『タクシードライバー』(原題:Taxi Driver)は、1976年公開のアメリカ映画。監督はマーティン・スコセッシ、脚本はポール・シュレイダー。主演はロバート・デ・ニーロ。第29回カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した。

概要
ベトナム戦争帰還兵トラヴィス・ビックルの孤独と妄念を描く心理ドラマ。1970年代ニューヨークの退廃的都市空間を背景に、社会から疎外された個人の暴力衝動と自己正当化が描写される。アメリカン・ニューシネマを代表する作品の一つとされる。
あらすじ
不眠症に悩むトラヴィスはニューヨークでタクシー運転手として働き始める。夜の街を走りながら、彼は売春、麻薬、犯罪に満ちた都市を「浄化」すべき腐敗として見るようになる。
彼は政治家パランタインの選挙事務所で働くベッツィに接近するが、彼女との関係は破綻する。次第に孤立を深めたトラヴィスは武器を購入し、肉体を鍛え、暴力的行動を準備する。
やがて彼は、未成年の売春少女アイリスを救おうと決意し、彼女を搾取する男たちを襲撃する。凄惨な銃撃戦の末、彼は重傷を負いながらも生き延びる。世間は彼を「英雄」として扱うが、ラストでは彼の内面の危うさがなお残される。
主題
1. 孤独と疎外
都市は無数の人間を抱えながらも、個人を孤立させる空間として描かれる。トラヴィスの語りは自己との断絶を示す。
都市は無数の人間を抱えながらも、個人を孤立させる空間として描かれる。トラヴィスの語りは自己との断絶を示す。
2. 暴力と浄化幻想
トラヴィスは暴力を道徳的浄化と結びつける。だがその行為は救済か狂気か判然としない。
トラヴィスは暴力を道徳的浄化と結びつける。だがその行為は救済か狂気か判然としない。
3. メディアと英雄化
終盤で彼が英雄視される展開は、社会が暴力をいかに物語化し消費するかを示唆する。
終盤で彼が英雄視される展開は、社会が暴力をいかに物語化し消費するかを示唆する。
4. 実存的危機
トラヴィスの問いは政治的というより存在論的である。「自分は誰か」「何をなすべきか」という問いが暴走へと転化する。
トラヴィスの問いは政治的というより存在論的である。「自分は誰か」「何をなすべきか」という問いが暴走へと転化する。
主な登場人物
トラヴィス・ビックル:主人公。元海兵隊員。
ベッツィ:政治運動に関わる女性。理想の投影対象。
アイリス:12歳の売春少女。
スポーツ:アイリスを管理する男。
影響・評価
本作は都市映画、心理劇、暴力表現の革新として映画史に大きな影響を与えた。トラヴィスの独白や鏡に向かっての台詞(“You talkin’ to me?”)は広く引用される。
また、個人の疎外と過激化という主題は現代社会においても再解釈され続けている。