その日は、朝から気持ちの良い小春日和だった。
いよいよ、この日が来てしまった。
髪結いやら化粧師やらが忙しなく出入りし、俺はどんどん"女"に仕立て上げられていく。
まるで違う自分になっていくようだった。
顕如殿に抱かれる自分は、きっと別の自分なんだと、そう思ったら少し楽になった。
化粧も仕上がった頃、廊下を慌しく走る音が聞こえた。
ガラッと勢いよく戸を開けたのは、忘八殿であった。
「幸村…っ、坊さんが…」
息せき切って、その表情には焦りさえ見えた。
もしや…
「亡くなったのでござるか!?」
「いや、お前どんだけあの坊さん嫌いなんだよ!」
すかさず忘八殿の否定が入る。
なんだ、違うのか…
「まぁ、そんなお前には良い知らせなのかもしれんけどよ」
息を整えながら、忘八殿が続けた。
「ギックリ腰だそうだ。水揚げは出来んとよ」
それだけ聞くと、へなへなと身体の力が抜けるのが感じた。
俺の決意はなんだったのか。
「それでは、今日の化粧も何もかも、無駄になってしまったのか」
落胆しているわけではないが、落ち込んだ声が思わず漏れた。
だが忘八殿から返ってきた答えは、予想外のものだった。
「それが…そいつを伝えに来た奴が、変わりに水揚げをやるってよ」
「は?」
「金も、もうもらった」
間の抜けた顔をしている俺に、忘八殿がその名を告げた。
それで、全てを理解した。
髪結いやら化粧師やらが忙しなく出入りし、俺はどんどん"女"に仕立て上げられていく。
まるで違う自分になっていくようだった。
顕如殿に抱かれる自分は、きっと別の自分なんだと、そう思ったら少し楽になった。
化粧も仕上がった頃、廊下を慌しく走る音が聞こえた。
ガラッと勢いよく戸を開けたのは、忘八殿であった。
「幸村…っ、坊さんが…」
息せき切って、その表情には焦りさえ見えた。
もしや…
「亡くなったのでござるか!?」
「いや、お前どんだけあの坊さん嫌いなんだよ!」
すかさず忘八殿の否定が入る。
なんだ、違うのか…
「まぁ、そんなお前には良い知らせなのかもしれんけどよ」
息を整えながら、忘八殿が続けた。
「ギックリ腰だそうだ。水揚げは出来んとよ」
それだけ聞くと、へなへなと身体の力が抜けるのが感じた。
俺の決意はなんだったのか。
「それでは、今日の化粧も何もかも、無駄になってしまったのか」
落胆しているわけではないが、落ち込んだ声が思わず漏れた。
だが忘八殿から返ってきた答えは、予想外のものだった。
「それが…そいつを伝えに来た奴が、変わりに水揚げをやるってよ」
「は?」
「金も、もうもらった」
間の抜けた顔をしている俺に、忘八殿がその名を告げた。
それで、全てを理解した。




