとした場所を見つけた。残りの数分をここで過ごそうと決めた。
万が一、暗殺者役が現れたとしても麻酔銃で応戦する事が出来るし、仮に撃たれたとしても麻酔銃で完全に眠りに落ちるまで数分はかかる。勝ったかな。そう口に出そうとした、
その時!!
バシュ!!!という乾いた音とガサガサという二種類の音が闇の中から聞こえた。1つの音は聞き慣れた麻酔銃の音だった。そして、もう1つの音は「何か」もしくは「誰か」が森の中を高速で動いた音であった。恐らく自分の背後に回ったのかもしれない。
ここは月明かりで照らされている。暗殺者役からは、俺はまる見えだ。
ガサっ!!!闇の中の一点で音が聞こえた!
「きやがったな!」と犯人役が麻酔銃を構えようとした、その時、上空から巨大な何かが自分に降って来た。一瞬、野生の蛇か何かと思ったが、違う。
あまりの重さで、支えきれず、その上空から降って来た何かと共に草の上に伏した。地面に接地したとほぼ同時に、その「何か」はまるで大蛇の様に自分の全身に絡み付いた。
ギチギチギチギチギチ!!!!
と自分の胴体が正面から締め上げられる。
正面を見ると、甘い香りのする青いロングヘアーのベレー帽を被った女がニッコリとした笑顔で俺を見ている。この女は、木の上から麻酔銃や石を俺の周囲に投げ、俺の周りに音を作り出し、その隙をついて上空から飛び降りてきたのだ。
「お待たせしました♪暗殺者役のKarenです。どうやってアナタを料理しようか考えてたら時間が無くなってしまいましたわ。ホント、お待たせしてごめんなさいね。すぐに「楽」にして差し上げますわ。」
そういうと、Karenは犯人役の胴体に絡み付けていた自らの太股を、犯人役の首に巻き付け、ギュッ!と軽く締め上げたが、ポイントが気に入らなかったのが、
ラフレシアの花びらの様に、大きく股を広げ、犯人役の顔面を再度自分の太股に誘った。それと同時に、犯人役の右腕を自分の脇の下に入れ、完全に固定した。
ギチギチギチギチギチギチぃぃぃ!! Karenが締め上げるごとに、レザー戦闘服が音をあげる。
「出来上がりですわ♪腕は極められ、首は私の太股が蛇の様に絡み付いて、挙げ句に、レザー製パンツですから、呼吸すら出来ないんじゃありませんか?ウフフ、、、」
犯人役は懸命にKarenが作り上げた三重苦から逃げようとするが、出来ない。更に、Karenのこの「極め方」は完璧といえる。身動き1つ取れない上に、声1つあげる事も出来ない。これが訓練でなければ、俺は、、、、、
「、、、、、くっ、、、、、くっ、、、、、、」
犯人役は急速に体力を奪われて行く。
綺麗に技が入り過ぎているのだ。
「どうあがいても無駄ですわよ♪「暗闇」で露出が多い方が近接戦闘の際には向いてるんですのよ?たとえば、、、、
Karenは男の首に巻き付けた豊満な太股に一気に力を入れた。
ぎゅううううううううううううううううううう!!!!
犯人役の意識が一気に遠のく。
Karenは自分の技がどのように相手に掛かっているのか「目視」で確認しながら技を調整しているのだ。月明かりが、Karenの腕や太股を僅かに照らし、彼女はそれを見て、犯人役を地獄へと誘う。
「私の太股のお味はどうです?今、頸動脈を締め上げて差し上げましたけど、私のレザーパンツで涎ダラダラ垂らしながら、ゆっくりと<窒息>したいです?それとも、、、、、」
ぎゅうううううううううううううううううううう!!!!!
「こんな感じで一瞬で極めて差し上げましょうか?あらあら、仕方のない人ですわね。私のレザーパンツに涎垂らし過ぎですわよ?フフフ、お仕置きですわ♪」
ボキッ!!!!!
と先ほどから極められていた右腕の関節を折られた。
「!!!!!!!!っ、、、、、!!!」
激痛が右腕に走るが、声を上げる事が出来ない。Karenのレザーパンツに鼻も口も完全に塞がれているからだ。
「あはははは!!そんなに、私の中でお声をあげないで頂けます?不愉快ですわ。それでは、ごきげんよう♪」
そういうとKarenは、首を拘束するように巻き付けていた太股を、一度天高く伸ばし、その両脚を交差させた。
ぎゅううううううううううううう!!!!!!!!!!
「また、今度。じっくり遊んであげますわ♪」
ぎゅうううううううううううううううううううううううううううううう!!!!
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後日談
後日談
訓練終了後、今回の訓練がどのようなものであったが検証された。
犯人役の俺と暗殺者役のKarenにはそれぞれ個別にGPSが付けられていた。会議室のスクリーン上には、俺つまり犯人役を表す青い矢印と、Karenを表す赤い矢印が映し出されていた。
青い矢印はいわゆる「軍事訓練」で行われるようなセオリー通りの進み方をするのに対して、赤い矢印は縦横無尽にスクリーン上を高速で移動した。そして、あっという間に青い矢印を発見したかと思うと、赤い矢印は、青い矢印を先回りする形で移動しはじめた。
一般人の目に触れず、かつ効率的に相手を制圧出来る位置を探していたのだそうだ。本部は公園内で「暗殺が効率的に行える推奨場所」は合計で3つあったのだそうだが、Karenはそれを全て無視した。
というのも、彼女は部隊における「幹部候補生」で「推奨される場所以外での制圧」、「犯人役、一般人が絶対に通らない<完全な安全地帯>に5つのブービートラップの設置」など、様々な「条件」が付けられていたそうだ。
通常の小隊レベルですら1時間で、この任務全てを遂行する事は難しいだろう。
彼女になら、、、 嫌、そういう考えはやめよう。「生き残る」ために俺も強くならなければならない。