双眸 ~紺碧の哀? > 紅蓮の愛~過去ログ Ⅲ

――― ショッピングモール『ダリア』3F 文房具コーナー ―――


アキラ「……うーん……。(画材の置かれた棚を見て、悩んだ様子で)どれも良さそうだなぁ……うーん……どれにしようかなー……。 」

キルビス「どうした、今回は随分悩んでるじゃないか…しっくり来る物が無いのか?(買い物かごを持ってアキラの所に来て 」

アキラ「いや、その逆なの……ここの画材、どれもしっくり来るのよ………こういう時、どうしたら良いかなぁ? 」

キルビス「へー、そりゃぁまた珍しい、余程ここの品揃えが良いんだな………  だったら、全部買うか?ここの棚の物。 」

アキラ「Σえっ!? ……い、いやいや、それはそれで、ちょっと……画材が豊富にあるのは良い事だけど、ありすぎても逆に使いきれなくて困るし………。(汗) 」

キルビス「冗談だよ、冗談!じゃぁ、俺が選んでやろうか?さっきの服みたいに、アキラに一番似合いそうなもんを、俺が見極めてやろう。(棚の前に来て 」

アキラ「えっ?……う、うん、良いけど……(……兄さんに画材を選んでもらうの、初めてだな………兄さん、どんなのを選ぶのかな……?) 」

来ヶ谷唯湖「 壁│ー) ソローーーリ (キルビス兄妹を密かに見ている) 」

キルビス「………なるほど、これは確かに悩むな………(画材を隅から見て行きながら)………よし、決めた!まずは筆………うん、こいつが良いな!手触り、フォルム共に良しだ!(黒のコリンスキー筆を手に取って)そんで、絵の具のセットは………こいつだ!色も豊富で、箱のデザインなんて中々可愛らしいじゃねぇか……この中では、一番アキラに似合うと思うぜ!(絵の具の箱をカゴに入れ)で、後は――――――(次々と、上機嫌で画材を手に取って行き 」

アキラ「………(・ο・)(キルビスの様子を、しばらく見つめた後)………クスッ  ……ふふ、あはははははっ。(楽しげな笑い声をあげて 」

キルビス「? ……ど、どうした?いきなり笑って……俺、何かおかしい事したか? 」

アキラ「ははは……ううん、何かね、嬉しくなっちゃってさ……こんな楽しそうな兄さん、久しぶりに見たから………やっと、いつもの日常が戻ったんだなって思ってさ。(買い物かごの中の画材を見て)………うん、凄く良い!ありがとう兄さん、大事に使わせてもらうよ!(満面の笑顔を見せて 」

キルビス「………アキラ…………  あぁ、やっと戻れたんだ……これからはずっと、お前の側にいるからな。 ……新作、楽しみにしてるぜ。(笑顔で返し、レジに向かう 」

アキラ「……うん、私頑張るよ!頑張って、兄さんをビックリさせられるようなすっごい絵を描くからね!(キルビスに付いて行き 」

ミーラ「………(セーラー服を着た、ツインテールの少女姿に変装し、近くの棚の前で2人の様子を密かに見て)………坊っちゃん、お嬢様………お2人の幸せが、どうか続きますように――――――(小さく呟き、2人の後を密かについて行く 」


フレアチューバー事件より数か月――――様々な因縁が取り巻くあの凄惨な戦いを越えた兄妹は、今、平穏な日々を過ごしていた。


彼は妹と過ごす日々の為に戦った。彼女は兄と過ごす日々を祈った。


そして、二人の願いは叶う。これからも、この当たり前な、何より幸せな日常が続けばいいと思った。


―――― だが、"混沌"は常に廻る ――――



――― 街外れの港 ―――


楽しいショッピングを終えた二人は、誰もいない静かな港で海を眺めていた。広大に佇む海…その蒼さは、何処かその兄妹にも似ていた。


キルビス「おぉ……こいつは良い眺めだな………。(海を眺めながら)……丁度良い、アキラ、早速今日買った画材を試してみたらいいんじゃないか? 」

アキラ「うふふ…… 私も、そう思ってたとこ!(新品の画材を取り出して)せっかくだから、兄さんも一緒に描かせてくれない?この景色をバックに映る兄さん、カッコいいと思うんだ! 」

赤眼の青年「 コツ… コツ… コツ… ――――― ザ ッ … (兄妹以外に誰もいないはずの港に足音が響く)…… …… ……(二人の背後に現れたのは黒いコートに身を包んだ、キルビスと同じ身長の青年らしき人物。しかし、彼とは明らかに違うものがあった。それは――――フードで隠された素顔から覗く、『赤い眼』に含む"狂気") 」


BGM♪



キルビス「マジで?それはありがてぇ!よーし、ポーズの指定とかあれば言ってくれ、何でも―――――――  ?(海をバックに立とうとした時、アキラの後ろから迫ってくる青年の姿を見て)――――――――! アキラ、絶対離れんなよ……!(青年からただならぬ物を感じ取り、アキラを自身の後ろに回し 」

アキラ「えっ?……に、兄さん、どうしたの?(突然、キルビスの後ろに回され)……… ? 誰、あの人………?(青年の姿を見て 」

赤眼の青年→ブラッドキルビス「バサバサバサ…(潮風にコートが靡く) フ ァ サ … ―――(フードを徐に脱ぎ素顔を露わにする)こうして顔を合わせるのは久しいな―――――『オリジナル』。(その素顔を見た二人は驚愕する。彼らの前にいるのは、キルビスと瓜二つの顔をした青年だったのだから) ザ ッ … ―――― シ ュ ダ ン ッ ! ! (軽い挨拶を終えた直後、それ以上のことは告げず勢いよく疾駆し、二人に向かって急接近する。視線から、その狙いはアキラだと思われたが―――) 」

ブラッドキルビス「―――――    ド    ゴ    ォ    ゥ    ッ    !   (刹那、振り上げられた拳がキルビスの腹部に強くめり込んだ。本当の狙いは、彼女を庇おうと身を乗り出したキルビス本人――― すべては彼自身の思惑通りだったのだ) 」

キルビス「――――――!! お、お前……(ブラッドキルビスの姿を見て)! ……テメェ!!アキラには指一本触れさせ――――――――――  !!!!(左手を剣に変え、返り討ちにしようと構えを取った瞬間、ブラッドキルビスの拳が自身の腹部を捉え)――――――――な………  に…………   ド サ ァ ッ ッ――――――(その場に崩れ落ち 」

ブラッドキルビス「…… ガ ッ (やがて気絶した彼を肩に抱え上げる)…… ……――――― ド プ ン ッ (傍らのアキラに一瞥を与えると全身が赤く液状化する。そしてキルビスを呑みこみ、二人はそのまま地面へ溶け込む様に消え去った)」

アキラ「――――――――え………?   カランッッ―――――――(目の前の光景を見て、手に持った筆を落とし)………兄さん………  兄さんっ!!!(キルビスに駆け寄ろうとするが、手は届かず、寸前で地面に飲まれ、消えてしまう)――――――あ………ぁ…………(力なく崩れ落ち、キルビスの飲まれた地面を見つめて 」

ミーラ「お嬢様!!!(アキラの元へ駆け寄って)――――――ピ カ ッ ッ(両目のサーチライトを起動させ、地面の内部を透視していき)………いない………坊っちゃんの反応が、確認出来マセーン………  私が、ついていながら………何という失態………。 」

アキラ「………ぅ………あ……あぁ………(大粒の涙をこぼして)嫌だ………  兄さん………   兄さあああああん!!!!!(人気の無い港に、空しい叫びだけが響き渡る 」


"混沌"は廻る ――― 再び訪れた亀裂が、彼等を更に遠ざけたのだった…



――― 某所・地下牢屋 ―――


カゲッチ「ゲッゲッゲ…!そこで大人しくしていろよ、お穣様たちよ~!(檻の中の人物に下品た笑みを浮かべ、牢屋に施錠し去っていく)」

キュウカ「……(影の化け物がいなくなったのを確認し、肩の力を抜く様にふうと一息つく)ジャラ…(両手に枷…これでは魔法も使えないわね…)(自らの両手に嵌められた枷に溜息)…お怪我はございませんか。(そして、隣人に温かい眼差しを向ける)」

王女「コク…(静かに頷く)…王女様『本人』なら…――― パ ア ア ァ ァ … ! (その身体が眩い光に包まれる)」

王女→ローブの少女「……(光の消失と共に王女の姿が消え、代わりにみすぼらしい服装に身を包んだ少女らしき人物がそこに居座っていた)」

キュウカ「貴女は…(一瞬呆然とするが、それが魔法の類によるものだとすぐに察し、珍しそうな眼差しを向けて少女に一歩詰めよる)…彼女の身代わりになっていたのですね。」

ローブの少女「カララン…(幼子のか細い腕から枷が外れ、肢体が自由になる)…うん… 国の王様たち 利用して何か企んでいる… それを止めに来た…の… 」

キュウカ「そう…(こんなにも幼いのに… なんて果敢な…)…ふふっ…(ふと、何かを思い出したように噴き出す)」

ローブの少女「……?」

キュウカ「ごめんなさい。ちょっと、私の妹を思い出して、ね。…おてんばで、お調子者で、わがままで勝手が過ぎるけれど… でも、自分の身を犠牲にしてでも、誰かを救おうとする強い正義感があって…―――――(その脳裏に、かつて"闇"に堕ちた自分に何度も越えと手を差し伸べ続けた、かけがえのない妹の姿が過る)」

キュウカ「ここで初めて出会った貴女のことはわからないわ。でも、きっと何かを救いたい一心で…自らこんな危険なとこへ来たのよね。…そんな貴女を、私は誇りに思う。…私はキュウカ。キュウカ=ミリダルア。」

ローブの少女「うん…誰かを 助けたい。ずっと いろんな人に 助けられてきたから… わたし、は…―――『    』。(キュウカの枷に触れる)」


ガ チ ャ ン … ! (キュウカの両手に嵌められた枷が床に落ちる)


キュウカ「…素敵な名前ね。……!(束縛から解放された両腕を見つめ) ありがとう。(少女に微笑む)貴女、魔法使い?聖の魔力を感じるわ。」

ローブの少女「う、うん… まだまだ未熟 だけど… 誰かの役に立てられるように がんばって勉強している… キュウカも…魔法が使えるの…?」

キュウカ「ええ。私は時空の女神。だから、時空間魔法に長けているわ。」

ローブの少女「すごい…!その魔法 熟練の魔法使いでも 会得が困難のはず… (キュウカに憧れるように身を寄せる)」

キュウカ「ふふふ…それほど大したことではありませんわ。貴女の魔力があれば、すぐにでも立派な魔法使いになれますわ。」

ローブの少女「そうかな… 嬉しい ありがとう…(綻んだ表情が気恥ずかしく思ったのか、小さな両手でローブで覆い隠す)」

キュウカ「ええ。だから…そんな貴女には、一刻も早くここを抜け出して欲しい。」

ローブの少女「……!うん…でも それなら一緒に ―――」

キュウカ「(少女に首を振る)今回の事件の首謀者…何者なのかは分かりません。ですが、未だかつて一切の襲撃を許さなかった首脳会議の防衛を潜り抜けてきた奴らの実力は未知数といえましょう。私はここに残って、奴等に関する情報を探ってみたいと思います。」

キュウカ「何か情報を手にしたら、念波を通じて貴女に伝えます。貴女は外の世界へ逃げて、『英雄』や『戦士』たちにその事実を伝えてください。」

ローブの少女「そんな…」

キュウカ「そうしなければ、きっとこれから多くの犠牲者が増えるでしょう。奴らの思惑を未然に防ぐことで、救われる命が必ずあります。…私を、信じてください。私も、貴女を信じますから。(少女の手を取って)」

ローブの少女「……!……うん わかった… でも 気をつけて…」

キュウカ「ありがとう。さあ、奴らが戻ってくる前に…!(少女に向けて両手を突きつける)」


キ ュ オ ォ ン … ! (少女の足元に魔法陣が展開される)


キュウカ「私の時空間魔法で、貴女を外の世界へ飛ばします。……あとは、頼みましたよ。(にこりと微笑む)」

ローブの少女「うん……! 必ず キュウカも助けに行く。だから 待ってて…―――(キュウカの魔法によって転送されてしまう)」

キュウカ「…お行きなさい。貴女の力を必要としている彼らの元へ―――」



――― 某所 ―――


妖しい光差すステンドグラスが張り巡らされた教会の様な薄暗い空間。そこに耳を劈く様な甲高い男の叫び声が何度も木霊する。


ィ…ッ…!…ヒィッ…!?な…何をする貴様ァ…!?このワレを誰だと思っている…!!


ガ シ ャ ン … ッ … ! ガ シ ャ ン ッ … ! (地面に鎖が打ちつけられる金属音が響く。手枷をされた男は酷く青ざめた表情で狼狽している)


グ ギ ュ … ギ ュ ギ ュ ギ ュ …(男の目の前に歪な姿形の影あり。原形をとどめぬそれはこの世のものとは思えぬほど、醜悪で、愚劣で、邪悪だった―――)


おいッ…!聞いているのかァ!?


グ バ ァ ッ ―――― グ ジ ュ グ ジ ュ … ッ … ! ! (醜い肉の塊―― その表面に開眼した幾つもの『赤い眼』がそれぞれ蠢き出す)―――――  ギ   ョ   ロ  (すべての視線が、その男の一点に集中する)


な、なんだ…なんだこの醜い『眼』は…!?ヤメロ…!ワレを見るな…ッ!!あ゛っ゛…ア゛ア゛ァ゛ッ゛…―――――― ヒ゛ ギ ャ゛ ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ア゛ ァ゛ ァ゛ ァ゛ ッ゛ ! ! !


…… …… …… ……


…… …… … キ ヒ ッ …


キ ヒ ヒ … … キ ヒ ヒ ッ … !


キ ヒ ヒ ヒ ヒ ヒ … ッ … ! !


忌 避 避 避 避 避 避 避 避 避 避 避 避 避 避 避 避 避 避 ッ ! ! ! !



――― South・M・Land 司法の島『デッドエンド』 PM 23:40 ―――


広大な海に浮かぶ一つの島。そこへは大きな一本橋だけが繋がっている。島周辺の海域は禍々しい色に汚染され、海上から近づくことは困難だった。唯一の通路となるその橋もまた固く閉ざされ、何者も寄せ付けない様子が誰の目に見ても明らかだった。 」


ウ ウ ゥ ー ー ッ ! ! ! (島の向かい岸。けたたましいサイレンと交錯するサーチライト、人々のどなり声が織り成す喧騒が広がっている)


政府軍将校「もたもたすなッ!すぐに配置へ着け!! 」


ダッダッダッダッ… ! ! ! (固く閉ざされた橋への門前にて、徹底武装した兵士たちが右往左往している)


チャオス「…軍艦の手配はどうなっている。(腕を束ね背後の兵士に問う) 」

政府軍兵士「はっ!3時間ほど前に本部より司法の島へ向け、10隻が進行しているとのことです! 」

オーディン「司法の島に徹底包囲網を敷け!テロリストは島内に潜伏している…!誰一人として逃がすな!! 」

ヴェルゴ「チャクチャク…(肉の無いハンバーガーを頬張りながら戦車付近で佇み、遠くに浮かぶ島を見据えている)…チャクチャク……(で井口は固く閉ざされ、海域は有害物質で汚染されているか…難攻不落、というわけか) 」

ガタル「デュフフフww 地上と海が駄目なら、空から攻め込めばいいじゃないか…w 核弾頭でもぶちこんでやろうぜ…デュフフ…www 」

アーティル「そうはいかんのだガタル中尉。デッドエンドの対空防衛システムは軍が誇る最高峰の科学力が搭載されている。もともとあの島も聖域…厳重な防衛システムを掻い潜るのは困難を極める。 」

セオ「…すみません、セロ。私の失態がこのような事に… 」

セロ「謝ることはありませんよ。(依然不敵な笑みを浮かべ)不意を突かれたのはこちらも同じですからねえ。それにしても…ふむ… 上層部はこれをどう処理するのでしょうかねえ。 」

エルナ「は~…あっつ…(脱いだ軍服コートを腕にかけ、もう片方の手で顔元を扇いでいる)全軍緊急招集を受けてきたものの、長時間待機…だる…っ…(ジト目で項垂れる) 」


キ ャ ル キ ャ ル キ ャ ル … ッ … ! ! (何台もの戦車が並列する)


政府軍将校「ハクライ大将がお付きになったぞ!道を通せ!! 」

政府軍兵士『   ザ  ッ  !  !  !  (一同路を作り、敬礼する)』

ハクライ「 ザ ッ ザ ッ ザ ッ … (コートを靡かせ厳かな表情で兵士の道を進む) 現状は。 」

政府軍将校「はっ!襲撃を受けて8時間が経過していますが、未だテロリストの動きはありません。衛星からの確認では衛兵数百名の遺体が島内部で確認されました。裁判所内部の状況は依然わかっておらず… 」

プリム(亜空新聞社)「これは衝撃スクープだ…!パシャッ パシャッ (政府軍に紛れて撮影を行う) 」

政府軍兵士「…おい、貴様!何をしている?(小声でカメラマンプリムの背中を掴む) 」

ハクライ「デッドエンド周囲に緊急警戒態勢を発令。民間人の避難を優先させろ。 」

プリム(亜空新聞社)「 わっ、わぁーっ!ごめんなさーい!!(じたばた) 」

政府軍将校「はっ!! 」

政府軍兵士「……(プリムからカメラをひっぺがす)…ほぅ、なかなか派手なもん撮ってんじゃねぇか。どうだ?政府の要人に知らせてやろうか? 」


ギ ギ ィ ――――― ギ ィ ィ ィ ィ イ イ イ ン ッ … ! ! ! (その時、島の中央に立つ巨大な教会より音が割れたような騒音が響く。何かの放送が行われようとしているのか、微かに何者かの声が聞こえ初めて来た)


チャオス「 バ ッ ! ! (片手を上げ静粛の合図を下す) 」

キリヤマ「(文字通り『顔の無い男』……眼と鼻、口以外の全てが焼け爛れケロイド状になっている軍服姿の将校……政府軍情報部、キリヤマが影から突然現れ)……報道規制はやはり難しい、内部の状況を確かめる為我々からも人員を投入しましょう 」

政府軍兵士「…へっ、命拾いしたな(静粛の合図を聞き、プリムを離し、カメラをプリムに投げる) 」


ギ… ギィ… ギ ュ ゥ ン …ジジッ…ジッ…あー……ジジッ…あーあー…(次第に何かの声が聞こえてくる。それは肉声というより、人工音声に近い違和感があった)


―――― ごーきげんっうるわしゅー!世界の愚民共ー!(砂嵐の様な雑音が鎮まり、その声がはっきりと向かい岸の政府軍に伝わった) そ・し・て♪まーんまと我々に出し抜かれちゃった哀れれれれな政府のみなさーん!わ・れ・わ・れ・は…


――――――――― 《 赤 い 泪 》 ―――――――――


本日からねっ、この司法の島をねっ、我々の本拠地にさせてもらうねっ!ありがとねーっ!


政府軍兵士「ギリィ…ッ…!(人を小馬鹿にするような、狂気を孕んだ幼い言動に一同が憤りを示す) 」


我々は、この島を拠点に~?このつまーんない世界を面白くしちゃおうと思うんだよねー!


だ・か・ら・さ!?人類を代表してぇ~…?この放送を耳にしているせかーいせーふの貴様等にも、その「お手伝い」をしてもらいたいなと思っている訳さー!


政府軍兵士『解析班! 既に録音を開始しています!』


おっとっと!言っておくけどねー?こっちにはね、人実がいるんだよ?人質!


ディーヴ王国第二王女のキュウカ姫様。そして裁判官15名のぉ~…全部で16の人質がね!いるの!


ハクライ「……(誘拐されたのはかの姫君ともう一人いたはずでは――――…まさか、脱走か…あるいは……) 」


だーかーらーねー?我々に立て突こうとすればどうなるか~?わっかるよねええええええええぇ????


エルナ「(かっちーん――) うっざ…なに、これ?(やや苛立った顔で放送を聞いている) 」


でもね!でもねでもね!!貴様等がこちらの要求にきちーんと応えてくれたならさ!彼女たちを解放しようと思うんだよねー!


政府軍兵士「…!(赤い泪……!!こいつらが、司法の島を乗っ取った……!?)(話を聞き) 」

オーディン「奴ら…何が目的だ… 」


我々はね、今ね、人間の血液が欲しいんだよねー。とりわけ強い者たちの純粋な血をさ~。ありっっっったけの血液を差し出してくれたらさ、その量に応じて一人ず~つ開放を約束しようじゃない♪


なぁ~に!どの人間を差し出せばいいのかなんて簡単なことだよ!貴様等せーふが指名手配している犯罪者たちを差し出せばいいだけのは・な・し!


貴様等は世界の秩序を守る為に犯罪者を狩り尽している。そうだろう???そーんな奴らを一掃できる絶好の機会だとも思わない??ねっ?ねっ?ねねねっ???


政府軍将校「…血…?そんなものを集めて、一体何を… 」


――――「一週間」だ。一週間の内に、多くの血液を、犯罪者たちをこっちへよこせよ。


さ・も・な・い・と~?人質全員のこーかい処刑を皮切りにぃ~…全世界に有毒ガスをばら撒いちゃうぞー♪いぇ~~~~~~い♪


C.P.(サイファポール)「正気の沙汰じゃねえ…我々の仲間を死に追いやった、あの毒ガスをだと…ッ…?」

政府軍兵士「………(…全員公開処刑、有毒ガス……こいつぁ、まずいことになったなぁ)」


あっ、そうそうっ、戦争を持ちかけても無駄だよ?だって我々は~?全人類をいっっっっしゅんでぇ!死滅させる術を幾らでも持っているのだからさっ♪


さあ!さあさあ!さあさあさあさあ!!間もなく0時だぉーん!世界へーわの為に、せーぜー頑張りたまえよ―――――― ば い び っ 。


カ コ ン ッ ――――――(刻が 0時 を指す) 」


シング「(島内部・某所――)……さァ…始めるぞ…――――(赤く不気味な輝きを帯びた石を徐に掲げる) 」


―――― ォ ォ ォ … ッ … … ォ ォ ゥ ン … ッ … …… ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ … ッ … ! ! ! (定刻と共に引き起こる地響き… 司法の島を中心に海に波紋が描かれ、それが向こう岸の大地にまで伝わり振動する)

政府軍兵士『……!!? な、なんだ…ッ…!? 凄い揺れだぞ…!どんどん大きくなっていく…! 退避しろ!何か来るぞ…!!』


ズ シ ャ ア ア ア ア ァ ァ ン ッ ! ! ズ シ ャ ア ア ア ア ァ ァ ン ッ ! ! ! ズ シ ャ ア ア ア ア ア ア ア ア ア ァ ァ ァ ン ッ ! ! ! ! (その後、島全体から幾つもの白い柱が突出。傾倒状態で現れた幾重の柱が交錯し、やがてそれらがひとつの巨大なオブジェを構築し始めていく)


ガタル「んなっ…!?なんじゃありゃあああああああああああぁぁぁぁぁぁーーーー!!??(あんぐりと口を開けて唖然とする) 」

政府軍将校「総員退避ー!!急げぇーッ!!!」 」


ズ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ ゴ … ッ … … … ! (揺れが収まった時には、彼らが目にしている島の景観が塗り替えられていた。青く美しかったデッドエンドは火山灰を被った様な白銀の都市と化し、その中央には…螺旋状の真っ白なオブジェに包まれた巨塔がそびえ立っていたのだった)


キリヤマ「(ガスの中和策は……一週間では厳しいか、しかしこれも手段の一つとして考える必要がある…無謀ではあれど) ……(考え込んだポーズのまま島を襲う異変を眺め)成程、彼らは中々洒落ている 」

ハクライ「……(終始微動だにせず仁王立ちで佇んでいた男は、その変わり果てた島を鋭い眼差しで眺めていた)……遅かったか。やはり奴らの目的は『賢者の石』―――もはや悠長なことはできぬ。ブ ワ サ ァ ッ … ! (コートを靡かせながら踵を返す)一旦本部へ帰還する。総員は現場待機。本部からの指示を待て。 」

政府軍将校『はっ!!!!』

エルナ「…ッ…(なによこれ…こんなことって…)(一変した島の景観に思わず息を呑む)……っ…!ダ ッ (居た堪れない気持ちに感化される様にその場を後にする) 」

政府軍兵士「はっ!(賢者の石……よっぽどのものだろうなぁ)(ハクライの話を聞き) 」

政府軍兵士「…(しかし、俺らの仕事は政府に付き従うこと…調査は聞いてるだろうあいつらに任せよう)(その場を後にする) 」

ドンモルガン「これより付近の支部にて臨時の対策会議を開く!中尉以上の方々は早急に集まれよ! 」

デュー「(煙草に火をつけ) フ ゥ ー … さぁて、こいつは荷が重いぜ。(名立たる将校等と共に、ドンモルガンの声についていった) 」




~PM5:23 Kハウス~


ミオリ「バンッッ!!!(玄関のドアを勢いよく開け、素早く靴を脱いでリビングに駆け込み)アッちゃんっ!!! ………キー君がさらわれたって、本当なの……!? 」

アキラ「! ………ミオリ、さ………っ(ソファを立ち、ミオリに縋りついて涙をこぼし)兄さんが………兄さんがぁぁっ………!! 」

清空博士「(ミオリの後から家に上がり、アキラの様子を見て)………これは、ただ事じゃないね………  一体、どういう事なんだい? 」

ミーラ「清空博士、ミオリお嬢様………  お嬢様の言うとおり、坊っちゃんは………人間ではない何者によって襲撃され、その者の手によって捕えられた後、その場で地面に吸い込まれるかのように消えてしまったのデース………ほんの、数秒の出来事でーシタ………今、坊っちゃんが、坊っちゃんを攫った輩が何処に消えたのか………依然分かっておりマセーン………。 」

ミオリ「………! ………分かった、分かったから落ち着いて、アッちゃん………(縋りつくアキラを宥めながら)………人間ではない何者かって………そんなの、この世界にはウヨウヨいるから分かんないよ………何か、手掛かりはないの? 」

ミーラ「………申し訳ありマセーン、私も手を尽くしたのデースが、見つける事は出来ませんでーシタ………。 」

清空博士「……君の力をもってしても、か………これは、参ったね………。 」

アキラ「! 手がかり――――――――(その一言に反応し、くしゃくしゃの顔を上げて)………1つだけ……あるかも、しれない………。 」

ミオリ「!! ………教えて、アッちゃん……キー君を攫った奴の特徴でも、何でも良いから………! 」

アキラ「………うん………(涙を拭って)………信じて、貰えるか、分かんないけど………兄さんを、攫った奴………あいつの、顔…………  兄さんと、まったく同じ顔してたの……。 」

ミオリ「……!?(アキラの発言を聞き、驚いた様子で)………キー君と、同じ顔………? 何それ………犯人は、ドッペルゲンガーって事………? 」

清空博士「!……いや、ドッペルゲンガーであれば、キルビス君は死んでいるだろう………犯人は、人間ではないと言っていたね………地面に吸い込まれるように、消えたとも言っていた………だとすると、犯人は何らかの異能力を持っていて、それによって自分の顔をキルビス君と同じに変えていたのかも………。 」

ミーラ「………坊っちゃんと、同じ顔………異能力者…………  !(はっとした様子で、アキラの方を見て)………お嬢様、今の証言………とても大きな手掛かりになったかもしれマセーン………! 」

アキラ「……? どういう事、ミーラ………? 」

清空博士「……! ミーラ君、何か分かったのかい……? 」

ミーラ「………確証はありませんが………お嬢様の証言と一致する危険人物が、坊っちゃんから、私の脳にインプットされたブラックリストに含まれていマース………探ってみる価値は、十分にあるかと。 」


ミオリ「! 誰なの?教えてミーちゃん!!(ミーラの肩を揺さぶり 」

清空博士「落ち着きなさい、ミオリ……(ミオリを肩に手を置いて)すまないね、ミーラ君……では、そのブラックリストを見せてもらっても良いかな?(鞄からノートPCを取出し 」

ミーラ「はい、清空博士。 ――――カチャッッ シュルルルルル………(項の辺りを押し、小さなハッチを開いて、中に収納されていたケーブルを伸ばす 」

清空博士「(伸ばされたケーブルを、起動済みのノートPCに接続し)よし……では、拝見しようか……。  ――――カタカタカタカタ……(ミーラの脳にあるデータバンクにアクセスしていく 」

アキラ「………。(ノートPCの画面を覗き込み 」

――――――ピピピッッ……(アクセス完了の文字が画面に映った後、夥しい数のブラックリストフォルダーが映し出される)

ミオリ「Σなっ…… こ、これ、全部キー君が……?ど、どんだけかき集めたのよ、これ………。(フォルダの数を見て、驚愕した様子で 」

清空博士「おお……キルビス君が用心深いのは知っていたが、これ程とは………これは、1つ1つ開いていたら時間がかかってしまうね………ミーラ君、君の言う人物のデータだけを選んでこっちに見せてくれるかい? 」

エクロシア「――― おや、まあ…シャクシャク…(林檎を咀嚼しながら上空から画面を覗きこんでいる)私の顔もありましたね~。それに懐かしい面々も何名か…フフフ…(愉快そうに嗤いながら更に林檎にかぶりつく) 」

ミーラ「了解デース。 ―――――ピピピ……  パッ  パッ  パッ(自身のデータバンクの中の、数あるブラックリストフォルダーの中から、先ほどのアキラの証言に該当した人物のデータのみをノートPCの画面に映して)ブラックリストNo.34、『ブラッドキルビス』………闇族の狂信集団『闇の眼球』教祖、シング・バレッティーノによって造りだされた人造人間………身長、体重、顔、共に坊っちゃんと瓜二つであり、以前にも坊っちゃんを襲撃した事のある人物デース。 」

ミオリ「……!(ブラッドキルビスの顔写真を見て)………瓜二つ?いや、キー君こんな目ぇ真っ赤じゃないでしょ……髪の色も違うし………いや、確かにそれを差し引けば似てるけどさ………  後、あんたの存在にも慣れて来てる私がいるわ……。(エクロシアを見て呟く 」

清空博士「闇の眼球、か……まだヴァナダが生きていた頃、騒ぎを起こしてた連中だね………  どうだい、アキラちゃん……こいつで間違いはないかい?(画面を指してアキラに 」

エクロシア「んまあ、何だかんだで人間の生活に慣れ親しむのも悪くないかと思われましてねえ(ミオリの発言にふふふとほくそ笑みながら林檎を咀嚼)…シャク、シャク…… おや、『その方』は…(ブラッドキルビスの写真を見て、ふと何かを思い出したかのように顎元を摩る) 」

アキラ「………確かに、似てる………でも、ちょっと違うかも………目は血走って無かったし、顔つきももっと、穏やかな感じだったと思う………それこそ、兄さんみたいに………。 」

ミオリ「そう………  ?(エクロシアの様子を見て)ねぇ、あんたもしかして何か心当たりあるの? 」

エクロシア「…かつて、我々『女神』(アルカディア)が崩壊した後… 「第二の女神」と呼ばれる得体の知れない存在によって、混沌神下七神衆が再編成され復活したことがあります。『彼』はその一人だったと思います。ただ、当時は名前を変えていたような…え~… 確か…――――『サングル』。スペイン語で"血"を意味する名を名乗っていたかと思われます。シャクリ(林檎を咀嚼) 」

エクロシア「実際にお会いしたことはないのですが、我が女神様曰く…歴代の七神衆においてもかのエンペラーさんや…貴方がたもお世話になったキルゴアさんよりも遥かに高い実力を持つと伺っております。…もっとも、その第二の女神も忽然と姿を消し、新生七神衆は活動を停止。その後『彼』が何処へ姿をくらましたのかは、知る由もありませんがねえ…(芯だけ残った林檎を名残惜しそうに見つめる) 」

清空博士「!……七神衆だって!?このデータによると、奴はもうこの世にはいないと書いてあるが………  まさか、自分の死を偽装してそっちに寝返ったというのか………? 」

エクロシア「いや~…当時、あの世の管理を務めるはずの死神である私が仕事を放棄…ゲフン、女神様に仕えることを誓ってからは、地獄のことは一切かかわっていないので分かりませんよ。…ただ、"何か"が死んだ『彼』を突き動かし、脱獄へと導いたのかもしれませんねえ。あ、これはあくまで考察ですが。(結局芯ごと口の中へ放り込む) 」

ミーラ「サングル………七神衆………  該当するデータが1件ありマース、そちらに送信致しマース……。  ―――――ピピピ……  パッ  パッ  パッ(ノートPCに、サングルのぼやけた顔写真を含むデータを送信し、画面に移す 」

ミオリ「………?何これ……顔がよく見えないなぁ………もうちょっと、解像度上げれたりしない?(顔写真を見て 」

ミーラ「……これは、顔が確認できませんね………坊っちゃんの隠密行動をもってしても、正面から綺麗に移すのは難しかった様デースね………清空博士、画像の解像度を上げるツールは所持しておられマースか? 」

アキラ「………うーん……薄っすらと、雰囲気は似てる気がするんだけど………。(ぼやけた顔写真を見て 」

清空博士「よーし……任せなさい!丁度、このPCには、高性能の画像解析ソフトをダウンロードしてあるんだ!そいつにかければ………!(解析ソフトを起動し、サングルの顔写真を解析にかける)………さーて……どうだ!! 」


ズズ……(ぼやけていた画像が、徐々に鮮明な姿を映し出していく)


ミオリ「!(画面を見て)……凄い、ぼやけた顔がどんどんはっきりして来た……! 」

アキラ「…………!(徐々に鮮明になっていく画像を見つめ 」


ズッ―――――― ピピーーーーーッッ(解析完了の音と共に、ぼやけていたサングルの顔が鮮明に映し出される……  フードを被ってはいるが、微かに見える目元などの顔のパーツや輪郭は、まさに今日、アキラの目にした”敵”の顔とすべてが一致した――――


アキラ「――――――!!! ………こいつ………こいつだよ!!こいつが………兄さんを攫って逃げた!!間違いないよ!!!(顔写真を指差し 」

エクロシア「へぇ…これが…(…しかし、この"眼"… ああ、わかりますとも。殺戮衝動に駆られた、狂気を孕んだこの"眼"… ―――― 誰かを、思い出しますねぇ…)(サングルの写真を静かに見つめる) 」

清空博士「………! まさか、そんな………本当に………  何てことだ、キルビス君はあの七神衆の1人に………!? 」

ミオリ「………さっきのより、こっちのが断然キー君によく似てる………こいつで、間違いないんだね………!(顔写真を見て)………ねぇ、ダメ元で聞くけどさ………一応、元は仲間だったんだよね?だったら、こいつが行きそうな場所とか、何か少しでも心当たりがあったりしない?(エクロシアに 」

ニュースキャスター「ここで臨時ニュースをお伝えいたします。(一同が困惑に捕らわれる最中、テレビの放送画面が急に変わり始める)先日、聖国「コスモス」で開催された首脳会議にて、テロリストによる襲撃事件が発生。ディーヴ王国第二王女・キュウカ姫が誘拐されました。」

ニュースキャスター「また、同日、政府保有の裁判所がある司法の島「デッドエンド」においても同様の事件が勃発。主犯格は『赤い泪』と呼ばれるテロリスト集団だそうです。」

エクロシア「まあ、繋がりが全くなかったとは言い切れませんが…いくら私でも、彼の居場所についてはお応えかねま……おや?(ふと、テレビの画面に一瞥を与える) 」

清空博士「ん、何だい…?(テレビの方を見て)……はぁ……怖いなぁ、テロか………赤い泪、聞いたことが無いが………新手の組織か?  ……おっと、テレビを見てる場合じゃなかった、どうにかして助ける方法が無いか………。 」

リポーター「(画面が転換し…)こちら、司法の島「デッドエンド」より中継です!現在島周辺区域に政府軍による警戒態勢が強いられており、島内部への侵入は不可能となっております! 」

リポーター「デッドエンドの対空防衛システムにより、上空より内部の様子を確認することは極めて危険な為、現在内部で何が起こっているのかは不明です!現在政府は付近に緊急特別対策委員会を設立し、事件解決に向けて日夜検討している模様です!以上、現場からお伝えいたしました! 」

ニュースキャスター「ありがとうございます。…主犯格の一人は、二週間前の政府軍艦襲撃事件、及び先日の大監獄インフェルノ襲撃事件の主犯であることが判明いたしました。政府は彼らの経歴を探り、『赤い泪』と呼ばれる組織が『闇の眼球』をはじめとするいくつかの組織によって構成されていることも明かされました。」

ニュースキャスター「政府は今回の事件を同時多発テロとして全国に緊急警戒態勢を発令。現在その構成員の指名手配書を発行しており、全国に注意喚起を促しています。(それと共に画面に映し出されたのは、何名かの指名手配写真。その中に、PC画面にも映っていた、あの「サングル」の姿もあった) 」

ミオリ「……え?(ふと、テレビに映る手配書が目に留まり)―――――――あああああっ!!!ちょっと、今!こいつ映ってる!!!(アキラと清空博士に呼びかけ 」

アキラ「えっ?………!!!!(テレビに映るサングルの手配書を見て)………間違い、無い…………こいつだよ………さっきのと、同じ…………!! 」

エクロシア「…今、『闇の眼球』と聞きましたね。例の『彼』も含め、あの使命手配書の面々…私にも見覚えがあります。彼、キルビスさんがあの事件に巻き込まれてしまったとおうのであれば…これはもはや"ただの誘拐事件どころではすまなくなる"でしょうねえ。…さて、これからどうします。 」

清空博士「Σ何―――――――  !!!(テレビを見て、驚愕した様子で)………何てことだ………こ、こんなに早く、手掛かりが舞い込んで来るとは…………これは、神のお導きか…………!?(ショックと歓喜で震えながら 」

エクロシア「ただ私に言わせてもらうのであれば、彼(キルビス)の"死相"は近づいているといってもいい。何せ彼を誘拐したあの男(サングル)と、その男が所属する組織が政府本部が現在最も警戒しているところなのですから。…そんな組織に捕まってしまった以上、いくら『英雄』の協力をもってしても救出は不可能に近い。 」

ミオリ「………まさか、キー君が闇族のテロリストに捕まるなんて………一体、何が目的なの………単に英雄狩りが目的だっていうなら、キー君を狙うのはお門違いってもんでしょ………  キー君はもう、”あの一件”で英雄は退いたも同然だもの……。 」

清空博士「!………英雄でも、不可能だって?そんな馬鹿な………じゃぁ、どうすりゃ良いんだ………? 」

ニュースキャスター「また『赤い泪』は裁判官15名とキュウカ姫を人質に取り、政府に対し「血液」を要求。血液の量により人質を一人ずつ解放すると供述しているようです。政府の見解によれば…―――――(以降、アキラたちにとって目ぼしい情報は流れず) 」

アキラ「………っ(死相という発言に、表情が青ざめ)………そんなの、嫌………せっかく、帰って来たのに………一緒に、いられるはずだったのに…………こんな形でお別れなんて、絶対に嫌!!(エクロシアの服を掴んで)あいつらの事知ってるんでしょ?なら、何でも良い……何でも良いから、あいつらを倒す手がかりを教えてよ!!何か少しでも情報があれば、『英雄』の人達にも有利になるでしょ!? 」

エクロシア「(アキラに掴まれ、うーんと困った表情に)…とりあえず、『現場』へ向かってみてはいかがでしょうか。ここで手をこまねいていも仕方ないでしょうし。それに…百聞は一見に如かず。まずは直接情報収集を行ってみるべきかと。 」

ミオリ「現場………って、キー君が攫われた場所?それとも………  まさか、テロが起こった現場とか言わないよね?いや、確かにそこなら情報収集捗るだろうけど………。 」

エクロシア「私が持ち得る情報よりも、有益なものがきっと手に入るでしょう。 」

アキラ「……何処でも良いよ、奴らの手掛かりが掴めるなら、何処へだって行く!!(エクロシアを離し、急いで2階に上がっていく 」

清空博士「Σあ、アキラちゃん!?何処に………。 」

ミーラ「おそらく、出かける準備をなさっているのではないかと。(外したケーブルを項の収納ハッチにしまい)お嬢様は、本気で坊っちゃんを助け出すつもりデース、何が何でも、何をしてでも………。 」

清空博士「な……そ、そんな、危険すぎる!いくらなんでも無謀だ………!(ノートPCをしまい、焦った様子で 」

ミオリ「………アッちゃん………  そんなとこ見せられちゃ、さ………私も負けてられないよね………。(アキラの決意を感じ取って、呟く)パパ……  私も、アッちゃんと行くよ! 」



その後、支度を終えたアキラたちは清空博士が運転する車で3時間かけ、司法の島がある南の国へと向かった―――


――― South・M・Land 司法の島「デッドエンド」へと続く橋の門前 ―――


政府軍兵士『当区域は大変危険ですので、取材はお引き取り願います! 下がって、危ないから! 誘導員を増員しろー!!(厳重なバリケードが敷かれた門前にて。政府の役人とカメラマンたちが周囲を何度も行き来し、現場は混乱としていた)』

清空博士「(車を運転しながら)………(結局、押し切られてしまった………アキラちゃんも、ミオリも、一度言い出したら聞きゃしないんだから………でも、どの道キルビス君は助けなきゃいけない………親友の、大事な倅だから………!)………そろそろ、着くぞ………! 」

アキラ「(窓から、島の方を見て)………これが………  司法の、島―――――――! 」

ミオリ「………よーし……アッちゃん、パパ、武器はちゃんと持ってるよね?うちが用意出来る最高の護身用武器を厳選して来てるんだ………もしもの時、絶対役に立つはずよ………。(腰のホルダーに、黒い懐中電灯の様な物を下げて 」

アキラ「うん、大丈夫だよミオリさん。 ……随分、騒がしいね………どうやって、通ろう………。 」

政府軍将校「…緊張を解くなお前たち!いつ何が起こるか分からん…!厳重警戒態勢で待機せよッ!!! 」

政府軍兵士『 は っ ! ! ! ! 』 」

清空博士「(車を止め、ポケットから免許証入れを取出し)……一応、私も政府公認の科学者の端くれだ、政府の管理する施設への通行許可証は持っている………しかし、この状況で許可が下りるだろうか………  何とか、食い下がって頼む気ではいるが………こうもピリピリした役人を見るのは、私も初めてだからね……。 」

サトミ「――――……?あれ…アキラちゃん……??(その時、現場へ駆けつけてきた傍観者の群衆の中から、聞き覚えのある声が聞こえる)―――アキラちゃん…!! 」

アキラ「……それでも、意地でも入れてもら――――――  !(群衆の中から放たれた、聞き覚えのある声に、思わずその方向を振り返って)―――――今の……  サトミ、ちゃん………?(車のウィンドウを下げ、顔を出し、辺りを見回して 」

ミオリ「……? どうしたの、アッちゃん?いきなり窓開けて………もしかして、何か見つけたの? 」

サトミ「アキラちゃーん…!(アキラたちの元へと駆け寄る)はぁ…はぁ…びっくりした…!アキラちゃん、何でこんなとこに…?(横髪を掻き上げ) 」

アキラ「Σあっ…… やっぱり、サトミちゃんだ!それはこっちの台詞だよ……サトミちゃんこそ、どうしてここに? 」

清空博士「サトミ?(ウィンドウを開け、顔を出し)! さ、サトミちゃんじゃないか!ヴァナダの教室にもよく来てたから、覚えてるよ………君、どうしてここに………? 」

ミオリ「サトミって、アッちゃんのお友達だよね?まさか、こんなとこで会うなんて………  やっほー、久しぶりだね?ミオリお姉ちゃんだよー。(サトミに手を振り 」

白衣の女性「……?どうしたの、サトミ…?(その後、彼女の後を追うように一人の女性が現れる。麗しく長い黒髪で、研究員らしい白衣を身に纏っている)……?……! 」

白衣の女性→サユリ「…あ…貴方は…!(清空博士の顔を見て驚嘆する)…清空博士…!私です、山本です…!(女性の名は「山本紗由里」(やまもと さゆり)。元は清空博士と同じアームズカンパニーの研究員を務め、現在は政府の科学班に所属している)…お久しぶりです。まさかこのような場所でお会いするとは… 」

サトミ「あ…!お久しぶりです!(ミオリ、そして清空博士にお辞儀し)えっと、それは…あっ…!その前に、紹介するね、私のお母さん。昔、ワンナップリさんの会社に勤めていたの。(白衣の女性、サユリを見ながら)今は政府で研究員として働いているの。今日は有休なんだけど、政府に突然緊急招集をかけられて… 私も気になってここへ来たんだけど… 」

清空博士「えっ………  えぇっ、や、山本さん!?こ、こちらこそお久しぶり………(サユリに)………そうだったのか………事態は、深刻なようだね………。 」

アキラ「ど、どうも!私、サトミちゃんと仲良くさせていただいております……あ、アキラと申します!(サユリに)………そうだったんだ………  私達もね、どうしても島に入れて欲しいんだ………兄さんを、助ける為に………! 」

サユリ「ええ…そうですね…(厳重に閉された門へ視線を向け)…ここへ来た、ということは…既にご存知かと思われます。事件発生より数時間が経過していますが、未だ政府、犯罪者、両者共に動きはなく睨み合いの状態が続いているようです。初めまして。この子がいつもお世話になっているわね。(ふふっと柔らかい表情でアキラとミオリに挨拶) 」

サトミ「お兄さん…を……?どういうこと……?? 」


その後、アキラはサトミたちに事情を説明…


サトミ「…そん――――(事情を聴き、一瞬言葉と目の輝きを失う)…… …… ……キルビスお兄さんが…(その後、遥か先に立つ巨大な白い塔を眺める) 」

サユリ「……!? まさか…ご家族の方が事件に巻き込まれたのですか…!?(アキラたちの証言を聞き、清空博士へ) 」

清空博士「……その通りです、キルビス君は、アキラちゃんの目の前で………ここを襲った奴らの仲間の手によって、連れ去られてしまった………。 」

ミオリ「………で、私達は奴らの手掛かりをどうにか手に出来ないかと、ここに来たわけ………  けど、この様子だと………(白い塔の方を見て)………ビンゴ、みたいね………あそこに、例の奴らが………  キー君を攫ったクソ野郎も、いるかしら………? 」

サトミ「……(ふと伏し目がちになり、何か深く考えつめた様子だったが)……!(突然母サトミへと振り返る)……お母さん、お願い…!キルビスさんを…アキラちゃんのお兄さんを、助けてあげて…! 」

サユリ「そんな…… ……?サトミ…?(険しい表情へ一変した娘を見て) 」

サトミ「…キルビスさんのお陰で、私…お姉ちゃん(マドカ)から助けてもらったんだ… あの時、キルビスさんに救われていなかったら…私今頃、機関の「例の計画の実験体」にされていた…(唇を震わせながら)だから…今度は、恩返しをしたい…!それに、大切な友達のお兄さんだもの!見捨てることなんて、できない…!!(アキラを一瞥し、再びサユリと向き合う) 」

サユリ「……!……(サトミが…こんなにも誰かを思う娘だったなんて… …マドカは、私の責任で"変わって"しまった…けど、この子は…)……そう…(――― いい友達に出会えたね。)(ふっ、と娘に微笑む) 」

サユリ「…… …… ……わかったわ。(ふぅと肩の力を抜くように)…清空博士。デッドエンドへはあの一本道しか通路はありません。現在通路はあのように厳重に封鎖されており、現時点では将校たちですら侵入を固く禁じられています… ですが…もう一つだけ、"あの島へ侵入できるルートがあります"。 」

清空博士「!! ……山本さん………協力してくださるのですか………? 」

ミオリ「……!(表情が一気に明るくなり)サトミちゃん、ナイス!!サトミママも、本当にありがとう!!……アッちゃん、良かったね!キー君を助けられるかもしれないよ!! 」

アキラ「………っ(溢れそうになる気持ちを堪え、深々と頭を下げて)――――――ありがとうございますっっ!!!! 」

サトミ「……!!……お母さん、ありがとう…!(ぱあと表情が明るくなり)よかったね、アキラちゃん…! 」

サユリ「はい…!娘から、当時(機関時代)のことは聞いています。この娘は友達のお兄さんに命を救われた…断る訳がありません。(ふふっと笑む)…あのお方…『ヴァナダ』さんが残した究極の遺産が、まだカンパニーの地下に眠っているはずです。それがあれば、デッドエンドへの侵入も可能のはずです。……ですが…(白い巨塔を見やる)…侵入できたとはいえ、命の保証は―――― 」

エルナ「―――その心配なら要らないよ。(サユリの言葉を遮る様に現れたのは、政府軍が誇る精鋭"エージェント"の少女。拳銃をくるくると回しながら彼女たちの元へやってくる)お話、聞かせてもらったよ。警戒態勢で待機を命じられていていい加減痺れを切らしていたところなんだよね~。…だから、あなたたちの護衛は、私が責任を以て務めるわ。(手中の拳銃をホルスターへ華麗に差し込む)―――よろしくっ☆(ウインクし) 」

アキラ「……うん……っ(目元をサッと拭い、サユリの方を見て)………お父さんの、遺産………?それがあれば―――――  えっ?(エルナを見て)………あなたは……? 」

サユリ「あなたは…!(突如現れたエルナ、そして彼女たちの登場に首を傾げるアキラたちに気づき紹介する)…彼女は、世界政府が誇る屈指の精鋭《エージェント》の一人よ。…手厚い護衛、感謝します。(そう言い、エルナに会釈) 」

エルナ「いーよいーよっ。それが仕事みたいなもんだもん。それに、誘拐されたのは君(アキラ)のお兄さんだけじゃないからね。あいつらに拉致された人たちを全員解放しないとね。 」

ミオリ「Σマジで!?……アッちゃん、聞いた?今の私達に、こんな凄い助っ人が来てくれるなんて………  本当に、神様の慈悲としか思えないね………。(目を輝かせながら 」

アキラ「………!ありがとうございます、エルナさん………(頭を下げ)………私、ここに来てよかった………これで、兄さんを助けられる………! 」

サユリ「それなら、早速カンパニーへ向かいましょう。あとのことは、移動中にお話しします。(清空博士にアイコンタクトを送り) 」

浦橋龍助「ぶおん!ぶおん!ぶおおおおおおおおおおおんっ!!(たまたまミオリたちの近くに停車する)さてと、疾風達とR34ミーティング、楽しかったし、休憩でもするか・・・・そろそろこいつ、タイヤ交換でもすっかな・・・・。っと、その前に・・・・吉岡が行方不明らしいな・・・・・(車から出ないで、コーヒーを飲みつつ) 」

清空博士「……よし、では早速、ヴァナダの会社に向かうとしようか。(車のエンジンをかけ)まったく、あいつめ……友である私にも隠れて、どんな凄い物を開発していたのかね………。(そう呟き、車を発進させる 」


清空博士のワゴン車に乗り込んだ一同は、その後高速道路に乗り真っ直ぐに東の国へと走行したのだった…



――― 某所 ―――


薄暗い一室。幾つも展開されたディスプレイの電光によって照らされたその部屋に、一つの影が立っている。

白髪の青年「…… …… ……(ディスプレイに映る一人の人物を凝視している。青い髪をした少女たちが車に乗り込み、今まさにどこかへ出発した瞬間まで…) 」

白髪の青年「……「ここ」へ来るのか。…ふふっ…なら、ちゃんと歓迎してあげないとね。 ブ ワ サ ァ ――――(踵を返すと身に纏った白衣が靡く。不敵な笑みを浮かべた青年はそのまま一室を後にした…) 」



その頃、アキラたちは…

サユリ「(車内の後席に座っている)…デッドエンドはただの司法の島ではありません。島内部にある裁判所には『マザリス』というビッグコンピュータがあります。ヴァナダ博士と私は過去に、そのコンピューターの共同研究に携わったことがあります。 」

サユリ「マザリスは、この世界の全住人の個人情報が格納されていて、人工衛星とリンクしたマザリスを利用することで、対象者の現在の位置情報を検索できる機能があります。犯罪者の位置を特定するためだという政府の考えに則り、あの裁判所に設置されるようになったのですが… 」

サトミ「……?どうしたの、お母さん…?(急に言い淀んだサユリに首を傾げる) 」

サユリ「…実は、先程エルナさんがおっしゃっていたように、キルビス君以外にも誘拐された方々がたくさんいるみたいなんです。その原因として考えられるのが、あの「マザリス」なのではと… 」

エルナ「…現在(いま)、世界各地で犯罪者やそうでない人たちが忽然と行方を眩ます事件が…例の大事件(首脳会議やデッドエンド襲撃)の水面下で密かに相次いでいるの。首脳会議に出席していたある二人のお姫様の誘拐事件を始め、それに誘発されたかのよう、次から次へと…ね。どう考えても不自然よ。(腕と脚を組み、車の窓から覗く景色を一望しながら) 」

清空博士「そうか………奴らは、一体何のために………  どちらにせよ、一刻も早く手を打たないとマズイね………。(そう言って、前方にかすかに見える建物を見て)………お、もうすぐだね………あそこに行くのも、いつ以来だろうか………。 」

ミオリ「………キー君のパパの、会社………  あそこに、キー君を救えるかもしれない物が――――――(徐々に近づいてくるカンパニーのシルエットを見て 」

サユリ「(徐々に近づく建物を見据え、更に話を進める)…カンパニーには、人間をデータ化して遠隔地に転送する装置―――『ヴァーチャル・スキャナー』(※以下:V.S.)があります。ヴァナダ博士が発明した世界最高峰の転送装置… ケイオスにあるすべてのコンピュータを構築する巨大ネットワーク「コスモネット」に人間を送り込む技術から誕生したものです。 」

サユリ「この装置を利用し、人をデータ変換してコスモネットに送り込み…そのネットワークを通じて、短時間で世界の反対側へ移ることも可能なんです。彼のV.S.は世界的に認められ、今では世界各地のコンピュータ施設に設置され、V.S.から別のV.S.へと人間を送り込むことが出来ます。当然、デッドエンドにもその装置があります。だから、カンパニーからマザリスへ移動出来るもう一つの手段こそ、V.S.なのです。 」

アキラ「!……凄い………じゃぁ、それを使えば―――――!! 」

エルナ「ふーん… でも、各地にその装置があるってんなら、そのカンパニーってところに拘らなくてもいいんじゃない?(首を傾げる) 」

サユリ「ええ…ですが、V.S.の行く先は一部に限定されていて、特に強固なプロテクトが掛けられているデッドエンドへは転送できないんです。…しかし、カンパニー地下にある「プロトタイプ」は世界中にあるすべてのV.S.に干渉でき、デッドエンドのようにプロテクトが施されたV.S.の侵入路を解除することができるんです。 」

清空博士「………!な、何という………あいつ、そんな物を密かに………   やっぱり、敵わんなぁ………。(小さく呟く 」

ミオリ「あら、パパってば……キー君のパパの技術力に改めて妬いちゃってる?(少しからかった口調で 」

エルナ「なーるほどね~…(科学ってよくわかんないけどすごいんだな~…)(自分とは遠い世界のことのように真顔で感心)まっ、その装置を使って島の内部へ侵入できるなら…案外楽勝じゃない?現場潜入した後のことを警戒すれば… 」

サユリ「ええ…あの方の技術には、いつも驚かされるばかりです… ……(カンパニーに近づくにつれ、徐々に表情が陰っていく) 」

サトミ「やっぱりワンナップリン博士はすごいなぁ…!(最も尊敬する人物の開発秘話を聞けて目を輝かせている)……?…お母さん…?(サユリの顔を心配そうに覗きこむ) 」

アキラ「………私、こう見えて潜入とか、隠密行動は得意なんです………昔、ちょっとした訓練を受けた事があって………。(エルナに 」

サユリ「……っ…( ギ ュ ッ … )(唇をかみしめ、自分の白衣の肩部を強く掴む)……!……う、ううん。平気よ、気にしないで。(サトミに、何処か弱弱しく笑ってみせる) 」

ミオリ「アッちゃんって、元々の生まれは忍者の家系だったんだよね?カッコいいじゃねーの………  ん?(サユリを見て)………サトミママ、大丈夫?車酔い? 」

エルナ「へぇ~!(ずいっとアキラへ詰め寄り) ふ~ん…じゃあさ、君、ウチ来る?(にやりと悪戯っぽい表情のあと、「冗談冗談!」と笑う) それなら心強いね~。 」

清空博士「えっ?大丈夫ですか山本さん………もうすぐ到着しますから、少し窓を開けて外の空気を吸われた方が………。 」

アキラ「Σえっ………  は、はぁ……兄さん程、上手くできるかはわからないけど………頑張ります、頑張って………必ず兄さんを助けだします。(エルナに 」

サユリ「…ああ、いえ……平気です…(――――…彼女たちに『真実』を伝えるべきか… そうしなければ、キルビス君を救うことはできない… でも…これを、もしもこの事実を伝えてしまったら…私は… 博士から受けた恩を…仇で返してしまう……っ…――――) 」


そして一同は、目的地のアームズカンパニーへと到着する…


エルナ「よっ…と!(車から降り、目の前にそびえ立つ建物を見上げる)…ふーん、ここがあの、例の装置があるって会社? 」

清空博士「(車を降りて)………久々に来たが、変わってないなぁ………  ヴァナダ、お前の最高傑作……見せてもらうぞ。 」

ミオリ「(車を降りて、プリン型の会社の看板を見て)あはは、相変わらず面白いね……キー君のパパ、やたらとプリンにこだわってたよね~。 」

アキラ「(建物をじっと見上げて)…………サユリさん、早速ですが地下への案内をお願いします………私、いつでも奴らの所に潜りこむ覚悟は出来てますから。 」

サユリ「……(無言でカンパニーを静かに仰ぎ見る。自身の脈打つ鼓動が徐々に高鳴り、今にも破裂しそう心臓を抑え込もうと胸元に手を添える)……行きましょう…(そう言い、彼女たちを先導しカンパニー本社の出入り口前へ向かうが…)――――― ザ ッ … ! (突如踵を返す。無言で彼女たちの前に佇むその姿は、先程の協力者としての彼女ではなく…アキラたちを、"カンパニーに入れさせないという"意思が全面的に現れていた)…ハァ……ハァ……!(ずっと我慢していた感情が徐々に零れ始める) 」

アキラ「………え?(サユリの様子を見て、立ち止まり)………サユリ、さん? 」

サトミ「わぁ~…!(カンパニー前に来て興奮している)私、いつかここで研究するのが夢なんだ~♪ふふふっ…♪……はっ!ぶんぶん。(まるでピクニック感覚に浸っていたが、本来の目的を思い出し我に返る)さ、さっ!いこう!……!?(突然振り返った母の姿が先程と何かが違うと感じ取り、表情が一変する)……お母さん…?(ゆっくりと、一歩詰めよる) 」

清空博士「? 山本さ………  !(サユリの様子を見て、彼女の意志を薄々ながら感じ取り)………あなた、まさか………。 」

エルナ「……(アキラたちの背後で、サユリの行動を黙視する) 」

サユリ「ハァ…ハァ……!(徐々に荒くなる呼吸、滴る冷や汗、青ざめる表情―――)――――― ス チ ャ ッ (徐に取り出した銃を一同に向ける) 」

エルナ「――― ス チ ャ ッ (サユリが銃を取り出したタイミングでアキラたちの前に現れ、サユリに銃口を向ける) 」

サトミ「ひっ……!…お、お母さん……!?(今まで目にした事の無かった母の姿に驚愕と戦慄が走り、思わず身が竦む) 」

ミオリ「………嘘でしょ………何で………?(サユリとエルナを見て 」

アキラ「………! …………どういう、事ですか………(サユリの行動を見て、肩を震わせ)何で――――――   何で邪魔するんですかっ!?(怒りと困惑の混じったような表情と声で、言い放つ 」

サユリ「…… …… ……ごめんなさい… やっぱり…―――― 貴方たちには『真実』を知られたくない…っ…! 」

清空博士「真実………?  どういう事なんですか、山本さん………? 」



~アームズカンパニー本社・エントランス前~



サユリ「………っ……(銃を突きつけたまま、唇を結んでいる。その表情には躊躇いの色が滲みだし、錯綜する複雑な感情から葛藤しているようにも見えた) 」

エルナ「………どういうことか、説明してくれる?(アキラたちの前へ先陣出て、こちらもサユリに銃を突きつけたまま静かに対峙していた) 」

ミオリ「……何だか、よく分からないけどさ……キー君の命がかかってるかもしれないんだよ?ここで、こんなことしてる場合じゃないんだよ!!分かるでしょ!?(焦燥した様子で声を荒げながら) 」

サユリ「……私たち「カンパニー」は、武器開発を主軸とした開発を行ってきました。そこから、家電製品や日用品などの一般市民を対象とした高性能な道具にも応用し、幅広いジャンルでの開発へと発展を遂げていきました。ですが、それはあくまで"表向き"だったんです。(現在の状況とは直結しがたい事実を、対立する彼女たちへ語り始める) 」

清空博士「表向き?……どう言う事です、あいつが何か裏で良からぬ事をしていたような口振りですが………  いや、確かにあいつはとんでもない事をしでかす可能性はあったにはあったが……。(色々と思い返しながら) 」

サユリ「……このケイオスと呼ばれる星が齎す「多世界干渉現象」によって、様々な世界から…様々な人種、様々な物質など…ありとあらゆる未知なるものが目まぐるしい勢いでこの世界に集約されている…我が社長…ワンナップリンさんは、この星が齎すその不可思議な生態に着眼したんです。そして、この世界では観測がされていない未確認生命体を捕獲し、観察し、そして…その生命力の秘密を探ることで、多世界に存在し得るであろう未知にして膨大なエネルギーを手に入れ…それを世界のため、人々のために役立てようと秘密裏に研究を行ってきました。それこそが…このカンパニーが本来目指していたものだったんです。 」

アキラ「………よく分かんないけど、何かとてもすごい事をやってたって言うのは分かったよ………けど、どうして?どうしてそれが私達の邪魔をする理由になるんですか? 」

サユリ「社長をはじめ、ごく一部の研究員のみが、このプロジェクトに参加し…世界政府の監視外で密かに研究を行ってきました。私もその研究チームの一人だったんです。ですが、数年前……「キルゴア」さんという同じチームの研究員によって、ある悲劇が起きました…――――― 」


~サユリの回想~


―――― やめたまえ、キルゴア君!君の理論には賛同しかねる。非常に危険な行為だ!


何をおっしゃるのです、社長?実験で確証された未確認生命体が齎すエネルギーと、我々人類のDNAの結合に成功すれば、究極的な生命力を持つ新人類が誕生するかもしれないのですよ?これは、人類の大いなる進化となるのです…!!


誰か奴を止めろ!!  ダメです!試験室の扉にロックが…! おい、まずいのではないのか…っ…? 社長!キルゴアさんが…!!


ガ シ ャ ア ア ア ア ァ ァ ア ア ン ッ ! ! !




サユリ「――――……彼の強行手段により、無理やり被検体にされた研究員と未確認生命体が結合されました。ですが、そうして生まれたのは我々が理想としていたものとは、まったく別反対のものでした。獣の如く、本能のままに目の前の生命を貪り喰らう獰猛な生命体、後に『アマルガム』と呼ばれる化け物がうまれました。暴走したアマルガム第一号はそのまま他の研究員たちを食らい、凄まじい速度で増殖を繰り返し…物の数分で研究所は"地獄"と化しました…(唇を震わせながら、当時体感した恐怖に戦慄が蘇る) 」

清空博士「………キルゴア………(握りしめた拳を震わせ)お前という奴は……一体幾つ面倒事を残して行ったんだ………? 」

エルナ「……まるでバイオハザードじゃん……(神妙な顔つきで耳を傾けている) 」

ミオリ「………ハァ………またそいつなの?………本当にさぁ、何なのそいつ!?毎回毎回そいつのせいで面倒な事に巻き込まれてない!?ふざけんじゃねぇっての!!何度も何度もよぉ!!!(苛立ちが限界に達し、乱暴な口調で怒り散らし) 」

アキラ「………(深刻な面持ちで話を聞きながら)………それで?それがどう今の状況に繋がってるのか、まだ分からないんだけど………? 」




待ってください社長!そんな…いくらなんでも危険です!たった一人で地下研究所へ向かうなんて…!


今回の件はすべて私の失態だ。社長責任として、アマルガムたちの処分は私が行う。……万が一のため、君にこの「カードキー」を渡しておく。"来る日"がやってくるその日まで、決してこのゲートを開くんじゃないよ。いいね?


……!ダメです、社長…!!――――――― 社長ーーーーッ!!



サユリ「―――…そして社長は一人、非常に危険な地下研究所へ姿を消しました。あの日以来、社長の姿を目にしたことはありませんでした。後に社長が無事に生還した事実を耳にしましたが、既にあの方はとある事件に巻き込まれ、他界されました…。そのため、今、地下の状況がどうなっているのか…誰にも分らない… 」

サユリ「…私が、今…あなた方をこうしてせき止めている理由…それは……今回の目的となる「ヴァーチャル・スキャナー」のプロトタイプ…それがあるのが、地下研究所よりもさらに深い、最深部にあること。即ち…必ず、"あの地下研究所を踏み入れてしまう"ということ…!あなたがたを危険な目に晒すわけにはいかなかった…っ…!カンパニーが抱えてきた闇を見られることも、そして…その「負の遺物」にあなた方を巻き込んでしまうことも…っ……(溢れる感情にこらえきれず、ついに泣き崩れ、突き付けていた銃を下ろしてしまう) 」

サトミ「…お母さん……っ…(信じたくはない事実に、声を失う) 」

清空博士「………そうですか……そんな事情が………山本さん、貴方の思いはよく分かりました………しかし、彼の息子を助ける為にはどうしても………。 」

サユリ「…聞いて、サトミ…?科学は人々や世界に希望を齎すもの…だけど、その道を踏み誤れば絶望にだってなり得るの。私たち研究員は…つねにそんな希望と絶望の狭間で自分にできることを精一杯やり遂げようとしているの…!ワンナップリンさんも…とっても愉快そうに見えて、実はその裏で多くの葛藤に苛まれながら、それでも…!誰かの為に自分が成すべきことを成そうとしている…!……私は、そんな…偉大な社長…あの方の会社に泥を塗りたくはなかった…っ…… 」

エルナ「…………(泣き崩れるさユりを目に、銃の構えを解く。そして、部外者である自分が何かを口にするのはナンセンスだと踏んだのか、彼女への説得をアキラに任せるように、彼女に一瞥を与えた) 」

アキラ「―――――それでも、行かせて!!(振り絞るような声でサユリに向け)負の遺物だろうが何だろうが、そんなの今の私には関係ない!兄さんを救えるなら、どんな所にだって行く!どんな敵とだって戦える!!兄さんが今まで私にしてくれたように、私も兄さんの為に戦うって決めたの!!だから………!! 」

サトミ「アキラちゃん……!(兄の為ならば危険を顧みない、兄想いの彼女の真っすぐな瞳に感化されたように…)……お母さん…!私…それでも研究員という道を進んできたお母さんのことやワンナップリンさんのこと、変わらず尊敬している…!人間ならだれでもきっと過ちを犯してしまう…でも、そんな自分を受け入れなきゃ、前には進めない……幼い頃、ワンナップリンさんにそう教えてもらった…!私、どんな事実だッて、目を背けたくなるようなことでも、受け入れてみせるよ…!だって、アキラちゃんだって…今だって、そうしてるから…!! 」

サユリ「……!!(アキラとサトミの説得に目が泳ぎ始める)………あなたたち……っ……―――――― 」


――――― 社長……あなたなら、きっと…… ―――――


ミオリ「私も、同感。(アキラの肩に手を置いて)……さっきから聞いてたら、ちょっと私達を見くびり過ぎじゃない?私達、これでも今まで幾つもの修羅場を潜り抜けて来たんですけど?この間だって、どれだけヤバい奴らと戦ったか………それにさ、私も、アッちゃんも、そしてキー君も、あのおじさんの事そこまで大層な人間だと思ってないからさ、どんなヤバいもの作ろうが、どんなヤバいミスしようが、端から知ったこっちゃないわけよ、分かる? 」

清空博士「おいおい、それはちょっと言い過ぎだぞミオリ……(汗)………まぁ、かくいう私もここで退くつもりは毛頭ないのだけどね………  山本さん、どうします?彼女達は言いだしたら聞きませんよ?冗談抜きで。 」

サユリ「―――――――――………グスッ…………"わかったわ"…。(目元の雫を指で拭い取り、静かに立ち上がる)……もとはと言えば、ここまで連れてきたのも私の責任。いつか社長がそうしたように…私も、覚悟を決めます。あなたたちを…――――― 地下最深部へ、無事に届けます。(社長…あなたが言っていた「来るべき日」こそが…今、この時だったのですね…―――――) 」

アキラ「!!……(溢れだしそうな物を精いっぱい堪えながら)………ありがとうございます!!! 」


ウィーーン…!(エントランスの両開き扉が開かれる)


サユリ「………行きましょう。地下3階最深部…―――― 「本当の社長室」へ。」



~アームズカンパニー・1F~


サユリ「 カ ツ ン ―――!(迷いを棄て、覚悟を決めた強い眦を浮かべて入社。もはや廃墟同然の静まり返ったカンパニーエントランスを心地よいヒールの靴音を響かせながら歩き進める)………(念の為、誰もいないことを確認するようにあたりを見渡しつつ、無人となっている総合案内所に向かって進む) 」

サトミ「わぁ~……!ここに来るのは本当に久しぶりだ~…(緊迫しながらも、科学者の卵としての興奮を抑えきれず辺りを見渡しながら入っていく)…そうか、今は会社は機能していない…んだったね… 」

エルナ「………(拳銃を構えながら現場へ静かに赴き、一行の背後について周囲を警戒しつつ歩き出す) 」

ミオリ「(周囲を見渡して)……さっきはああ言ったものの、いざ本番となると結構緊張するもんだね~。ていうか、キー君パパの会社の中ってこんな感じだっけ……何かよく覚えてないんだよねぇ……。 」

清空博士「あの時は小さかったからな、無理もないさ…… しかし、随分変わったもんだな……あんなに活気のあった会社が、今ではこんなに澱んだ空気に満ちている……。(オート拳銃を片手に歩きながら) 」

サユリ「このアームズカンパニーには、世界の最先端を担う崇高な技術の結晶が今も尚眠っています。…そう言えば聞こえはいいかもしれませんが、これから向かう地下は…その栄光の陰に隠れた、知られてはならない黒歴史が渦巻いている…(そう語りながら、総合案内所のPCを起動。キーボードを叩きながら何らかの操作を行っているが…)……これで、通常のエレベーターから地下へ降りられるようになったわ。行きましょう。(全員を誘導し、エレベーターへと向かい、乗り込んでいく) 」

アキラ「(自身の記憶にある会社の風景とは真逆に変わり果てた景色を見渡し、形容しがたい不安を押し殺しながら)………兄さん、絶対助けるから………待ってて………。 」


そうして一同はエレベーターに乗り込み、無機質に響くエレベーターの降下音と共に深層たる地下へと下る――――



~アームズカンパニー・地下1F~






エレベーターが開かれ、真っ先に彼らを迎え入れたのはただの一本道の長い通路。
通路の照明は今もなお起動しているが、心なしかエントランスよりも薄暗い。
地下故か、はたまた防音壁が設けられているためか、彼女たちの声以外は何も聞こえない。
そんな不気味なまでの静寂が、彼女たちの精神を不安に煽る―――


清空博士「………ここからは、私もまったく知らない領域だね……(光線銃を2丁取り出して)ミオリ、アキラちゃん、念のため持っておくと良い、改良型だから威力はかなりあるぞ。 」


サトミ「……ゴクリ…(地下通路を初めて目撃した次の瞬間、えも言えぬ静寂な空間に思わず息を呑む)……なんだろう…すごく……ヤな予感がする…(もはやさっきまでの興奮など醒めてしまい、身をわずかに振るわせながら重い足取りで歩き始める) 」

エルナ「……なんかいきなり雰囲気出てきたねー…(あははと乾いた苦笑を零しつつ、より眼光を強めて通路を進み始める) 」

アキラ「ありがとうございます、博士…。(光線銃を受け取り)………ふぅ……来るなら、どこからでも………っ(かなり気を張った様子で周囲を警戒して) 」


無音なほどに静寂仕切った無機質な通路を突き進むと、突き当りにシャッターを模した分厚い遮断壁が出現する


ミオリ「サンキュー、パパ♪(光線銃を受け取り)……わお、何かヤバそうなの出て来たんだけど……。(遮断壁を見て) 」

サユリ「(シャッターを前に、その傍に設けられたパスコード入力装置の前に立つ)………(コードを入力した後、禁断のカードキー ―― ワンナップリンより託された ―― を取り出し、それを静かに見つめて)……ス…(キーをスキャンした) 」


ギ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ、ガ…―――――(遮断壁が軋むような不気味な音を立て、上へあがっていくように開錠されていく――)


サユリ「……ここから先こそが、禁断の領域。「あの日」からどれほどの月日が経ったのか、そしてあれからどのようになってしまったのか…私にもわからない。…"十分に気をつけて"。(固唾を無理矢理呑み込み、率先してその一線を―――超えた) 」

通路を突き進んでいくと、やがて左右両壁にガラス窓や扉が見え始める。
おそらくこの地下に設けられた研究部屋だろう。中を除くと室内は大変暗く、肉眼では明確に見渡すことができない。
それでも微かにうっすらと見えたのは、何かの実験台に利用されたと思われるベッド。
白いシーツは黒く滲んでおり、その傍らにはメスや医療鋏などがそのまま散乱している。


アキラ「……!(……さっきまでと、空気が違う………これは、本当に………  いや、怖くなんてない………怖がってたまるか………!)(不安と恐怖をぐっと押し殺しながら、サユリの後に続く) 」

サトミ「……!(前方に見えた研究部屋を発見し、通路側から覗き込む)………これって…っ…?アームズカンパニーは武器や家電製品の開発や、その実験施設があるのは社会科見学で見たことはあったけど… こんな…生物実験室みたいなものなんて、なかったはず…? 」

ミオリ「うわ……これは、マジで………(ドン引きした様子で周囲を見渡し)……アッちゃん、私から離れないでね?アッちゃんは絶対、私が守るから………。 」

アキラ「う、うん……ありがとう、ミオリさん……(ミオリに)………私も、知らないよ……この会社に、こんな場所があったなんて……。 」

サユリ「ええ。本来カンパニーでは、人間や動物を対象とした実験を行うことは禁止されていたの。ましてや…被検者を拘束し、解剖する様な医療実験なんてもってのほか。だけど、「ここ」はそのタブーを越えることを許された。ここでは、「多世界干渉現象」によって世界に迷い込んだ未確認生命体の解剖を行い、その生態系の図る研究を行っていたところよ…(暗い研究部屋に一瞥を与えることもなく――まるで過去から目を背けるように――語りながら、ただ突き進む) 」

エルナ「みかくにんせーめーたいというと…あれか、宇宙人とか、UMAとか…?世界政府としても捕獲対象にはなっていたけれど、それは民間人はおろか、中小企業や大企業も政府の許可もなく捕獲することは法律として禁じられていたはず… まっ、ここで見たことは黙っておいてあげるけど…(わざとらしく口笛を吹くジェスチャーをしつつも、研究部屋を視界に苦い表情を一瞬浮かべる) 」

サトミ「……ここに捕らえられていた、その…未確認生命体って、どこへいっちゃったの…? 」

サユリ「…本来、捕獲された未確認生命体はカンパニーが極秘に管理し、その生態を観察し… 得られたデータを基に彼らからそのエネルギー源をわずかながら抽出。得られたエネルギー源を利用し、人間のさらなる進化を促進する劇薬の開発に乗り出すことを目的としていた…――― "本来"ならば。 (まるで皮肉を込めたように、重みを込めてそう言い放つ) 」

清空博士「……本来なら、か………  その"本来"の目的から外れた奴がいた、という事ですね……山本さん。 」

サユリ「…はい。そこをあの男、キルゴアさんが新たな実験を強制的に決行したのです。ただの観察対象であった未確認生命体…彼らを無慈悲に殺め、その犠牲に入手したDNAを採取。それを研究員に投与したことで…未知の遺伝子が既存の遺伝子が急速な結合を齎され反発し合い、暴走。やがて研究員の身体は悍ましいものに変貌を遂げ…人としての形を棄てた化け物へと変貌した… 」

サユリ「 それが―――――― 『アマルガム』 (あるところで歩みを止め、ここでようやく研究部屋へと一瞥を与えた) 」


サユリの視線の先にあった研究部屋。その窓は夥しいほどの黒ずんだ血痕で塗りたくられている。
辛うじて残っている透明部を覗き込むと、巨大にして歪な影…
激しく凹凸した形状を持つ化け物の死体がひとつ、転がっていた―――


アキラ「………!!(化け物の死体を目の当たりにし)………これが…………。 」

サトミ「ひっ゛――――!?(黒ずんだ窓の内側にある「ソレ」を目撃してしまい、驚愕のあまり尻もちをついてしまう)……ハッ…ハァ……(ばくばくと高鳴る心臓を手で抑えつけながら、呼吸が荒くなる)……今の、は…ッ……??(幼い少女にはあまりに衝撃的過ぎた現実に、ただただ狼狽している) 」

ミオリ「(部屋の中の様子を見て、強烈な不快感を露にして)……ハァ………ヤバい、もうとっくに地獄に行ってるけど、もういっぺん地獄を見せたくなってきたわ………ざけんなよ、キルゴア…………! 」

エルナ「――――(「おいおいマジかよ」と言いたげそうに目を見開いて、その死体に目を細める)……エグいことしてんねぇ…よくもこんなのが公にならなかったもんだよ… 」

清空博士「こらこら、ミオリ…… まぁ、私も同じ気持ちではあるのだけどな………(部屋の中の惨状に目を向け、形容しがたい感情を抱きながら)……今ので一層、奴の事が嫌いになったね。 」

サユリ「…後に知りました。彼がこの事件を起こした本当の狙いは、彼が所属していた謎の組織「アルカディア」の計画のためだったと。彼や、彼がしたがっていた混沌の女神が成そうとしていた世界リセット計画。今ある世界を浄化し、後にやってくる「新世界」に住まう者たちを人工的に作り出そうと。彼はそれを「不死の住人」と呼んでいました。その名の通り、不老不死と形容するに相応しいくらいの脅威の生命力を持った新人類のことです。彼が遺した研究資料に、そう記されていました。しかし、結果は彼が思っていた物とは大きくかけ離れてしまった。 」

サユリ「半人半獣の怪物「アマルガム」は、何者の制御も効かない。幸い…というと無神経かもしれませんが、ここがアームズカンパニーであったが故に、アマルガムの鎮圧は社長自らの手により完了したものとされました。しかし、実際はどうだったのかわかりません。アマルガムの生命力は異常です。もしかすると……まだ、生存している個体が地下に徘徊している可能性が大いにあります。(尋常ではない冷や汗が滴る) 」

エルナ「…ここへ連れてきたはずの貴女が躊躇っていた理由が、そう言うことね… なるほど、これで合点がいった。そのアマルガムってバケモンがこの先に今もまだ生きているのなら…いや、「生きている」と思って進んだ方がいい。淡い期待や希望は、返って絶望をさらに印象付けてしまうからね。ここまで来たら、もう引き返せない。だからこそ、君たちのことは私が守り抜く。 」

サトミ「……お母さん…ワンナップリンさん……私、誓うよ。科学の力を、見誤るようなことはしないって…(恐れながらも、化け物の死体をその目に焼き付ける。科学者を目指すものとしての戒めとして、決心付けるように…) 」

アキラ「…………っ(サユリの話を聞き、悍ましい怪物の存在に対する不安と恐怖に駆り立てられそうになるが――――)………たとえ、その化け物がまだ生きていたとしても…… 兄さんが助かる手掛かりがあるなら、行きます………  ついでに、キルゴアの残したその化け物たちも、出来ることならしっかり葬りたいです……父の名誉のためにも……そして、被検体にされた人を解放するためにも………!!(強い決意と、涙で満ちた瞳でサユリを見て) 」

ミオリ「(アキラの肩に手を置いて)そうね……もしここにキー君がいたとしても、同じこと言うと思うよ…… 心配しないで、私もアッちゃんを……皆を、全力で守るから。 」

サユリ「サトミ……(娘である彼女の頭を優しく撫で回す)……ここからもうひとフロアへ下がります。目的は地下3階…けれど、次の地下2階こそが…最も被害損傷が激しかった場所です。はっきりと言いますが、今も放置されているであろう死体の数は尋常ではないでしょう。アマルガムが生息している可能性もある以上…慎重かつ大胆に、強硬突破します…!…いいですね…? 」

清空博士「えぇ、勿論……こんな事もあろうかと、装備は整えてありますからね。(コートの中から『何でも収納カプセル』を数個ほど取り出して)………親友の汚名は、一片たりとも残すつもりはありませんよ。 」

サユリ「アキラちゃん…(彼女の強い眼差しへ、強かに頷いた)……では、行きます…っ…!(通路を抜けた先にある階段。さらに深淵の如く暗いその下へと、歩を進めるのだった―――) 」



――― 某所 ―――


白髪の青年「コツ、コツ、コツ、コツ…――――(白衣を靡かせ、そのポッケに手を突っ込んだまま無機質な床を叩くように歩き進める)……ようやく会える。彼女たちが来てくれた「約束の日」を迎え、ボクは…『貴方』から受けた最後の命を実行しますよ。 」


―――――『 博士




~アームズカンパニー・地下2F~

1フロア下へと降りた一同。
そこに踏み込むと同時にまず彼らを襲ったのは、鼻腔を破壊させるような刺激を帯びた腐敗臭だった。
その次に、真っ暗な空間の中で不安定なリズムで点滅する照明。
それは返って視界を悪化させ、前方に移る景色が一瞬しか見えない。
その僅かな間に移るものは決して判断しやすいものではない。ところどころが黒く染まった床。隅で蹲るように詰まった黒い何か。
ホラー映画でよく見る光景にはない生々しい恐怖感が、そこにはあったのだ―――

サユリ「…サトミ、絶対に目を開けないで。(娘・サトミの視界を覆いながら、ぶわっと襲い来る腐敗臭に眩暈がしながらも前方を見据え続ける) 」

ミオリ「うっ!?(思わず口と鼻を手で覆って)………待って……待って待って待って………何よこれ………!? 」

サトミ「う、うん…っ…(なん、だろう…?この、酷い匂い…っ… アンモニアよりももっと、刺激的で…)(母親に視界を覆われながら、掴まれた彼女の手を頼りに進もうとしている) 」

清空博士「………いよいよ、まずい場所に踏み込んだって感じだね………(強烈な臭いに耐えながら、周囲に目を配る) 」

エルナ「……っちゃー……(「うっ」と眉を潜ませ、片腕で鼻を覆う)……もし、「地獄」ってのがこの世にあるのなら…まさに今踏み込んでるここがそうなんだろうね…(「これは酷いな」と歪んだ表情を浮かべて周囲を見渡そうとするが、悪化する視界のせいでとても確認できるような状況ではなかった) 」

アキラ「………っ(こみ上げる嘔吐感を抑えて)………これくらい………話を聞いた時から覚悟はしてたから………っ(周囲に転がる物体の1つ1つにも警戒しながら、進んでいく) 」

ミオリ「おぉ……さっすが、アッちゃん……こりゃ、負けてらんないね……… シュルッッ(髪紐をほどいて)アマルガムだか何だか知らないけど、いつでも来いよ……! 」

サユリ「先も言ったように、落ち着いて…それでも、なるだけ早くここを抜けましょう。長居は私たちの身にも害を及ぼしますし、それに……(「アマルガム」の件で言い淀む)……気をつけて(そういうと娘の手を引きながら進行を再開する) 」


腐敗臭と点滅、足場の少ない通路を歩き続けて2分程経つ。
よく見ると、前方にて微かに照らされ続けている照明があった。
その眼下には次のフロアへと続く階段…があると思われる封鎖用のシャッターがあった。


サユリ「……!もうすぐ…(閉じられたシャッターを目撃)私のカードキーを使えば、ロックを解除できます。そのまま地下3階へ降りまs―――(そう言いかけた、次の瞬間) 」


――― ガ シ ャ ァ ァ ア ア ァ ァ ア ン ッ ! ! (最悪のタイミングで、通路脇にある研究室の窓ガラスが盛大に割れ、室内より黒い影が通路へ跳び出してくる。点滅する照明によって明らかになるその姿は…とにかく、黒い。そして、その形は秒単位で凹凸を繰り返し、決して定まった形を成そうとはしなかった)


エルナ「―――!(ガラスの破裂音と共に後方から前方へと割り込むように身を乗り出し、二丁拳銃を「ソレ」に突き付け身構える)……悪い予感が的中しちゃったね。……"来たよ"。 」




アキラ「!!(跳び出してきた物体に向け、光線銃を構え)! ………あれって、まさか………!! 」

サユリ「……!?(飛び出してきた「何か」の驚きながらも反射的に娘・サトミを庇うように抱き寄せる)…やはり、生きていたのね…… あれからもうどれほどの月日が経っているともかかわらず… そう、あれこそが…―――― 」

Amalgam《アマルガム》「…ヨ……ヨォ……ッヨヨ…(それは操り人形のように、愉快ながらも不気味にクネクネと体をねじらせる。黒の正体は、まさに「黒ずんだ血」である。血液をその身に纏い、長い月日を放置された末に原形を失った「なにか」が、アキラたち生存者の新たな血肉に反応してついに目覚める―――) 」



――― Vs. Amalgam《アマルガム》 ―――


清空博士「――――――例の「黒歴史」、ですな……(光線銃を片手に持ちながら、もう片方の手に「何でも回収カプセル」を持ち)親友の名誉と、被検体となった研究員の尊厳と平穏を取り戻すためにも、全力で対処させてもらうよ……! 」

エルナ「博士たちは後ろに下がって!(非戦闘員を背後へ避難させると、動き出した化物に容赦なく発砲を開始する) 」

サユリ「…!(エルナの一声にコクリと頷いてサトミと共に彼女たちの背後へ回った) 」

アキラ「……! バシュッ!! バシュッ!! バシュッッ!!(アマルガム目掛けて光線銃を撃ちまくる) 」

Amalgam《アマルガム》「ドパァ、ドパァッ…!(光線と銃弾がその身に被弾。血飛沫のような黒い何かを撒き散らす。だが、依然本体はただその場に佇み、緩慢ながらもアキラたちに向かって接近を開始し始める) シュルリ…――― パ リ パ リ パ リ ィ ィ イ ン ッ ! ! ! (頭部と思わしき部位から伸びた触手のようなものが、しなる鞭の如く動き出しす。そして、通路脇にある窓ガラスごと砕きながら彼女たちを薙ぎ払おうと伸ばし始めた) 」

エルナ「 ッ! (反射的にムチのように飛んできた触手を仰向けに反って回避し、そのままバク転して態勢を整える) つぁッ!(足元に転がっていた手ごろな瓦礫を、アマルガムに目掛けて蹴り飛ばす) 」

ミオリ「何カッコつけてんのよ、パパは後ろで援護してて!(清空博士を後衛に追いやり)あんたの事は可哀そうだと思うけどさ、手加減はしてやれないよ!ごめんねっ!!(そう言って、硬質化させた髪を自在に操って触手を受け流しながら、アマルガムに向けて光線銃を撃ち込んでいく) 」

アキラ「!! ザッ―――!!(素早くミオリの後方に避難し、光線銃でアマルガムに追撃を加える) 」

Amalgam《アマルガム》「バシュン…―――ボトボトボトォ…!(ミオリ、そしてアキラの追撃によって放たれた光線が触手を撃ち貫く。床へと落ちた触手の切れ端はグロテスクな音を立てて落下し、床上で意識を持つかのように跳ね続け、やがて死んだように横たわった)グシャァッ(動かなくなった触手を踏み潰し、尚も前進する。たとえ砲弾の如き勢いで飛んでくる瓦礫をぶちこまれようが、お構いなしに) ニチ、ギチ、ビチ……ヨ…ァァ……!(その瞬間、途切れたはずの触手の断面から新たな触手が生え変わった。粘液を纏ったそれは周囲の研究椅子を掴み、持ち上げ…剛速の勢いで投げ飛ばしてきた) 」

清空博士「Σおわっ…… せ、せっかく決まったのに……(不服そうにサユリらと同じく後方に下がって)……まぁ、言われなくてもバリバリ援護するけどね!(光線銃で援護射撃を放つ) 」

エルナ「うわマジかy――ッ゛!?(驚異の生命力に驚愕する間もなく飛来してきた椅子を、横ステップで紙一重に回避する)っぁ…(神経が死んでるような相手に、海中時計(クロノクロック)の能力は果たして通用するのかどうか…いや、四の五の言ってる場合じゃない…)カチリ…キャリキャリキャリ…(二丁拳銃に内蔵された歯車が起動し、小さな回転音を立て始める) 」

ミオリ「うわ、マジでキモいんだけど…… !!(飛んでくる研究椅子を見て)危ないっ!!!(伸ばした髪を瞬時に編み込み、大きな盾を作って椅子を防ぐ) 」

アキラ「! ありがとう、ミオリさん……!(光線銃の出力を上げ、アマルガムに遠距離攻撃をし続ける) 」

エルナ「チャキ…――― これならどう?(ドッ、パパパパッ!!ズギャギャギャッ、ギュンギュンギュンッ!!)(天井すれすれまで一気に跳躍すると身を捩りながら両腕を伸ばし、二丁拳銃から尋常ではない量と速さで弾丸が次々と発射され、狭い通路を跳弾が跳ね返り続ける。一見敵味方見境なく撃ってるようだが、実際は銃撃のエキスパートである彼女の計算によって編み出された正確な跳弾はアキラたちに被弾することなく、そのすべてがアマルガム一点のみに注がれていく) 」

Amalgam《アマルガム》「ビジュッ(エルナの跳弾と清空博士の援護射撃に次々と打ち貫かれる体。風穴だらけとなった全身…もはや、これで立っていることなどできはしない…そう思われたが―――)――― グ ジ ュ リ (その肉塊は、一瞬で隙間を埋め尽くす。そう、常識を逸脱した異常な再生力。これこそが、アマルガムの真の能力ともいえるものであった) 」

サユリ「……あの再生力… そっか…!もとはといえば、曲がりなりにも不老不死の身体を得る為の過程で誕生した存在…!あの脅威の生命力は、その理念に基づいているんだわ…! 」

ミオリ「!………マジか……あれで死なないって………。(アマルガムを見て、ドン引きしながら)パパ、何かもっと強い奴持ってないの? 」

エルナ「うっそでしょ…てことは…不死身じゃね…??(これはいよいよ不味くなったなと冷や汗が頬を伝う)あの得体の知れない肉体…下手に白兵戦を持ち掛けても…(ギリィと歯ぎしりしながらも、彼女たちの先頭に立って様子を伺うが…) 」

清空博士「うむ……なら、こいつはどうかな?(カプセルを1つ開け、中から火炎放射器のような物を出して)『汚物は消毒バズーカ』、ヴァナダから預かった武器の1つだ……こいつはどんなものでも綺麗に「消毒」してしまえる代物だ、もしかしたら効果があるかもしれないぞ! 」

アキラ「お借りします!(バズーカを手に取り、火力を強めに設定して)お願い……  効いて!!!(アマルガムにバズーカの炎を浴びせかける) 」

サユリ「長い時間をかけて、その再生力は更に進化した…となれば、我々の打つ手は……――――?(その時、アマルガムを見て何かに気づく。否、正確にはアマルガムではなく、奴の背後にあったはずのシャッターが……「開いていた」ことだ) 」

Amalgam《アマルガム》「ギィヨォェァァアアァァア…ッ…!!(ズボボボオォォォオアアアアッ!!)(放射されたバズーカの炎熱に焼き尽くされ、人とも獣とも言えぬ奇声のような断末魔を上げる。これは効いたと思われたが…) ド パ ァ ッ (全身の至る部位から無数の触手が生えると同時に、身を纏う炎が掻き消されてしまった。彼女たちを追い詰めようとそれらすべてを伸ばしかけた、次の瞬間――――)  」


白髪の青年「―――― "世界システム"起動 ―――― 」


Amalgam《アマルガム》「 ビ ギ ッ (刹那、化物の動きがその触手ごと、ぴたりと停止。瞬間凍結されたかのように微動だにしなくなったその体は、やがて小刻みに小さく震え始め…)―――――   パ   ァ   ン   ッ   (盛大に破裂。銃弾や光線をいくら撃ち込んでも崩れることのなかった不死身の身体が、あとかたもなく、一瞬で、消滅したのだった) 」

アキラ「!! そんな―――(バズーカを離し、後ろに退こうとしたその時、突然破裂したアマルガムを見て)―――――え……? 」

エルナ「炎でもダメなのッ…?!こうなったら、もう…(やむを得ず体術で勝負を仕掛けようと身を乗り出したその瞬間、動きが停まったアマルガムに眉を潜め)――――!?(瞬きした次の瞬間には視界から消え去った怪物に、大きく目を見張った)……何が、起こったの……?(目をぱちくりさせながら茫然と立ち尽くす) 」

ミオリ「……何、今の……… パパ、あれはバズーカの効果なの……? 」

清空博士「……いや、あんな効果はないはずだ………一体、何が………?(予想外の出来事に、かなり動揺した様子で) 」

サユリ「……!?(アマルガムが…"消えた"…!?)(破裂し、大きな血痕を残した怪物のいた箇所を呆然と見つめる。そして、徐々に首を上げてその先にいた「人影」を視界に捉えた―――)………あれは……(点滅する照明に照らされた新たな人影、青年を見据える) 」

白髪の青年「………コツ…(呆然と佇む一同へ向けて、ゆっくりとした足取りで歩み寄っていく)…はじめまして。こんにちは。そして、ようこそ。君たちがここに来ることは、すべて予測済みだった。(白衣を靡かせながら、彼女たちへ語りかける) 」

アキラ「………!(青年を見て)……あなたは………? 」



白髪の青年 → ブラン000「 僕の名は『 ブラン000 』―――― 「博士」が造り出した、"最初で最後のアンドロイド"さ  」






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最終更新:2023年01月15日 19:06
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