概要
戦闘に至るまでの背景
アーズ国との戦いで父を失い、没落した状態となった
セルカティーナ。彼女に残されたのは、いまだ忠誠を誓う
アスハ、
ファリミス、そして幼馴染の
キリィの3人だけとなっていた。この頃彼女は、
アトレティア国の実質上の支配者となっている
ジルダーの元へ流れ着き、客将として日々を過ごしていた。しかし、自身の実力を見せ、立場を強化するため、
マドリアル国攻略戦への参加を嘆願する。
この進言には誰もが耳を疑った、
セルカティーナは、私財を投げ打っても、せいぜい数百の傭兵を数日雇える程度の兵力であり、
マドリアル国は、
アトレティア国本土のすぐ近くにありながらも、自然の要害に守られて、山脈に守られている為、艦隊も近づけず、これまで何度も
アトレティア国に攻撃されながらついに陥落しなかった難攻不落の土地である。
「参戦のご許可を頂いただけではなく、私の我侭を聞いて頂き、本当にありがとうございます……このセルカティーナ、言霊を契約として成し遂げてみせましょう」
セルカティーナはそういい残して出陣した。
ジルダーは、彼女が何かしらの勝算があると考え、
ガザデルー、
シゴラ、
バリナ、
シャラ達主力部隊とは別行動をとらせ、自由な行軍の許可を与えた。
ただし、
マドリアル国は国土の大半が凍土地帯であり、占領しても利点が無い国であったこともあり、
アトレティア国が本気で過去マドリアル国に何度も兵を派遣していたのかは疑問が残っている。
この戦いがあったこと、
セルカティーナがこの戦い後、相当の褒美を貰っていることから活躍していることは事実だが、「何度攻めても攻略できなかった難攻不落のマドリアル国を、セルカティーナの働きで落とした」というのは後世の誇張であり、「今まで相手にしていなかったマドリアル国攻略を本気で実行したとき、ちょうどセルカティーナがアトレティア国に来ていた」と考えるのが妥当という説もある。
両軍の戦力
戦闘経緯
マドリアル国は、東は断崖絶壁に囲まれ、西は入り組んだ山脈が防壁となっている。最西部の広大な平原は既に
アトレティア国軍が占拠しているものの、ここは荒れた平地で作物が取れるわけでもなく、元々無人の平原であった。
過去に何度か
アトレティア国軍が首都を目指したが、この平地に軍勢を集結させ、西側から攻め込み、天然の要塞の前に敗退を繰り返していた。
セルカティーナは夜中のうちに船で東の断崖絶壁にたどり着くと、僅か数名でこの絶壁を上り始めた。ここはとても部隊が攻め込める場所ではなく、断崖絶壁に設置された砦は、見張りも手薄でその任務も怠慢気味だった。そこに加えてたった数人だった事もあり、
セルカティーナは発見されずにこの絶壁を上りきり、闇夜にまぎれて見張りを討ち、兵士の一人に使者の姿をさせ、「
アトレティア国軍は新造艦隊の開発に成功、これまでは艦隊の浮力で決して越えられる事のなかったこの要地に、一斉攻撃を仕掛けに来る」という偽情報を砦内に流させた。
防衛は西に集中していた為、東は手薄だったこともあり、この情報を聞いた駐屯部隊は、既に東の崖に大軍が殺到しているという情報に大混乱を起こす。
そこに崖を上りきった
セルカティーナの兵士達が攻め込む、既に相手は大兵力と勘違いしていた駐屯部隊は、相手が僅か300あまりの兵力とは思いもせず、数で勝っていながら完全に混乱し、ほとんどが戦わずして撤退していく。
数日後、本隊9000を率いて
マドリアル国軍が東の砦を奪還するべく出陣するが、
セルカティーナは既にこの地を放棄、砦は大軍がいる偽装だけを施された無人砦となっていた。
その間に
セルカティーナの連絡を受けた
ガザデルー本隊が西から攻め込み、兵力を分断していた
マドリアル国軍は、さすがの防壁でも防ぎきれず、ついに陥落する。
ガザデルーのマドリアル攻略戦が準備されるより前に
セルカティーナが絶妙のタイミングで独自の行動を行った事がこの勝利を招いた。
もし、
セルカティーナの作戦があと1日遅れていれば、
ガザデルー本隊の接近を知った
マドリアル国は、東にそこまでの戦力を割けず、また偵察も徹底した為、東の砦が無人だったことを察知したかもしれない。その場合、西の兵力は依然として篭城により
ガザデルー軍を撃退する規模であっただろう。
結果として、
セルカティーナは、僅か300の兵で、この勝利を呼び込むこととなった。
戦いの結末
セルカティーナはこの戦いで名を馳せ、
ジルダーから褒美として完成したばかりの新造
ダルスバード艦隊を授かった。また、少数精鋭だからこそ、正規軍としてではなく私兵団として自由に動くことの許可をもらい、セルカティーナ私兵軍が完成されることとなる。
最終更新:2011年04月22日 19:29