燃える。焼ける。蹂躙される。
それは圧倒的な力。
疲弊した兵を丸ごと呑みこんで津波のごとく成長する。
それは圧倒的な力。
疲弊した兵を丸ごと呑みこんで津波のごとく成長する。
もの言わぬ屍の中、その男は威風堂々と立っていた。
その両の手が、ひとりの兵を吊り上げている。
吊り下げられている男とて均整のとれた長身だが、吊り上げている方は常人離れした巨躯だった。
その両の手が、ひとりの兵を吊り上げている。
吊り下げられている男とて均整のとれた長身だが、吊り上げている方は常人離れした巨躯だった。
「利ィ!」
嫌な予感ばかりが的中する。
目を覆いたくなるような戦場で、それでも大きな怪我なく生き残っていた慶次は、はるか遠くにその人物を見つけた。
秀吉と、利家の姿を。
倒しても倒しても次々に現れる豊臣の兵に邪魔されながらも、何とか助けようと。
目を覆いたくなるような戦場で、それでも大きな怪我なく生き残っていた慶次は、はるか遠くにその人物を見つけた。
秀吉と、利家の姿を。
倒しても倒しても次々に現れる豊臣の兵に邪魔されながらも、何とか助けようと。
そのとき慶次の目の前に立ちはだかったのは、竹中半兵衛だった。
細身で小柄な身体を兵卒に紛れこませて、ただ一点しか見えていない慶次を袈裟斬りに斬り裂いた。
細身で小柄な身体を兵卒に紛れこませて、ただ一点しか見えていない慶次を袈裟斬りに斬り裂いた。
急激に、身体から力が失われていく。倒れこむようにして慶次は膝をついた。
誰にいつ斬られたのかさえ気づかなかった。見えているのは、ただ。
誰にいつ斬られたのかさえ気づかなかった。見えているのは、ただ。
吊られている男の口からは、なにがしかの言葉も、悲鳴も、うめき声さえ聞こえなかったように思う。
轟音のせいか、自分の耳鳴りのせいか、それとも本当に苦痛に耐えているのか。
無力な身体は、それをただ見守ることしかできなかった。
轟音のせいか、自分の耳鳴りのせいか、それとも本当に苦痛に耐えているのか。
無力な身体は、それをただ見守ることしかできなかった。
――今、生命を落とそうとしているのは、自分が心から大切な人なのに!
ごきり、という骨の砕ける音だけは、残酷なほど鮮明に聞こえた。
動かぬ身体は、悲鳴さえあげられなかった。
動かぬ身体は、悲鳴さえあげられなかった。
膝ですら支えられなくなった身体は、均衡を失って転がった。
そのまま滑って、崖のような急斜面を落ちた。痛みはすでになかった。
そのまま滑って、崖のような急斜面を落ちた。痛みはすでになかった。
麓で拾ってもらえなかったら、そのまま死んでいただろう。
まともに動けるようになるまで一月かかった。
完治までにはほど遠いと止められたが、慶次は西へと向かった。
浅井を落とした豊臣は本願寺と交戦中、そしてそのままの勢いで西へ軍を進めるだろうというもっぱらの噂だった。
まともに動けるようになるまで一月かかった。
完治までにはほど遠いと止められたが、慶次は西へと向かった。
浅井を落とした豊臣は本願寺と交戦中、そしてそのままの勢いで西へ軍を進めるだろうというもっぱらの噂だった。




