目を開けると、褥の上に寝かされていた。人の気配に顔を向けると、頬を叩かれた。
平手のような強いものではなく、子供をたしなめる父親のような手だった。
平手のような強いものではなく、子供をたしなめる父親のような手だった。
「冷やしすぎだ」
「―――……」
声が喉の奥に引っかかった。水を、と求めるが、小十郎は幸村の鼻をつまんで無理やり
口を開けさせ、薬湯の入った急須を口に突っ込んできた。水分と苦味が喉を滑り落ちる。
うつ伏せになってげっぷと咳を一通りやり過ごすと、身体を起こした。まだ身体が熱い。
酷い汗をかいているから、長く苦しむことはないはずだ。もうすっかり熱には慣れてしまった。
「ずっといたのか」
辺りはすっかり闇に沈んでいる。小十郎は悠然と胡坐を崩し、汗を拭け、と手ぬぐいを
よこした。首と胸元の汗を拭き、小十郎を見る。
「病の時は、心細いもんだろうが」
今更、と眉を寄せる。
熱を出そうと、身体を冷やそうと、小十郎は容赦しない。嫌だと泣き叫べば
より酷い方法で犯された。馬を打つ鞭で打たれ、余計な口をきくなと罵られたこともある。
酷い状態のときに抱かれるたび、自分は慰み者なのだと思い知らされた。
絶望に襲われたところで刃一つないここで自害を図ることもできず、更なる絶望が幸村を襲う。
「何故……気遣う。俺など、殺せばいいだろう」
「お前を殺すのは惜しい。――俺に媚びる女なんざ、つまんねぇだけだ」
「ならば、貴様に媚びてやろうか。尻を振ってねだってやる」
「できねぇことを言ってんじゃねぇよ。ほら、着替えろ」
新しい夜着を渡され、幸村は夜着の帯に手をかけた。熱で動きが鈍る幸村を、小十郎が助ける。
襟を直す手は優しく、驚いて小十郎を見た。
「どうした」
「―――……」
声が喉の奥に引っかかった。水を、と求めるが、小十郎は幸村の鼻をつまんで無理やり
口を開けさせ、薬湯の入った急須を口に突っ込んできた。水分と苦味が喉を滑り落ちる。
うつ伏せになってげっぷと咳を一通りやり過ごすと、身体を起こした。まだ身体が熱い。
酷い汗をかいているから、長く苦しむことはないはずだ。もうすっかり熱には慣れてしまった。
「ずっといたのか」
辺りはすっかり闇に沈んでいる。小十郎は悠然と胡坐を崩し、汗を拭け、と手ぬぐいを
よこした。首と胸元の汗を拭き、小十郎を見る。
「病の時は、心細いもんだろうが」
今更、と眉を寄せる。
熱を出そうと、身体を冷やそうと、小十郎は容赦しない。嫌だと泣き叫べば
より酷い方法で犯された。馬を打つ鞭で打たれ、余計な口をきくなと罵られたこともある。
酷い状態のときに抱かれるたび、自分は慰み者なのだと思い知らされた。
絶望に襲われたところで刃一つないここで自害を図ることもできず、更なる絶望が幸村を襲う。
「何故……気遣う。俺など、殺せばいいだろう」
「お前を殺すのは惜しい。――俺に媚びる女なんざ、つまんねぇだけだ」
「ならば、貴様に媚びてやろうか。尻を振ってねだってやる」
「できねぇことを言ってんじゃねぇよ。ほら、着替えろ」
新しい夜着を渡され、幸村は夜着の帯に手をかけた。熱で動きが鈍る幸村を、小十郎が助ける。
襟を直す手は優しく、驚いて小十郎を見た。
「どうした」
「――貴様は、俺をどうしたい」
「どうって? こうしたいに決まってんだろうが」
肩を押され、圧し掛かられる。やはりそうか、と目を閉じた。次に来るのは胸か、女陰か。
しかし、いつまで経ってもそれらはやってこない。上掛けをかけられ、かたく絞った
手ぬぐいを額に置かれる。
「また朝に替えろ」
「……なんで……」
問うが、小十郎は腰を上げて聞く耳を持たない。足音が遠ざかり、錠のかかる音を聞いた。
人の気配を感じる。見張りの数が減っている。
「どうって? こうしたいに決まってんだろうが」
肩を押され、圧し掛かられる。やはりそうか、と目を閉じた。次に来るのは胸か、女陰か。
しかし、いつまで経ってもそれらはやってこない。上掛けをかけられ、かたく絞った
手ぬぐいを額に置かれる。
「また朝に替えろ」
「……なんで……」
問うが、小十郎は腰を上げて聞く耳を持たない。足音が遠ざかり、錠のかかる音を聞いた。
人の気配を感じる。見張りの数が減っている。
なんだ、これは。
ぐるぐると頭が回るような音を聞いた。ごろりと寝返りを打ち、手ぬぐいを褥の外に出す。
病人を気遣っただけとでも言いたいのか。今まで散々好きなようにしておいて。
ぐるぐると頭が回るような音を聞いた。ごろりと寝返りを打ち、手ぬぐいを褥の外に出す。
病人を気遣っただけとでも言いたいのか。今まで散々好きなようにしておいて。
――罪滅ぼしのつもりか。
ふん、と鼻で笑うと、幸村は上掛けを顔まで引き上げて目を閉じた。
ひどく優しい夢を見たが、目を覚ました途端忘れてしまった。
ひどく優しい夢を見たが、目を覚ました途端忘れてしまった。




