チェンジ・ロワイアル@ ウィキ
見える世界、見えない世界
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「ぐあああああ!!」
悲鳴嶼行冥がこのバトルロワイアルにおいて最初に行ったことは、苦悶の声を上げることだった。
彼は、物心つく前に視力を失っている。これまでの人生を、視覚を持たずに過ごしてきた。
しかし今回悲鳴嶼に与えられた体は、健常な視力を宿している。
彼は、物心つく前に視力を失っている。これまでの人生を、視覚を持たずに過ごしてきた。
しかし今回悲鳴嶼に与えられた体は、健常な視力を宿している。
その場が暗闇の屋外だったら、まだましだったのかもしれない。
だが悲鳴嶼のスタート地点は、明かりのついた屋内だった。
何の心構えもできていない状態で、未知の感覚が膨大な情報を送り込んでくるのだ。
いかに歴戦の強者といっても、悶絶するしかない。
目を潰したくなる衝動をかろうじて抑え込み、悲鳴嶼はその場に倒れ込んだ。
だが悲鳴嶼のスタート地点は、明かりのついた屋内だった。
何の心構えもできていない状態で、未知の感覚が膨大な情報を送り込んでくるのだ。
いかに歴戦の強者といっても、悶絶するしかない。
目を潰したくなる衝動をかろうじて抑え込み、悲鳴嶼はその場に倒れ込んだ。
◆ ◆ ◆
胡蝶しのぶは、走っていた。
この場に到着してすぐ、誰かの悲鳴が耳に届いたからだ。
まさか開始数秒で殺人が起きるとも思えないが、何か不慮の事故があったのかもしれない。
そう考えると、しのぶは無視できなかった。
まだ、荷物の確認もしていない。
ゆえにしのぶはまだ、自分の精神が宿っている少女が何者なのかまだ知らない。
だが実際に体を動かしてみて、理解したことがある。
この体が発揮できる力は、異常だと。
いかに全集中の呼吸を常に保っていられるしのぶと言えども、さすがに体を別人のものにされてしまっては呼吸の精度が落ちてしまう。
だがそれでも、この体が発揮する筋力は常時のしのぶと互角……あるいはそれ以上だ。
とうてい、人間の体とは思えない。
かといって、鬼の体だとも思えない。
世界のどこかには、こんな肉体を持つ人間が存在したというのか。
この場に到着してすぐ、誰かの悲鳴が耳に届いたからだ。
まさか開始数秒で殺人が起きるとも思えないが、何か不慮の事故があったのかもしれない。
そう考えると、しのぶは無視できなかった。
まだ、荷物の確認もしていない。
ゆえにしのぶはまだ、自分の精神が宿っている少女が何者なのかまだ知らない。
だが実際に体を動かしてみて、理解したことがある。
この体が発揮できる力は、異常だと。
いかに全集中の呼吸を常に保っていられるしのぶと言えども、さすがに体を別人のものにされてしまっては呼吸の精度が落ちてしまう。
だがそれでも、この体が発揮する筋力は常時のしのぶと互角……あるいはそれ以上だ。
とうてい、人間の体とは思えない。
かといって、鬼の体だとも思えない。
世界のどこかには、こんな肉体を持つ人間が存在したというのか。
(ダメね、よけいなことを考えてしまう……。
今は、悲鳴をあげた人を助けることを考えないと)
今は、悲鳴をあげた人を助けることを考えないと)
おのれに気合いを入れ直し、しのぶは悲鳴が発せられたと思わしき建物に飛び込む。
手当たり次第に部屋をのぞいていくと、すぐに銀髪の青年が目をつぶって倒れているのを発見した。
手当たり次第に部屋をのぞいていくと、すぐに銀髪の青年が目をつぶって倒れているのを発見した。
「大丈夫ですか!」
「ああ、心配ない……。どなたか知らぬが、気遣い感謝する」
「ああ、心配ない……。どなたか知らぬが、気遣い感謝する」
しのぶが声をかけると、青年は落ち着いた口調で返答してくる。
「別にケガをしたわけではないのだ。
ただ盲目の身が突然見えるようになったために、その刺激に驚いてしまっただけのこと……。
見ず知らずの方を心配させてしまって、申し訳ない」
「盲目……?」
ただ盲目の身が突然見えるようになったために、その刺激に驚いてしまっただけのこと……。
見ず知らずの方を心配させてしまって、申し訳ない」
「盲目……?」
しのぶの思考に、引っかかりが生まれる。
しのぶの身近にも、盲目の人物が一人いる。
そして目の前の青年の口調は、その人物のものにそっくりだ。
しのぶの身近にも、盲目の人物が一人いる。
そして目の前の青年の口調は、その人物のものにそっくりだ。
「あの……つかぬ事を伺いますが……。
ひょっとしてあなた、悲鳴嶼さんでは?」
「何……? ひょっとしてあなたは、私の知り合いなのか?」
「私です、悲鳴嶼さん。胡蝶しのぶです」
「そんな……」
ひょっとしてあなた、悲鳴嶼さんでは?」
「何……? ひょっとしてあなたは、私の知り合いなのか?」
「私です、悲鳴嶼さん。胡蝶しのぶです」
「そんな……」
しのぶの名を聞き、悲鳴嶼に驚きの色が浮かぶ。
「おまえは……死んだはず……。
いや、それを言うのであれば私もか……」
「え!?」
いや、それを言うのであれば私もか……」
「え!?」
今度は、しのぶが驚愕に目を見開く。
悲鳴嶼と違い、彼女は死んでからこの場に連れてこられたわけではない。
彼女の最後の記憶は、他の柱たちと共に無限城へと落とされる瞬間だ。
もとより彼女は、おのれの命と引き換えに姉の仇を討つ気でいた。
ゆえに、自分が死んだという話にはまだ納得がいく。
しのぶが驚いたのは、悲鳴嶼も死んだという点だ。
悲鳴嶼と違い、彼女は死んでからこの場に連れてこられたわけではない。
彼女の最後の記憶は、他の柱たちと共に無限城へと落とされる瞬間だ。
もとより彼女は、おのれの命と引き換えに姉の仇を討つ気でいた。
ゆえに、自分が死んだという話にはまだ納得がいく。
しのぶが驚いたのは、悲鳴嶼も死んだという点だ。
「悲鳴嶼さん……。もう少し、詳しく聞かせていただけますか?」
◆ ◆ ◆
「そうですか……」
悲鳴嶼の話は、しのぶに複雑な思いを抱かせた。
鬼殺隊全員の悲願である、鬼舞辻無惨の打倒は果たされた。
しかし柱のうち、時透は上弦の壱との戦いで討ち死に。
それ以外の柱も、無惨との戦いで重傷を負った。
悲鳴嶋には確認できなかったが、何人かは死亡している可能性が高いとのことだ。
無惨の討伐は、むろん喜ぶべきことである。
だが苦楽を共にしてきた仲間たちが何人も命を落としたとなれば、無条件に喜ぶ気分にはなれない。
むろん彼らも、自分と同様戦いの中で命を落とす覚悟はしていたはずだ。
それでも、割り切ることができないのが人間の感情というものだ。
鬼殺隊全員の悲願である、鬼舞辻無惨の打倒は果たされた。
しかし柱のうち、時透は上弦の壱との戦いで討ち死に。
それ以外の柱も、無惨との戦いで重傷を負った。
悲鳴嶋には確認できなかったが、何人かは死亡している可能性が高いとのことだ。
無惨の討伐は、むろん喜ぶべきことである。
だが苦楽を共にしてきた仲間たちが何人も命を落としたとなれば、無条件に喜ぶ気分にはなれない。
むろん彼らも、自分と同様戦いの中で命を落とす覚悟はしていたはずだ。
それでも、割り切ることができないのが人間の感情というものだ。
「……それにしても、妙だな」
しのぶがしばらく沈黙していると、悲鳴嶼が口を開く。
「何がですか?」
「私は、おまえが死んでしまったことを知っている。
時間のズレもそうだが……。もしおまえが死ぬ前にこの場に連れてこられたというのなら、
無惨の城での戦いには参加しようがない。つまり、死ぬこともないということだ。
これは明らかに矛盾している」
「……悲鳴嶼さんは、並行世界という言葉をご存じですか?」
「いや、聞いたことがないが……」
「まだ実証されていない、おとぎ話のようなものですが……。
世界は一つではなく、似ているが微妙に異なる世界が無数に存在しているという考え方です。
つまり無惨の城での決戦で私が何者かに連れ去られた世界と、連れ去られずにそのまま戦って戦死した世界が存在する……」
「私は後者、おまえは前者からここに連れてこられたということか……」
「そういうことになりますね。あまりに荒唐無稽な話で、信じられないかもしれませんが……」
「いや、信じるさ」
「私は、おまえが死んでしまったことを知っている。
時間のズレもそうだが……。もしおまえが死ぬ前にこの場に連れてこられたというのなら、
無惨の城での戦いには参加しようがない。つまり、死ぬこともないということだ。
これは明らかに矛盾している」
「……悲鳴嶼さんは、並行世界という言葉をご存じですか?」
「いや、聞いたことがないが……」
「まだ実証されていない、おとぎ話のようなものですが……。
世界は一つではなく、似ているが微妙に異なる世界が無数に存在しているという考え方です。
つまり無惨の城での決戦で私が何者かに連れ去られた世界と、連れ去られずにそのまま戦って戦死した世界が存在する……」
「私は後者、おまえは前者からここに連れてこられたということか……」
「そういうことになりますね。あまりに荒唐無稽な話で、信じられないかもしれませんが……」
「いや、信じるさ」
即座にそう返す悲鳴嶼に、しのぶはかすかに驚きを見せる。
「ちょっと意外です。悲鳴嶼さん、こういうのは信じない方かと思ってたので」
「何を言う。たしかに現実離れした話ではあるが……。
そもそも鬼の血鬼術なども、この世の理から外れたもの。
ならばどんな不可思議なことがあろうとも、私は受け入れよう。
現に今も、他人の体に精神を入れられるという不思議が起きているわけだしな」
「たしかに……それもそうですね。
ああ、血鬼術といえば……。この体の入れ替わりって、血鬼術によるものだと思います?」
「その可能性が高いとは思うが……。断言はできんな。
どんな不思議が起こってもおかしくない状況となれば、我々がまったく知らぬ力によるものという可能性も否定できん」
「私も同じ意見です」
「だが、鬼であろうとなかろうと、このような行いは許されるものではない。
私がすべきことは、首謀者を倒しこの無益な戦いを終わらせることだ。
協力してくれるな、しのぶ」
「もちろんです」
「何を言う。たしかに現実離れした話ではあるが……。
そもそも鬼の血鬼術なども、この世の理から外れたもの。
ならばどんな不可思議なことがあろうとも、私は受け入れよう。
現に今も、他人の体に精神を入れられるという不思議が起きているわけだしな」
「たしかに……それもそうですね。
ああ、血鬼術といえば……。この体の入れ替わりって、血鬼術によるものだと思います?」
「その可能性が高いとは思うが……。断言はできんな。
どんな不思議が起こってもおかしくない状況となれば、我々がまったく知らぬ力によるものという可能性も否定できん」
「私も同じ意見です」
「だが、鬼であろうとなかろうと、このような行いは許されるものではない。
私がすべきことは、首謀者を倒しこの無益な戦いを終わらせることだ。
協力してくれるな、しのぶ」
「もちろんです」
悲鳴嶼からの確認に、しのぶは即答する。
その言葉に、偽りはない。
だが彼女の胸中には、言葉に出していない思いも渦巻いていた。
その言葉に、偽りはない。
だが彼女の胸中には、言葉に出していない思いも渦巻いていた。
(悲鳴嶼さんが来た世界では、無惨は討たれた……。これはもう、確定した事実。
しかし、私が来た世界では?
私が欠けたことで、無惨が勝利してしまうかもしれない。
それを防ぐために、私はなんとしても生きて帰らなければならない。
死ぬために生き残るなんておかしな話だけど、それが私のやるべきこと……)
しかし、私が来た世界では?
私が欠けたことで、無惨が勝利してしまうかもしれない。
それを防ぐために、私はなんとしても生きて帰らなければならない。
死ぬために生き残るなんておかしな話だけど、それが私のやるべきこと……)
無意識に拳を握りしめるしのぶ。
その正面にいる悲鳴嶼は、かすかに悲しげな表情を浮かべた。
その正面にいる悲鳴嶼は、かすかに悲しげな表情を浮かべた。
【悲鳴嶼行冥@鬼滅の刃】
[身体]:坂田銀時@銀魂
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:主催者の打倒
[備考]
[身体]:坂田銀時@銀魂
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:主催者の打倒
[備考]
- 参戦時期は死亡後。
【胡蝶しのぶ@鬼滅の刃】
[身体]:アリーナ@ドラゴンクエストIV
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止め、元の世界に帰る
[備考]
[身体]:アリーナ@ドラゴンクエストIV
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止め、元の世界に帰る
[備考]
- 参戦時期は、無限城に落とされた直後。
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