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鳥無き島 26

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まつは小首をかしげるようにして微笑んだ。

「――かつて信長様は、長曾我部殿のことを鳥無き島の蝙蝠と言ったとか」
「ああ、そういや、最初に言い出したのは魔王だったっけな」

「鳥無き里の蝙蝠」の里を島に変え元親に形容したのは織田信長だった。
鳥無き島の蝙蝠。鳥、すなわち強者のいない四国で権勢を誇る蝙蝠を揶揄した言葉。
どうでもいいと思っていたが。


「猛禽ですら住めぬ地で生きる蝙蝠というのは、きっと常人では計りしれぬ器を持った生きものなのでしょうね」


まつは視線を空に転じた。
釣られて元親も天を仰ぐ。
大鳥――鷹か鷲か、翼を広げ飛ぶ影が見えた。


「――長曾我部殿のつくる新たな天下を、まつも見てみとうござりまする」


そう言って、まつは笑った。
かつて見かけた市姫のような傾国の笑みではなく、男を後ろから立てるような賢妻の莞爾とした笑顔だった。


――やっぱいい女だな、と思う。


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