■蝶と狂
「ひぐっ、ぐすっ…」
「ここにおられましたか帰蝶様」
馬屋の裏でよく泣いていた。いななきに泣き声を隠せたから。
「ぐすっ、ぐすっ…」
私が泣き止まないと、あの人はいつも私を慰めてくれた。
「帰蝶様はお強い子だ…」
「なんで…私が強いの?…」
「決して人の前では涙を見せないじゃありませんか…私には出来ません…」
「あなたは…すぐに泣くの?」
「人であれば泣くのは当たり前です。私は悲しい事があればすぐに泣いてしまいますよ…」
あの人の端正な顔立ちを、涙が伝う。
「な、何で泣くの?」
「今目の前にいる可愛い姫君が泣いているからですよ…」
私は目を服の裾で擦った。
「わかった!私泣かない!だから泣いちゃダメ!」
「やはりお優しい方ですね…」
にっこりあの人は笑うと、あの人は私を抱き締めてくれた。
その腕は男の人なのに柔らかくて…綺麗だった。
何故か安心して、そのまま眠ってしまった。
「おや…今度は眠り姫ですか…」
まどろむ意識の中、あの人に抱えられて部屋に戻ったのを覚えている。
「いつか…喜びの涙を…あなたに…」
「ここにおられましたか帰蝶様」
馬屋の裏でよく泣いていた。いななきに泣き声を隠せたから。
「ぐすっ、ぐすっ…」
私が泣き止まないと、あの人はいつも私を慰めてくれた。
「帰蝶様はお強い子だ…」
「なんで…私が強いの?…」
「決して人の前では涙を見せないじゃありませんか…私には出来ません…」
「あなたは…すぐに泣くの?」
「人であれば泣くのは当たり前です。私は悲しい事があればすぐに泣いてしまいますよ…」
あの人の端正な顔立ちを、涙が伝う。
「な、何で泣くの?」
「今目の前にいる可愛い姫君が泣いているからですよ…」
私は目を服の裾で擦った。
「わかった!私泣かない!だから泣いちゃダメ!」
「やはりお優しい方ですね…」
にっこりあの人は笑うと、あの人は私を抱き締めてくれた。
その腕は男の人なのに柔らかくて…綺麗だった。
何故か安心して、そのまま眠ってしまった。
「おや…今度は眠り姫ですか…」
まどろむ意識の中、あの人に抱えられて部屋に戻ったのを覚えている。
「いつか…喜びの涙を…あなたに…」
若き俊才。彼はそう呼ばれていた。
今は、敵。
「ついに籠の中ですよ…帰蝶…私のね…」
今の彼は、狂人。
「ついに籠の中ですよ…帰蝶…私のね…」
今の彼は、狂人。