「…あいつは…」
「……うん?」
「あいつは確かにろくでもない馬鹿女だがな、俺はそういうとこが気に入ってる」
「…そう」
「それに」
「それに?」
「俺みたいなろくでもない男について来れるのもあいつくらいだ」
「ふふ…あんまりついてけないけどね」
「何か言ったか」
「なんにもー」
その口許に笑みが浮かんでいるのにほっと小十郎は息をついたが、そこで壁際に座りこんだまま意地の悪い笑顔の政宗に気がついた。
そういえば小十郎一人ではなかった。
そして信玄も何処からか見ているという事実にも。
すうっと血の気がひいた。
政宗はニヤニヤ笑いながら「浮気はいけねえよな浮気は」と呟いている。
信玄は無言であるが、どこからともなく「破廉恥であるー!」という叫びが。
ぎこちない動きで倒れたままの天狐仮面を見ると、仮面の奥の瞳と視線が絡んだ。
「ふふ…奥さんには内緒にしといてあげるよ…」
「…っ!!」
ひらひらと手を降ると、その姿がふっと消えた。
瞬身という術らしいが見事なものだ。
さて、どうやって三人の口を塞いで、どんな顔をして新妻に会ったらいいのか。
修行よりも困難な問題に小十郎はそっと胃を押さえた。
今ならよくこうやって腹部を擦っていた佐助の気持ちがわかるとしみじみ小十郎は思った。
「……うん?」
「あいつは確かにろくでもない馬鹿女だがな、俺はそういうとこが気に入ってる」
「…そう」
「それに」
「それに?」
「俺みたいなろくでもない男について来れるのもあいつくらいだ」
「ふふ…あんまりついてけないけどね」
「何か言ったか」
「なんにもー」
その口許に笑みが浮かんでいるのにほっと小十郎は息をついたが、そこで壁際に座りこんだまま意地の悪い笑顔の政宗に気がついた。
そういえば小十郎一人ではなかった。
そして信玄も何処からか見ているという事実にも。
すうっと血の気がひいた。
政宗はニヤニヤ笑いながら「浮気はいけねえよな浮気は」と呟いている。
信玄は無言であるが、どこからともなく「破廉恥であるー!」という叫びが。
ぎこちない動きで倒れたままの天狐仮面を見ると、仮面の奥の瞳と視線が絡んだ。
「ふふ…奥さんには内緒にしといてあげるよ…」
「…っ!!」
ひらひらと手を降ると、その姿がふっと消えた。
瞬身という術らしいが見事なものだ。
さて、どうやって三人の口を塞いで、どんな顔をして新妻に会ったらいいのか。
修行よりも困難な問題に小十郎はそっと胃を押さえた。
今ならよくこうやって腹部を擦っていた佐助の気持ちがわかるとしみじみ小十郎は思った。
終わり




