『印/骰子/奴』

シナリオ概要:現代、オーストラリアを旅行していたはずの2人ですが、突然見知らぬところに閉じ込められた状況からセッションがスタートします。2人はここから脱出出来るでしょうか?2人用クローズドシナリオです。

推奨技能:聞き耳、ナイフ、歴史、博物学などは多少助けになるかもしれません。無くても構いません。
所要時間:2時間半~3時間前後
難易度:初級者~中級者。ただしロストの可能性はあります。
こんな方におすすめ:なぞなぞが好きな人
探索者の条件:一緒にオーストラリアに旅行に行くくらいは仲のいい2人。クローズド状況からセッションスタートになるため、持ち物は持ち込めません。
PLの条件:義務教育は終えている+αの知識。





























【セッションスタート】
そこにあるのは無のみです。何もないし、何も感じません、話すこともできません。
唯一、可能なのは思うことだけです。思いますか?

【思う】
あなたが思うとそこに主体が生まれ、どこからか声が聞こえてきます。
声「自分の中から出てくるのに、今の自分の中にはないもの。それを求めよ」
ヒント:
「それは浮かぶものである」
「それは降りてくるものである」
「それは湧くものである」

《アイデアロール》(成否にかかわらず行えばOK)
「そう言えば一緒の相手がいたはずだ」ということを思い出すと、身体の感覚が戻ってきて
身体の後面には硬い平面の触感、前面には妙な生暖かさを感じ、自分たちの置かれている状況をなんとなく理解します。
あなたたちは硬質の壁でできた狭い立方体のような空間に無理な姿勢でぎゅうぎゅうに詰め込まれています。
(イラストなどでぎゅうぎゅうの状態を表示してください)

何の覚えもなく極限の閉鎖空間に閉じ込められていることを認識したお二人はSAN値チェック 0/1d6
目を開けても閉じても風景が変わらない真っ暗闇の中で、2人は自分のポケットに何か入っていることに気が付きます。

【ポケットのものを取り出す】 《DEX×5》
成功→手に入る
失敗→筋を違えてしまいHP-1、2回目以降は失敗するたびにSAN-1、

【マッチ】(先にアイデアロールに気がついた方にはマッチ、そうでない方にナイフがポケットにあります)
真っ暗闇なので、手探りでそれが何か認識する他はありません。

「それは手のひらに収まるほどの小さな2つ折りのボール紙のようです。
谷折りを開いた片方の面には短冊状のボール紙が並んでおり、短冊の先っぽには平べったく丸い何かがついています。
並んだ短冊状の根元はボール紙に繋がっていて、そのボール紙にはザラッとした手触りの横帯があります。」
(ブックマッチ、紙マッチというものです。もしPLがマジでその存在を知らなそうだった場合は、その時点で箱マッチに形を変貌させてください)

それがマッチであると認識すると、
「闇とは無知。知恵の光を灯すべし」と声が聞こえます(声は人間の内なる理性の声です)

【ナイフ】
「それは手のひらに収まるくらいの柄があり、その先には革で出来たカバーのようなものがついています。
カバーを外した下にはするどい金属製の刃がついているようです。」

それがナイフであると認識すると、
「理解できないもの、自分と異なるものは敵である。敵は滅ぼさなくてはいけない」と声が聞こえます(声は人間の攻撃性の声です)

【マッチに火をつける】
マッチは合計10本あります。なので、残り9本です。
そして、自分たちの閉じ込められている状況がもう少しわかります。

あなたたちを閉じ込めている立方体の面にはそれぞれ何か記号のような痕跡があります。
中心に象徴的な記号のようなものが描かれ、その周りには文字のような紋様が三行ずつ彫り込まれているように見えます。
マッチはもう少しで消えてしまいそうですが、立方体の面の一つを照らして見てみることができそうです。上下左右手奥手前で指定してもらってください。
(最初のマッチでわかるのは、6つの面の記号+選んだ1面の1行目です。1行目が問題文+周りを知るための指示、残りの2行がヒントです。マッチを使うたびに1行ずつ確認できます)
(イラストなどでぎゅうぎゅうの二人に加えて、壁に記号や文字がある状態を表示してください)

【6つの面】
向かって左の面 楕円のドーナツ
1行目 「ここはお前の中だが、実際は外だ。お前自身を傷つけるものを生み出し、それから守るものを作り続ける。
それは外のものを内のものにする過程」
2行目 「浮き輪もちくわは空気やすり身が詰まっている方が内側である。だから浮き輪もちくわも穴は外側である」
3行目 「傷つけるものは酸、守るものは粘液である」

 答えは「胃」です。
 正解すると、硬い壁は徐々に柔らかくなり、ところどころに皺があるぬるぬるとした粘膜の壁に変わります。そして壁の向こう側から声がします(聞き耳ロール)


上の面 偏った二重丸
1行目 「お前はここで光明を見いだす。しかし、おそらくお前がそれを見ることは一生ないだろう」
2行目 「自分の右手で自分の右手を掴むことは出来ない」
3行目 「だから光を見ている場所を自分で見ることは出来ない」

 答えは「目」、厳密には「網膜(目は鏡で見れるため)」です。
 正解すると、硬い壁は徐々に薄い膜のような壁に変わり、向こう側から声がします。
 (正解後、次にマッチをつけたときにはこの壁にはうっすらと血管が透けて見えてもよいです)


向かって右の面 同心円
1行目 「ここはお前の最も速く動かせる部位である」
続き「ここをできるだけ速く動かしてみよ。そうすればこの周りのことも少しわかるかもしれない」
2行目 「Hz」
3行目 「受信する側も同じ振動数で動くかもしれないが、そちらは自分の意志では動かせない」

 答えは「声帯」、正解すると、硬い壁は強靭な弾性を持つ靭帯状の壁に変わり、向こう側から声がします(聞き耳ロール)

 周りを知る条件は「出来る限り高い声を出す」です
 条件を満たすと、接している面とのつながりについてわかります。
 偏った二重丸の面とは特につながりを感じない。棒グラフの面とは液体の流れる脈でつながっている。4つの三角の面とは空気の通る管でつながっている。謎の言葉の面とは霊妙な働きでつながっている。


画面奥の面 棒グラフ
1行目 「ここは誰もが持っている調べを奏でる。それを知るための小手調べ。
続き「他者の調べに合わせて箱を叩けば、この周りを少し知ることができるかもしれない」
2行目 「13/52」
3行目 「調べを調べるのは小手だけではない。胸に手を当てて考えて、それがネックになるかもしれない」

 答えは「心臓」、正解すると硬い壁は徐々に拍動をはじめ、弾力のある筋肉組織の壁に変わり、向こう側から声がします(聞き耳ロール)

 周りを知る条件は「相手の脈を取り心拍に合わせて、箱を叩く」です。
 周り:楕円のドーナツ、偏った二重丸、同心円、4つの三角の面と液体の流れる脈でつながっている。


下の面 4つの三角
1行目 「ここは内と外が交わり、水と風が火を交換している。火は全ての土の中に1番多いエレメント」
続き「自らの意志で交換を止めてみれば、この周りを少し知ることができるかもしれない」
2行目 「風は外から来て、水は内を流れる」
3行目 「火を含んだ水は赤く、そうでないものは黒い」

 答えは「肺」、
 正解すると、硬い壁はゆっくり伸び縮みする柔らかい肉壁に変わり(正解後、マッチをつけるとまだら模様だとわかります)、向こう側から声がします(聞き耳ロール)

 周りを知る条件は「息を5ラウンド止める」です。しばらく窒息ロールを行うことを伝えてOKなら実行してください(CON×10から成功するたびに×9、×8、×7、×6と減らして判定する)。5ラウンドの間に窒息が起こった場合も条件成立です。窒息の場合は1d6ダメージが生じます。
 周り:楕円のドーナツの面とは柔らかい膜のようなもので隔たっている。同心円の面とは空気の通る管でつながっている。棒グラフの面とは液体の流れる脈でつながっている。謎の言葉の面とは霊妙な働きでつながっている。


画面手前の面 謎の言葉
ここをマッチで照らすと、「得吾 孤疑人 得流後 棲務」の文字が刻まれていることがわかります。
《日本語》に成功すると、これは「えご こぎと えるご すむ」と読むのではないかと思います。
失敗すると、よくわかりません。

「えご こぎと えるご すむ」が判明した後に
 《歴史》、《博物学》、《哲学に関連した技能》、《知識の1/3》のいずれかでロールして成功すると、
 これは哲学者デカルトの有名な「我思う、ゆえに我あり」という言葉であり、認識と行為遂行の主体となる自我や精神を意味しているとあなたは知っています。

【技能ロールに失敗】
 確かこれは「我思う、ゆえに我あり」という言葉だったと気がします。

そして、成否に関わらずこの面から自分を見ているような不思議な感覚にとらわれ、閉じ込められてる体が消えた状態で箱の中が表示されます。(イラストなどでぎゅうぎゅうの身体が透過もしくは消えて、箱の中全体が見えている状態を表示してください)
さらにイス人の声がします。マッチが消えると感覚は戻ります。


【正答と誤答】
問題に正解するたびにイス人の声が順番に聞こえます
(聞き耳ロールに成功すると直前の声と同じ声だったかどうか判定できます。イェクーブの声と区別するため)

イス人の声
「まったく傷つけずにここから出すのは難しい。しかし何か方法はないか」
「彼の認識は複数の肉体の感覚から出来ているようだ。そして驚くべきことに二重だ。」
「複数の機能のうちの1つを犠牲にすれば面を破って外に出ることが出来るかもしれない」
「ナイフを使え」
「彼の機能の中には重要な繋がりを持つものがあるようだ」
「逆に言えばそうでないものもあるようだ」
間違えると、間違えた答えにまつわる恐ろしい現象が闇の向こうに見えたり、探索者に起こったりしSAN値が減少します。そしてイェクーブの声が順番に聞こえます

口 闇の向こう側にたくさんの牙が生えた口があなたを犠牲にしようと数えきれないほど蠢いているのが見えます
のど のどの中に蛇がのたうつような感覚を覚えます
脳 闇の向こう側に蠢く脳みそが見え、皺の間から無数の眼球がせりだしてきます
耳 恐ろしい女の悲鳴が壁の向こう側から聞こえてきます
 などなど

正解に惜しい場合はSAN減少はなし。全然違う場合は1d6まで増やしてください。
声帯に対してのど、胃に対して腸などは0。胃に対して口と答えたら1


イェクーブの声
(聞き耳ロールに成功すると直前の声と同じ声だったか判定できます。イス人の声と区別するため)

「この中に2人でいる限りは、我々がこの者たちを外に出すことはできない」
「1人になればそいつを通常通り外に出すことができる」
「それは中にいる2人にさせるしかない」
「ナイフを使え」
「1人を殺せ」
「そうすれば出してやる」


【解決法】
立方体の面のいずれか、もしくは面と面の接している辺をナイフで切り裂くとそこから脱出することができます。
「箱のどこにナイフを使うか?」を明確に聞いてください。
煮え切らないようなら、ナイフでつついたりしても描写するのも可です。

【面にナイフを使った場合】
心臓(棒グラフの面)を切ったら死亡です。
Cogitoの面を切ったら、自我を失ってロストです。ただし、ここだけは切ると選択した後にシークレットダイスを振って、《幸運》で判定し、成功した場合「しかし、自我を失ったら人間はどうなってしまうんだろう」と不安を感じると一度危険を示唆してください。
肺(4つの三角の面)を切ったら、呼吸が出来ず、声も出せません。脱出した後に窒息ロールを適宜行ってください。イス人に会ってマッチを擦れば助けてくれます。
胃、網膜、声帯の場合はその機能を失って生還します。

【辺を切る場合】
心臓の周りはすべて動脈なので死亡です。
Cogitoの周りはつながっている先の機能が麻痺して動かなくなります。そしてイス人にも治せません。肺なら死亡です。この場合もシークレットダイスで《幸運》判定をして、成功の場合、危険を示唆してください。
肺と声帯の間は気管なので、のどにぱっくりと傷が開いて、呼吸は出来ますが声が出せなくなります。
胃と肺の間は解剖学的により正確に合間を切る必要があるので、《DEX×2》、《ナイフ》の半分、もしくは《医学-15》のうち一番高いもので判定することを伝えてから、実行させてください。失敗すると横隔膜を切り、呼吸が苦しくなりますが、死には至りません。
胃と目の間、声帯と目の間にはつながりがないので成功すればダメージを負いません。《DEX×5》、《ナイフ》、もしくは《医学》のうち一番高いもので判定します。失敗するとどちらかを”少し傷つけ”ます。少しというのは、ストレスを感じると胃が痛くなったり、少し視力が落ちたり、声が少ししゃがれる程度です。さらにイス人に治してもらえば、元に戻ります。


【イス人との邂逅】
立方体をナイフで切り裂いて脱出するとあなたたちは闇の中に巨大な自分の肉体が横たわっていることに気が付きます。次の瞬間めまいがすると、自分の肉体は消えます。
そして一辺が10cmほどの立方体が自分の足元に落ちているのを見つけます。
その立方体の一部には傷がついています。
そして、自分の「体の一部(犠牲にした部分)」に切り裂かれたような痛みを覚えます。

闇の中から立方体から脱出したことについて驚きの声がします。 そして、二人であったことにさらに驚きます。
やがて、その声は近づいてきます(【聞き耳】に成功すれば、その声が正解時に聞こえていた声だということがわかります)

「マッチを使いますか?ナイフを使いますか?」(マッチが残っていなかった場合は最後の一本ポケットに入っていたことにしてもかまいません。《幸運》で判定してもいいと思います)

【マッチを使う】
イス人の姿が顕わになり0/1d6のSAN値チェックです。
しかし、「おお、これが君たちの知性か!興味深い!」などと言って、失った機能を一部治してくれます。
ただし、イス人は「遺伝子工学は苦手だ」と言って、治った部分には変な痕跡が残ります。瞳の色が人間ではありえない色に変わったり、ロボットのような声が時々出たり、肋骨の脇にエラが付いたり、妙に胃がもたれるようになったりなどです。KPが自由に決めてもらってけっこうです。”少し傷つけ”た程度のものは治ります。

そして、イス人に治してもらった部位には探索者同士に不思議な共有感覚が生じます。遠く離れていても、相手の見ているものが時々見えたり、相手が咳き込むと自分も咳き込んだり、相手が息を止めていると自分も苦しくなったり、胃の痛みなどを共有します。

質問されれば、以下のことを答えます。
立方体は精神を取り出して、あとから肉体を入れ替える箱。
あれを使ってイェクーブという征服種族は自分たちと狙った星の住人の精神を交換して体を乗っ取り、侵略する。
自分たちはかつてあの箱を封じた。しかし見逃した一つの箱に探索者たちは囚われていた。
一つの箱に偶然にも二人の精神が閉じ込められていたため、立方体はバグを起こして転送をまぬがれていた。
自分たちは人間とは違う知性を持っている。
特に時間についてはまったく異なる認識をしている。それを指して我々を偉大なる種族と呼ぶものもいる。

帰りたいと伝えれば
「我々とは違った知性を持つ種族よ。あなた方にも敬意を払おう。君たちのおかげで我々にとっても有益なアイデアをもらった。群生する昆虫の郡知性と我々の精神を入れ替える方法だ。我々の派閥が我々の種族内で主導権を握った際には君たちとは友好的な関係を結びたいと思う」みたいなことを言って、どこかのオーストラリアの都市にテレポートさせてくれます。

無事に生還したあなたちはオーストラリアでエアーズロック、シドニーのオペラハウス、グレート・バリア・リーフ、メルボルンマーケット、セント・パトリック大聖堂、コアラ、カンガルー、タスマニアン・デビルなどをしたたかに楽しみます。
2人で旅行しているとあることに気が付きます。最後に傷つけた部位には奇妙な共有感覚が宿っているのです。
(胃と目の間、声帯と目の間はご褒美として遮断できもするテレパシーが備わっている状態です)
2人は今後引き裂き難い不思議なつながりを持って生きていくのでした。END

 SAN値回復2d6+全部(目、胃、心臓、肺、声帯、精神)を解き、痕跡が生じない脱出1d3

【ナイフを使う】
「野蛮な種族め。さっさとどこかへ行くがいい」的なことを言われて、オーストラリアの砂漠にテレポートさせられます。
(傷つけた場所は治してもらえません。場合によっては死亡するでしょう)END

 SAN値回復1d6

【箱の中で相手が死んだ場合】
「良かった!箱の中の精神が1つになったぞ」という声が聞こえ、生き残ったあなたは強烈なめまいを覚えます。
そして全身に違和感を覚えます。うまく、体を動かすことができない感じです。むしろ筋肉や神経ひとつひとつの働きそのものがすべて思い通りにならないかのようです。
手を動かそうとすると、まるでムカデの触肢のようなものが視界で動きます。
体を見てみると、それはまるでぶよぶよとした灰色の芋虫のようです。やがてあなたは自分が繊毛に縁取られた紫色の口と赤いトゲをはやした巨大な灰色の毒虫のような存在になっているということに気が付きます。
そして、自分がいる場所は地球から遠く離れた星であり、もう二度と地球には戻れないと知ります。
1d10/1d100のSAN値チェック
SAN値が残れば、この星でこの種族の支配者になることも可能かもしれませんが、それはまた別のお話。END