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  • チェンジ・ロワイアル@ ウィキ
  • VIVID VICE -曇天の道を-

チェンジ・ロワイアル@ ウィキ

VIVID VICE -曇天の道を-

最終更新:2023年02月15日 00:05

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だれでも歓迎! 編集
ため息をすると幸せが逃げて行くとは言うが、こんな状況では幸せもクソもないだろうと凛は思う。

実はこれまでの事は全部夢で、瞬きの間に自室のベッドで目を覚ます。
そんな展開にはならないものか。
荒唐無稽な内容にツッコミを入れ、けれども所詮はただの夢。
何時までも引き摺っていては、嫌味ったらしい笑みを浮かべた赤い奴にあれこれ皮肉を言われる事間違いなし。
さっさと切り替え聖杯獲得に向けての一日を始める。

現実逃避気味な思考をしてみても、目に映る光景に変化はない。
これは紛れも無い現実。
体をジャガイモ頭の5歳児に変えられ、殺し合いに巻き込まれた。
その事実は依然として変わらないのである。

「何か疲れた顔してんなぁ」
「そりゃそうでしょ。というかあんたも人の事言えないじゃないの」

マスコットキャラクターのような姿となったバリーにそう返す。
凛の隣に座り込んだ彼には、何とも言えぬ哀愁が漂っていた。
そっちはそっちで気苦労があるのだろうか。

今回起きた戦いに関して、自分はほとんど蚊帳の外だった。
気を失ったまま目を覚まさず、定時放送すら聞き逃す始末。
ようやく意識が浮上した時には何があったか詳しく知る余裕も無く、ただ危機的状況を変える為に戦場へ介入。
一先ず危機は去ったと見て、雨を凌げる場所にどっかりと座り込み今に至る。

「…ま、いつまでもこのままじゃいられないわよ」

言いながら立ち上がる。
よっこらせとつい中年のような言葉を使ってしまったが、隣の獣は気にした様子も無い。
とにかくまずは、知らなければならない。
何が発端で戦いが起きたのか。

そして、何故彼らは死んでしまったのかを。



◆


時は定時放送が始まる数分前まで遡る。

大通りを走る金髪の少年、ゲンガー。
バリーに言われるまま幽体離脱を解除し、デイパックを引っ掴むや否や駆け出した。
必死の二文字がこれ程似合う姿も中々無いだろう程に、表情は切羽詰まったものになっている。
突如(二つの意味で)牙を剥いた産屋敷(無惨)を相手に、キャメロットが重傷を負った。
今のゲンガーの頭にあるのは、エボルトから譲渡された回復効果のあるらしいグミを持って行く事のみ。
正直食べたとしても失った腕までは取り戻せないだろうが、死ぬよりはマシと自分に言い聞かせる。

いや、本当はまた自分に関わった者が死ぬのが恐いだけだ。
もしこのままキャメロットが助からなければ、やはり自分は忌み嫌われる方のアブソルではないか。
凛達と遭遇した時はキャメロットの言葉で情報交換を承諾したが、手を振り払い立ち去るのが正解だったのではないか。
選択を間違えたツケを、よりにもよってキャメロットに支払わせた。
そのような結果を認める訳にはいかない。
だからゲンガーは走る、一秒でも早くキャメロット達の元へ戻る為に。

やがてバリー達と別れた場所へ戻ったゲンガーを、

「よう、随分慌ててんなぁお前」

呑気に手を挙げて反応するキャロットが迎えた。

「は?」

ついさっきまでの必死な形相は、一体全体何処へ消えたのやら。
子どもの落書きのような間抜け面へと一瞬で変わる。
目の前にいるのはキャメロット。
但し失った筈の腕は指一本欠ける事無く存在しており、しかも様子が何やらおかしい。
そう長い時間共にいた訳で無いとはいえ、彼女は生真面目を絵に描いたような少女だったではないか。
なのに今目の前にいるキャメロットは、真面目さとは正反対の口調と態度。
放送前にルブランで出会ったエボルトのようだ。

「おいキャメロット…だよな?」
「違う違う。そこの合成獣っぽいのにも言ったが、俺はグリードだ」

いや誰だよ。どう見てもキャメロットだろ。

反射的に出掛かった言葉をグッと飲み込み、指差した方を見る。
視線を向けられたのはどこか遠い目をしているバリー。
傍には凛がその小さな体でぐったりとしており、こちらは未だ気絶中らしい。

どうも様子のおかしいキャメロットを気にしながらも、事情を知っているならとバリーに聞こうとした時だ。
忌まわしいチャイムが島中に響き渡ったのは。


○


「……」

一回目の時と同様、主催者による定時放送には思考を大なり小なり掻き回される。
怒りか、悲しみか、或いは自分自身でも判断できないナニカか。
複雑に絡み合った感情のまま、ゲンガーは仲間の死を改めて噛み締める。
カイジとロビンは言わずもがな、この目で最期を見たのではないがハルトマンもやはり死んだらしい。
また直接の面識は無いが志村新八とアドバーグ・エルドル。
前者は承太郎達が、後者はミチル達が救出に向かった筈だが間に合わなかったのか。

複数の死者が出ている状況な為、大手を振って喜べはしないが無事な者もいる。
最初の放送前に別れた神楽と康一の名は発表されていない。
ということは今頃とっくに病院へ着き、戦力を整えているのだろう。
カイジも彼らと別行動を取らずに居たら、死なずに済んだのかもしれないのはやり切れなかった。

風都タワーに向かった4人と、下水道に降りた二人も無事。
もし彼らの内から死者が出ていたら、今度こそ自分は心が折れていたかもしれない。
そうならずに済んだのは良かったと言うべきなのか。
或いはこの先そうなる前に、自分は彼らと距離を置くべきなのかは判断が出来なかった。

(にしてもあの青白い顔の野郎、何言ってんだ?ケケッ、お節介も良いところだぜ)

ハワードなる男は熱心に己の夢を語っていた。
ゲンガーにとっては、呆れと苛立ち以外の何を抱けば良いのか分からない内容だ。
ポケモン愛に溢れているようだが、そもそもそのポケモンを殺し合いに巻き込んでおいてどの口が言うのか。
アレは自分の理想に酔っていて、馬鹿げた真似をしているのに気付かないタイプかもしれない。
木曾が死んで以降強まった主催者への苛立ちは、ここに来てより大きくなった。
ボンドルドや斉木空助は勿論、あのハワードの計画も徹底的に邪魔してやらねば気が済まない。

「へぇ、こいつもいるって事はやっぱり親父殿は無関係か?」

ゲンガーが苛立ちを燻らせている横では、名簿を眺めるグリードの姿があった。
殺し合いの大まかな詳細はバリーから聞いたものの、自分の意識が表に出るまでに何があったかは未だ不明。
言ってしまえば最初から殺し合いに参加していた連中とは違い、途中参戦のようなものだ。
情報面でも12時間分の遅れがある。
ならばまずは基本的な事からとデイパックを漁り、知った名前があるかを確認。
見つけたのは一人、アルフォンス・エルリック。
鋼の錬金術師の弟で、兄と同じ人柱候補。
ウィンリィ・ロックベルの事をチラつかせ牽制までした相手を、こんないつどこでアッサリ死んでもおかしくない催しに巻き込んだ。
お父様とも呼ばれるホムンクルスの創造主にしては、違和感しかない行動だ。
ほぼ確定だとは思っていたが、やはり今回の殺し合いには関わっていないと見て良いだろう。

名簿を仕舞い、次はこの三人をどうするかだ。
気絶中のガキはともかく、バリーとゲンガーからはまだ情報を引き出せるし、何だったら手頃な部下として生かす手もある。
優勝にしろ他の方法で望む全てを手に入れるにしろ、じっくり頭を働かせねばなるまい。

(食わせといてやるか…)

思考の海に沈むグリードを他所に、ゲンガーはデイパックからピーチグミを取り出す。
元はキャメロットに食べさせるつもりだったが、当の本人は腕も治ってピンピンしている。
何故か様子が明らかにおかしくなっている理由はバリーに聞けば良い。
ただこのグミが必要な人物はキャメロット以外にもいる。
遠坂凛。死んではいないが幼い体で受けるには酷な傷を負わされた少女。
気を失っている今は咀嚼など不可能なので、口に含ませるとミネラルウォーターでむせないよう慎重に流し込む。
ゴクリと音を立て嚥下したのを確認、心なしか顔色も良くなったように見えた。

安堵の声を漏らしたゲンガーへ、ふと思いついたようにバリーが声を掛ける。

「なぁゲンガー、お前が持ってたこの刀俺に譲ってくれねえか?」
「あん?急に何言ってんだ?」
「いやーやっぱこういう得物の方が使いやすいんだよなぁ」

前々から殺しに使っていた肉切り包丁程ではないが、やはりこういった刃物はしっくり来る。
既に殺し合いそのものに対して心が折れかけているものの、完全に諦めてしまうのもそれはそれで少し癪。
なのでせめて使い慣れた得物を手元に置くくらいはしておきたかった。

「代わりにこの傘やるからよ。頑丈でしかも銃が仕込んであるんだぜ?」
「…何で傘にんなもん付いてんだよ」
「俺に聞くなよ。元々使ってた奴…確か神楽だかってのに聞いとけ」

思わぬ名前が出て来た事に驚く。
別行動中の仲間の私物が、こうして支給品となっていたのか。
それを知ったら武器の交換もやぶさかではない。
神楽と再会した時に返すまで、自分の手元に預かっておくという形で使わせてもらう。
だが八命切は元々木曾の支給品。
別に彼女の愛刀という訳では無いだろうが、それを手放すのには少々抵抗があるのも事実。

(まぁ、アイツは別に気にしないんだろうけどよ…)

からっとした笑みで、お前の好きにすりゃ良いさとでも言いそうだ。
暫しの躊躇を見せ、そこで気付く。
ミチルから譲渡された吉良の支給品に、バリーが欲するだろう武器がある。
自分は既に八命切を持っていた為、使う機会が無く仕舞ったままにしてあったのだ。
バリーに伝え実物を見せてやるとそれでも良いと言われたので、番傘と交換する。

(やーっと良い得物が手に入ったかぁ)

七宝のナイフというらしい剣。
殺人鬼が使うにしては小奇麗な見た目だが、斧や番傘よりも遥かにしっくり来る。
望んだ武器を手に入れ、後はこれで思う存分殺しができれば文句なしだが現実はそう甘くない。
剣一本で実力差を覆せるようなら諦め気味な思考になどなっておらず、また当分、下手をすれば生きて帰るまで殺しはおあずけかもしれない。

物々交換をし終えた二人に、グリードが話しかけようとする。
が、その前に一つやる事があった。

「おい、何時までコソコソ隠れてるつもりだ?とっくにバレてんだよ」

建物の陰に向け言葉をぶつければ、ビクリとあからさまに動揺した気配が伝わる。
盗み聞きして情報を手に入れる算段なのか知らないが、そうはさせない。
引き摺り出してやった方が早いかと考え、すぐにその必要は無いと分かった。

「待って!僕は敵じゃないよ!」

物陰から白い服の青年が慌てて姿を現わしたのだから。


○


冷水を浴びせられた、とでも言うべきか。
定時放送を聞き終えたメタモンは、先程までの錯乱が嘘のように落ち着きを取り戻している。
いや、完全に動揺を抑えられたかと言えばそうでもない。
過去のトラウマは未だ根深く刻まれているし、放送で10名の死者が発表されまたしても「へんしん」出来る数が減った事は悔しくて堪らない。

(ッ!!!落ち着け…落ち着けぼく……)

だがここで熱くなればまたしても失敗を繰り返すだけだ。
トレーナーに捨てられた忌々しい記憶をほじくり返された挙句、貴重なへんしんを一つ喪失、アナザーカブトへの半ば強制的な変身。
それらのトラブルが引き起こした結果とはいえ、考え無しの馬鹿と罵倒されても仕方ない行動を取った。
蒼い鎧の戦士やチェンソーの怪物との戦闘は無意味に傷を増やすだけで終わったが、戒めにはなっただろう。

二度とさっきのような無様は晒したまるか、自分はいらないポケモンなんかじゃあない。
己の心にキツく言い聞かせ、傷ついた体を休める場所を探しに街へと足を踏み入れた。

手頃な施設を探す最中、聞こえて来たのは誰かの話し声。
物音を立てないように近付き、物陰からそっと顔を覗かせると金髪の少年少女に奇妙な動物、横たわった幼子の四人組がいるのを発見。
初めて見る顔ぶれだったが、一つ見覚えがある物に気付いた。
動物が被っている帽子。あれと全く同じデザインの物をメタモンは知っている。
バトルロワイアル開始からそう間もない頃、村で金髪の青年と殺し合っていた毛むくじゃらの巨漢。
自分が青年を殺すと不利を悟ったのか、四足歩行の姿に変化し一目散に逃げ出した。
あの時の参加者が被っていたのと同じ帽子という事は、同一人物(人じゃない)なのではないか。
巨漢と四足歩行以外の姿にも変化出来ると考えれば、成程不思議は無い。

そこまで考えた所で、金髪の少女の声に強制的に思考を打ち切られた。

(ば、バレてる!?)

自分では上手く隠れたつもりだが、向こうにはお見通しのようだ。
相手の能力に感心している場合ではない、切り抜ける方法を考えなければ。
まごついている間に少女からの威圧感が膨れ上がる。
それを受けてメタモンは腹を括った。
どうせバレているなら下手な真似に出て警戒心を煽るより、こっちから姿を見せて敵では無いとアピールした方がマシ。
今すぐに殺さずとも、近くで隙を狙えば良いだけだ。

そうと決まれば早速物陰から出る、その前にサソードヤイバーを路地裏の方へ隠す。
帽子の動物が村で遭遇した参加者だとすれば、凶器も見られているはず。
デイパックが手元に無い以上はこうするしかないだろう。
故障し変身機能が失われたサソードヤイバーなら、一時的に手放すのにもさして躊躇はなかった。
幸いあの時はサソードに変身していた為、現在の神代剣の姿は知られていない。
覚悟を決めるように深呼吸し、少女達の前に飛び出た。


○


敵じゃない。
両手を上げ全身でそうアピールする青年を、グリードはジロリと眺める。
大層な金をかけただろう白い服は所々が破れ、傷だらけだ。
態度だけなら気弱そうな青年だが、それは表面上のものでは?
傍らのバリーとゲンガーも同意見なのか、警戒を滲ませた瞳を向けている。
すると視線に気付いたらしいメタモンは慌てて口を開いた。

「あ、この傷はここに来るまでに襲われたからなんだ!僕は殺し合いに乗ってなんかないよ!」

襲われたから対処した。理由としては真っ当なもの。
見たところ武器は持っていないようだが、参加者はスタンドなど固有の能力を持つ者もいる。
或いは肉体の方に何らかの特別な力が備わっているのか。
どちらにせよ、即座に戦闘にはならないだろうと対話を続けた。

「で?そもそもお前は誰だ?どんな奴と殺り合った?」
「え、うん、僕は――」

名前を聞かれる事は当然予測していた。
だがここで馬鹿正直に「メタモンです」と名乗る訳にはいかない。
最初の定時放送前に遭遇した三人組はゲンガー経由でメタモンの事を知っており、おまけに彼らには殺し合いに乗っている事がバレてしまった。
ということはあの三人が他の参加者にも自分への警戒を促していても、何ら不思議ではない。
もしかすると目の前の連中の中にゲンガーがいる可能性だってある。
だからここは別の名前を使う。
単に自分の名前を言うだけなのに時間をかけては怪しまれること、間違いなし。
賭けに出る心構えで一つの名を口にした。

「黎斗。檀黎斗って言うんだ」
「そうかい。で黎斗、お前はここに来るまで何があったんだよ?」

賭けには勝った。
グリードは檀黎斗という名には特に反応を見せず、後ろの二人も同じ。
運が良い事に今この場には檀黎斗と面識のある人物はいない。
生存者の中から適当な名前を口にしただけだが、上手くいったらしい。
内心でガッツポーズをしつつ、メタモンはグリードの質問に答えた。

内容としてはこうだ。
6本の腕と触手を生やした怪物に変身する黒髪の少年、空飛ぶ雲に乗ったチェンソー頭の怪人。
危険な参加者二名の殺し合いに巻き込まれ、どうにか逃げる事に成功。
幸い自分に与えられた肉体はただの人間では無く戦う力があったので、死なずに済んだ。
実際はメタモンの方から少年を襲ったのが切っ掛けとなったのだが、それを言う必要は無い。
また少年の特徴からバリー達とは別行動中のアルフォンスであると判明した。

「アルフォンスのやつマジか…」
「あの金髪チビの弟がねぇ…」

殺し合い以前よりアルフォンスを知っている二人は思い思いに呟く。
村での情報交換の際にアルフォンスの肉体が暴走の危険性があるとはバリーも聞いていたが、危惧した通りになったというのか。
人間だった頃の肉体を理性なき獣のようにされた経験があるバリーとしては、少しだけ同情の念を抱いてしまう。
グリードの方は別に同情などする気は無い。
だが兄弟揃って甘ちゃんな印象のあった錬金術師、その片割れが難儀な目に遭っているのには多少の驚きがある。

凛が起きているか、或いはキャメロットの意識が健在ならばもっと詳しく聞こうとしただろう。
だが此度はそうならず、徐々に近づいて来る音に全員が気を取られた。

「あ?こりゃぁ…」

真っ先に音の正体に気付いたのはゲンガーだ。
これと同じ音を放送前にも何度か聞いた。
エンジンを吹かし、タイヤがアスファルトを擦れる音。
誰かがバイクを走らせている。

やがて操縦者が姿を見せた。
白いバイクを駆るのはゲンガーにも見覚えがある特徴的な髪型の少年。
アドバーグ・エルドル救出の為に下水道へと降りた仲間。

「ミチル!?」
「ゲンガーしゃん!?ご、ごめんなさい!今は…」

バイクを急停車させたミチルの元に駆け寄るゲンガー。
何故そうも焦っている、しんのすけは一緒ではないのか、地下で何があったんだ。
湧き出る疑問をぶつけようと口を開きかけ、何故彼女が焦っているのかが分かった。

ミチルが走って来た方から、表情を憤怒一色に染めた猛獣が迫っているのが見えたのだ。


◆◆◆


どれくらいの時間そうしていただろう。
一分?数十分?或いはほんの数秒?
壁に背を預けたまま、ミチルは自分の真上をぼんやり見上げていた。

僅かな日差しすらも雲に遮られ、灰色の空がずっと上の方に見える。
もう少しだけ早く雲が覆っていたら彼は死ななかったのだろうか。
考え続けた所で、起きてしまった事は変えられない。
「きぶつじむざん」なる者の肉体を得た男は死んだ。自ら死を選択した。
時を戻す術も死者を生き返らせる力も持たないミチルが、もうあの男自身にしてやれる事は無い。

「……」

のっそり立ち上がると全身が酷く痛む。
痛みを感じるのは生きている証拠、死者はこんな痛みにさえ無縁である。
二人分のデイパックを担ぎ直し、梯子に手を掛けた。

まだ自分にはやる事が残っている。
どこかへ転移したしんのすけ、地上で待機している筈だが同行者が死んだらしいゲンガー、風都タワー向かった蓮達。
そして未だどこで何をしているのか分からないナナ。
彼らと合流し、殺し合いを止めなくては。
一人でも多くの傷ついている人を治さなくては。
自分一人で抱えるには余りにも重い無力感に無理やり蓋をし、ミチルは地上を目指す。

痛む体に鞭を打つようにして、梯子を一段ずつ昇っていく。
地上までがやけに長く感じるのは、きっと気のせいではあるまい。
彼は一体どのような気持ちで、自ら死へと近付いていったのだろうか。
絞首台への階段を上る罪人、では無い。
あの男にあったのは一刻も早く死ななければという焦り。
そして、崩壊する彼の貌には安堵らしきものがあった。

「……」

死ぬのは嫌なことだ。
嬉しいことも、美味しい物を食べるのも、友だちと笑い合うのも、生きている者しか出来ない。
だけど、彼にとって死は悲劇では無く救いだったのだろう。
死ぬ事だけが唯一、彼の心を救う方法だったのかもしれない。
ヒーリング能力もクレイジー・ダイヤモンドも体の傷は治せるけど、心の傷までは癒せない。
結局のところミチルが彼の為にしてやれる事は、最初から無かったのだ。

「……」

それでも。
彼が鬼にしてしまった犬の家族が謝りたがっていたと伝えられなかったのは、どうしようもなく悲しかった。


ほとんど外されていた蓋をどかし地上へ這い出ると、やけに風が冷たく感じる。
もうじき雨が降るなら更に気温は低下するはず。
軽く身震いしながら、自身のデイパックの口を開いた。
まず取り出したのは精神と肉体の組み合わせ名簿。
元々はアーマージャックの支給品だったのをエボルトから譲渡された物だ。
名前を一つ一つ確認していき、目当ての組み合わせを見つけた。
鬼舞辻無惨。
男から聞いた「きぶつじむざん」は精神と肉体の両方参加している。
精神の方はミーティなる者の肉体に入っているらしく、こちらはどんな体なのか不明。
そしてもう一つ、肉体側の無惨の横に記載された名は

「産屋敷耀哉、さん…」

もういない彼の名を忘れぬよう言葉に出す。


組み合わせ名簿を仕舞い、今度は耀哉に譲渡されたデイパックを開け中身に手を付ける。
彼の言った通りなら支給品はどれも有用なものばかり。
内の一つである生存者の肉体の配置図を手に取った。
記されているのは一回目の定時放送が終わった直後、今より6時間も前の情報な為現在地の確認には余り役に立たない。
それでも何か役に立つ情報が無いかと確認するが、思わぬ障害が立ち塞がった。

「写真だけ、ですね……」

配置図には肉体側の写真のみが表示されており、名前は載っていない。
これではナナの精神が入っている斉木楠雄が誰なのかも分からず、当然ナナが何処にいたのかも不明。
せめて自分の横に斉木楠雄を知る人物がいたらと思うも、そう都合の良い展開は無い。
東側の市街地に仗助の写真はあるので、二つ放送前の現在地を示すというのは本当だろう。
託してくれた耀哉に申し訳ないが、肩透かしを食らい微妙な顔になった。

配置図を一旦デイパックに戻し、次に取り出したのは缶ジュース。こちらは5本入っていた。
同封していた説明書によると、本来はポケモンの体力を回復させる効果があるとのこと。
だから人間の体である自分が飲んで効果が現れるかは不明。
実際に飲んで試してみなければ分からないが、もし効果があるなら非常に助かる。
クレイジー・ダイヤモンドで傷ついた人を治すには、まずミチル自身が生きていなければならない。
重症の身を回復させるのに肝心のスタンドは効果を発揮しない、故にこういった道具があるのは有難かった。

「耀哉さん、使わせてもらいます」

一言断りを入れ口を付けると、濃い甘さが喉に流れ込む。
このまま一気に飲み干して効果を確かめようとし、


「……」


奇妙な生物が物陰から現れた。


◆◆◆


定時放送に耳を傾けるのは殺し合いを阻止すべく動く者達だけではない。
鬼舞辻無惨にとっても主催者から伝えられる情報は無視出来ず、足を止めた。

今回発表された死者の中に無惨の知る者は皆無。
目障りな鬼狩りどもは六時間前に死んだ炎柱を除き健在。
おまけに先程交戦したキャメロット達もまだ生きているらしい。
放って置けばバリーが片を付けると思っていたが、死にかけの小娘や餓鬼すら始末できないとは。
何故揃いも揃って無能ばかりなのか、全くもって使えないと苛立ちが募る。
唯一の朗報と言えば産屋敷耀哉が生存中なことくらいか。
自身の肉体を今この瞬間にも好き勝手にされていると思うと、怒りで己の脳髄を掻きむしりたくなるのを抑えられない。
一刻も早く確保に向かわねばなるまい。

禁止エリアは機能するまで時間に余裕があり、差し迫った問題ではない。
モノモノマシーンとやらも今は頭の片隅には留めておく程度。
但し、会場全域に雨が降るのは重要な情報だ。

太陽が雲に遮られるなら、輝哉が自ら陽光を浴び肉体を滅ぼす事は不可能。
現在地下にいるらしい耀哉がどのような状態かは不明だが、懲りずに鬼を増やそうとしているなら何よりの朗報だろう。
鬼の動きを阻害する日の光が無いなら、日中だろうと関係なしに活動が可能。
となれば、外に出てあっちこっちに行かれる前に地下という閉鎖空間にいる今の方が見つけやすい。
考えを纏め終えた無惨は、当初の予定通り急ぎ地下への入り口を探しに走り出した。


それから間もない頃だった。
無惨が地面から這い出る少年を見つけたのは。

咄嗟に物陰に隠れ、じっと少年の様子を観察する。
地面に空いた穴、そこへ被せられただろう蓋をどかし地上へと顔を出した。
ならばあれが地下への入り口か。
だが一つ疑問が生まれる。
少年は地下にいた、耀哉も聞いた話が確かなら地下にいる。
では少年は何故五体満足で地上へ上がって来れたのだろうか。
様子を見た限り鬼にされてはいない。もし鬼になっていたら今頃は全身の傷が再生を始めているだろうに。
偶然耀哉とは遭遇せずに済んだ可能性もあるが、次に少年が放った一言に否定された。

「産屋敷耀哉、さん…」

「!?」

聞き間違いではない。
少年は今確かに産屋敷耀哉と、鬼狩りどもの長の名を口にした。
当然自分がアルフォンスの時のように偽名として産屋敷の名をあの少年に使った覚えは無い。
だというのに何故産屋敷耀哉の名を口にした。
何かの紙を見ながら呟いたのは分かるが、その内容まではここからでは確認できない。

ここで新たに気付いた事があった。
少年は支給品が入った鞄を二つ持っている。
一つは少年が最初から所持していたとして、もう一つはどこで手に入れたのか。

ドクンと心臓が嫌な音を立てる。
無惨の脳内では目に入る情報が一つの結論を作り出そうとしている真っ最中だ。
それは考え得る限り最悪の事態。
しかしまだそうと決まった訳では無い。結論を焦り失敗は犯せない。

確かめる為にも、ここで無惨は行動に出た。
綱渡りにも程がある方法だが四の五の言っている場合ではない。
意を決し、飲み物らしき容器に口を付けている少年の前へ自ら姿を見せたのだ。


○


「あ、あの…」

いきなり現れた猛獣に缶ジュースを飲む手は止まり、遠慮がちに口を開く。
豹、で良いのだろうか。
後ろ足や爪が一般的な豹のソレとは異なっており、歪な形をしている。
物陰からヌッと姿を見せたのには仰天したが、相手はいきなり襲う真似はせず静かにミチルの傍まで近付いて来た。
よく見ると首輪を填めており、この豹もまたボンドルドに選ばれた参加者である事が分かる。

「あなたは…」

問い掛けてみるも豹は首を横に振るだけだ。
どうしたものかと考え、もしや体のせいで言葉を喋れないのではと気付く。
尋ねてみると首を縦に振った。人語が話せないだけで意思疎通自体は可能と見て良いだろう。
自分と会うまでどうのように行動していたのか気になるが、まずは基本的な所から始めるべき。
飲みかけの缶ジュースを置いて、名簿を取り出す。
説明書にあった通り飲み干さなければ効果は発揮しない。それは一旦後回しだ。

「えっと、名前を教えてもらっても良いですか?」

豹に見えるように名簿を広げる。
話せなくとも言葉が分かるならば。そう思い伝えると右足の爪で一つの名を指した。

「お名前は…バリーさん?」

爪の先を見て確認を取ると頷かれた。
バリー・ザ・チョッパー、初めて聞く名前だ。
組み合わせ名簿にも当然載っていたのだろうが、最初に確認した時はナナなど知っている名前の方に目が行ったので覚えていない。

名前の確認は澄んだが、豹は続けて別の名を爪で指している。
今度は何だろうと思いもう一度爪の先へと視線を向け、ミチルは凍り付いた。

「えっ…」

産屋敷耀哉。爪の先にあるのは確かにその名前。
どうしてついさっき死んだ男の名を教えるのか分からず困惑し、あっと気付いた。

「もしかして…耀哉さんのお知り合いの方ですか…?」

コクリと肯定され、ミチルは次に何と言うべきか迷った。
自分の勝手な想像になってしまうが、人では無い肉体で言葉も話せず苦労しただろうこの人物。
そんな相手に探し人だろう男の死を伝えるのは、ミチルとしても非常に言い辛い。
だがここで誤魔化したとして、それが良い結果にならない事は確か。
であるなら、耀哉の最期を見た者として自分の口から言わねばならないだろう。

「あの、バリーさん。耀哉さんは…」

躊躇しそうになる己を叱咤し、その言葉を告げた。

「ついさっき、亡くなったんです」

「――――――――――――――――――――」

彼女は気付かない。
悲痛な声色で告げた産屋敷耀哉の死。
それが目の前にいる輝哉に与えられた肉体の持ち主、鬼舞辻無惨の思考を停止させる破壊力を秘めたものだとは。

バトルロワイアルで無惨が何よりも優先するのは自分の肉体を取り戻すこと。
屈辱を与えたボンドルド達を殺すのも、元の世界に帰還するのも、自分の体に戻ってからという前提の上に成り立っている。
仮に今すぐ会場から脱出できるとしても、体が出来損ないのミーティでは何の意味も無い。
唯一無二の完璧な鬼の肉体以外でも妥協するような考えの持ち主なら、そもそも長きに渡り数多くの恨みなど買っていないだろう。

生命の危機に陥った事は、数百年以上も前に耳飾りの剣士との邂逅で味わった。
肉体を急激に劣化させられた事は、本来辿る筈だった鬼殺隊との決戦で味わった。
だが、肉体だけが完全に消滅し精神は置き去りになったなど、後にも先にもこの瞬間のみ。
元の肉体に戻るという大前提を完全に潰されたのは、無惨と言えどもすぐには現実を受け入れられない。


垂らした血が水を変色させるように、ゆっくりと状況を理解していく。
産屋敷耀哉が死んだ。つまり鬼舞辻無惨の肉体も滅んだ。
どうやって死んだ。首を落とし心臓を貫いたとて無意味だろうに。
空は既に雲に覆われ陽光を浴びるのは不可能。僅かでも太陽が照らす場所を偶然見つけたのか。
いや、死因を考え何の意味がある。

「ごめんなさいバリーさん…!私が…止めなかったせいで…」

外見とは不釣り合いな口調で餓鬼が何かをほざいている。
つまりそういうことか。
この獣の糞のような頭をした餓鬼は、産屋敷が自死する場に居合わせながらそれを止めようともしなかった。
失われるなどあってはならない肉体の消滅を、指を咥えて見ていたのか。

それは余りにも身勝手で理不尽な怒り。
尤も今の無惨に正論を説いたところで返って来るのは爪と牙。
無惨という男は一度スイッチが入れば余程の事が無い限り、自分から矛を収める真似はしない。
此度は今すぐにでも元の肉体を復活させたうえで精神を戻し、早急に脱出可能な手段を用意すると奇跡染みた現象でも起こらなければ無理だ。

未だ慣れない体、無意味でしかない殺し、ドグーはまだ再使用不可能。
誰が見ても悪手以外の何ものでもない、しかし無惨には知った事ではない。

「▂▂▅▆▆▆▇▇▇▇▇▇▇▇ッ!!!」

八つ当たりという人間臭い衝動に突き動かされるまま、無惨はミチルに爪を振るった。

「あぐっ…!」

目の前の豹が発する雰囲気が一変したのを感じ、咄嗟に距離を取ったのが功を為したらしい。
内臓にまで到達させ深く抉るはずの爪は、片腕を切り裂くに留まった。
使い物にならなくなる程で無いが相応の痛みはあり、ポタポタと落ちる雫がアスファルトに染みを作る。
置いていた缶ジュースが倒れ中身が零れたのも、今は気にしている余裕が無い。

「ま、待ってください!私は…」

口を開いたものの次に何を言うべきが分からない。
相手にとって耀哉はとても大切な存在だったのだろう。
だから彼の死を防げなかった自分への怒りをぶつけている。
殺し合いに反対する者同士で争うなど馬鹿げているが、相手の怒りを否定もできない。

と、このようにミチルは考えているが実際は見当違いも良い所である。
本当の事を教える気は無い無惨は聞く耳持たずと飛び掛かった。

「っ!クレイジー・ダイヤモンドさん!」

爪を首に突き立て引き裂かんとする獣。
迫る殺意を防いだのは、ハートの装飾が施されたスタンドだ。
下水道への入り口を塞いでいた蓋を拾い上げ、即席の盾とする。
金属を擦るような不快な音が両者の鼓膜を震わせた。

相手が明確に殺し合いに乗っているならここから反撃に移るのだが、今対峙しているのは大切な人を失い怒りに囚われている者。
そのように見てしまっているミチルとしては、どうしても攻撃へ移るのに躊躇が生まれる。
ミチルが判断を遅らせている間にも無惨は動く。
金属製の丸い蓋を破壊するのは諦め、一度距離を取って再度飛び掛かる。
但し今度は真正面からでは無く、右側へ回り込んでからの突進だ。

「っ!」

先程と同じように蓋を翳すも、今度は少しばかり反応が遅れ胴体を浅く切り裂かれた。
追撃は仕掛けずある程度の距離を取った無惨は、常にミチルの右側を移動し続ける。
次の攻撃に備えようにもミチルは下水道での戦闘の際に右目を失明、故に反応がどうしても遅れるのを避けられない。
無惨もそこを狙っているのだろう。

(どうしよう…)

言葉で相手を落ち着かせたいが、あの様子からして聞く耳持たずだ。
それに現在のミチルはコンディションも最悪。
正直に言ってこのまま戦うにしても、すぐに息が上がりそうである。
だからと言ってこのまま大人しく殺されるつもりもない。

悩んでいる間にも無惨は止まらない。
前足を振り被り襲い掛からんとする獣を前に、ミチルは何とクレイジー・ダイヤモンドを操作し蓋を真っ二つに叩き割った。
防御を捨てた敵の行動に一瞬の硬直、その隙にクレイジー・ダイヤモンドは蓋の片方を無惨へ投擲。
とはいえ投げるフォームは余りにも雑、慣れない体とていのちのたまによる強化が活きており見切るのは容易い。
あっさり躱し今度こそミチル本人を殺そうとする。

「ドラァ!」

だがミチルは手元に残ったもう片方の蓋に、クレイジー・ダイヤモンドで触れた。
すると無惨の背後から今躱した筈の蓋が猛スピードで飛来するではないか。
まさかの攻撃に僅かながら対処が遅れ、無惨の背中を鈍い痛みが襲う。
低く漏らす呻き声、元の肉体ならば気にも留めない痛みさえ出来損ないの体には響く。
怒りで両目が血走る。

無惨が動きを止めた事で、ミチルはほんの少しの猶予を得た。
耀哉が使っていた白いバイクを取り出しエンジンを掛ける
目的はこの場からの逃走、そしてバリー(無惨)を引き連れた上でだ。
ミチルが危惧するのはこのままここでバリー(無惨)を相手にし、結果下水道で襲って来た銀髪の男に追いつかれる事だ。
もし自分達が去った後あの男がこちらを追跡していた場合、地上に出たと知られミチルが昇って来た穴から顔を出すかもしれない。
ただでさえバリー(無惨)へどう対処すれば良いかも分からない時にあの男まで現れたら、今度こそ死を覚悟する事態になりかねないのだ。

バイクを急発進させるとバリー(無惨)が追いかけて来るのがミラーで確認出来る。
これで良い。自分を殺そうと追うのなら、それが結果的に銀髪の男から少しでも引き離せられるのだから。
すぐにバリー(無惨)へ追いつかれない程度にはスピードを出し、かと言って完全に振り切る程の速さは出さない。
見当違いの善意が、皮肉にも肉体へ慣れていない無惨がバイクで逃げる相手を見失わずに済んだ。
ミチルが何を思って逃げているなど知るつもりも無い無惨はただ、己の肉体の消滅を防げなかった無能への怒りを糧に街を駆けた。


◆◆◆


「げーっ!産屋敷!?」

放送前に暴れ回った猛獣がまたもや現れ、思わず仰け反るのはバリー。
何故かは知らないが殺せるチャンスを自ら捨て逃げた筈が、こうして戻って来た。
厄介事を連れて来たミチルを思わずジト目で見ると、向こうもポカンとした顔になっている。

「どうして耀哉さんの事を…それにあの人はバリーさんですよ…?」
「は?何言ってんだ兄ちゃん」

あの猛獣は産屋敷耀哉の筈だ。
最初に名前を聞いたのはアルフォンスで、バリーが直接聞いたのではないが。
というかそもそも何故自分の名前が勝手に使われているのか。

「どこで何を聞いたのか知らねえけどよ、バリーは俺だぞ?」
「え……」

バリーを名乗る珍獣からの思わぬ言葉に混乱が頂点に達した。
自らをバリー・ザ・チョッパーと教えた豹はバリーではない。
しかも何故かバリーを名乗る珍獣は豹を産屋敷だと言った。
何がどうなっているのか、脳内はあっという間にクエスチョンマークで埋め尽くされる。

(もしかして…)

はた、とある事に気付く。
自分は豹が怒り狂っている理由を耀哉が死んだからだと思っていた。
だが豹が本当に重要視していたのは耀哉ではなく、耀哉の精神が入っていた肉体だとしたら?
耀哉が死んだということは、当然彼に与えられた肉体の喪失に繋がる。
あの肉体が失われて最も怒りを覚えるのは誰か。
該当するのはたった一人、肉体の本来の持ち主だ。
その持ち主とは

「鬼舞辻無惨…!」

口に出したのは耀哉が死に際に遺した悪鬼の名。
同時に豹が放つ殺気がより一層激しいものとなり、暴風の如くミチルへ叩きつけられる。

(誰に断って私の名を口にしている!忌々しい餓鬼が!!)

悪魔の実を食べてもベースとなったのがミーティの為、放たれる怒声は奇怪な鳴き声に変換される。
しかしその場にいる一同が、不出来な肉体の猛獣は言葉で止まる事など有り得ない程の憤怒を抱いていると確信した。

「何でそんなキレてんのかは興味無ぇが、寝起きの運動にゃ丁度いいな」

慄き、顔を強張らせる面々の中で唯一軽口を叩くのはグリードだ。
荒れ狂う無惨の怒りを前に、むしろ望む所と獰猛な笑みを浮かべる。
手にはキャメロットが使っていたような武器は無い。否、グリードにとっては己の肉体こそが最大の武器にして盾。
呼吸をするのと同じくらい自然に両手を硬化、白魚のような指は黒一色に染まり獲物の血を今か今かと待ち侘びている。
長々と「おあずけ」してやる気は無い、どうせ向こうは殺す気満々なのだ。
まどろっこしいのは抜きだとでも言うように飛び掛かる。

響くは金属同士がぶつかったような音。
鼓膜をキンキン震わせる感覚に、グリードは不敵に笑う。

無惨の背後より現れ剣を振るって来た、銀髪の剣士に向けて。

銀髪の剣士…魔王はアドバーグ・エルドルの死亡後、逃げた耀哉の追跡を決めた。
敵は太陽が弱点ならば、日が沈むまでは地下水路に潜伏せざるを得ない。
相応の広さがあろうと地上よりは動きも制限される場所。
ならば逃がす手は無いと追いかけ、道中地下空間にまで聞こえた定時放送に足を止め暫しの熟考後、改めて進み続けた。
その先で見つけたのは投げ捨てられた刀と、遥か頭上の穴に繋がる梯子。
分かり易い痕跡を前にした魔王が、男は外に出たと理解するのは時間が掛からなかった。
放送で知らされた天候の変化に関する情報と照らし合わせ、弱点の太陽が遮られたなら地上での活動に問題無しと判断したのだろう。
再びアスファルトを踏みしめた魔王が発見したのは、転がる飲み物の容器と血の跡、更には何かを擦ったような痕跡だった。
ミチルがマシンディケイダーを急発進させ出来たタイヤ痕とは分からずとも、敵はまだそう遠くへは行っていない事を確信。
ピサロの身体能力を駆使すればバイクだろうと動物の脚力だろうと問題無し。
幾つもあった地下の分岐で道を間違えず、そう時間を掛けずに地上に出たミチルを発見できた。
手繰り寄せた「幸運」につい首にかけたアクセサリーを意識するのは無理もない。



そうして見つけた一団の中に太陽が弱点の男の姿は無く、男に捕らえられた少年だけがいた。
運良く逃げたのかとも考えたが、どうせ殺す事に変わりは無いのならどうだっていいと思考をアッサリ打ち切る。

「ハッ!飛び入り参加のつもりかよ!」
「……」

魔王は何も答えない。
元より彼の目的は参加者の殲滅。対話の余地は皆無。
返答代わりに少女の細い首へと振るわれる剣。
破壊のと名に付けられているように、一撃の威力は決して見掛け倒しでは無い。
だが魔王が相手取るのはひ弱な子羊に非ず。
強欲の名を冠したホムンクルス。そう易々とくれてやる命は持ち合わせていない。

「ウラァッ!」

右手で剣を弾き返し、左手の爪を突き刺す。
後方へと身を引けば親指一本分の距離が足りず、爪は貫けない。
ならばと距離を詰める相手を前に、こちらも真っ向から迎え撃つ。

グリードと魔王が戦闘を開始した一方で、残された面々も各々動き出した。

「バリー!凛を連れて下がってろ!」
「へ?あ、おう」

キャメ子と気安く呼んでいた少女の変貌っぷりに呆気に取られていたが、ゲンガーに促されるまま付近に身を隠す。
自分でも情けないとは思うが変に意地を張っても無駄に命を散らしそうなので、ここは大人しく従った。
ゲンガーもまたレンタロウの能力を使う為に、生身の体を隠せる場所へと走る。

必然的に無惨と対峙するのはミチルとメタモン。
クレイジー・ダイヤモンドを出現させ、もう一人はスコルピオワームへの変身を完了させた。
思わずギョッとするミチルへ慌てたような仕草でメタモンは言う。

「待って!これは僕の体がこういう生き物みたいなんだ。でも僕は別に殺し合いに乗ってるとかじゃないよ!」
「あっ、はい。ご、ごめんなさい私…」
「ううん、気にしてないから大丈夫だよ。僕は檀黎斗って言うんだ」
「犬飼ミチルです、黎斗さん」

最低限の自己紹介をし無惨に向き直る。
怪物に姿を変えたのには驚いたが、ゲンガー達といた事からもとりあえず敵では無いと判断。
詳しい話は後回しで戦いに集中しなくてはならない。

メタモンも今は殺し合いに乗っていない振りをしたまま、ミチル達に協力すると決めていた。
新しい姿にへんしんするには自分の手で参加者を殺す必要がある。
ならここは協力して無惨を追い詰め、弱った所を自分がトドメを刺せば良い。
加えて自分が殺そうと思っていたゲンガーまでいる。
鶴見川レンタロウという人物の体になっているとだけは知っていたが、まさかさっきの少年がそうだとは思わなかった。
嬉しい誤算に、暫くは味方の皮を被って殺す機会を待つ事にしたのだ。

メタモンの邪悪な思惑を知らないまま、ミチルはクレイジー・ダイヤモンドの拳を放った。

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