政宗の視線の先に気付いた元親は、僅かに眉を顰める。
無数に浮かぶ花弁の隙間からでも判るほど、元親の胸のふたつの巨頭が、政宗の目を捉えて離さなかったのだ。
「ジロジロ見んな。お前だって、同じモン持ってるんだろうが」
「俺のは浮かねぇもん」
「それだけありゃ充分だ。浮かなくていい。邪魔なだけだ」
出来るものなら分けてやりたいぜ、とボヤくと、元親は視線の追撃を逃れるように、肩まで湯の中に沈ませる。
「あ!何で隠すんだよ!」
「てめぇが変な目で見てるからだろ!」
「何だよ。女同士なんだから、別にいいじゃねぇかよ」
「イヤだ。どうせ何かよからぬ事、考えてんだろうが」
「そんな事ない。ちょっと触らせて欲しいな、って思ってるだけだ」
「考えてんじゃねーか!」
怪しげな手つきでにじり寄って来る政宗を避けるように、元親は両腕で胸元をガードする。
ところが次の瞬間、政宗は思いもよらぬ行動に出た。
元親の眼前で片手を払い、飛沫を浴びせた隙に湯舟の中に潜った政宗は、怯んだ元親の背後から襲い掛かって来たのだ。
「うわっ!凄っ!この絶妙な弾力とfeather touch!」
「てめっ!この、やめろっ!離せっての!」
「柔らけー…こっちの指に吸い付いてきそうだぜ……」
「ちょ…てめぇ政宗…いい加減に…っ…ぁ…あんっ……」
「──!?」
鼻に抜けたような元親の喘ぎを耳にした政宗は、慌てて彼女の胸から手を離した。
はじめて聞く彼女の声は、未だ中身は小娘な自分と違って、既に男と通じた経験のある女のものだったからである。
だが、驚いていたのは、政宗だけではなかった。
(うそ…俺、変な声出してる……?)
少女から大人へ変化する微妙な時期に、急激に背が伸びてしまった元親は、「もはや自分に、普通の姫のような暮らしはのぞめない」と、以来ずっと男のような生活を続けていた。
ゆえに、ひととおりの作法や嗜みは心得ているものの、肝心の『秘め事』に関する一切を教わらなかった(というより、むしろ元親自身が避けていた)挙げ句、最悪な形で破瓜の儀式を迎えてしまったのである。
以来、彼との性交の際には、元親はずっと歯を食いしばり、極力声は出さぬよう努めている。
なので、まさか自分がこのような声を出せるなどと、想像だにしなかったのだ。
「…sorry、元親。…だ、大丈夫か……?」
「ぁ…あ、あぁ……」
思わずむせ返りそうになるのは、周囲に漂うバラの香りからだけでない事は、ふたりと
も良く判っていた。
無数に浮かぶ花弁の隙間からでも判るほど、元親の胸のふたつの巨頭が、政宗の目を捉えて離さなかったのだ。
「ジロジロ見んな。お前だって、同じモン持ってるんだろうが」
「俺のは浮かねぇもん」
「それだけありゃ充分だ。浮かなくていい。邪魔なだけだ」
出来るものなら分けてやりたいぜ、とボヤくと、元親は視線の追撃を逃れるように、肩まで湯の中に沈ませる。
「あ!何で隠すんだよ!」
「てめぇが変な目で見てるからだろ!」
「何だよ。女同士なんだから、別にいいじゃねぇかよ」
「イヤだ。どうせ何かよからぬ事、考えてんだろうが」
「そんな事ない。ちょっと触らせて欲しいな、って思ってるだけだ」
「考えてんじゃねーか!」
怪しげな手つきでにじり寄って来る政宗を避けるように、元親は両腕で胸元をガードする。
ところが次の瞬間、政宗は思いもよらぬ行動に出た。
元親の眼前で片手を払い、飛沫を浴びせた隙に湯舟の中に潜った政宗は、怯んだ元親の背後から襲い掛かって来たのだ。
「うわっ!凄っ!この絶妙な弾力とfeather touch!」
「てめっ!この、やめろっ!離せっての!」
「柔らけー…こっちの指に吸い付いてきそうだぜ……」
「ちょ…てめぇ政宗…いい加減に…っ…ぁ…あんっ……」
「──!?」
鼻に抜けたような元親の喘ぎを耳にした政宗は、慌てて彼女の胸から手を離した。
はじめて聞く彼女の声は、未だ中身は小娘な自分と違って、既に男と通じた経験のある女のものだったからである。
だが、驚いていたのは、政宗だけではなかった。
(うそ…俺、変な声出してる……?)
少女から大人へ変化する微妙な時期に、急激に背が伸びてしまった元親は、「もはや自分に、普通の姫のような暮らしはのぞめない」と、以来ずっと男のような生活を続けていた。
ゆえに、ひととおりの作法や嗜みは心得ているものの、肝心の『秘め事』に関する一切を教わらなかった(というより、むしろ元親自身が避けていた)挙げ句、最悪な形で破瓜の儀式を迎えてしまったのである。
以来、彼との性交の際には、元親はずっと歯を食いしばり、極力声は出さぬよう努めている。
なので、まさか自分がこのような声を出せるなどと、想像だにしなかったのだ。
「…sorry、元親。…だ、大丈夫か……?」
「ぁ…あ、あぁ……」
思わずむせ返りそうになるのは、周囲に漂うバラの香りからだけでない事は、ふたりと
も良く判っていた。
その頃。
浴室の外側を通りかかった伊達軍の若者は、釜で火をくべている見知らぬ男の姿を見つけた。
「ん?何だお前」
頭に深く載せられた編み笠で、顔は判らなかったが、男の身に着けた装束から、長曾我
部の者である事に気付く。
「おい、どうしてお前が火ィ焚いてんだ?ウチの見張り番何処行った?」
若者の質問に、男は黙って後ろを指す。
すると、そこには鼻孔から赤い液体を流しながら、妙に恍惚とした表情で失神してる同
僚がいたのである。
「…ったく、しょうがねぇな。まーた筆頭の『ばすたいむ』覗いてやがったのか…特に今は、海賊の姐さんも一緒だからな……アンタが代わりに火の番しててくれたのか。助かったぜ。湯が冷めたら、筆頭はともかく、小十郎様から大目玉食らうトコだ」
後は俺がやるから、という若者に、男は小さく頷くと立ち上がった。
「なあなあ。お前ん所の姐さん、結構イィよな?」
背中越しに呼びかけられた男は、進めていた足を止める。
「も、勿論俺ら伊達軍は、筆頭ひと筋なんだけど…筆頭とは違った魅力があんだよな、あの人。筆頭にからかわれて、ほっぺたぷーっと膨らませた時なんか、それ以上に膨らんでるオッパイと『しんくろ』してて、これがまた…」
それまで言い募っていた若者は、男から漂う気配に、慌てて首を振る。
「お、怒るなよ。褒めてんだぜ?あの人カワイイじゃねぇか。お前もそう思うだろ?」
「……」
若者の質問には答えず、男は一度だけちらり、と浴室の窓の方角を一瞥したが、やがて完全に背を向けると去っていった。
浴室の外側を通りかかった伊達軍の若者は、釜で火をくべている見知らぬ男の姿を見つけた。
「ん?何だお前」
頭に深く載せられた編み笠で、顔は判らなかったが、男の身に着けた装束から、長曾我
部の者である事に気付く。
「おい、どうしてお前が火ィ焚いてんだ?ウチの見張り番何処行った?」
若者の質問に、男は黙って後ろを指す。
すると、そこには鼻孔から赤い液体を流しながら、妙に恍惚とした表情で失神してる同
僚がいたのである。
「…ったく、しょうがねぇな。まーた筆頭の『ばすたいむ』覗いてやがったのか…特に今は、海賊の姐さんも一緒だからな……アンタが代わりに火の番しててくれたのか。助かったぜ。湯が冷めたら、筆頭はともかく、小十郎様から大目玉食らうトコだ」
後は俺がやるから、という若者に、男は小さく頷くと立ち上がった。
「なあなあ。お前ん所の姐さん、結構イィよな?」
背中越しに呼びかけられた男は、進めていた足を止める。
「も、勿論俺ら伊達軍は、筆頭ひと筋なんだけど…筆頭とは違った魅力があんだよな、あの人。筆頭にからかわれて、ほっぺたぷーっと膨らませた時なんか、それ以上に膨らんでるオッパイと『しんくろ』してて、これがまた…」
それまで言い募っていた若者は、男から漂う気配に、慌てて首を振る。
「お、怒るなよ。褒めてんだぜ?あの人カワイイじゃねぇか。お前もそう思うだろ?」
「……」
若者の質問には答えず、男は一度だけちらり、と浴室の窓の方角を一瞥したが、やがて完全に背を向けると去っていった。




