幸村は首を振った。
佐助は目を見張り、幸村の腕をつかもうとした。佐助の手を払い、首を振る。
「旦那」
佐助は目を見張り、幸村の腕をつかもうとした。佐助の手を払い、首を振る。
「旦那」
「困る……」
口から出たのは、佐助を拒むものだった。
「困るって、なんで。――まさか孕まされた、とか」
幸村は佐助を見据えたまま首を振った。佐助との間に距離を置き、格子を掴む。
「片倉殿を、待たねばならぬ。必ず、ここに来る故……」
「旦那。何かされたの。狂わされたの!?」
「違う! 片倉殿は、何もしていない。俺が――俺の、傷を治し、熱を下げてくれた」
「困るって、なんで。――まさか孕まされた、とか」
幸村は佐助を見据えたまま首を振った。佐助との間に距離を置き、格子を掴む。
「片倉殿を、待たねばならぬ。必ず、ここに来る故……」
「旦那。何かされたの。狂わされたの!?」
「違う! 片倉殿は、何もしていない。俺が――俺の、傷を治し、熱を下げてくれた」
それは事実だ。だが陵辱の合間のことだ。
離れられない。逃げられない。
逃げれば、敵対することになる。離れてしまう。
「何も申さず、ここから抜け出せるはずがなかろう!」
「旦那、それはただの錯覚だ。長い間閉じ込められて、おかしくなっちゃってるだけだよ!」
逃げれば、敵対することになる。離れてしまう。
「何も申さず、ここから抜け出せるはずがなかろう!」
「旦那、それはただの錯覚だ。長い間閉じ込められて、おかしくなっちゃってるだけだよ!」
捕虜によくある事だ。憎悪と慈愛は、相手への執着という共通点がある。
逃げる隙を、殺す隙を伺っているうちに憎悪なのか慈愛なのか分からなくなり、
やがて情が芽生え、心を通じ合わせてしまう。
逃げる隙を、殺す隙を伺っているうちに憎悪なのか慈愛なのか分からなくなり、
やがて情が芽生え、心を通じ合わせてしまう。
「違う……違う……」
佐助の言葉を拒むために耳を塞いだ。首を振り、何度も「違う」と呟く。
佐助の言葉を拒むために耳を塞いだ。首を振り、何度も「違う」と呟く。
何が違うというのだろう。佐助の言うことは正しい。
長い間笑っていない。身体を動かしていない。健全な心が保てるはずがない。
――ならば、この気持ちは何だ。
小十郎に会いたい。甲斐や奥州のことを少しでいいから聞きたい。持て余した精を吐かれるだけでも構わない。
「――――」
気配が動いた。佐助と幸村は同時に顔を上げた。
長い間笑っていない。身体を動かしていない。健全な心が保てるはずがない。
――ならば、この気持ちは何だ。
小十郎に会いたい。甲斐や奥州のことを少しでいいから聞きたい。持て余した精を吐かれるだけでも構わない。
「――――」
気配が動いた。佐助と幸村は同時に顔を上げた。
「……どうした」
馬の匂いをさせて、小十郎が姿を現した。馬に使う鞭を持ったままで、戦装束を纏っている。
「佐助が」
佐助の気配は既にない。地に潜ったか、それとも烏で空を飛んだか。
「佐助? ――貴様の忍びか。なんだ、逃げる算段か?」
幸村は座り込んだまま小十郎を見上げた。
鞭で頬を叩かれ、横飛びに吹っ飛ぶ。口の中に苦味と血が広がる。
「油断したぜ。ちぃとばかり戦に出てるとすぐこれだ」
「いくさ……」
「お前、俺の立場を忘れたのか?」
伊達の家臣。政宗の信頼に足る男。軍師でもあるという。
からん、と音を立てて小十郎の手から鞭が離れた。頬を抑えて体を起こすと、胸倉を掴まれた。
「忍びを呼んで、逃げるつもりだったか。この機会を狙ってたのか? ん?」
「ちが……」
馬の匂いをさせて、小十郎が姿を現した。馬に使う鞭を持ったままで、戦装束を纏っている。
「佐助が」
佐助の気配は既にない。地に潜ったか、それとも烏で空を飛んだか。
「佐助? ――貴様の忍びか。なんだ、逃げる算段か?」
幸村は座り込んだまま小十郎を見上げた。
鞭で頬を叩かれ、横飛びに吹っ飛ぶ。口の中に苦味と血が広がる。
「油断したぜ。ちぃとばかり戦に出てるとすぐこれだ」
「いくさ……」
「お前、俺の立場を忘れたのか?」
伊達の家臣。政宗の信頼に足る男。軍師でもあるという。
からん、と音を立てて小十郎の手から鞭が離れた。頬を抑えて体を起こすと、胸倉を掴まれた。
「忍びを呼んで、逃げるつもりだったか。この機会を狙ってたのか? ん?」
「ちが……」
会いたいと思った。離れたくないと思った。
その気持ちはなんだったのだろう。酷く惨めだった。
その気持ちはなんだったのだろう。酷く惨めだった。
帯を毟り取られ、両手首を頭上で格子に縛り付けられた。嫌だともがけば
頬に平手を打たれる。痛みをやり過ごしてから顔を上げると、縄を持った小十郎の姿があった。
膝を無理やり開かれ、膝を縄で格子に繋ぎとめられる。小十郎に体と女陰を晒す格好になる。
昼に合わない、卑猥な体勢だった。
「悪かったなぁ、待たせちまって。疼いてしょうがなかっただろ?」
「な……にを……」
獣の臭いがした。胸を掴まれて圧し掛かられ、目をきつく閉じて小十郎の顔から逃げる。
その態度が気に入らないのか、また平手を打たれた。
胸の先端と女陰を同時に弄られ、身体が熱くなる。心とは裏腹に、身体は小十郎を
受け入れるための準備を進める。
頬に平手を打たれる。痛みをやり過ごしてから顔を上げると、縄を持った小十郎の姿があった。
膝を無理やり開かれ、膝を縄で格子に繋ぎとめられる。小十郎に体と女陰を晒す格好になる。
昼に合わない、卑猥な体勢だった。
「悪かったなぁ、待たせちまって。疼いてしょうがなかっただろ?」
「な……にを……」
獣の臭いがした。胸を掴まれて圧し掛かられ、目をきつく閉じて小十郎の顔から逃げる。
その態度が気に入らないのか、また平手を打たれた。
胸の先端と女陰を同時に弄られ、身体が熱くなる。心とは裏腹に、身体は小十郎を
受け入れるための準備を進める。
違うと言うだけなら簡単だ。だが小十郎は信じないだろう。
絶望が幸村を襲った。
小十郎に信じてもらえない。最初から信頼などないのだから当たり前だが、
それが酷く悲しかった。
胎内が十分潤ったところで、腰を担がれて思い切り突かれた。
「ぁ……ああ……っ……」
顎を反らし、涙を零す。
目を見開いて小十郎を見た。小十郎は殺気を膨れ上がらせ、手を幸村の手首に重ねた。
強く掴まれ、痛みを覚える。そのくせ散らされる口付けは甘い。
なんで。どうしてこんなことをする。
所有の印を刻むように口付けを散らされ、身体に覚え込ませるように突き込まれ、容赦なく昇らされる。
貪られながら、幸村は身体を揺すった。
信じられないのは当たり前。逃げれば怒って当たり前だ。幸村は捕虜であり、
慰み者なのだ。飽きるまで失いたくないのだろう。
絶望が幸村を襲った。
小十郎に信じてもらえない。最初から信頼などないのだから当たり前だが、
それが酷く悲しかった。
胎内が十分潤ったところで、腰を担がれて思い切り突かれた。
「ぁ……ああ……っ……」
顎を反らし、涙を零す。
目を見開いて小十郎を見た。小十郎は殺気を膨れ上がらせ、手を幸村の手首に重ねた。
強く掴まれ、痛みを覚える。そのくせ散らされる口付けは甘い。
なんで。どうしてこんなことをする。
所有の印を刻むように口付けを散らされ、身体に覚え込ませるように突き込まれ、容赦なく昇らされる。
貪られながら、幸村は身体を揺すった。
信じられないのは当たり前。逃げれば怒って当たり前だ。幸村は捕虜であり、
慰み者なのだ。飽きるまで失いたくないのだろう。
――ならその怒りを、全身で受け止めるだけだ。
応えたいと思った。
縋って、それを言葉に代えたい。
けれどそれはできない。四肢の自由を奪われ、背に指を這わせることも胸に顔を寄せることもできない。
両手を血が滲むほどきつく握り締め、ぼろぼろと涙を零しながら目を見開いて唇をかみ締め、声を堪える。
精を胎内に吐き出される。久しぶりの奔流に、幸村は身体を震わせて頂を覚えた。
縋って、それを言葉に代えたい。
けれどそれはできない。四肢の自由を奪われ、背に指を這わせることも胸に顔を寄せることもできない。
両手を血が滲むほどきつく握り締め、ぼろぼろと涙を零しながら目を見開いて唇をかみ締め、声を堪える。
精を胎内に吐き出される。久しぶりの奔流に、幸村は身体を震わせて頂を覚えた。
――どうして、こうなるのだろう。
ゆっくりと意識が落ちていく。奈落の底に突き落とされるような絶望が、幸村を包んだ。




