「よう、気分はどうだい?」
もしやこのまま目覚めぬのでは、と危惧されていたまつは、あれからすぐ意識を回復した。
取り乱したのは最初だけ、すぐに理性を取り戻したのは、さすがでもあり哀れでもあった。
取り乱したのは最初だけ、すぐに理性を取り戻したのは、さすがでもあり哀れでもあった。
すぐさま駆けつけた元親に、まつは丁寧に礼を述べ、事情を語った。
豊臣軍に織田・明智両軍が蹂躙されたこと。
利家の死を語るときは口数が少なくなり、気丈な彼女らしくもなくはらはらと落涙した。
彼女がひときわ心を痛めている理由のひとつには、甥の前田慶次が珍しく出陣し、おそらく戦死したことによるのだろう。
何でも、利家の影武者を務めると自ら志願したのだという。
まつ自身は甥の骸を見つけたわけではないが、あの状況で生存しているとは考えにくいし、
まして傾奇者で名高い慶次が敗戦の後なにもせず黙っているとも思えない。
元親自身は顔を知らないが、長身とその長身を上回るほどの長刀、派手な着物と長髪に飾った羽飾り、
そのうえ小猿を連れて歩くという前田慶次の噂は、土佐にまで聞こえている。
豊臣軍に織田・明智両軍が蹂躙されたこと。
利家の死を語るときは口数が少なくなり、気丈な彼女らしくもなくはらはらと落涙した。
彼女がひときわ心を痛めている理由のひとつには、甥の前田慶次が珍しく出陣し、おそらく戦死したことによるのだろう。
何でも、利家の影武者を務めると自ら志願したのだという。
まつ自身は甥の骸を見つけたわけではないが、あの状況で生存しているとは考えにくいし、
まして傾奇者で名高い慶次が敗戦の後なにもせず黙っているとも思えない。
元親自身は顔を知らないが、長身とその長身を上回るほどの長刀、派手な着物と長髪に飾った羽飾り、
そのうえ小猿を連れて歩くという前田慶次の噂は、土佐にまで聞こえている。
元親は、その後も時間を見つけては、まつのところへと足を運んでいた。
子分たちも元親と考えることは同じで、彼女の部屋で顔を合わせることも少なくなかった。
太陽のように明るかった女性が、今では消えぬ憂いの影を背負っている。
一度彼女に情を移した海の男は、どうにもそれがいたたまれない。
子分たちも元親と考えることは同じで、彼女の部屋で顔を合わせることも少なくなかった。
太陽のように明るかった女性が、今では消えぬ憂いの影を背負っている。
一度彼女に情を移した海の男は、どうにもそれがいたたまれない。
元親に気を遣い退出した部下を見送ると、まつはそっと微笑んだ。
床からは完全に起き上がれてはいないものの、怪我は順調に回復しているようだった。
床からは完全に起き上がれてはいないものの、怪我は順調に回復しているようだった。
「このようなご時世、お役目もお忙しいのでしょう。わたくしのことはどうぞお構いなく」
「海に出なきゃあ暇なもんだぜ。退屈しのぎの相手をしてほしいだけさ」
「海に出なきゃあ暇なもんだぜ。退屈しのぎの相手をしてほしいだけさ」
まつは、ふふと笑う。
その笑い声にも、以前とは異なり影が落ちている。
その笑い声にも、以前とは異なり影が落ちている。
「殿方は、嘘をつくものではありませんよ。お顔が煤で汚れています」
「ん? んん? お、おう」
「ん? んん? お、おう」
袖口で適当に顔をぬぐいながら、元親は答えた。
今、長曾我部軍は、国を傾ける勢いで新兵器の開発に努めている。
先頭に立っているのは、当然元親である。
正確に言えば、以前から案としてはあった。
ただ、実現には莫大な費用がかかるので保留状態にあった計画を、急遽再開したのだ。
金を惜しんで国を潰すわけにはいかない。
元親の背中には民が乗っている。
今、長曾我部軍は、国を傾ける勢いで新兵器の開発に努めている。
先頭に立っているのは、当然元親である。
正確に言えば、以前から案としてはあった。
ただ、実現には莫大な費用がかかるので保留状態にあった計画を、急遽再開したのだ。
金を惜しんで国を潰すわけにはいかない。
元親の背中には民が乗っている。




