政宗が女として生きることはできない。
子を産むには十月十日もの時間がいる上に、産んでからも回復に時間がかかる。
その間「伊達政宗」は表舞台に立つことはできない。
影武者を立てるにしても名代(みょうだい)を立てるにしても、一体誰がなるというのか。
現実問題として、彼女は子を産むことができない。女が男として世に出たときから、伊達家は緩やかに滅亡へと向かっているのだ。
「なあ、小十郎」
呼びかけられたが、考えに頭を巡らせていたため応えるのが遅れた。
しかし政宗に気にする様子は見られない。
春の淡雪のように儚げな声で言葉を紡いだ。
「万人の幸せと、一人の幸せを天秤にかけたら……普通、万人を取るよな」
一人の、政宗の幸せ。
それは天下を取ることか。それとも甲斐の若虎と添い遂げることか。
小十郎は立ち上がり、政宗の肩をつかんだ。びくりと体が強張るが、気にせず強く揺すった。
「政宗様。俺の幸せは、政宗様が幸せであることです」
「そうか」
政宗は顔を伏せて笑った。喉の奥を震わせるような笑声は悲しげで、小十郎は目を閉じ、腕の中で震えている姫君の頭を慈しむように撫でた。
子を産むには十月十日もの時間がいる上に、産んでからも回復に時間がかかる。
その間「伊達政宗」は表舞台に立つことはできない。
影武者を立てるにしても名代(みょうだい)を立てるにしても、一体誰がなるというのか。
現実問題として、彼女は子を産むことができない。女が男として世に出たときから、伊達家は緩やかに滅亡へと向かっているのだ。
「なあ、小十郎」
呼びかけられたが、考えに頭を巡らせていたため応えるのが遅れた。
しかし政宗に気にする様子は見られない。
春の淡雪のように儚げな声で言葉を紡いだ。
「万人の幸せと、一人の幸せを天秤にかけたら……普通、万人を取るよな」
一人の、政宗の幸せ。
それは天下を取ることか。それとも甲斐の若虎と添い遂げることか。
小十郎は立ち上がり、政宗の肩をつかんだ。びくりと体が強張るが、気にせず強く揺すった。
「政宗様。俺の幸せは、政宗様が幸せであることです」
「そうか」
政宗は顔を伏せて笑った。喉の奥を震わせるような笑声は悲しげで、小十郎は目を閉じ、腕の中で震えている姫君の頭を慈しむように撫でた。




