卓球部
卓球部に正式入部が決まり、筋トレの日々が始まって1週間が経った。どの部活でもそうだが、最初の1ヶ月くらいは道具にも触れさせてもらえず、ボールを打ち合う先輩を見ながら筋トレに励む。
卓球部は僕の高校では数少ない男女で一緒に行う部活動だ。キャプテンの石田るみ先輩は男子選手にも負けないほどの強さで、なにより笑顔が可愛らしい先輩だ。僕を含め、1年生の男子の憧れの存在だった。
今日は先生が出張だ。いつもの監視の目が無いためか、筋トレ中は少し気が緩んでいるように見える。
腕立て伏せの最中て事件は起きた。
隣にいた相川一郎は、ヒザをついて腕立て伏せをしていたのだ。先生が居ないので問題ないと思ったのだろう。
「そこ!なにしてんの!」
るみ先輩が怒鳴りながら相川君の胸ぐらを掴む。
「す、すみません…ヘヘ…」
真剣な表情のるみ先輩とは相反し、相川君は笑いながら言った。
「ハァ…1年生集合!」
慌ててるみ先輩と相川君の周りに集合する。
「今からみんなに見せたいものがある。ここで待ってなさい。」
クールなるみ先輩もかっこよくていいなぁ…などと思いながら、待っていた。
部室から帰ってきたるみ先輩は、手になにか持っている。
卓球のラケット…のようには見えるが、少し面が大きく、どちらの面も木目が見え、硬そうだ。
卓球のラケット…のようには見えるが、少し面が大きく、どちらの面も木目が見え、硬そうだ。
「君名前は?」
「あ…相川です…」
震えながら答える。
震えながら答える。
「そう。みんなよく聞いて。ウチの部では、私がキャプテンになってからサボりは絶対に許さないことに決めたの。この相川っていう子は腕立て伏せをサボっていたから、私がこの手で処刑する。」
1年生の間に緊張が走る。
「相川、そこの壁に手をついて、お尻突き出して。」
もう何をされるのかはみんな分かっていた。
指示の通りにお尻を突き出した。
るみ先輩は相川君の背中に手を置き、先程持ってきた道具を大きく振りかぶり、右尻を思いっきり打った。
パンッという音が体育館中に鳴り響き、部員全員がこちらに目を向ける。
先輩達は哀れむような目で相川君を見る。るみ先輩によるこの処刑がどれだけ痛いのか知っているからだろう。
先輩達は哀れむような目で相川君を見る。るみ先輩によるこの処刑がどれだけ痛いのか知っているからだろう。
相川君はあまりの痛みに立っていられなくなってしまった。
「これが私たちが処刑と呼ぶもの。処刑の回数は何をやったかにより変わって、例えばこの子みたいに練習をサボったら50発、遅刻は80発、無断欠席は100発が基本。他にも声を出していなかったり準備や片付けをいい加減にしていたりした人は10発以上の処刑を言い渡すこともある。」
1発でも相川君があんなに痛がっていた処刑を何十発も…?僕は怯えていた。
「さらに、半分の処刑が終わったらズボンを脱いでもらい、7割の処刑が終わったらパンツも脱いでもらう。」
るみ先輩は淡々と説明する。
「もちろん、処刑の免除はない。男子も女子も、容赦なく執行するから覚悟しなさい。もし逃げたら翌日、倍の数の処刑を初めからパンツを下ろした状態で行う。わかった?」
「…」
1年生は誰も反応しない。
「返事!全員処刑されたいの?」
「はい!」
恐ろしい部活に入ってしまったと思いながら、返事をした。
「じゃ、ズボン下ろした状態の処刑もやってみるか。相川、ズボン下ろせ。」
相川君は困惑している。高校生にもなって人前でズボンを脱ぐなど、恥ずかしくてできない。
るみ先輩はズボンを無理やり脱がせ、2発目の準備をする。
パァァン!
勢いよく振り下ろされた道具が、今度は相川君の左尻に命中し、さっきよりもさらに大きな音が鳴り響く。
相川君の目には涙がこぼれている。
「もうわかるよね?次はパンツも下ろせ。」
これはさらに躊躇っている。周りには同級生の女の子もいる。
「言い忘れたけど、私の指示に従わない場合は処刑回数が5回追加されるのよ?」
そう聞き、周りの目など気にしているどころではないと思い、先輩の指示通りパンツを下ろした。
既に受けた2回の処刑で、相川君のお尻は真っ赤に腫れていた。
それでももちろん容赦なく3発目を打ち込まれる。
バシイイイン!!
1度目の処刑で赤くなっていた右尻が、もっと赤く腫れ上がっている。
「もうズボンまで履いていいよ。」
るみ先輩の許可を聞き、急いでパンツとズボンを履く。
「まあこんな感じ。実際の処刑は部室で私と2人きりで行う。処刑の痛みは休憩時間に相川から聞いといて。それから相川はあと47発の処刑が残ってるから、部活が終わったらすぐ部室に来るように。」
「はい…」
処刑を終えたるみ先輩は、再び練習に戻り、他の先輩と笑顔で打ち合っている。あんなに可愛い先輩がこんな恐ろしい処刑をするなんて…
僕たちのそばには処刑に使う道具が置かれている。
この道具で今まで何人もの、いや何十人もの部員たちがるみ先輩の手で処刑され、絶望してきたのだろう。
この道具で今まで何人もの、いや何十人もの部員たちがるみ先輩の手で処刑され、絶望してきたのだろう。
部活が終わり、相川は俯きながら部室に向かった。
部室の近くを通ると、るみ先輩の回数を数える声、聞くだけで痛みを感じるような強い打撃音、そして相川君の悲鳴が聞こえてくる。
相川君は2、3週間、座って授業を受けることができなかった。
僕もいつかこんな目にあうのだろうか。