鬱蒼と木々が生い茂る森林地帯。その中に佇む一つの人影。
トレードマークであるツインテールに薄茶色の制服、そして風紀委員の腕章。
学園都市のレベル4、風紀委員・白井黒子は殺し合いという異常な状況下でも冷静さを失うことなくそこに立っていた。
トレードマークであるツインテールに薄茶色の制服、そして風紀委員の腕章。
学園都市のレベル4、風紀委員・白井黒子は殺し合いという異常な状況下でも冷静さを失うことなくそこに立っていた。
(やはりテレポートによる首輪の干渉は対策されていますか……)
鈍く光沢を放つ首輪をなぞり渋い顔を浮かべる。
想定の範囲内の事ではあったが、能力による首輪への干渉は封じられているらしい。
AIM拡散力場に何らかのジャミングを受けているのか、自分の知らない未知の技術なのか。
首輪をテレポートさせて外す、という選択肢が現時点では取れない事だけは確かだ。
想定の範囲内の事ではあったが、能力による首輪への干渉は封じられているらしい。
AIM拡散力場に何らかのジャミングを受けているのか、自分の知らない未知の技術なのか。
首輪をテレポートさせて外す、という選択肢が現時点では取れない事だけは確かだ。
(となれば、物理的に首輪を外すか、或いは爆破の信号を出す本営をハッキングするしかないですわね)
とは言え、その二つの選択肢は自分には得手ではない。
在籍しているだけで世界有数の才女の証である常盤台生として一定以上の工学知識はあるが、流石に爆発物の解除・解体までは行ったことはなかった。
ハッキングも風紀委員の同僚である初春飾利が主に担当しているのでそちらも難しい。
敬愛する御坂美琴の様に高レベルの電撃使いならともかく自分の知識で崩せるほど主催のセキュリティが脆弱であるとは思えなかった。
つまり、現在の白井黒子にはこの殺し合いを破綻させ得るだけのカードを有していない。
在籍しているだけで世界有数の才女の証である常盤台生として一定以上の工学知識はあるが、流石に爆発物の解除・解体までは行ったことはなかった。
ハッキングも風紀委員の同僚である初春飾利が主に担当しているのでそちらも難しい。
敬愛する御坂美琴の様に高レベルの電撃使いならともかく自分の知識で崩せるほど主催のセキュリティが脆弱であるとは思えなかった。
つまり、現在の白井黒子にはこの殺し合いを破綻させ得るだけのカードを有していない。
「となれば、他の参加者を保護し、そこから打開の道を探るしかありませんわね」
道程の困難さが明らかになっても彼女の方針は揺らがない。
他の参加者を保護し、殺し合いに乗った者は制圧し、最終的な脱出の道を探る。
それこそが、この殺し合いでの鉄の規範。それ以外の選択肢は存在しない。
己自身にそう定めた時、聞き覚えのある声が彼女の耳に響いた。
他の参加者を保護し、殺し合いに乗った者は制圧し、最終的な脱出の道を探る。
それこそが、この殺し合いでの鉄の規範。それ以外の選択肢は存在しない。
己自身にそう定めた時、聞き覚えのある声が彼女の耳に響いた。
「保護、か…君はこの殺し合いでも変わらないんだね」
木の陰から少年が姿を現す。
上背のない黒子よりも一回りも小さい身体。あどけない顔立ち。
それなのに酷く大人びた、無感情そうな顔と声。
上背のない黒子よりも一回りも小さい身体。あどけない顔立ち。
それなのに酷く大人びた、無感情そうな顔と声。
「貴方は…美山!?」
「うん、お互い災難だね、黒子」
「うん、お互い災難だね、黒子」
間違いなく、少し前に黒子が助けた予知能力者の小学四年生、美山写影だった。
「貴方もこの悪趣味な催しに参加させされていたのですか?」
「…あぁ、どうしようと思ってたんだけど、黒子に最初にあえてよかったよ」
「その落ち着きよう…相変わらず子供らしくないお子様ですわねぇ」
「そうでもないよ。僕も結構動転してるんだ
……こうして見た目冷静でいられるのは、黒子に会えたお陰かもね」
「本当にそう思っているなら、もうちょっと感情をこめて言いなさいな」
「…あぁ、どうしようと思ってたんだけど、黒子に最初にあえてよかったよ」
「その落ち着きよう…相変わらず子供らしくないお子様ですわねぇ」
「そうでもないよ。僕も結構動転してるんだ
……こうして見た目冷静でいられるのは、黒子に会えたお陰かもね」
「本当にそう思っているなら、もうちょっと感情をこめて言いなさいな」
出会ったときと変わらない無表情無感情さの少年を見て、黒子は苦笑する。
彼女は知っていた。一見達観した彼が強い他者への思いやりと正義の心を持っていることを。
紛れもなく、自分が守るべき存在だ。
心中で使命感を募らせる。そんな黒子を、写影は彼にしては珍しく様々な感情が入り混じった瞳で見つめた。
彼女は知っていた。一見達観した彼が強い他者への思いやりと正義の心を持っていることを。
紛れもなく、自分が守るべき存在だ。
心中で使命感を募らせる。そんな黒子を、写影は彼にしては珍しく様々な感情が入り混じった瞳で見つめた。
「…どうしたんですの?」
「その、黒子は此処でも前に行ってた正義を貫くつもりかい?」
「その、黒子は此処でも前に行ってた正義を貫くつもりかい?」
尋ねる写影の瞳は、「動揺している」と言っていた時よりも揺れて見えた。
そして、写影は「その道はきっと茨の道になるよ」と続けた。
縋るような、詰問するようなその言葉。しかし黒子は微笑みを浮かべて受け止める。
そして、写影は「その道はきっと茨の道になるよ」と続けた。
縋るような、詰問するようなその言葉。しかし黒子は微笑みを浮かべて受け止める。
「あら、貴方には私が問題が難しければ投げ出して、簡単なら挑戦する女に見えるんですの?」
「……そうだな、それが君だ。ゴメンよ、黒子
つまらない事を聞いたお詫びと言っては何だけど…僕も、君に協力しようと思う」
つまらない事を聞いたお詫びと言っては何だけど…僕も、君に協力しようと思う」
そう言って、写影に支給されたと思しきデイパックからカメラとスマートフォン、そしてペンライトが取り出される。
彼の予知能力を十全に発揮するために…脳のリミッターを解除して能力を行使するのに必要な道具だった。
しかし、黒子は彼がそれらのアイテムを使って能力を行使し続けた結果、どの様な結末を迎えそうになったかを知っている。
彼の予知能力を十全に発揮するために…脳のリミッターを解除して能力を行使するのに必要な道具だった。
しかし、黒子は彼がそれらのアイテムを使って能力を行使し続けた結果、どの様な結末を迎えそうになったかを知っている。
「リミッターを外した能力の行使は禁止したはずですの」
「うん、僕も誰彼構わず能力を使うつもりはないよ。
それに、君も僕の能力の有用性は知ってるだろう?」
「…………」
「うん、僕も誰彼構わず能力を使うつもりはないよ。
それに、君も僕の能力の有用性は知ってるだろう?」
「…………」
他人の不幸な未来を念写することができる写影の予知能力。
三次元では不可避の未来も、11次元に干渉可能な能力である黒子の空間転移。
過去に二人は各々の能力を組み合わせ、多くの人間を数日という短い期間で救っている。
非常に強力な組み合わせというの熟知している。だが写影の身体への負担が大きすぎる事がデメリットとして横たわっていて。
黒子はその事を考え、少しの間黙考した後、一つの条件を出しながらも了承する。
三次元では不可避の未来も、11次元に干渉可能な能力である黒子の空間転移。
過去に二人は各々の能力を組み合わせ、多くの人間を数日という短い期間で救っている。
非常に強力な組み合わせというの熟知している。だが写影の身体への負担が大きすぎる事がデメリットとして横たわっていて。
黒子はその事を考え、少しの間黙考した後、一つの条件を出しながらも了承する。
「……いいでしょう。私が指示した時のみ、能力の行使を許可します。
ですが、それ以外の時は能力の使用は厳禁ですの」
「うん、その条件でいいよ。僕も使い過ぎであの時みたいに倒れたくはないしね。
お互い生き残れるよう、またよろしく頼むよ」
「えぇ、勿論ですの。では早速、他の参加者と拠点探しに参りましょうか」
ですが、それ以外の時は能力の使用は厳禁ですの」
「うん、その条件でいいよ。僕も使い過ぎであの時みたいに倒れたくはないしね。
お互い生き残れるよう、またよろしく頼むよ」
「えぇ、勿論ですの。では早速、他の参加者と拠点探しに参りましょうか」
力強く握手を交わす二人。
周囲の状況から察するに、此処は学園都市ではなく風紀委員やアンチスキルの介入は望めない。
つまり、自力での脱出しかない。それも、首輪で命を握られた状態から。
それでも、彼女のやるべき事は変わらない。
弱者は保護を。殺し合いに乗った悪漢には熱いお灸と、更生を。
過酷な道行にはなるだろう。しかし、一人ではない。
自分の正義を理解してくれている小さくも頼もしい味方が、少なくとも一人はいるのだ。
その事実は、少女に力を与える。
周囲の状況から察するに、此処は学園都市ではなく風紀委員やアンチスキルの介入は望めない。
つまり、自力での脱出しかない。それも、首輪で命を握られた状態から。
それでも、彼女のやるべき事は変わらない。
弱者は保護を。殺し合いに乗った悪漢には熱いお灸と、更生を。
過酷な道行にはなるだろう。しかし、一人ではない。
自分の正義を理解してくれている小さくも頼もしい味方が、少なくとも一人はいるのだ。
その事実は、少女に力を与える。
(お姉様…待っていてください。黒子は、必ず貴方のお傍へ戻りますの)
敬愛する電撃使いの少女に誓いながら、少女は少年を連れて動き出す。
学園都市を遠く離れた地で、二人だけの正義(ワガママ)が始まろうとしていた。
学園都市を遠く離れた地で、二人だけの正義(ワガママ)が始まろうとしていた。
【白井黒子@とある科学の超電磁砲】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(未確認)
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いを止める。
1:美山や無力な参加者の保護。殺し合いに乗った参加者の制圧。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1〜3(未確認)
[思考・状況]:基本行動方針:殺し合いを止める。
1:美山や無力な参加者の保護。殺し合いに乗った参加者の制圧。
※美山写影と出会った後、ペロ救出後より参戦です。
(黒子、やっぱり君は…君の正義は変わらないんだね)
黒子の後ろを歩きながら、写影は服の内ポケットに隠した一枚の写真を握りしめる。
この会場に呼ばれて直ぐに、彼が念写したものだ。
この会場に呼ばれて直ぐに、彼が念写したものだ。
(僕と君は似ている。君は以前そう言ったけど…僕はやっぱり君みたいにはなれないよ)
努めて、平静を保ちながら、もう一度、内ポケットの写真に視線を移す。
そこには―――身体に血の花を咲かせ、虚ろな目で横たわる、未来の白井黒子の姿があった。
そこには―――身体に血の花を咲かせ、虚ろな目で横たわる、未来の白井黒子の姿があった。
(黒子、君の事は…僕が必ず生きて学園都市に返して見せる)
黒子は、この場でも多くの人を救おうとするのだろう。
だって白井黒子という少女は、殺し合いの場でも変わらぬ正義の味方(ヒーロー)だから。
けれど、殺し合いという異常な状況でその正義を貫こうとすれば危険度は確実に跳ね上がる。
弱肉強食の世界で弱者を守るという事は、全ての危険の矢面に立つという事だ。
だって白井黒子という少女は、殺し合いの場でも変わらぬ正義の味方(ヒーロー)だから。
けれど、殺し合いという異常な状況でその正義を貫こうとすれば危険度は確実に跳ね上がる。
弱肉強食の世界で弱者を守るという事は、全ての危険の矢面に立つという事だ。
安全な拠点に着いたらこの写真を見せて、まず自分の安全を確保できるような行動を提案するつもりである。
しかし、黒子はそれでもなお、人を救うために動くだろう。彼女の正義はそういうものだ。
けれど、それで彼女自身が死んでしまうのなら……
しかし、黒子はそれでもなお、人を救うために動くだろう。彼女の正義はそういうものだ。
けれど、それで彼女自身が死んでしまうのなら……
(―――僕の力は友達の君のために使いたい。君に生きていてほしい
うん、やっぱり僕の正義って、そういうものなんだと思う)
うん、やっぱり僕の正義って、そういうものなんだと思う)
未来の不幸を読み取る能力と、空間転移があれば、きっと多くの人を救える。
それでも彼は、自分の友達のためだけに、支給品で新たに得た能力も含めて全てを白井黒子という少女のためだけに行使すると決めた。
救えたはずの犠牲に目を瞑って。
幼稚なワガママであるとは、分かっているけれど。
それでも、きっと。
そのワガママと呼ばれるものが、この場における、彼にとっての正義だった。
それでも彼は、自分の友達のためだけに、支給品で新たに得た能力も含めて全てを白井黒子という少女のためだけに行使すると決めた。
救えたはずの犠牲に目を瞑って。
幼稚なワガママであるとは、分かっているけれど。
それでも、きっと。
そのワガママと呼ばれるものが、この場における、彼にとっての正義だった。
【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、インスタントカメラとスマートフォン@とある科学の超電磁砲
イエロー・テンパランスのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]:基本行動方針:黒子を守る。
1:黒子を守る。自分の持つ能力の全ては、友達の彼女のために使う。
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、インスタントカメラとスマートフォン@とある科学の超電磁砲
イエロー・テンパランスのスタンドDISC@ジョジョの奇妙な冒険
[思考・状況]:基本行動方針:黒子を守る。
1:黒子を守る。自分の持つ能力の全ては、友達の彼女のために使う。
【インスタントカメラとスマートフォン@とある科学の超電磁砲】
写影の能力を使用する際に必要な道具。インスタントカメラに未来を念写し、
それをスマートフォンの念写アプリに通すことで未来を見る事ができる。
本編の描写から見れる未来は不幸な未来に限定されていると推察できる。
写影の能力を使用する際に必要な道具。インスタントカメラに未来を念写し、
それをスマートフォンの念写アプリに通すことで未来を見る事ができる。
本編の描写から見れる未来は不幸な未来に限定されていると推察できる。
【イエロー・テンパランスのスタンドDISC】
相手に同化し、肉を取り込む不定形のスライムのようなスタンド。
直接触ると触れた部位に食いつき吸収しはじめる「攻撃する防御壁」としての性質を持ち、全身に纏う事で他人そっくりに変装することも出来る
相手に同化し、肉を取り込む不定形のスライムのようなスタンド。
直接触ると触れた部位に食いつき吸収しはじめる「攻撃する防御壁」としての性質を持ち、全身に纏う事で他人そっくりに変装することも出来る
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