「ハァ……ハァ……ひぃ!? 何で! どうして! 意味がわかんないッス!」
バトル・ロワイアルが始動して間もない序盤。宇崎花は絶体絶命の状況に置かれていた。
必死にデイパックを掴み、全力で逃げる宇崎の背後には、ファンタジーな世界観から抜け出してきたような小柄な怪物たちが迫っていた。
謎の声は言っていた。殺し合いを円滑に進めるための舞台装置として、NPCを会場に放っていると。
それらが参加者にどういう結果をもたらすのか、その例のひとつがこの状況である。
必死にデイパックを掴み、全力で逃げる宇崎の背後には、ファンタジーな世界観から抜け出してきたような小柄な怪物たちが迫っていた。
謎の声は言っていた。殺し合いを円滑に進めるための舞台装置として、NPCを会場に放っていると。
それらが参加者にどういう結果をもたらすのか、その例のひとつがこの状況である。
「もう何なんスか! 『ゴブリン』の群れとかどこのRPGですかぁ!! 意味わかんないっス! 助けてセンパァァァァイーーー!!!」
そう、まさしく『ゴブリン』としか言い様のない小人の群れが、宇崎花を追い立てていた。
手にした武器は粗末な棍棒、しかし比類無き下衆な欲望と悪意で塗り固められた性根を隠そうともせず、小鬼たちは嘲りながら獲物を追い立てる。
小鬼どもの視線は宇崎の豊満な胸に集中しており、捕まればどうなるのかは火を見るより明らかであった。
手にした武器は粗末な棍棒、しかし比類無き下衆な欲望と悪意で塗り固められた性根を隠そうともせず、小鬼たちは嘲りながら獲物を追い立てる。
小鬼どもの視線は宇崎の豊満な胸に集中しており、捕まればどうなるのかは火を見るより明らかであった。
「く、くるなっ! 来ないで、嫌っ…イヤアアア!! 先輩助けてェエエエエエ!!!」
無慈悲な現実に異議を唱える宇崎。それを嘲笑うゴブリン。そんな光景をじっと見据えている影がいた。
ーーーー
「あァーーいいね、いいよ、いいさ、いいな、いいかも、いいとも、いいじゃないか、いいだろうともさ!
殺し合い! ううん、実に喰らい甲斐がある連中が居そうじゃないか!
献立に何が並ぶかわからない! それもまた一興! これだから俺たちは生きることをやめられないんだ!
極上の料理を食って、食んで、噛んで、齧って、喰らって、喰らいついて、噛み千切って、噛み砕いて、舐めて、啜って、吸って、舐め尽くして、しゃぶり尽くして、暴飲! 暴食!」
殺し合い! ううん、実に喰らい甲斐がある連中が居そうじゃないか!
献立に何が並ぶかわからない! それもまた一興! これだから俺たちは生きることをやめられないんだ!
極上の料理を食って、食んで、噛んで、齧って、喰らって、喰らいついて、噛み千切って、噛み砕いて、舐めて、啜って、吸って、舐め尽くして、しゃぶり尽くして、暴飲! 暴食!」
ライ・バテンカイトスの脳裏を埋め尽くしたのは歓喜だった。
この催しがどこの誰によって行われているものなのか、興味もない。
どのような目的でこの奇妙な催しが行われているのかもどうでも良い。
『美食家』であるライにとって重要なのは、極上の人間、その全てを喰らい『幸せ』になる事だけである。
その点、この催しはライにとって非常に都合が良い。
福音書を没収されたのは確かに痛いが、あの場で感じた確固たる強者の気配。どれもこれもが食指に触れる極上品だった。彼らを喰らえば、どれほど飢餓が満たされるのか想像もつかない。それを考えれば福音書を奪われた苛立ちも半減した。
そういった様子で歓喜していたライは、やがて別の参加者を見つけた。
この催しがどこの誰によって行われているものなのか、興味もない。
どのような目的でこの奇妙な催しが行われているのかもどうでも良い。
『美食家』であるライにとって重要なのは、極上の人間、その全てを喰らい『幸せ』になる事だけである。
その点、この催しはライにとって非常に都合が良い。
福音書を没収されたのは確かに痛いが、あの場で感じた確固たる強者の気配。どれもこれもが食指に触れる極上品だった。彼らを喰らえば、どれほど飢餓が満たされるのか想像もつかない。それを考えれば福音書を奪われた苛立ちも半減した。
そういった様子で歓喜していたライは、やがて別の参加者を見つけた。
(なんだぁ? アレ)
緑肌の小人たちに追い立てられる少女の構図が目に止まった。
一心不乱に逃げる様子に、女に対する興味は早々に失われた。問題は追い立てている方である。
一心不乱に逃げる様子に、女に対する興味は早々に失われた。問題は追い立てている方である。
「もう何なんスか! 『ゴブリン』の群れとかどこのRPGですかぁ!! 意味わかんないっス! 助けてセンパァァァァイーーー!!!」
そんな怯えを含んだ絶叫が、ライの耳に届いた。
なるほど、あれは『ゴブリン』というのか。
あいつらの顔ときたら、間違いなく弱者をなぶるのを楽しんでいる。魔獣と違い、悪意のある亜人といった所か。
ライの知識にゴブリンは存在しない。必然的に食した経験もない。
ライは美食家だ。『悪食』とは違い、食事は厳選する。しかし、都合よく『名前』も知れた。
あれらがどんな味なのか少し気になったライは、ほんの気紛れで騒動の元に足を運んだ。
なるほど、あれは『ゴブリン』というのか。
あいつらの顔ときたら、間違いなく弱者をなぶるのを楽しんでいる。魔獣と違い、悪意のある亜人といった所か。
ライの知識にゴブリンは存在しない。必然的に食した経験もない。
ライは美食家だ。『悪食』とは違い、食事は厳選する。しかし、都合よく『名前』も知れた。
あれらがどんな味なのか少し気になったライは、ほんの気紛れで騒動の元に足を運んだ。
ーーーー
「うー、ペッペッ! どいつもこいつも糞みたいな味だ。暗闇で人を羨ましがって妬んで恨んで嫉妬! 嫉妬! 嫉妬! ああ見苦しい。前菜どころか素材にすらなりゃしない! 期待はずれも良いとこだ! 皿に乗る価値もない!」
ゴブリンに追い立てられ、今まさに毒牙にかかる寸前だった宇崎。それを救ったのは、ライ・バテンカイトスだった。
突如その場に乱入したライは、瞬く間にゴブリンの群れを蹴散らした。
しかし等の本人はあまりにもあんまりな結果に、地団駄を踏んで怒声を上げている。
突如その場に乱入したライは、瞬く間にゴブリンの群れを蹴散らした。
しかし等の本人はあまりにもあんまりな結果に、地団駄を踏んで怒声を上げている。
「す、スゴいッス…」
宇崎は信じられなかった。自分より年下の、ボロ切れを纏っただけの少年が、瞬く間に恐ろしい怪物たちを打ち倒したのだ。
その場にいたゴブリンは、例外なく屍を晒している。
その場にいたゴブリンは、例外なく屍を晒している。
(ーーーあれ、私、なんで?)
いや、それが何なのか、宇崎は理解できない。そもそも何で自分は此処まで走ってきたのかもよくわからない。
先ほどまで追いかけられていた筈だが、その記憶が脳裏から抜け落ちていた。まるで、そんな事実など元から無かったかのように。
結果的に見れば、宇崎は危機を脱した。しかし、未だに震えが止まらなかった。
原因は抜け落ちているが、結果だけ見ればまどかは助けてもらった筈なのに、寧ろ恐怖感は増すばかり。
その原因は、語るまでもなく異様そのものなライにある。初対面な筈なのに、彼が善意から宇崎を助けた訳ではないことは明らかだった。
ひとしきり不満を吐露した後、少年ーーライは、宇崎を一別する。
先ほどまで追いかけられていた筈だが、その記憶が脳裏から抜け落ちていた。まるで、そんな事実など元から無かったかのように。
結果的に見れば、宇崎は危機を脱した。しかし、未だに震えが止まらなかった。
原因は抜け落ちているが、結果だけ見ればまどかは助けてもらった筈なのに、寧ろ恐怖感は増すばかり。
その原因は、語るまでもなく異様そのものなライにある。初対面な筈なのに、彼が善意から宇崎を助けた訳ではないことは明らかだった。
ひとしきり不満を吐露した後、少年ーーライは、宇崎を一別する。
「で……君は誰かな?」
そう問いかけつつ、ライは舐め回すように宇崎を眺める。
まるで品定めするかのような視線に、堪らず悪寒が走った。
まるで品定めするかのような視線に、堪らず悪寒が走った。
「宇崎、花……ッス。……あ、あの! 助けてくれてありがーー」
「ウザキ・ハナ! なるほど、珍しい名前だねえ。ううん、でもあんまり美味しそうじゃないなぁ。胸は無駄にデカイけど…… ああ、でも、逆にいいんじゃないか! いいんじゃないの! 良いとも! 良いだろうとも! そう、このゴミカス以下の出来損ないどもよりはずっとマシだ! 少し物足りないけど、口直しに頂こうかな!」
落胆したように肩を下げ、かと思えば次の瞬間にはハイテンションに叫び始める。その情緒不安定としか言い様のない言動は、少年が明らかな危険人物である事を示していた。
ギラギラと狂気に輝く三白眼に捉えられ、さしもの宇崎も状況が何一つ改善していない所か、寧ろ悪化した事を察した。
宇崎花にとって少年は、これまでの人生で出会うことも、出くわす事もない筈だった人間だが、少なくとも分かっていることはひとつ。
この少年は、想像もつかないほど、何か嫌な事を自分にしようとしている。無慈悲にも、それだけは明らかだった。
ギラギラと狂気に輝く三白眼に捉えられ、さしもの宇崎も状況が何一つ改善していない所か、寧ろ悪化した事を察した。
宇崎花にとって少年は、これまでの人生で出会うことも、出くわす事もない筈だった人間だが、少なくとも分かっていることはひとつ。
この少年は、想像もつかないほど、何か嫌な事を自分にしようとしている。無慈悲にも、それだけは明らかだった。
「え、ちょ…… い、嫌……こないで……」
宇崎の怯えと恐怖が含まれた懇願は、しかし暴食には響かない。
ライは大口を開け、口直しの食事を実行しようとした。
ライは大口を開け、口直しの食事を実行しようとした。
「それじゃーーイタダキ」
「ーー“雷鳴八卦”!!!」
「!!!」
ーー『西洋剣』が振り抜かれた。
ライは巧みな身のこなしで、その一撃を防いだ。しかしその威力までは受け流させず、派手に吹っ飛ぶ。
「ヒィ!? こ、今度はなんスか!?」
宇崎の視線の先には、ライにとっての邪魔者が、宇崎にとっての救い主といえる人物がいた。
「ハァ……ハァ……、剣は慣れないけど……なんとか出来た!!」
ずば抜けた長身に和服に鬼の面の、歌舞伎を彷彿とさせる装いの人物は、震えてヘタリ込むま宇崎を見下ろす。
「君、大丈夫かい? 怪我は……無いみたいだね」
「ーーあ、は、はい……大丈夫、です」
宇崎の応答に、その『男性』は安心したようだ。面で表情こそ窺えないものの、その雰囲気だけは伝わってきた。
しかし彼は一切の油断無く、手にした剣を構え、宇崎を庇うようにライに立ち塞がった。
しかし彼は一切の油断無く、手にした剣を構え、宇崎を庇うようにライに立ち塞がった。
「いきなりひどいなぁ! ああでも今の技の熟練! 技能! 威力! いいね、いいよ、いいさ、いいな、いいかも、いいとも、いいじゃないか、いいだろうともさ! そこの女なんかより、ずっと、ずっと、遥かに極上だぁ!」
「お前……この催しに乗っているのか! 捨て置けない!!」
「おお、随分とやる気に満ち溢れているねえ! その義憤! 信念! 義侠心! ああ、実に旨そうだ! ……で、君は誰かな『お兄さん』!」
ライの問いかけに、謎の乱入者は血気盛んに名乗りをあげた。
「僕はーー『光月おでん』! 君を倒す男の名だ! 覚えておけ!」
その名乗りによって短い問答は終わり、続くのは武技による激しい応答。
開幕早々、暴食と自称『光月おでん』が激突した。
開幕早々、暴食と自称『光月おでん』が激突した。
【ライ・バテンカイトス@Re:ゼロから始める異世界生活】
[状態]:健康、不快感(中)
[装備]:DIOのナイフ詰め合わせ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:殺し合い! いいね、いいよ、いいさ、いいな、いいかも、いいとも、いいじゃないか、いいだろうともさ!
1:食欲をそそる相手は積極的に狙う
2:まずは『光月おでん』を食べる。『宇崎花』は正直どうでもいい。
[備考]
参戦時期は『イタダキマス』の後。
リレーされた場合、暴食の権能の制限は書き手に任せます。
ゴブリンの『記憶』を食べました。味は最低らしいです。
ヤマトの名前を『光月おでん』と認識しています。
[状態]:健康、不快感(中)
[装備]:DIOのナイフ詰め合わせ@ジョジョの奇妙な冒険
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:殺し合い! いいね、いいよ、いいさ、いいな、いいかも、いいとも、いいじゃないか、いいだろうともさ!
1:食欲をそそる相手は積極的に狙う
2:まずは『光月おでん』を食べる。『宇崎花』は正直どうでもいい。
[備考]
参戦時期は『イタダキマス』の後。
リレーされた場合、暴食の権能の制限は書き手に任せます。
ゴブリンの『記憶』を食べました。味は最低らしいです。
ヤマトの名前を『光月おでん』と認識しています。
【ヤマト@ONE PIECE】
[状態]:健康、少年(ライ・バテンカイトス)への警戒
[装備]:鬼の面、約束された勝利の剣(エクスカリバー)@Fate
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:『光月おでん』ならきっと主催者に従わない。なら、『光月おでん』である僕は殺し合いに乗らない!
1:『光月おでん』のように人を助ける。
2:『光月おでん』のように悪漢を倒す。
[備考]
参戦時期はワノ国編以前。
[状態]:健康、少年(ライ・バテンカイトス)への警戒
[装備]:鬼の面、約束された勝利の剣(エクスカリバー)@Fate
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×2
[思考・状況]基本行動方針:『光月おでん』ならきっと主催者に従わない。なら、『光月おでん』である僕は殺し合いに乗らない!
1:『光月おでん』のように人を助ける。
2:『光月おでん』のように悪漢を倒す。
[備考]
参戦時期はワノ国編以前。
【宇崎花@宇崎ちゃんは遊びたい!】
[状態]:健康、疲労(中)
[装備]:ー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いには乗らない。もし先輩が居たら合流したい。
1:殺し合いとか意味わかんないッス!
2:お、おでん……スゴい名前ッスね
3:あの人(ライ)怖いッス…
[備考]
ヤマトの名前を『光月おでん』と認識しています。
[状態]:健康、疲労(中)
[装備]:ー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×3
[思考・状況]基本行動方針:殺し合いには乗らない。もし先輩が居たら合流したい。
1:殺し合いとか意味わかんないッス!
2:お、おでん……スゴい名前ッスね
3:あの人(ライ)怖いッス…
[備考]
ヤマトの名前を『光月おでん』と認識しています。
【DIOのナイフ詰め合わせ@ジョジョの奇妙な冒険】
第三部のラスボス、DIOが使っていたナイフのセット。切れ味は鋭い。
第三部のラスボス、DIOが使っていたナイフのセット。切れ味は鋭い。
【約束された勝利の剣(エクスカリバー)@Fate】
セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)の宝具。ビームが出せるかは不明
セイバー(アルトリア・ペンドラゴン)の宝具。ビームが出せるかは不明
【ゴブリン@ゴブリンスレイヤー】
NPC。狡猾で残忍、かつ極めて自己中心的で執念深い。
夜目が利き、暗所を好み、闇夜に乗じて害を振り撒く。
弱そうな参加者を積極的に襲い、基本的に女性は「孕み袋」にする。上位種もいるかもしれない。
NPC。狡猾で残忍、かつ極めて自己中心的で執念深い。
夜目が利き、暗所を好み、闇夜に乗じて害を振り撒く。
弱そうな参加者を積極的に襲い、基本的に女性は「孕み袋」にする。上位種もいるかもしれない。
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