戦国BASARA/エロパロ保管庫

がんばれ!うじまさちゃん3

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匿名ユーザー

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夜は小太郎が一番忙しい時間だ。
城そのものは堅固だが、城主の性格を反映してか、小田原城はやたら隙が多い。
夜ともなれば、潜り込んだ他国の忍びで天井裏が抜けるほどなのだ。
今日も今日とて配下や分身を駆使して、天井裏や物置や部屋の壁やお台所の隅っこに
わさわさ湧き出る忍者を退治しながら、小太郎はふと思いついて庭に出てみた。
たまに城の宝物庫に入り込む輩もいるので、外の巡回も怠れない。
外は、相変わらずの桜の洪水だった。舞い散る花吹雪で星さえ見えない。
小田原城では星も月も雪も空も、いつも隠れている。見えるのは花ばかりだ。
薄紅色の花びらに覆いつくされた闇の中、あたりの様子を探る小太郎の耳に、
巨大門の方角から、ほんぎゃあと聞き慣れた悲鳴が聞こえてきた。
一瞬聞こえなかったふりをしようかと思ったが、そうもいかないので駆けつける。
昼間と同じ白い砂利の上に、鹿刀槍綱廣の下敷きになってうんうん呻いている
北条家当主の姿が見えた。
また家臣に黙って鍛錬していたらしい。
どうやったら自分の槍の下敷きになれるのだろう、と半ば感心しつつ見つめていると、
真っ赤な顔が下から睨みあげてきた。
ゆでだこみたいになっていても、やっぱり可愛い。
「こ、小太郎!何を見ている、ええい助けんか!」
今度はいいんですか、と思いながら、槍をどけて引っ張り起こす。へにゃへにゃと
その場に座り込んだ主に、怪我でもしたかと覗き込むと、潤んだ目がちらりと見上げてきた。
涙で濡れたその瞳は、小田原城では見えない星のようだ。
「ど、どうせお前もわしのことを、馬鹿にしとるんじゃろ!」
唐突な言葉に、瞠目して見下ろす。もっとも小太郎の目はいつも鉢金の影だ。
「わしが鍛錬しておっても、意地の悪い他国の領主どもと頑張って会談しようと
しても、みんな邪魔をしてきおる!お前もそうじゃろ!わしの邪魔をしに
きたんじゃろ!なんじゃい、ろくに口もきかんくせに!」
ぎゅうっと握られた小さな手が砂利を擦った。傷つくんじゃないかとどきりとする。
「ど、どうせわしはご先祖様には及びもつかない、駄目領主じゃ!じゃがわしなりに
国を守ろうとしておるのじゃ!なのに……」
あとは言葉もなく、座り込んだままはらはらと涙をこぼす主を、傍らに控えながら
小太郎はぼんやりと見つめた。

鍛錬をとめるのは、やたらドジッ娘なわりにたいそうな獲物を使う城主が、
すぐ怪我をするからだ。
他国と会談させないようにするのは、思考の足りない城主が流されて変な政策を
とらないようにと、他の領主から変な目に合わされないようにとの配慮からだ。
もちろん性的な意味で。
これまでの経過を考えればわかりそうなものだが、理解できずに怒るだけなんて
視野が狭すぎはしないだろうか。
この人は本当に城主に向いていない。
ついでにこんなのをいつまでも城主に据えておく北条家の人々も、本当にどうかしている。
家臣の中には、さすがに可愛いだけの城主を苦々しく思っている向きもある。
繰り返すが、可愛いだけでは戦国大名はやってられないのだ。
これでは早晩、他国の蹂躙か内部崩壊で北条家は滅びるだろう。
単なる雇われ人の身なので、口には出さないが。

玉砂利の上に、はらはらとこぼれる涙はまるで花びらのよう。
ぐすぐすと鼻まですすっていても、その姿は可憐そのものだ。
確かに考えは足りないし視野は狭いしやることは無茶だし、わがままでいばりんぼで
ついでにケチで、城主にはまったく向いてないけれど。
でもこの人なりに一生懸命なんだなあと、震える肩を見守りながらぼんやり思う。

我知らず、手が伸びた。
うずくまって泣き続ける小さな体を、思わず引き寄せ抱きしめる。
はっと息を呑む気配がしたが、細い体はすぐ、すがるように小太郎に寄りかかってきた。

はらはらと桜が舞い散る。
夜も城も空も、身分も立場も覆い隠して。

小さな衝撃とともに、抱え込んだ体が離れた。
よろよろと後ろに下がり、勢いあまってしりもちをついたうじまさに、また思わず
差し出した手が止まる。
先ほどよりもさらに赤く頬を染め、目を見開き、こちらを見つめるうじまさは、
可憐を通り越して呆れるほどに可愛らしかった。
「わ、わしは……わしは……」
首まで赤くしておろおろと辺りを見回し、ふらりと立ち上がる。
見下ろす目が、涙と困惑と情熱に熱く輝いた。
「おお、お許しくだされご先祖様ー!」
槍も放り出したまま、きびすを返して走っていく後姿を、小太郎は呆然と見送った。
どんどん小さくなる後姿。ドジっ娘のくせに、逃げ足だけはびっくりするほど速い。
静まり返った夜の庭に、はらはらと桜だけが舞い散る。
腕の中から消えていく小さなぬくもりが、何故かひどく惜しかった。

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