まつの部屋を訪れた元親は、ぎょっと目を見張った。
床がもぬけの殻だったから、ではない。
戸の前で、三つ指をつき頭を下げている彼女に迎えられたからだった。
医者によると、まだ身体は万全ではないそうだが、それを感じさせない凛とした仕草だった。
床がもぬけの殻だったから、ではない。
戸の前で、三つ指をつき頭を下げている彼女に迎えられたからだった。
医者によると、まだ身体は万全ではないそうだが、それを感じさせない凛とした仕草だった。
静かに顔をあげ、丸い瞳が元親を見上げた。
涙の膜が張っていたのはすでに遠い過去のことだった。
涙の膜が張っていたのはすでに遠い過去のことだった。
「――ご武運を」
彼女の良人は、いつもこのように送り出されていたのかと、無意識のうちに想像する。
あの気のいい男がどう応えを返していたのか、少し考えても像は浮かばなかった。
あの気のいい男がどう応えを返していたのか、少し考えても像は浮かばなかった。
「任せな。あんたはおとなしく寝てりゃいい」
やれるべきことはやった。策も尽くした。
――ここが、かつて鳥無き島の蝙蝠と揶揄された、長曾我部元親の天下分け目だ。
――ここが、かつて鳥無き島の蝙蝠と揶揄された、長曾我部元親の天下分け目だ。




