「うおおー!火炎車ぁ!」
「旦那!炎出すときはちゃんと周りを見る!」
枯葉に乗ってばんばん館へ飛んでくる火の粉に、柿の種を吐き出しながら、慌てて霞を発生させる。
屋根や柱をくすぶらせる炎がすっかり消えたのを確認してから、もう一回お小言だと俺は屋根から
腰を上げた。
物思いにふけっている間に、庭の枯葉はすっかり燃やし尽くされていた。いやー、きれいになった
もんだ。さすが旦那、掃除をやらせても日本一。
そういえば、掃除や裁縫も女のたしなみだって昔教えたなあ。箒が槍に変わったの、幾つの時だっけ。
「本日の罰則、これにて終!了!」
夕日に向かい、満足げに声を張り上げる後姿に慌てて駆け寄る。
「ちょっとまったあ!その前に一言!」
「なぜだ!某このとおり、ちゃんと佐助に言われたように」
「某はいい加減やめなさいって言ってんでしょ!女の子なら私!」
本当にもう、この人に向かってると、何から怒っていいんだかわかんなくなってくる。
ぬうう、とうなりながら口をつぐみ、子供みたいに上目遣いに睨んでくる顔を、そんな目で見ても
だめだからね、と睨み返す。そうしながら、なんとなくおかしい気分になる。
俺に叱られるとこの人はいつも、上目遣いで俺を睨むのだ。
今は俺より、この人のほうが背が高くなっちゃってるのに。
ずっと昔、ぐずりやの小さな姫様だったころと同じように。この顔だけはいつまでも変わらない。
なぜかすとんと抜けた怒りに、やれやれとため息をついて、足元に落ちていた柿を拾う。さっき技を
出したときに懐から落としたんだろう。抱えきれないほどの柿の実は袂をすっかり緩ませて、他にも
いくつも零れ落ちそうになっていた。
「ほらちゃんとしまって。ともかく言葉遣いくらい直そうね。お嫁の貰い手なくなるよ」
「ううむしかし、今はお館様ご上洛という大事の前、我が事にかまう暇など」
「それとこれとは別問題でしょ」
「……佐助、今日はなんでそんなに怒りっぽいのだ」
「怒られるようなことするからでしょ。ほら、子供じゃないんだからもうさあ」
ぶつぶつ呟きながら、懐に場所を空けようと四苦八苦する不器用な姿に、ちょっと焦れて柿を突き出す。
ほんとこの人ったら、小さいころから変なとこ不器用なんだよね。
上から落とせばいいやと開いた胸元に手を伸ばす。だが瞬間、思わず動きが止まった。
「旦那!炎出すときはちゃんと周りを見る!」
枯葉に乗ってばんばん館へ飛んでくる火の粉に、柿の種を吐き出しながら、慌てて霞を発生させる。
屋根や柱をくすぶらせる炎がすっかり消えたのを確認してから、もう一回お小言だと俺は屋根から
腰を上げた。
物思いにふけっている間に、庭の枯葉はすっかり燃やし尽くされていた。いやー、きれいになった
もんだ。さすが旦那、掃除をやらせても日本一。
そういえば、掃除や裁縫も女のたしなみだって昔教えたなあ。箒が槍に変わったの、幾つの時だっけ。
「本日の罰則、これにて終!了!」
夕日に向かい、満足げに声を張り上げる後姿に慌てて駆け寄る。
「ちょっとまったあ!その前に一言!」
「なぜだ!某このとおり、ちゃんと佐助に言われたように」
「某はいい加減やめなさいって言ってんでしょ!女の子なら私!」
本当にもう、この人に向かってると、何から怒っていいんだかわかんなくなってくる。
ぬうう、とうなりながら口をつぐみ、子供みたいに上目遣いに睨んでくる顔を、そんな目で見ても
だめだからね、と睨み返す。そうしながら、なんとなくおかしい気分になる。
俺に叱られるとこの人はいつも、上目遣いで俺を睨むのだ。
今は俺より、この人のほうが背が高くなっちゃってるのに。
ずっと昔、ぐずりやの小さな姫様だったころと同じように。この顔だけはいつまでも変わらない。
なぜかすとんと抜けた怒りに、やれやれとため息をついて、足元に落ちていた柿を拾う。さっき技を
出したときに懐から落としたんだろう。抱えきれないほどの柿の実は袂をすっかり緩ませて、他にも
いくつも零れ落ちそうになっていた。
「ほらちゃんとしまって。ともかく言葉遣いくらい直そうね。お嫁の貰い手なくなるよ」
「ううむしかし、今はお館様ご上洛という大事の前、我が事にかまう暇など」
「それとこれとは別問題でしょ」
「……佐助、今日はなんでそんなに怒りっぽいのだ」
「怒られるようなことするからでしょ。ほら、子供じゃないんだからもうさあ」
ぶつぶつ呟きながら、懐に場所を空けようと四苦八苦する不器用な姿に、ちょっと焦れて柿を突き出す。
ほんとこの人ったら、小さいころから変なとこ不器用なんだよね。
上から落とせばいいやと開いた胸元に手を伸ばす。だが瞬間、思わず動きが止まった。