「慶次ともどもお世話になって……心より御礼を」
「いいってことよ。大事にな」
「いいってことよ。大事にな」
戦の後の始末があらかた済んで落ち着いたころのある晴れの日、まつと慶次はともに加賀に戻ることになった。
まつに憧れている部下たちは、元親とまつの顔を交互に見ながら「ここにいてくれ」と繰り返し懇願していたが、
それはこちらの勝手が過ぎるというものだ。
彼女の胎には利家の忘れ形見がいる。
まつに憧れている部下たちは、元親とまつの顔を交互に見ながら「ここにいてくれ」と繰り返し懇願していたが、
それはこちらの勝手が過ぎるというものだ。
彼女の胎には利家の忘れ形見がいる。
同行する慶次は、まつの前で短い髪をさらしているのが落ち着かないようで、盛んにいじっている。
なんでも、崖から転がり落ちたときにぼろぼろになってしまい、短くするしかなかったということだ。
なんでも、崖から転がり落ちたときにぼろぼろになってしまい、短くするしかなかったということだ。
丁寧に頭をあげたまつは、傍らの慶次に向き直り、ちょっと唇を尖らせる。
「慶次、なにもあなたまで城に戻ることないのですよ。
もう立派な大人なのですから、自分の心の思うまま生きなさい」
「何度も言ってるだろ。別にまつ姉ちゃんのためってわけじゃないさ。
……ただ、ちょっと休みたくなっただけだよ。ちょっとだけ」
もう立派な大人なのですから、自分の心の思うまま生きなさい」
「何度も言ってるだろ。別にまつ姉ちゃんのためってわけじゃないさ。
……ただ、ちょっと休みたくなっただけだよ。ちょっとだけ」
慶次の言う「ちょっと」は、まつの子が産まれるまでの間だろう。
元親の勝手な想像にすぎないが、おそらくは的を射ている。
長くもない、深くもない付き合いだったが、前田慶次という男はそういう男だ。
元親の勝手な想像にすぎないが、おそらくは的を射ている。
長くもない、深くもない付き合いだったが、前田慶次という男はそういう男だ。
そして、それ以上の追及を避けようとするように、慶次はさっさと船に乗りこんでいった。
元親に微妙な、何とも言えない表情を向けて。
ああ、そういえば恋だの愛だの、甘ったるい話が好きなやつだった。
元親に微妙な、何とも言えない表情を向けて。
ああ、そういえば恋だの愛だの、甘ったるい話が好きなやつだった。




