「あの…リュウさんですよね?」
立場上、様々な猛者から挑戦を受けてきたリュウだったが、格闘の世界とはおよそ無縁に思える可憐な女子高生から声をかけられ困惑していた。
「確かにそうだが、君が俺に何の用だ?」
「あたし、リュウさんに憧れてストリートファイトを始めた春日野さくらって言います!よろしかったらお手合せお願いできませんか?」
満面の笑みでそう話すさくらとは対照的に、リュウはますます困惑せざるを得なかった。
(俺に影響されてストリートファイトを始めた?手合せをしたい?いきなり何を言いだすんだこの娘は…)
長年の経験から見かけで相手の実力を判断することは愚かだと既に知っていたリュウではあったが、どう考えても目の前の華奢な少女が自分と渡り合えるとは思えなかった。
少女が自分や他の格闘家達のような厳しい修行を積んでいるとも到底思えず、若さから来る無知ゆえに格闘を軽んじているのではないかとさえ感じられた。
「君、自分の言っていることの意味が分かっているのか?厳しいことを言うようだが格闘の世界は君の思うほど甘くないぞ。」
口調はあくまで優しいものであったが、リュウの言葉には拒絶、嫌悪の念が少なからず込められていた。
「えっ…?リュウさんって申し込まれた挑戦は必ず受けてくれるって聞いてたのに…」
「それはあくまで対戦するに値する相手の場合だけだ」
先程まで笑顔だった少女の顔が失望感で曇る。
「わかったら帰るんだな、俺は修行で忙しいんだ。子どもの遊びに付き合っている暇はない」
リュウは吐き捨てるようにそう言うとさくらに背を向け歩き出した。
「酷い…そこまで言うこと無いじゃない!」
泣き出しそうな顔でさくらが叫ぶと、リュウの背中に一瞬だがぞくっとするようなプレッシャーが圧し掛かった。
(な、なんだ今の威圧感は…!?)
「本当に尊敬していたのに、こんな人だったなんてガッカリです」
「こうなったら意地でもあたしの力を認めさせて、見くびったこと後悔させてやるんだから!」
リュウは無意識の内にさくらの方に向き直り、構えを取っていた。
さくらは当初胸を借りるつもりでいたが、無下に扱われたことで最早リュウを打ち倒したいという気持ちに変わっていた。
「行きますっ!」
言うが早いか、ダッシュで距離を詰めると素早いパンチを連続して繰り出すさくら。
リュウは思わぬスピードに面食らい、防ぎきれずに数発の被弾を許してしまった。
一手遅れて反撃に転じたが、既にさくらは間合いの外に逃れていたためリュウの攻撃は空を切った。
「ぐっ…この連撃、そしてフットワーク、思ったよりやるな。だが技に重さが足りないぞ?」
(ふぅ…やはり先程の凄まじい威圧感は気のせいか…)
「ならこれでどうですか!?」
両手を引き、腰の辺りに構えるさくら。
その両手の間に青白い光が徐々に集まっていく…
(ば、ばかなっ!!?)
リュウの顔色が変わる。
「いっけぇ~!!波動拳っ!!」
巨大な気の塊がさくらの両手から放たれ、大気を震わせながらリュウの方へと突き進む。
「はっ、波動拳!!」
ギリギリのタイミングで自らも波動拳を放ち、何とか直撃を防いだリュウ。
しかし咄嗟のことで十分に気を練ることができなかったので、全ては相殺しきれずにダメージを受けてしまった。
「う…うぐっ…」
(まさか波動拳を撃ってくるとは…!!)
厳しい鍛錬の末に身に付けた自身の必殺技を、あろうことかこんな小娘に真似されるとは思いもよらなかった。
肉体的なダメージよりも精神的なものの方が今のリュウにとっては大きかった。
「どーですか♪ビックリしました?」
リュウがダメージを負ったのを見て、腰に手を当てた得意げなポーズで嘲るさくら。
「ど、どうやってこの技を身に付けた!?」
余裕の無い表情でリュウが問うと、
「どうって、あなたのストリートファイトを見て真似しただけですけど…?」
事も無げにそう答えるさくら。
「何だと!?見ただけで覚えたというのか……嘘を付くなぁ!!」
認め難い言葉に思わず語気を荒げるリュウ。
「何怒ってるんですか?さっきまで余裕綽々って感じだったのに、ヘンなの~♪」
さくらはリュウを指差しクスクスと笑った。
「舐めるなぁー!!!」
見ただけで技を真似したなどと、自身の積んできた辛く厳しい修行の数々を小馬鹿にするような戯言を許すわけにはいかない。
リュウは怒りに任せ猛然とさくらに襲いかかった。
格闘家としてのプライドを守るために。
だが……
「うおおおおっ!!」
リュウの繰り出す技は些か冷静さは欠いていたものの、どれも鋭く、それでいて重いものであった。
しかし、さくらは天性の反射神経と身のこなしで難なくそれをかわし続ける。
「熱くなりすぎて見え見えです。それじゃあいつまでやっても当たりませんよ?」
「くそぉ…当たれぇっ!!」
「だからぁ~、そんなに力込めて撃っても当たんなきゃ意味ないってわかんないんですか?」
空振りをして隙を晒したリュウにわざと“当てるだけ”の攻撃をしてみせるさくら。
格下だと思っていた相手に手玉に取られ、アドバイスとも挑発とも取れる台詞まで許す始末。
リュウは次第に焦りを感じ始めていた。
ひょっとするとこの少女は自分を凌駕する才能の持ち主なのではないか?
波動拳を見ただけで覚えたというのも事実なのでは…?
「なーんかリュウさんって思ってたより全然弱くてつまんな~い」
(認めん…俺は認めんぞ!!)
「さっきもガッカリさせられたし、もうあたしの方が強いの分かったから用済みですねっ♪」
(努力を伴わない強さなど俺は決して認めん!!)
「それじゃあさようなr『ウゴォォォォオオオオオオ!!!!!!』」
さくらがリュウに背を向け歩き出そうとした、まさにその時であった。
突如、野獣のような咆哮が響き渡り、人のものとは思えぬ気配が周囲に広がった。
さくらが驚いて振り返ると、そこには殺意の波動を身にまとい修羅のごとき姿へと変貌したリュウがいた。
「ウゴォ…認メン……殺ス…貴様ヲ………殺ス……!!!」
「え、何これ…?」
さくらの才能に対する嫉妬、怒りによって、眠っていたリュウの殺意の波動が目覚めたのであった。
「…死ネェ!!!」
リュウは脚を高く振り上げると、その踵をさくらへ目掛けて凄まじい勢いで振り下ろした。
「きゃっ!」
間一髪で飛び退いて直撃は避けたが、リュウの踵落としは大地を揺るがす程の威力があり、さくらは思わず尻餅を突いた。
「逃ガサン……」
リュウは倒れて動けないさくらに止めを刺すべく、両手に邪悪な気を溜め始める。
「消エ去レィ…!!滅殺豪波動ッ!!!!」
「…っ!?」
リュウの両手から殺意の波動の塊が放たれると轟音とともに辺りは紫色の閃光に包まれた。
光がおさまり、巻き上がった粉塵が晴れるとさくらの居た場所には跡形も残っていなかった。
「フ…実ニ…脆イ………」
「フフ…フ……ファーッハッハッハッハァァアアアーーーッ!!!!!」
憎き相手を眼前から消し去ることに成功したリュウは狂ったように笑い出した。
「愚カ者メ!是、我ヲ虚仮ニシタ報イゾ!!!ハッハッハ……」
と、その時であった。
「ハァーーッハッh『ずいぶん楽しそうだねぇ~♪何か良いことでもあったの?』」
「何ィイッ!!?」
どこからともなくさくらの声が聞こえ、キョロキョロとその姿を探すリュウ。
「こっちだよ~」
「ムウッ!?上カ!!」
しかし気づいた頃には既に遅く、上空を見上げたリュウの顔にさくらの両足が深々と突き刺さる。
「ウッガァァアアアアアアア!!!!!!」
「ごめんごめん、ちょっと痛かった?でもそんなに叫ばなくても…」
耳を塞ぐようにしながらそう話すさくらは全くの無傷と言っていい状態だった。
なんと、さくらはあの絶体絶命の状況ですら冷静な判断と類稀な能力で易々と切り抜けてしまったのである!
まず、倒れて無防備な状態かに見えたさくらは、リュウに悟られないように身体を使い死角を作り、波動拳を撃つ準備をしていたのである。
さらに、リュウの滅殺豪波動は自分の波動拳では相殺しきれないと瞬時に理解した上で、溜めていた波動を相手では無く地面へ向けて発射。
その噴射の力を利用して跳躍、ギリギリのところで滅殺豪波動を回避したのである。
さらにその位置エネルギーを無駄なく使い、油断していたリュウに深手を負わせることまで成功した。
本人に自覚があるかはさておき、最早彼女は紛れもなく格闘の天才と呼ぶに相応しかった。
「ふぅっ、ちょっと危なかったけど、まっ こーんなトコだねっ♪」
「オノレェ……オノレェエ…!!!」
顔を血に染め、肩で息をしながら、なおもさくらへ向かって行こうとするリュウ。
「ちょっとぉまだやるのー?しつこいと嫌われるよ?」
「コノ恨ミ…晴ラサデオクベキカ」
さくらの痛烈な蹴りを受けて一時萎えていたかに見えた殺意のオーラが、再び禍々しく燃え上がった。
リュウの身体がゆらりと揺れたかと思うと、音もたてずに片足立ちの姿勢のままさくらへと接近して行く。
(何?この殺気…今までと違う!!)
その妖しい動きとただならぬ殺気を警戒し、さくらは集中力を高めた。
さくらを間合いの中に捉えるとリュウの目が不気味な光を放った。
「一瞬千撃!!瞬!!獄!!殺!!」
発動すると暴走した殺意の波動に飲み込まれ、制御する術を持たない場合発動者自身が力尽きるまで絶え間なく拳を撃ち続けると言われているあまりにも危険な奥義。
“諸刃の剣”などという生易しいものではなく、まさしく死を賭して放つ究極の大技、それこそが瞬獄殺である。
リュウは最早、自分の命と引き換えにさくらを道連れにする覚悟であった。
しかし…
「キェェェエエエエイッッ!!!!!!」
(速いっ!?けど…っ!!)
なんとさくらは、暴走して人智を越えたスピードで放たれる無数の拳をブロッキング、パリング、ヘッドスリッピング、ダッキング、ウィービングなどの防御技術を駆使し、全く無駄のない動きでいなし続けた。
さくらはそれらの技術を過去に誰かから教わった訳では無かったが、直撃を許せば即ち死につながる極限の状況下で、最も効率的な防御、回避の方法を瞬時に学び、そして実践しているのであった。
本人にしてみればいつものことに過ぎなかったが、リュウを含め他の格闘家達がそれを知ったらその才能への嫉妬と自らへの無力感で発狂するか、廃人になってしまっても何ら不思議では無かった。
「ウルォォオオオァアアアアア!!!!!!!!」
「あははっ!これこれ!これですよリュウさん!!」
一瞬でも気を抜けばたちまち暴風雨のような拳の連撃に飲み込まれ命は無いであろう切迫した状況にもかかわらず、さくらはそのスリルを存分に楽しんでいた。
「あたし、こんな戦いがしてみたくてストリートファイトを始めたんです!!」
「グハァアアアアアアオオオオォォォ……!!…ッ!!!!」
一方が拳を放ち続け、もう一方がそれを捌き続ける。
実際の時間にして見れば一瞬のことであろうが、超高速の中にいる二人にとっては決して短くない時間が経過した頃、徐々に均衡が崩れ始めた。
異常が生じたのはリュウの方だった。
「ゴハァッ!!…ウォォオ……」
やはり殺意の波動を制御しきれず、あまりの速度に身体がついて来れずその肉体は崩壊し始めていた。
そして肉体のダメージに伴い拳の切れも徐々に衰えつつあった。
「もうバテ気味ですか?リュウさん。あたしはまだまだ行けますよ!」
最早このままの状態でもリュウが自滅することは明らかだった。
「ウググ…死ニダグ…ダイ……」
(お、俺はこのまま殺意の波動に飲まれて命を落とすのか…?)
「イ…嫌だ……ジにダグだい…死ニダぐない」
「んん?もしもーし、さっきから何言ってんですかぁ?」
「う、うわぁああ!!しっ、死にたくねぇよおおおお!!!!」
あろうことか、死への恐怖がリュウの理性を再び呼び覚まし、殺意の波動に囚われた状態を脱したのであった。
つまり、リュウは命と引き換えに発動したはずの瞬獄殺を、死を恐れるあまり中断したのである。
結果的に命は助かったとは言え何とも情けない話である。
「プッ、何それぇ?おっかしーいw」
リュウは暴走していた自覚がないのか、状況が上手く飲み込めない様子である。
「コワい顔して襲いかかってきたと思ったら今度は泣きながら命乞い?アッハハww」
さくらの言葉でリュウは自分が涙を流していることに気付いた。
そして次第に暴走していた時の記憶が蘇り、敗北感と羞恥心で思わず俯くリュウ。
「あのさー、あんたあたしが最初に挑戦申し込んだ時なんて言ったか覚えてる?」
リュウはハッとした顔をしたが、何も言い返せずにまた俯いた。
「あたしじゃあんたと戦うに値しないから帰れとか言ってたよね?」
「うぅ…」
「それがこの有り様でしょ?笑っちゃうよねー♪」
「ああ……ぁ…」
「ヘンテコな力まで使った挙句にたかが女子高生に負けるなんてどんな気持ち?」
「ゆ、許してくれぇ…」
「うーんどーしよっかな~♪」
イタズラっぽい笑みを浮かべてわざとらしく迷う仕草をしてみせるさくら。
その表情は先程まで見せていた超人的な身体能力とは裏腹に年相応の可愛らしいものであったが、今のリュウにとっては恐怖の対象でしかなかった。
本人も気付いていなかったが、さくらには敗者をいたぶるサディストとしての性格が眠っていたのだ。
そしてリュウが対戦の直前にさくらから感じたプレッシャーの正体はこの“S性”の片鱗だったのだ。
「じゃあまずはあたしを見くびったことに対して土下座して謝って」
その要求はリュウにとって屈辱的なことは間違いなかったが、身も心も既に打ちひしがれている彼にとってはそれで許されるのであればむしろ有り難いとさえ思えた。
「す、すまなかった…この通りだ…」
「“許して下さいさくら様”でしょ?」
冷たい声でさくらが言った。
「ゆ、許してください…さくら様…」
リュウは額を地面に擦り付け必死に謝った。
(…………何だ?何の反応もないぞ…?)
土下座の姿勢のまま幾らかの時間が経過したが、何も起こらないことにリュウが不安を覚え始めたその時だった。
「ムグぅぅうッ!!?」
突然後頭部に重みを感じ、そのショックと地面に鼻を強打した激痛で目を白黒させるリュウ。
そしてその重みがさくらの足裏によるものだと気付くのにそう時間はかからなかった。
年下の女子高生に敗北し、頭を踏まれているという耐え難い現実に再び涙を流すリュウ。
「いぇーい♪」 パシャッ
シャッター音が聞こえたが、最早さくらの足を払いのけて起き上がる気力すらリュウには残っていなかった。
「良いもの見せてあげる」
さくらがかがみ込んでリュウに見せたスマホの画面には、弾けるような笑顔でピースをするさくらと、その足下に這いつくばる惨めな自分の姿が鮮明に映っていた。
傷一つ無い天使のような笑顔と、血と涙に汚れた醜悪な顔のコントラスト、そしてその醜い顔を踏みにじっている、スカートからすらりと伸びた健康的な脚が芸術的にすら思えた。
思わず見惚れてしまい、ハッとして唇を噛み締めるリュウを尻目にさくらはスマホをいじり、今度は音声を流し始めた。
『す、すまなかった…この通りだ…』
『“許して下さいさくら様”でしょ?』
『ゆ、許してください…さくら様…』
「フフッ♪あんたの名声もこれでもう終わりね~」
(これは悪い夢だ。そうだ。そうに決まってる)
リュウは自分の直面している現実から何とかして目を背けようと、目を閉じ、耳を塞いで貝のようにうずくまった。
その姿はあまりにも無様であり、誇り高い格闘家としての風格は見る影も無かった。
「こらっ!ちゃんと認めなきゃダメでしょ?」
さくらは足を使って無造作にリュウの体を仰向けに倒すと、顔を跨ぐように立った。
リュウが恐る恐る目を開くと、自分を打ち負かした女子高生のスカートの中が視界を支配していた。
「ぅおお…お…!!!」
幼き頃から修行のみに明け暮れて来たリュウにとっては、その光景はまさしく衝撃的なものであった。
訳もわからず、身体の痛みすら忘れて震える腕を必死に伸ばすリュウ。
「触んないでっ!!」
バキィッ!
「うぎゃあ!!!?」
リュウの手があとわずかでさくらのショーツに届く位置まで迫った矢先、鋭い蹴りがリュウの顔面を襲った。
「さっきまで瀕死だったのに急に元気になっちゃって…まさか何回りも年下の小娘にコーフンしちゃったの?」
そう言いながら小悪魔のような笑みを浮かべリュウの顔をグリグリと踏みにじる。
「ウギギ……」
「悪いけどあんたみたいによわっちい男に迫られても迷惑なだけなの」
ベキッ!
「何が真の格闘家よ…聞いて呆れるわ?」
ボゴォ!
様々な言葉で罵倒しながらリュウの顔面に蹴りを放ち続けるさくら。
最早リュウの意識は朦朧としていたが、その痛みによりこれが悪夢などでは無く現実であるということは否応なく理解できた。
(うう…俺は…俺は一体どうなってしまうんだ……)
「ウッ…ウヒヒヒヒ…w」
突然奇妙な笑い声を発し始めたリュウ。
さくらが不思議に思いリュウの身体の方に視線を向けると、すぐに異変に気が付いた。
「あっれぇ~?」
なんとリュウの股間が胴着の上からでもはっきりと分かるほど異様に膨らんでいるのである。
「悔しさを通り越して気持ち良くなっちゃったのかな?」
「ヘヘ…ヘヘヘッw」
さくらの言葉は決して的外れでは無かった。
耐え難い現実から逃れるために、苦痛を快感へと転化させることで何とか自己防衛をはかったのだ。
もちろんそれはリュウが意図して行ったことではなく、動物的な本能がそうさせたのだろう。
「弱い上に変態だったなんてホント救いようのない男ね。ほんの一瞬でも憧れていたことが恥ずかしいわ」
汚らしいものを見下すような眼つきとともに侮蔑の言葉を浴びせるさくら。
その言葉に反応してリュウの股間がますます膨れ上がる。
「アッ…アッ…もっと…もっと……」
うわ言のようにそう繰り返すリュウ。
「ダメね…もうあんたに用は無いわ」
まるで壊れたおもちゃに興味を無くしたかのように冷めた声でそう言うとさくらは大きく脚を振りかぶり、今にもはち切れんばかりなリュウの股間目掛け強烈なキックを見舞った。
「ッ!!!!!!!!!!!!」
苦悶とも快楽ともつかない何とも言えぬ表情を浮かべ硬直するリュウ。
キックの威力で胴着の前がはだけ、怒張したペニスの先端が露わになった。
次の瞬間、大量の白濁した液が下品な音を立てながら噴射された。
ドビュルビュルルッ!!!ビュッビュルルルルルルッーーー!!!!!!
リュウは普段から禁欲的な生活をしていた故に、溜まりに溜まったその精液の量は尋常では無かった。
しかしそれほどの量の精液が辺り一面にばら撒かれたにも関わらず、さくらの身体にはただの一滴もカスりさえしていなかった。
結局リュウはさくらの身体に痣を付けるどころかセーラー服を汚すことさえ叶わなかった。
「さようなら。二度と会うことも無いでしょう…」
ピクピクと瀕死の虫のように痙攣するリュウを冷たい眼差しで一瞥すると、さくらはその場を後にした。
その後リュウが息絶えたのか生存したのかは定かではないが、さくらの撮影した画像と録音した音声はネット上に公開され、リュウの格闘家としての名声は瞬く間に地に落ちた。
そして一方でさくらはリュウを倒した若き女性格闘家として注目を浴び、名実ともに最強の格闘家へと成長を遂げていくのだった。
仮にリュウが生きながらえていたとしても、人目を避け、さくらの威光に怯えながら惨めな負け犬としての人生を送っていることは想像に難くない。
そして一方でさくらはリュウを倒した若き女性格闘家として注目を浴び、名実ともに最強の格闘家へと成長を遂げていくのだった。
仮にリュウが生きながらえていたとしても、人目を避け、さくらの威光に怯えながら惨めな負け犬としての人生を送っていることは想像に難くない。
~完~