大好きな彼女
のどかな日曜日の昼下がり。
私の膝の上で規則正しい寝息を立てている恋人の顔を見つめながら、優しくその頭を撫でる。
平沢唯。私の、大好きな恋人。
恥ずかしがり屋な私を、可愛いと言ってくれた。私の書く歌詞を、好きだと言ってくれた。
私が緊張してどうしようもなくなった時には、必ず励ましてくれた。
ありのままの私が好きだと言ってくれた。
ちょっと天然でだらしないけど、いつも全力で一生懸命で、どんな時でも光り輝いてる。
そんな唯に、私はずっとエネルギーを貰って来た。
唯のおかげで、私は少し自分に自信が持てるようになった。自分を好きになれた。
どんなにお礼を言っても言い足りないくらい、どんなに頑張って返そうと思っても返しきれないくらい沢山の物を、唯は私に与えてくれた。
「……唯、私に出会ってくれて、本当にありがとう」
ふと、呟きが漏れた。恥ずかしくてとても本人に面と向かっては言えない、私の心からの気持ち。
そんな想いを込めながら唯の頭をゆっくりと撫で続ける。
その栗色の髪の毛から漂う優しくて甘い香りが、私の鼻腔をくすぐる。
幸せな時間。
「っ!」
一瞬、唯の体が小さく揺れた。慌てて手を離す。
「……」
少し様子を見たが、膝の上の少女は何も変わることなく寝息を立て続けている。
安心して、再び唯の髪に手を伸ばそうとした、その瞬間
「――えーいっ!!」
「えっ、うわっ」
突然起き上がった唯に、思い切り抱きつかれてしまった。優しい温もりが、私の体を包み込んでいく。
気持ち良い――って、違うっ!
「ちょっと唯っ、起きてたのっ!?」
「えへへ。私も澪ちゃんに出会えて嬉しいよ~!」
「なっ、き、聞いてたのかっ……」
みるみる内に頬が紅潮していくのが自分でも分かる。どうやら、先ほどの呟きは聞かれてしまっていたようだ。
「私が寝てる間に澪ちゃんが何してるのか知りたくて途中から寝た振りしてたんだ~! 澪ちゃん、ずっと私の頭撫でててくれたね。気持ちよかったっ~」
「なっ、もっもうっ! 何言って……」
狸寝入りしていたことを怒ろうとするのだが、恥ずかしさと気持ちよさで頭が上手く働かない。
一旦頭を落ち着かせるためにとりあえず何とか唯を引き剥がそうと努めるも、両腕でがっしりと体を掴まれてしまい身動きがとれなくなってしまっている。
「ちょっと唯、はーなーせー」
「やだー! 澪ちゃんだーいすき!」
「――っ!」
その言葉に、体中の力が抜けてしまう。きっと今、私の顔は茹ダコのように真っ赤になってしまっているだろう。
仕方ない。諦めて唯に体を委ねよう。そもそも今までこういう状況になって唯に勝てた試しがないのだ。
「えへへっ、澪ちゃん、ずっとずっと一緒にいようね!」
眼前にあるのは、これまで何度も私を元気付けてくれた、愛しい唯の笑顔。
その笑顔につられて、思わず私の顔もほころんでしまう。
「あ、澪ちゃんやっと笑った~」
唯が笑うから、私が笑う。
私が笑うから、唯が笑う。
――永遠に続いて欲しい、かけがえのない時間。
おわり
参考曲は、奥華子さんの『魔法の人』(http://www.youtube.com/watch?v=00q9xVXp4FI&feature=related)なんだけどあんまり関係なくなってる気もしたり。
初出:3->>739
- 永遠に続いて欲しいなぁ…。 いや、続くよな。 -- (名無しさん) 2011-02-07 00:21:18
- あんた…丸くなったな… -- (名無しさん) 2011-02-13 19:44:34
- いい....すごくいい...!! -- (名無しさん) 2011-08-04 20:50:49
- 唯澪最高 -- (名無しさん) 2015-09-19 09:52:32