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  • コンペ・ロワイアル@ウィキ
  • The run-to escape from monsters-

コンペ・ロワイアル@ウィキ

The run-to escape from monsters-

最終更新:2021年09月08日 10:02

匿名ユーザー

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既に深夜に差し掛かかり、闇夜に包まれた森林。木々の間に美しい月明かりが差し込んでいる。 そんな美麗な景色にはそぐわない地鳴りが、破壊音が、咆哮が、そこかしこに響いている。 天上にて鎮座する月は、殺し合いに招かれし者共を等しく照らす。 それは殺人鬼による決死の逃亡劇も例外ではなかった。

月明かりが照らすは疾走する2つの影。 一人は男。 血にまみれた裏の世界で生きる者。自らを安全と驕る者共に悉く死を与える恐怖の伝道師。快楽殺人者にしてシカゴマフィア、ルッソ・ファミリーに身を置く男。その服装は夜闇に目立つ白服を纏っている。 男の名はラッド・ルッソ。 暗闇の森林での逃走劇。 その「逃げる側」となった人物である。 あのラッド・ルッソがあろうことかマフィアの面子すら投げ捨てて敵に背を向けている--この事実だけで「追う側」の存在が如何程の脅威であるかは、ラッド・ルッソという人物を知っている人間は正しく理解できよう。

その件の追跡者はあろうことか参加者ですらない。殺し合いの促進。それを担うNPC。それもゴブリンなどといった弱者ではない。 緑色を纏った巨体。 一つ歩みを進める度に地面が揺れ轟音を轟かせる。 夜の闇でも赤く輝くその眼から放たれるは高度の熱球。 他のNPC達とは一線を画した驚異を誇る存在。 その名は打擲の剛激手という。

(コイツ......!どんだけ追ってきやがる!!しつこいにも限度ってもんがあんだろうが!!!)

今だに互いの距離は付かず離れず、一定の距離を保ったままである。当然、ラッドに支給された散弾銃。それで 打擲の剛激手の目を潰そうにもそうはいかない。ラッドが目を狙おうにも熱球にそれを阻まれる。散弾銃、という性質上、ある程度離れた距離から、しかも一点のみを集中して狙うことは難しい。それ故にラッドは未だに打擲の剛激手からの追跡を許していた。 木々の合間を縫ってなんとか距離を取るも、追跡者はその巨大を駆使して強引に道を開く。 このままでは早かれ遅かれ追い付かれて殺されるのがオチだ。

『聞け! この地に集いし--』

なにやら声が響いてきたがそれに構っていられる程のは余裕はラッドには無い。 今はこの状況を打開せねば命の危機に直結する。しかし、今のところこれといった打開策もない。

(オイオイオイオイ........近付いたらあのゴツい爪でお陀仏、距離を取っても熱球かよ......ヤバいッ!ヤバいってこいつぁよォ!さぞかしこのバケモンはこう思ってんだろうなあッ!でっけえ爪もなけりゃ目から火の玉も出せねぇようなちっぽけな下等な人間ごときには殺されねぇって思ってんだろうなあッ!!!あぁ......クソッ、もうちっといい武器がありゃあなぁ......おあずけもいいとこだぜまったくよーッ!!)

まだ支給品を確かめれば何か役に立つ物でもあるんだろうが--その隙をあの空恐ろしい追跡者が与えてくれはしない。 何かないものかと思案を巡らせながらも追跡者への警戒を怠らない。
咆哮を上げて迫り来る怪物を殺してやりたいという欲望を抑え、今は逃走に徹する。
今の状況ではどうあってもあの化け物は殺せない。 追跡者はラッドを黒焦げにせんと熱球を放ち、その都度ラッドは右へ左へ方向転換して避けてゆく。
その応酬を何度繰り返したか、一人と一匹は森中をジグザグに駆け回るうちに、ラッドは森の出口を発見する。 その場所にあったのは建物だった。 追跡者の放つ熱球を避け、そのまま森を抜ける。 するとどうだろうか、化け物は森から一歩も出ず、眼前にいるラッドを追わずに踵を返し、森の夜闇へと消えていった。 それを確認すると、些かの不自然さを感じつつも安堵のため息をつき、支給品の確認の為に家の中へと入っていった--

◆◆◆

「--ここまでが、この殺し合いに来るまでの顛末です。」
「ひろし様........」
「あなたも大変だったのね........」
「牛飼娘さん程ではありませんよ。まさか村一つがなくなるなんて......」

互いの身の上話をしつつ、三人の参加者が日の出つつある黎明の草原を歩いている。
ゴブリンの襲撃、そして新たな参加者との邂逅からあまり時間は過ぎていない。
始めに集った五人。それと今しがた加わった一人のグループは町に半分、他参加者との合流に半分と別れている。
彼ら三人は殺し合い打開の為の戦力を求めて移動していた。

--表向きは。

実際、三人の中の一人である牛飼娘は殺し合いに乗っていないであろう貴重な戦力足りうる存在。それでいて幼なじみでもある人物、ゴブリンスレイヤーとの同行を目的としている。

しかし、この探索にはもう一つの隠された意図がある。
この移動の発案者であるひろしのみが知る裏の目的。

「ひろし様を襲うとは...........その相手が人間でなくとも、私は断じて許せません......!」

それは二人の同行者--もといメイドの少女、粕谷瞳の存在である。瞳ははっきり言って異質の存在だ。出会い頭にひろしの事を「ご主人様」と称した様に、その行動原理は理解し難い。

初対面から血濡れのチェーンソーを装備していたことに始まり、出会って間もないひろしへの異常なまでの忠誠心や自分意外の者の話には反応しないこと--それらの行動を一つ取っても常軌を逸している。

「瞳ちゃんは、ここに来るまでに何があったの?あたしもひろしも話したんだしさ、教えて欲しいな?」
「..........」

今も牛飼娘の話には反応すら示さない。ひろしは内心、彼女の動向にも気を配りつつ、先へと進む。

ひろしの真の狙いは彼女--粕谷瞳が信頼に足るかどうかを知ることである。
今までの彼女の行動原理が『誰かのためになりたい』といったものならばまだいい。
NPCに、参加者に何時なんどき襲われるかわからない最中、献身の為だけに動けるとしたら異常ではあれ信頼に足る。

だがこれが演技であったならば。

もしかしたら自分達の寝首を掻こうと虎視眈々とチャンスを待っているならば。

あのチェーンソーで切りかかられる想像をしてしまい、ぞわり、と背筋に寒気が迸る。

「ひろし様、どうかなされましたか?」

その様子を見て心配されたのか、瞳がひろしへと声をかける。
彼女のバックに上りゆく太陽。
日差しを背にした彼女の顔は薄暗く見える。
反対に瞳の得物であるチェーンソーは所々がゴブリンの血に染まっており、その赤色を帯びた鈍い輝きがひろしの目を差す。
かつて遭遇した怪異とはまた別の理解しがたい存在にさしものひろしも恐怖を感じざるを得なかった。

「ねぇ、瞳ちゃん!......ほんとにあたしの声、届いてるのかな?」
「........」

それにしても--と、ひろしは先程感じた恐怖心を思考の奥底へと追いやり、内心辟易する。
瞳が信用に足るか、足らないか以前の問題として、彼女はひろし意外の人間とコミュニケーションを取らない。
前述した粕谷瞳の常軌を逸した行動の一端であるが、これは非常に厄介だ、とひろしは思う。

当然、この殺し合いでは何が起きるかわからない。
まるでファンタジーものの物語から飛び出してきたかのようなゴブリンやそれらを歯牙にもかけずに殲滅してのけた柱たる鬼狩り、さらには漫画のキャラクターときた。
そんな人物達が一同に会したこの場では、何が起こってもおかしくはない。その時に、ひろしが瞳と分断されるような事態になったら間違いなく瞳は牛飼娘を無視して行動を起こすだろう。
それでは困るのだ。
故に、ひろしはとある事を考え、実行に移した。

「あの、瞳さん。僕の頼みを聞いては貰えませんか?」
「はい、ご命令でしたらなんなりと。」
「僕以外の言葉にも反応しては貰えませんか?さすがにいざ、という時に話が通じないと困ります。」
「かしこまりました。お安い御用でございます。」
「じゃあ瞳ちゃん、私の声は届いてた?」
「ええ、もちろんです。」
「じゃあ早速瞳ちゃんはここに来るまで何を--」
「その前に、お話したいことがあるのですが。」

「ご主人様」からの命令は絶対なのか、今まで牛飼い娘が声をかけてもうんともすんとも反応を示さなかった瞳は何事も無かったかの様に対話に応じた。
なんとか目先の問題を解決することができた、と内心ひろしはため息をつきながら先行きに不安を覚えた。

「それで、話とは何ですか?瞳さん。」

◆◆◆

「おいおいおいおい......マジかよ、マジで言ってやがんのかよこれはよー!」

ラッド・ルッソは支給された支給品を見てぼやいていた。
恐ろしい追跡者から逃げ切ったところまではいい。
あのメイドといい化け物といいここには殺しがいのある奴が多い。
しかし人を殺せる支給品がまさか散弾銃のみとは。
ようやく殺しがいのある化け物を殺す準備ができる思ったらこれだ。

「ったくよー、どんだけ俺にお預けすりゃ気が済むんだよ主催さんはよー!!!」

とりあえずあの化け物に追われた他の参加者がここに来ないか待っては見たが誰一人として訪れはしない。

ここからどうするか--それに対するラッドの答えはいかにも彼らしいものだった。
参加者を求めて探し歩き、彼らの支給品を以てあの化け物を殺す。
そう決めたが最後、確認の為にバックから出した地図やら支給品やらを再び詰め直す。
そうしていざ建物から出ようとしたその時、外から足音が聞こえた。
何者かと思って窓を覗くとそこには見覚えのあるメイド服とチェーンソー。
それを見た直後、ラッドは弾かれるようにして建物から飛び出していった。

◆◆◆

--『私ね、ここに来る前にゴブリンに牧場を襲われたんだ。でもね、彼が守ってくれたんだ。』
--『彼、と言うとあなたが言っていたゴブリンスレイヤーさんでしょうか。......そうして命を懸けて守ってくれる方がいるのはなんというか、羨ましいです。』
--『..........』

◆◆◆

「ようやく着きましたね......」
「そうだね......」
「ひろし様、牛飼娘様、お疲れでしたら一度休まれますか?」

瞳の話とは、この先の移動方針。
日が上り始めた黎明の草原を踏みしめ、向かう先はB-4。
一見すると鬱蒼とした森林が大部分を占めているエリアだが、その末端--丁度今ひろし達のいるC-4エリアに建物が面している。
一応建物があることから、参加者がいる可能性もあるし、何より危険なNPCや参加者がいたとしても他の仲間達が陣取っているC-3エリアは目と鼻の先だ。
故にこそ、近場でかつ最悪の場合は仲間の元へと逃げられるB-4エリアへと移動を進めた。

幸いにもNPCや他参加者からの襲撃も無く、無事にたどり着けてひろしと牛飼娘は安堵のため息を漏らす。
どれ程二人が人ならざる怪物の襲撃から逃げ延びてきたといってもさすがに今回の殺し合いは堪えた様だ。

どこかで一服できればいいのだが--そう思った矢先、白服の男が目に入る。男は銃を構えて--

甲高い発砲音と共に弾丸が打ち出される。
咄嗟に瞳がチェーンソーで銃弾を弾く。
旋回する刃が襲撃者の発砲音に負けず劣らずの金属音を撒き散らす。

「あなたは.....!」
「よぉ!久しぶりだな!嬢ちゃんよぉ!!」

鳴らすは発砲音。
それに準じて響くは弾く音。
ラッド・ルッソと瞳の闘いは均衡を保っている。
一度ラッドが銃弾を放てば弾くは瞳のチェーンソー。
旋回する刃が火花を散らして弾丸を撥ね飛ばす。
瞳はラッドの隙の無い銃撃に攻め手をあぐねている。
しかしそれはラッドも同じで、いくら弾を放とうが悉く瞳に防がれる。

「嬢ちゃんがそんなメイド服着てんのって、つまりあれだろ?俺に奉仕してくれるためだよなぁ!!俺に!俺だけのために!!嬢ちゃんはわざわざ戻って来てくれるとはーッ!!!つまり!これはもはや愛だーッ!!!」
「何を言って......!」
「愛してるぜ!だから死ね!!」
「ひろし様!牛飼娘様!今すぐ離れて下さい!」

瞳の指示に従い、ひろしと牛飼娘は一旦距離を取る。
戦闘を瞳に任せてひろしは努めて冷静に状況把握に徹していた。
白服との短いやりとりではあったが、瞳の実力は申し分ないと感じる。
あの男からの襲撃に一番早く気がついたのも瞳であるし、至近距離から放たれた弾丸をチェーンソーで弾くという常人ならざる離れ技を披露してのけた。
さらには即座に自分達を下がらせたことから、少なくとも今はひろし達を裏切る事はないだろう、とひろしは考えた。

ひろしとしては目的は既に達成している。
牛飼娘も敵からの襲撃時はなるべく撤退するべきだと思う。
しかし、白服の男がそれを許さない。
楽しげに笑いながら、時に叫びながら瞳に猛攻を加えている。
ひろしとしても、牛飼娘にしても、ここで戦っている少女を見捨てて行くほど腐ってはいない。
しかし、思いは同じでも、ここで二人の行動には大きな差異があった。

ショックガンを握っている手をいっそう強く握る。
銃を持った相手にも果敢に挑む瞳を見て、ひろしの中に不思議な感情が満たされる。
町でチョロプーからクロちゃんを庇った時も、同じ様に感情が揺れ動いていた。
自分は無力だ。
殺し合いに招かれる前は化け物からただ逃げることしかできなかった。
それでも--今の自分には抗う力がある。

瞳が渡してくれたショックガンを見て、防戦一方と移り変わった二人の戦いを見て、ひろしは決心した。

「牛飼い娘さん。僕はこれから、瞳さんの援護に行きます。」

こうして口に出して言うことでひろしの中に芽生えた覚悟がいっそう強まるのを感じる。
牛飼い娘が驚く表情を見せ、ひろしを引き留めようと口を開くが、彼女の言葉を待たずに突っ込んでいってしまった。

遠ざかっていくひろしの背中を見て、牛飼い娘は逃げることもせず、ただその場に留まっていた。
ひろしが、瞳達が命を懸けて戦っているのに逃げることも出来ない。
ならば彼女ができることはこれだけ。
ただ二人の戦いを見守るだけしか、彼女には思い付かない。
かつてゴブリンスレイヤーの居場所であろうと命を懸けていたように。
牛飼い娘は彼らの帰還を出迎える為に。
彼女は戦う二人から目を放さなかった。

ラッドと瞳の戦いは均衡を保った状態から一方的なものへと変貌を遂げていた。
攻めるはマフィア、ラッド・ルッソ--内なる狂気を余すことなく解放せし殺人狂。
その双貌は建物に隠れた獲物に焦点を当て続けている。
対して、彼を迎え撃つはメイド--粕谷瞳。
チェーンソーで彼の弾丸を弾くにも限度を感じた彼女は建物に隠れ、防戦一方となっている。

今のラッドはその持ち前の獰猛さを遺憾なく発揮し、瞳に対して攻めの姿勢を取っている。
それは考えなしのことではなく、ラッドなりの論理あってこそのものだった。

散弾銃とチェーンソー。
離れた距離にて真価を発揮する銃と(瞳によると)メイドの題名詞と呼び声高い専断の刃。
しかし、散弾銃の真価たる距離での戦闘を続けていても、粕谷瞳には通じない。
銃と近接武器ならば当然、誰もが銃の方が強力である、と語るだろう。
しかし、それは常人の理論。
常人の思考など一つも二つもいともたやすく乗り越えてのける異常には通用しない。
遠距離から一方的に攻撃できるのが銃の強みだ。
ならばもし、銃弾を避け、あまつさえ弾いてしまう脅威的な反射神経を誇る存在が相手だとしたら?
何も出来ずに距離を詰められ、予定調和の如く首を跳ねられてお陀仏だ。
それを読んだラッドは、自信の武器--散弾銃の特性を活かして戦うことを選択した。

そう、ラッドはあろうことか至近距離にまで近付いて散弾銃を放ったのだ。
これは前述した話になるが、ショットガンは遠距離武器にも関わらず、一点を狙った狙撃には向いていない。
それは何故か、散弾銃は狙撃、という面を犠牲に範囲、という強みを得たからだ。
一度に大量の弾を放ち、拡散させる。
ならばもし、その弾が拡散させずに一気に襲いかかったとしたら?
答えは単純明解。
凝縮された威力の鉄塊を至近距離で叩きつける。
それでは流石の瞳といえど弾くのには限界が来る。
故にこそ、彼女は隠れることを選択した。
一時的に防戦一方となる立場を受け入れたのだ。

しかし、だからといって瞳が弱者の側に立たされたかというとそうでもない。
無理なく弾丸を弾ける距離は確保しているし、しびれを切らしてラッドが近付いてこれば死角から攻撃すればよい。

互いに『異常』を内に秘める者の第二ラウンドは、お互いに隙を伺う巾着状態へと様変わりした。

「おいおいどうした、嬢ちゃんよ、そんなに恥ずかしがらなくてもいんだぜ?この俺によ、ちょいと顔見せてくれよ、なぁ?」

反応するだけ無駄だと思われたのか、重苦しい沈黙が辺りを包む。
それを再び破ったのも、またラッドだった。

「まぁいいや。それよりさぁ--」

銃声が瞳とは見当違いの方向で鳴り響く。

「お前、誰?」

ラッドは後ろから狙っていたひろしに向けて発砲した。
弾丸がひろしの頬を霞め、飛んで行く。

「ひろし様!!」
「あ、もしかしてお前、アレか、嬢ちゃんのご主人様、とかそんな感じなわけ?まぁメイドがいんなら主様もいるかァ......」

人に発砲した挙げ句にその相手に向かってへらへらと笑いながら声をかける。
ひろしは眼前の男に明確な恐怖を与えた。
あの青色の怪物とは別の毛色の恐怖。
あの瞳にも似た恐怖を再びひろしは目の当たりにしていた。

「--ってことはさ、お前」

ラッドは一歩ずつ、じっくりと踏みしめながらひろしへと距離を詰める。

「お前はさ、自分は死なないって、思ってんだろ?」

一歩、また一歩。
殺人鬼と少年の距離が縮まってゆく。

「--ッ!」
「ざんねんでした」

ひろしがショックガンを構えた隙を見逃さず、ラッドの拳がひろしの鳩尾へと叩きこまれる。
例えひろしが命をかけた修羅場を経験していたとしても、ラッドには到底及ばない。
ひとえに対人戦闘の差。
これが二人の間を隔てる絶対的な壁であった。

「おいおいおいおい、どうしたぁ?まだまだこっちは、満足してねーっつうの!もっと頑張ってくれよぉ....」

高笑いと共に銃口をひろしへと向けた瞬間、咄嗟に瞳が飛び出し、ラッドへと襲いかかる。
しかし、それを見切れぬラッドではない。
次の瞬間には瞳に銃弾を放つ。
それを咄嗟に弾き、距離を取る。

瞬間--ラッドの手から何かが放たれた。
それはスタングレネード。
ラッドに支給されていたものだ。
目映い閃光が辺りを包んだ。

「目眩ましなんて逃げる時くらいしか使えねぇって思ってたけどよ、思ったより使えんじゃねえかよー!こいつァ!」

視界を奪われた二人。
どちらにしようか--と一瞬悩んだ後、ひろしへと拳を飛ばした。

「お前さぁ、あの嬢ちゃんのご主人さまなんだよなぁ!?だったらよーッ!このくらい屁でもねぇよなぁ?」

ひろしの顔に拳が連打される。
威力こそボクサーの足元にも及ばないものだが、戦いを経験したことのないひろしには放たれるラッドの拳の一つすら脅威だ。

「そう!お前はこう思ってるはずだ!!この殺し合いに呼ばれた連中の中で自分だけあんだけ強えメイドが従ってる自分を殺せる奴なんていない!俺は最強だ!俺は安全だ!!ってなぁ!!楽しいだろうなァ!楽しいだろうなァ!!お前らをブッ殺すのは!腸を引きずりだすのは!ソーセージの中身みてぇにグチャグチャに!磨り潰してやるのはよォーッ!!!」

そのままひろしを殴り飛ばす。顔面に入ったストレートはひろしの眼鏡にひびを入れ、脳震盪を起こすに至った。さらにラッドは流れる様に銃を手に取り、ひろしへと構える。
瞬間。
後方から刃が飛んだ。

「うおっ、とォ!マジかよ、マジかよオイ!視界治るの早すぎやしねぇか!?オイオイありえねぇって!マジありえねぇって!!」
「ひろし様を傷つけた罪......死んで償いなさい!」
「そうかよ、そうだよなァ!ご主人様を傷つけられて......屈辱かい?死にたいかい?死にたくなくても、殺してやるがね!」

興奮のまま、ラッドは瞳へと引き金を引く。
そうして、殺人狂とメイドの戦いは再び始まった。

(瞳....さん)

顔面に走る痛みが、ひろしを襲っていた。
なんとか視界も元に戻り、立ち上がる。
常人ならば既に心も折れているであろう状況。
それでも、ひろしは立ち上がる。
未だに言葉にはできないが--言い様のない感情が、激情が、ひろしに立ち上がれ、と発破をかける。
皮肉にも、あの館で培われた精神力もそこで作用した。
今なら、あの男も気がついていないだろう。
故に、ひろしにとっては絶好の機会だった。
ショックガンを構え、ラッドへと放つ。
射撃は初めての経験だ。
しかも外したらもう勝機は損なわれるだろう。
故に一発で決めなければならない。
意識を集中し。
そして。


--引き金を、引いた。

「なっ--」
「ひろし様!!」

不意に身体に走る衝撃。
それによってラッドの視界は薄れて行く。
しかし、ラッド・ルッソは。

「ま、まだだ、ぜ、嬢ちゃん、よォ!」

健在、であった。
マンモスですらも気絶へと持ち込む弾丸を持ってしても、ラッド・ルッソは倒れない。

「......この、程度で、この俺がどうにかできると、思ってんのか?」

さながら酔っぱらいの千鳥足の如く、ふらつきながらも瞳へと発砲する。

(彼は......一体........)

ひろしはラッドがどうしても同じ人間だとは思えない。
これが人間ではなくどこかの宇宙人、とでも言われた方が信用できる。

もう一発。
今度はひろしの足元へと放たれたる。
ついに限界を迎えたのか、ついにラッドは膝をつく。
瞬間。
ここぞとばかりに瞳が突撃する。
チェーンソーを鳴らし、刃がラッドに突き刺さる。

「どうにか、なっても......どうにもならないのが、俺だってんだ......!」

しかし、それすらものともせず、ラッドは瞳を蹴り飛ばす。

「このクソガキがァ!!」

ここに来て、ラッドは牛飼い娘へと銃口を向ける。

「てめえもだぜェ、女ァ!」

瞬間、ひろしがもう一発、ショックガンをラッドに当てる。

「瞳さん!!牛飼い娘さん!!!逃げましょう!!」

辺り一帯にひろしの声が響く。
しかし、瞳はラッドに再び攻撃を加えようとする。
普段ならひろしの指示に従っていた彼女が初めてひろしの言葉に従わなかった。
しかし、チェーンソーが降るわれる寸前、ひろしが瞳の手首を掴み、恫喝する。

「瞳さん!!今は危険な状況なんです!!僕たちだけでなく、牛飼い娘さんにも危害が加えられるかも知れないんです!」

ひろしの鬼気迫る表情にさしもの瞳もひろしに従わざるを得なかった。

「オイ、待ちやが、れ......ガキ共........」

ひろしたちはラッドの言葉を振り切り、森へと逃げていった。


乱立している木々の合間を縫ってひろし達は走る。
殺人を快楽とせし狂人から逃げる為に。
常人には理解が及ばぬ人の形をした怪物から逃げる為に。
もうどのくらい駆け回ったのか--逃げる三人の中で始めに限界を迎えたのは意外にもひろしであった。

全力疾走していたからか、息が荒くなり始めるのを感じる。
次に喉に焼けるような痛みを感じた。
かつて幾多もの化け物の襲撃から逃げ切ってきたその足も今ではうまく動かせない。
かの殺人鬼との交戦で気力も使い果たしてしまったのか、どうにも足が進まない。
こと逃げることに関しては得意だという自負はあったのだが。 


「ひろし!?大丈夫なの!?少し休んだ方が--」

牛飼娘は急に足を止めたひろしを心配して声をかける。 

「大丈夫、です。それより速く逃げなければ。なんとか足は動きます。だから大丈夫です。」

それを遮るかのようにひろしが言葉を返す。
見れば激しい疲労に襲われているであろう身体に鞭を打ってひろしはなんとか進もうとしている。
この殺し合いにおいてのひろしは自分のことなど省みずに無茶をする人だ、と牛飼娘は改めてそう認識する。
町でのゴブリンによる襲撃の際も。
先程の戦闘での特攻も。
そして今も、ひろしは一歩ずつ、休まずに進み続けている。

かの殺人鬼が与えた恐怖はひろしの心に未だ濃く残っている。

青き異形の鬼に、醜悪なる小鬼に、友人を、日常を奪われたことで共通していた二人。
しかし彼らには致命的な差があった。

ひろしは友人を失った。
その下手人へは一介の高校生風情では抗うことすらできず、ただできたのは逃げることだけ。
時に友人を見殺しにし、自らの罪を責め立てるように友人が異形へと代わりゆく様を目の当たりにし。

それでも頼れる者もおらず、たった一人で逃げ続けるしか無かった。
故にこそ、ひろしは誰も頼らない。
自分一人で事を成そうとするのだろう。
たった一人で異常、粕谷瞳を試そうとした事からも伺える。


対して牛飼娘はどうか。
小鬼に故郷を奪われた際にはその幸運によって難を逃れ、命を脅かされる恐怖を味わずに済んだ。
その後になって再び小鬼による襲撃を受けても彼女には頼りになる仲間が、何より彼女にとってのヒーローたる存在がいた。
故郷を滅ぼした略奪者達に抗う者が。

その差が、二人を取り巻く認識のズレが今になって明確になった。

「ひろし様。私も休むべき、ということは同意します。しかし、その前に牛飼い娘様に訪ねたいことがあります。
「何?瞳ちゃん。」
「ひろし様が戦っている間、あなたは何をしていたので
すか?」
「それは--」
「何もせず、見ているだけだった、と?」
「うん、えっと、その--」
「やはり、ですか。」

ぽつり、と瞳が呟いた。
瞳は恐ろしい形相で牛飼い娘を睨んでいた。
もしもひろしに間違いがあったとしたら、それは粕谷瞳の異常性を見くびっていたことだ。

粕谷瞳は異常者である。
常人には理解の及ばぬ化け物、とも言い換えられるだろう。
その気になれば何の躊躇いもなく殺人を犯すであろうし、何よりそれが自分の『ご主人様』の為になると思っている。
さらに質が悪いのは、殺人をするに当たって『ご主人様』の意志を問わずに自らの基準のみで事を起こすことだ。
しかも彼女はそれを一点の曇りなき善意で行うのだ。
瞳はもしも『ご主人様』であるひろしが惑わされている、と判断した場合、彼がどう意見を言おうが構わずに牛飼娘を殺しにかかるだろう。

--そう、今のように。

彼女にとっては先程襲撃してきた白服の男と牛飼娘は等しく『悪』なのだ。

身勝手極まる献身という狂気を孕んだ少女(ばけもの)は主たる少年の為に、もしくは。

かつて憧れた偶像(ヒーロー)の為に。

粕谷瞳は自分の思う悪を断つ。

「瞳さん........?」

「瞳ちゃん?どうしたの?」

瞳は無言でチェーンソーのスイッチを入れる。
ぶおん、と音が鳴り、刃が旋回を始める。

「ひろし様。その女狐から離れて下さい。」

「瞳さん、一体何をするつもりですか?」 

「前々からおかしいと思っていました。あの女狐はひろし様を謀り、利用しようとしたのです。」

「瞳......ちゃん?何言って--」

「ひろし様が危ない目に遭っていたのにあなたは何もしなかった。死地へと赴くひろし様を止めもせずに。きっと前に話していたゴブリンスレイヤー様、という方もきっとこの女が利用していたのでしょう。そして今度はその代わりにひろし様を!」

「瞳さん、落ちついて話をして貰えませんか?さすがにそんなこと」

「ご安心下さいひろし様。すぐにあなた様を惑わす元凶を排除して参ります。」


ひろしが瞳を懐柔しようとしても聞く耳をもたず、牛飼娘に切りかかる瞳。
一時は自分達を守る為に振るわれた刃が轟音を伴って牛飼娘へと襲いかかる。
突然の行為に牛飼娘は何も出来ずに迫り来る刃を眺めていた。
眼前に迫り来る断罪の刃に溜まらず目を閉じる。

--1秒。
彼女の世界では聞いたこともない肉を抉り切断する音。
もともと牛飼娘のいた世界にはチェーンソーなど無かったので、一瞬何の音なのか理解できなかった。

--5秒。
この時初めて、牛飼娘は自分の身体に痛みが走っていないことに気がついた。しかし、まだ死にかけた恐怖は収まらなくて。身体を震わせながら目を閉じていた。

--10秒。
ここにきて漸く、牛飼娘も冷静な思考が戻ってきた。彼女は痛みも感じていないし、耳を澄ませてもチェーンソーの稼働音は聞こえない。だが確かに切られた音がしたのだ。何があったのか、と牛飼娘は目を開けた。

運の良いのか悪いのか、まだ時刻は黎明。
もしもこれが昼なら目を開けた際に眩しくて再び目を閉じていたのかもしれない。
しかし、その代わりに薄暗い森の中に牛飼娘は地獄絵図を見た。

何故牛飼娘は傷を負っていないのか。
その答えは単純明快。 

--ひろしが間に庇っていたのだ。

(どうして)

その答えを得る前に怒号が辺り一帯に響く。

「牛飼娘さん!!逃げましょう!!」

ひろしの一言で我に返った牛飼娘は飛び出すように走り出した。 
背中に大きな裂傷を負い、痛みに喘ぎながらも牛飼娘を連れてひろし達は瞳から離れた。 

「ひろし....様......」

その時、牛飼い娘は確かに見た。
粕谷瞳の表情を。
今までの彼女はどこへやら、涙を流している彼女。
どうして、その言葉を吐くより先に足が動いていった。
瞳を置き去りにして、二人は逃げていった。

動かなくなった足で、意識が飛びそうになるのをこらえながらひろしは走る。
火事場の馬鹿力--なんて言葉の通り、本当に命の危機に貧していたら人間やれるものかと思った。
今もひろしの身体は激しい疲労を訴えているし、息も絶え絶えな状態だ。

しかし、背中に走る激痛がひろしに制止を許さない。
一刻も早く森から脱出し、町で待っている仲間達と合流しなければ。
その一心で黎明の森林を走り抜ける。

「ねぇ、その、さっきは」
「いえ、気にしないで下さい。今はとりあえず甘露寺さん達と合流しないと」

だがしかし、彼らの不幸はここからだった。
満身創痍のまま走るひろしと、牛飼娘。
色濃い疲労を感じつつ、走った先に--

「ひろし!危ない!」
「--えっ?」

飛来したのは熱球。
高度の熱気にて構成された球体は、ひろしが今までいた足元に着弾した。

「ひろし、大丈夫!?」
「ええ、それより、一体何が」

起こっている?
そう牛飼娘に尋ねた瞬間、地響きが辺り一帯に響く。
ずしん、ずしんと音を立て、第二の襲撃者の姿が顕になる。
かつてひろしが出会った鬼よりも巨大な体躯。

「GAAAAAAAAAAAAAAAA!!」
「なっ......!」
「ひろし!逃げないと!」

そうして出会ったのは追跡者にして森の番人--打擲の剛激手であった。
怪物はひろし達を見るやすぐに追跡を開始する。
ひろしも背中に流れる血を感じつつ二人は全力で森の中を駆け回る。

とうに限界を迎えた身体に鞭を打って、後方より来る化け物から逃げる。

だが悲しいかな、度重なる騒動で削りに削られた体力は二人の体を重くする。
特にひろしは重症だ。
瞳から受けた傷が悪化してきたのか、意識も朦朧としてきている。
それでもなんとか走り、後方より迫りし追跡者から離れる。



そうして走っていると、牛飼い娘が転んだ。転んでしまった。

「牛飼い娘さん!!!」

足元を引っかけたのか、疲労に限界が来たのか、そんな原因を考える間もなく追跡者は牛飼娘に迫る。

--その光景は、まるで。

あの時と同じで、今は周囲が薄暗いせいか。

牛飼娘の髪色が友人と似ていたからか。

--ひろしの友人の、卓郎の末路と同じで

もしも今ひろしが手に持っているショックガンを使えば追跡者の気をこちらへと向けることができるだろう。
しかし、そうなった場合間違くひろしは死ぬだろう。
ただでさえ体力も底を尽きていると言うのに、背中には裂傷が走っている。

だが、もしもここでひろしが逃げたらどうなるか。それは一番ひろしが知っているだろう。牛飼娘は、死ぬ。
自分か、それとも他人か。
今までは確かにひろしは他人をその身で守ってきた。
しかしそれは彼の近くに化け物と戦える者がいたからだ。甘露寺しかり、瞳しかり。
ひろしの根底にあった恐怖が。
自分一人では化け物には抗えないという事実が。
ひろしの判断力を鈍らせる。
そして--



◆◆◆




「ったくよー、どいつもこいつもどんだけ俺におあずけ食らわすわけー?もう我慢の限界なんだ、け、ど、よぉ!」

響く銃声。
飛び散る能條。
弾け飛んだ血潮で染まった白服を纏うラッド・ルッソは逃げてゆくゴブリンに目もくれずに歩みを進める。
漸くショックガンの効果から解放されたラッドは不機嫌そうにぼやきながらひろし達を追って森の中へと入っていた。
もしかしたら再びあの化け物と遭遇する恐れはあったものの、お預けにお預けを食らったラッドは既に我慢の限界。
そのようなことを考える前に身体は動き出していた。

森へと獲物を追ったラッドが見つけたのは、見覚えのある少女だった。
メイド服の少女。やっと追い付いた、と歓喜するも。

「うぅ、どこにいるの......?ひぐっ......お母さんっ、どこにいるの........?お願いだからへんじをしてよぉっ、お母さぁんっ!」

少女は幼子のように泣き叫んでいた。そうやって泣いている少女を殺す程ラッドは落ちぶれていないし、何より殺しがいがない。
自分が目を離していた間に何があったんだ、と思いつつ期待はずれでため息をつくと、そこには聞き覚えのある轟音。

「おお、そういやあいつもいたんだったな......なんかいい武器でもありゃー今すぐにでもぶっ殺してやるんだがなぁ......」

はぁ、とため息をつきつつ森から出ようと踵を返す寸前、ラッドの目があるものを捉えた。
それは少女の使っていたチェーンソー。
瞬間化け物の甲高い雄叫びが遠くから聞こえて来る。
それにすらラッドは反応を示さず、チェーンソーをじっ、と見つめている。
これがあれば--
ラッドはにぃ、と表情を綻ばせ、そのチェーンソーに手を取った。

◆◆◆

(あいつ、行っちゃったなぁ--)

走り去ってゆく背中。それを目で追いながら牛飼娘は自らの死を確信していた。
ひろしは自分とは違う価値観の人間だ。ゴブリンなどのモンスターもいない世界に住んでいた、と聞いている。
さらにはひろしの語る招待不明の化け物とやらに友達が殺されてからこんな催しに巻き込まれたのだ。
牛飼娘にとってのゴブリンスレイヤーの様に、助けてくれる人もいなければ日常を失った傷を癒す時間もままならなかったのに今まで強くあった。

ひろしと牛飼娘は、似ているようで、そこには大きな違いがあったことをこの瞬間、確実なる死の間際において実感していた。

--『そうして命を懸けて守ってくれる方がいるのはなんというか、羨ましいです。』

ひろしの漏らしていた言葉がリフレインする。

(ひろしも彼も、辛かったのかな。一人で逃げるのって。一人だけ生き残るって。)

しかし自分はどうだったろうか。
戦う、という行為を自分がする事は考えもしなかったのではないか。
そう思ってしまった。
そんな牛飼娘はひろしを恨む気など更々無い。
だからといって死の恐怖はあるし、涙も溢れて止まらない。
身体も震えている。
もしかしたら、先程瞳に襲われた時よりも震えは酷くなっているかもしれない。
そうして、追跡者の巨大な腕が牛飼い娘を潰さんと高く上げられる。怪物の爪が森へと差し込む朝日に照らされる。そうして振り下ろされ--



それを遮るように、銃声が鳴った。
牛飼娘も聞き覚えのある散弾銃の発砲音。
次いで、ぶおん、とまた聞き覚えのある音が鳴る。
瞳が使っていたチェーンソー。
牛飼娘は音の鳴っている方向に目を遣ると、そこには。
それを装備した殺人鬼、ラッド・ルッソがいた。
その傍らには、使い捨てたショットガン。

「あ--、やっぱこいつに銃はダメかー。」

言葉の割には朗らかな口調でラッドは語る。

「でもさぁ、さすがにこれならてめえをぶっ殺せると、俺は思うんだァ........てなわけで、待たせたなぁ化け物さんよぉ!メイドさんのお墨付きチェーンソーでバラバラにしてやるよぉおおおおお---ッ!!!」

ラッドは狂気的な笑みを浮かべ、雄叫びをあげながら追跡者へと突進した。
今しか隙は無い--そう思い、ラッドから距離をとり、逃げ出す。
その時にラッドが落としたショットガンをすかさず回収し、戦場から距離をとる。
牛飼い娘には見慣れない武器だが、ひろしや瞳の戦いを見て使い方はなんとなくであるが理解している。
急ごしらえであるものの、武器を手に入れた牛飼い娘は再び走り出した。


「おいおいおいおい!楽しいねぇ!楽しいじゃねぇか!待たせて悪かったな化け物さんよぉ!今度こそ......しっかり殺してやるからよ!!!」

ラッドは牛飼娘目もくれずに怪物との戦闘に移行する。



ラッドは歓喜にうち震え、殺しがいのある化け物を。
人間よりも上位の種に恐怖を与えるために、突撃した。

--ラッド・ルッソは大いに語り、大いに殺戮を楽しむ。

それはこの殺し合いの場であっても変わる事はないだろう。

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