近所でお祭があったので、ふと思いついた友垣ネタ…
エロがなくてすみませぬ。
何となく半兵衛(♀)だとちょっぴり素直になるんじゃないかとか
そんなことを妄想してしまいました。
エロがなくてすみませぬ。
何となく半兵衛(♀)だとちょっぴり素直になるんじゃないかとか
そんなことを妄想してしまいました。
遠く祭囃子の音が聞こえる。
半兵衛は気怠い仕草で布団から身を起こすと、その方角へと目を向けた。
社の方角は夜というのに昼間のように明るい。
おそらく多くの人で賑わっているのだろう。
「祭、か…」
彼女は傍らにあった盆に用意されていた薬湯を寄せた。
湯呑みを取ろうとした瞬間、不意に咳き込み、咄嗟に手拭いを口元に当てる。
「………っ」
白い布地に残る血の痕を睨み、秀麗な顔を僅かに顰めた。
「…まだ、やりたい事は山程あるのに」
何故、自分には限られた命しかないのだろうか、と彼女は悔やむ。
呼吸を落ち着かせると、再び湯呑みを取って口に含んだ。
「全く、慶次君は気楽で良いね」
近所の子供たちに誘われ祭に行くと言っていたが、いつ帰ってくるのかあやしいな、と呟く。
黙っていれば凛々しい顔立ちなのだが、あの愛嬌のある笑顔を向けられると幾分子供っぽく見える。
秀吉も保護者代わりに一緒について行ったので大丈夫だろうけど、と溜息交じりに空を眺めた。
丁度その時、玄関の方で声がした。
「遅くなってすまぬ」
大柄な体を鴨居にぶつけないように身を屈めて入ってきた秀吉の姿に、半兵衛の顔もようやく和らいだ。
「楽しかったかい、秀吉」
「うむ、思いのほか皆が喜んでくれた」
これは土産だ、と持っていた包みを半兵衛に渡した。
甘い餡と熟した果物の香りが鼻腔を擽る。
「ここ数日、食欲が無いって言っていたのを思い出してな」
「ありがとう、秀吉」
受け取った包みを空いた盆へと置くと、ふわり、と華やいだ笑みを口元に乗せ、秀吉の頬へと軽く口付ける。
「もう一つ半兵衛に見せようと思ってな」
そういって、秀吉は続いて入ってきた慶次を振り返った。
いきなり声を掛けられた方はぎくり、とまるで悪戯している所を見つけられた子供のように大袈裟な動作で驚く。
「おおっと、少しあっち向いていろよ!」
後ろに抱えて隠しながら、不自然な動作で彼が入ってきた。
「何を企んでいるんだい、慶次君」
君がやることはロクでもないことばかりだ、と呆れ顔で言いつつも半兵衛の表情は柔らかい。
そんな様子に秀吉は苦笑しながらも、半兵衛の肩へと手を添えてそっと抱え上げた。
「…秀吉!」
「まあ、良いから庭を見ろ」
縁側に座り、膝の上へと彼女を抱えた秀吉は、宥めるように手を添える。
「何故、庭など」
そういって振り返った半兵衛の視界の隅を淡く仄かな光が横切った。
蒼い闇の中にぽつりぽつりと浮かんでは消える小さな光。
「………蛍」
「その……今日は一緒に連れて行けなかったからさ、その御詫びに…な?」
祭の帰り道に子供たちが見付けたらしい。
少し季節を外しているが、半兵衛は今年初めてみる蛍に紫紺の瞳を細めて緩やかに笑む。
「本当に君のやる事は予想がつかないね」
これでも一応褒めているんだ、と付け加えながら、彼女はそっと瞳を閉じた。
「半兵衛?」
月明かりの下では普段よりも白く見える半兵衛の顔を覗き込みながら、秀吉は心配そうに声を掛けた。
「何でもないよ、ちょっと疲れただけさ」
痩躯を秀吉の胸へと預けながら、半兵衛は苦笑した。
ようやく暑さも和らいできたのか、涼しい夜風も微熱の篭る体には心地よい。
「…眠ったか?」
気が付けば、秀吉に抱えられた格好で彼女は小さく寝息を立てていた。
「そうみたいだな」
慶次と二人で顔を見合わせると、安堵したように笑みを交わす。
半兵衛は気怠い仕草で布団から身を起こすと、その方角へと目を向けた。
社の方角は夜というのに昼間のように明るい。
おそらく多くの人で賑わっているのだろう。
「祭、か…」
彼女は傍らにあった盆に用意されていた薬湯を寄せた。
湯呑みを取ろうとした瞬間、不意に咳き込み、咄嗟に手拭いを口元に当てる。
「………っ」
白い布地に残る血の痕を睨み、秀麗な顔を僅かに顰めた。
「…まだ、やりたい事は山程あるのに」
何故、自分には限られた命しかないのだろうか、と彼女は悔やむ。
呼吸を落ち着かせると、再び湯呑みを取って口に含んだ。
「全く、慶次君は気楽で良いね」
近所の子供たちに誘われ祭に行くと言っていたが、いつ帰ってくるのかあやしいな、と呟く。
黙っていれば凛々しい顔立ちなのだが、あの愛嬌のある笑顔を向けられると幾分子供っぽく見える。
秀吉も保護者代わりに一緒について行ったので大丈夫だろうけど、と溜息交じりに空を眺めた。
丁度その時、玄関の方で声がした。
「遅くなってすまぬ」
大柄な体を鴨居にぶつけないように身を屈めて入ってきた秀吉の姿に、半兵衛の顔もようやく和らいだ。
「楽しかったかい、秀吉」
「うむ、思いのほか皆が喜んでくれた」
これは土産だ、と持っていた包みを半兵衛に渡した。
甘い餡と熟した果物の香りが鼻腔を擽る。
「ここ数日、食欲が無いって言っていたのを思い出してな」
「ありがとう、秀吉」
受け取った包みを空いた盆へと置くと、ふわり、と華やいだ笑みを口元に乗せ、秀吉の頬へと軽く口付ける。
「もう一つ半兵衛に見せようと思ってな」
そういって、秀吉は続いて入ってきた慶次を振り返った。
いきなり声を掛けられた方はぎくり、とまるで悪戯している所を見つけられた子供のように大袈裟な動作で驚く。
「おおっと、少しあっち向いていろよ!」
後ろに抱えて隠しながら、不自然な動作で彼が入ってきた。
「何を企んでいるんだい、慶次君」
君がやることはロクでもないことばかりだ、と呆れ顔で言いつつも半兵衛の表情は柔らかい。
そんな様子に秀吉は苦笑しながらも、半兵衛の肩へと手を添えてそっと抱え上げた。
「…秀吉!」
「まあ、良いから庭を見ろ」
縁側に座り、膝の上へと彼女を抱えた秀吉は、宥めるように手を添える。
「何故、庭など」
そういって振り返った半兵衛の視界の隅を淡く仄かな光が横切った。
蒼い闇の中にぽつりぽつりと浮かんでは消える小さな光。
「………蛍」
「その……今日は一緒に連れて行けなかったからさ、その御詫びに…な?」
祭の帰り道に子供たちが見付けたらしい。
少し季節を外しているが、半兵衛は今年初めてみる蛍に紫紺の瞳を細めて緩やかに笑む。
「本当に君のやる事は予想がつかないね」
これでも一応褒めているんだ、と付け加えながら、彼女はそっと瞳を閉じた。
「半兵衛?」
月明かりの下では普段よりも白く見える半兵衛の顔を覗き込みながら、秀吉は心配そうに声を掛けた。
「何でもないよ、ちょっと疲れただけさ」
痩躯を秀吉の胸へと預けながら、半兵衛は苦笑した。
ようやく暑さも和らいできたのか、涼しい夜風も微熱の篭る体には心地よい。
「…眠ったか?」
気が付けば、秀吉に抱えられた格好で彼女は小さく寝息を立てていた。
「そうみたいだな」
慶次と二人で顔を見合わせると、安堵したように笑みを交わす。
そうして、夏の一夜は更けていった。
(了)