気配が遠ざかってからしばらくして、幸村は上掛けを跳ね飛ばした。菊の香りが閨に広がっている。
腕を払ったときに目覚めてしまった。
犯しに来たと思った。身体が一気に冷え、脈が速くなった。
小十郎が幸村を抱かなかったのは、初めてのことだ。抱くどころか、脈を取って汗を拭き、花を活けて出て行った。
「な……」
腕を払ったときに目覚めてしまった。
犯しに来たと思った。身体が一気に冷え、脈が速くなった。
小十郎が幸村を抱かなかったのは、初めてのことだ。抱くどころか、脈を取って汗を拭き、花を活けて出て行った。
「な……」
顔が熱い。熱のせいだけではない。
ぱん、と両手で顔を叩いた。夢だ気まぐれだと言い聞かせる。
明日になれば、小十郎はいつもの小十郎に戻っているに違いない。幸村を抱き、
犯し、貪りに来る。今日はただ面倒なだけだ。
褥から離れ、厠に向かう。目が冴えてしまった。まだ熱っぽいが、この分なら晩には粥くらいなら食べられそうだ。
「――薬湯、か……」
佐助が孕まないようになる薬があると言っていた。辱めを受けても、それを飲めば憎い
相手の子を宿さずにすむという。飲まずにすむようにね、と何度も言い聞かされた。
憎い相手、と小十郎の顔を思い浮かべる。
憎くないはずがない。破瓜を奪われ、貞操も何もない扱いを受けている。何度殺してやろうと思ったことだろうか。
明日になれば、小十郎はいつもの小十郎に戻っているに違いない。幸村を抱き、
犯し、貪りに来る。今日はただ面倒なだけだ。
褥から離れ、厠に向かう。目が冴えてしまった。まだ熱っぽいが、この分なら晩には粥くらいなら食べられそうだ。
「――薬湯、か……」
佐助が孕まないようになる薬があると言っていた。辱めを受けても、それを飲めば憎い
相手の子を宿さずにすむという。飲まずにすむようにね、と何度も言い聞かされた。
憎い相手、と小十郎の顔を思い浮かべる。
憎くないはずがない。破瓜を奪われ、貞操も何もない扱いを受けている。何度殺してやろうと思ったことだろうか。
殺したい。憎い。――そのはずだ。
額に手を当てた。小十郎が汗を拭った場所。大したことではない。ただの気まぐれだ。
だから喜ぶな、と強く言い聞かせ、幸村は厠に向かった。
だから喜ぶな、と強く言い聞かせ、幸村は厠に向かった。
その日から、幸村は水垢離をやめた。
小十郎は精を幸村の腹や背に放ち、立ち去る前に薬を置いていくようになった。
共寝もしない。言葉も交わさない。ただ無言で抱き、抱かれる。
小十郎は精を幸村の腹や背に放ち、立ち去る前に薬を置いていくようになった。
共寝もしない。言葉も交わさない。ただ無言で抱き、抱かれる。
これを人々がなんと呼ぶのか、どちらも分からなくなっていた。




