「GOBB!!GOBB!!GOBBBBBB!!」
質量が更に増加し、挟まれた部分の顔が一つ、二つと押し潰される。
オッパショ石に囚われたヒャクメンハリボテゴブリンに徐々に避けられない圧死が近づく。
抜け出すことはもはや叶わず、脱出出来たとしても生存は絶望的。
だが、ヒャクメンハリボテゴブリンの闘志は未だ衰えてはいなかった。
オッパショ石に囚われたヒャクメンハリボテゴブリンに徐々に避けられない圧死が近づく。
抜け出すことはもはや叶わず、脱出出来たとしても生存は絶望的。
だが、ヒャクメンハリボテゴブリンの闘志は未だ衰えてはいなかった。
まもなく死ぬ体でどうしてそこまで戦おうとするのか?
それは身体のベースとなった命尽きるまで戦い抜いた誇り高き刀、
和泉守兼定の意志がその遺体に残っていたのが原因か。
それとも、複数のゴブリンが結合した事でそれぞれの感情が混ざり合い、
闘争本能が膨れ上がらせたのか。その真相は定かではない。
それは身体のベースとなった命尽きるまで戦い抜いた誇り高き刀、
和泉守兼定の意志がその遺体に残っていたのが原因か。
それとも、複数のゴブリンが結合した事でそれぞれの感情が混ざり合い、
闘争本能が膨れ上がらせたのか。その真相は定かではない。
諦めないヒャクメンハリボテゴブリンは僅かに出ていた上半身を少しずつよじり、
幸運と勇気の剣、ならぬ幸運と不運の剣を振り回し続ける。
その藻掻きを下手人、ジェイソン・ボーヒーズはただ黙って傍観していた。
幸運と勇気の剣、ならぬ幸運と不運の剣を振り回し続ける。
その藻掻きを下手人、ジェイソン・ボーヒーズはただ黙って傍観していた。
棒立ちのまま首を傾ける男の様子を余裕の表れなのだと解釈するゴブリン。
高みの見物と言わんばかりの態度に激しい怒りが込み上げてくる。
「ふざけるな、目にものを見せてやる」 とゴブリンは最期の攻撃に移った。
不規則に振るうだけだった動きを正確無比な刺突へと変化させ、男の急所を狙い穿つ。
その一撃は何の障害もなく、見下ろすだけのジェイソンの心臓を刺し貫いた。
高みの見物と言わんばかりの態度に激しい怒りが込み上げてくる。
「ふざけるな、目にものを見せてやる」 とゴブリンは最期の攻撃に移った。
不規則に振るうだけだった動きを正確無比な刺突へと変化させ、男の急所を狙い穿つ。
その一撃は何の障害もなく、見下ろすだけのジェイソンの心臓を刺し貫いた。
「してやったり!」 虚を突く事に成功し、ニヤリと笑うヒャクメンハリボテゴブリン。
だが、心臓を刺されたはずの男は一項に倒れる様子を見せない。
それどころか貫通した状態から片手で剣を握りしめ、奪取しようと引っ張り始めた。
だが、心臓を刺されたはずの男は一項に倒れる様子を見せない。
それどころか貫通した状態から片手で剣を握りしめ、奪取しようと引っ張り始めた。
「GOB!?」
ヒャクメンハリボテゴブリンは必死に引き抜こうとするが、
死に体の身で奪い合いに敵うはずもなくあっけなく手から離れてしまう。
一矢報いようとしたはずが、いつの間にか唯一の攻撃手段を失う事となってしまった。
死に体の身で奪い合いに敵うはずもなくあっけなく手から離れてしまう。
一矢報いようとしたはずが、いつの間にか唯一の攻撃手段を失う事となってしまった。
「G、GOB………!」
ここまで闘志を燃やして続けてきたヒャクメンハリボテゴブリンも恐怖の表情に歪む。
反動で一歩 蹈鞴を踏んだ後、ジェイソンは胸部から剣を抜き取る。
そして哀れな獲物に切っ先を向け、黙々と刺し始めた。
滅多刺しの言葉に相応しい苛烈な攻撃が集合体を襲い続ける。
反動で一歩 蹈鞴を踏んだ後、ジェイソンは胸部から剣を抜き取る。
そして哀れな獲物に切っ先を向け、黙々と刺し始めた。
滅多刺しの言葉に相応しい苛烈な攻撃が集合体を襲い続ける。
初めは血しぶきと共に、全身から呻き声や叫び声を上げていたが、
やがては一切の反応も示すことも無くなり絶命。
程なく攻撃対象であるヒャクメンハリボテゴブリンの死亡により
オッパショ石が役目を終え消滅する。
後には猟奇的な惨殺死体と重みで出来た窪みに溜まる青血の池が残るのみとなった。
やがては一切の反応も示すことも無くなり絶命。
程なく攻撃対象であるヒャクメンハリボテゴブリンの死亡により
オッパショ石が役目を終え消滅する。
後には猟奇的な惨殺死体と重みで出来た窪みに溜まる青血の池が残るのみとなった。
■
「あ〜あ、やられちゃった。折角作った傑作だったのにな〜。」
一部始終を楽しく観戦していたこの戦闘の仕掛け人、ハサミは残念そうに呟く。
思考錯誤して作った作品が序盤で壊れてしまうとは勿体ない。
破壊までの凄惨な過程には何の心も動かされず、彼はそんな事を考えていた。
思考錯誤して作った作品が序盤で壊れてしまうとは勿体ない。
破壊までの凄惨な過程には何の心も動かされず、彼はそんな事を考えていた。
「でもやっぱいいな〜アイツ!どんなオモチャに仕上げるか今から楽しみだよ!」
だが、新しく強力な玩具の目途が立ったのは行幸だ。
頑丈な素材で何が出来るかな、と捕らえる前から期待に胸を膨らませる。
その為にもまずはヤツを観察して、上手に切り刻む作戦を練らなくてはならない。
心弾ませるハサミは妄想を切り上げ、目線を素材候補へ戻す。
頑丈な素材で何が出来るかな、と捕らえる前から期待に胸を膨らませる。
その為にもまずはヤツを観察して、上手に切り刻む作戦を練らなくてはならない。
心弾ませるハサミは妄想を切り上げ、目線を素材候補へ戻す。
見ると降ろしていたデイバックを背負い込み、場を立ち去ろうとしている。
早く追いかけねば。そう思った次の瞬間────
ジェイソンはマスクで表情の読み取れない顔面をぐるりと向け、
こちらの方をじっと凝視していた。
早く追いかけねば。そう思った次の瞬間────
ジェイソンはマスクで表情の読み取れない顔面をぐるりと向け、
こちらの方をじっと凝視していた。
ゾクッ───
今まで恐怖とは無縁。寧ろ恐怖を与える側だったはずのハサミに震えが走る。
(実際は血管などないので寒気を感じる事はないのだが)
気づかれる事は想定内だったが、彼から向けられる威圧感は想像を超えていた。
しかし彼にもプライドがある。連れがいる手前、怯えた姿など見せられない。
感じた恐怖を表に出す事なく、後ろで休憩する相方 ホル・ホースへと呼びかける。
(実際は血管などないので寒気を感じる事はないのだが)
気づかれる事は想定内だったが、彼から向けられる威圧感は想像を超えていた。
しかし彼にもプライドがある。連れがいる手前、怯えた姿など見せられない。
感じた恐怖を表に出す事なく、後ろで休憩する相方 ホル・ホースへと呼びかける。
「あちゃ〜、気づかれちゃったみたいだね。
おーい、ホル・ホース!休み始めてすぐのとこ悪いけどすぐ移動するよ〜!」
おーい、ホル・ホース!休み始めてすぐのとこ悪いけどすぐ移動するよ〜!」
「流石にこんだけ見てりゃ気づかない訳もねぇか。はぁ〜随分と短い休暇だったぜェ
そんじゃさっさとズラかるとしますかねぇ!」
そんじゃさっさとズラかるとしますかねぇ!」
文句を言いつつもホル・ホースは手早く出発の身支度を開始した。
その間、ハサミは何があってもいいようにジェイソンの監視を担当する。
既にこちらに向かってきているかと思われたジェイソンは
先程、自らが殺害したヒャクメンハリボテゴブリンの死体へ視線を向けていた。
そして、死体へ近づいたかと思うとその傍でしゃがみ込む。
その間、ハサミは何があってもいいようにジェイソンの監視を担当する。
既にこちらに向かってきているかと思われたジェイソンは
先程、自らが殺害したヒャクメンハリボテゴブリンの死体へ視線を向けていた。
そして、死体へ近づいたかと思うとその傍でしゃがみ込む。
(アイツ何してるんだ…?まさか!)
ハサミの予想は的中する。
ジェイソンはヒャクメンハリボテゴブリンの死体から形の残った頭部を引きずり出すと
無造作なフォームでそれを投擲してきたのだ。
ジェイソンはヒャクメンハリボテゴブリンの死体から形の残った頭部を引きずり出すと
無造作なフォームでそれを投擲してきたのだ。
「おっと危ない!」
メジャーリーガー顔負けの剛速球をハサミは器用に体を傾け回避する。
頭部はそのまま木に衝突し盛大に炸裂。ゴブリンの血肉が周囲に弾け飛ぶ。
頭部はそのまま木に衝突し盛大に炸裂。ゴブリンの血肉が周囲に弾け飛ぶ。
(注意しておいて良かったよ。だけど、コイツ思ったよりも鈍くないな。
これは少し急いだほうがいいかもね)
これは少し急いだほうがいいかもね)
投球動作は適当だったにも関わらず、的確に鉸めの部分へと狙いすましていた。
一歩遅れていたら大ダメージは免れなかっただろう。
「悠長にはしてられない」とハサミは傾けていた体制を戻し、
急いで逃走の準備にかかろうとする。
そうして身体を戻し終えた彼の目の前には
一歩遅れていたら大ダメージは免れなかっただろう。
「悠長にはしてられない」とハサミは傾けていた体制を戻し、
急いで逃走の準備にかかろうとする。
そうして身体を戻し終えた彼の目の前には
先程まで小さく見えていたはずの殺人鬼が立っていた。
■
「は?え?」
「な、なにィーーーーーーーーーーッ!?」
遅れてジェイソンの急接近に気づいたホル・ホースが驚きの声を上げている。
しかし、そんな彼を他所にハサミは突然起きた異常事態に思考が停止してしまう。
ジェイソンは奪った剣をその場に突き立て、両腕をハサミへと伸ばす
丸太のような腕は閉じていた刃の先端部分をガッチリ握りしめ、軽々と持ち上げた。
しかし、そんな彼を他所にハサミは突然起きた異常事態に思考が停止してしまう。
ジェイソンは奪った剣をその場に突き立て、両腕をハサミへと伸ばす
丸太のような腕は閉じていた刃の先端部分をガッチリ握りしめ、軽々と持ち上げた。
「あッ!お、おい!何してるんだ!やめろ!離せ!」
地から足もとい刃先が離れた事で、ショートしていた思考が復旧する。
ハサミは咄嗟に捕まれている刃を開いて抵抗しようと試みるが、
見た目に違わない怪力がそれを許さない。
するとジェイソンはハサミを持ったまま回転を開始。
ハンマー投げをするかの如く振り回し、同時に自身の速度を高めていく。
ハサミは咄嗟に捕まれている刃を開いて抵抗しようと試みるが、
見た目に違わない怪力がそれを許さない。
するとジェイソンはハサミを持ったまま回転を開始。
ハンマー投げをするかの如く振り回し、同時に自身の速度を高めていく。
「ホホッ!ホル、ホル・ホース!
何してるんだ!早くコイツを攻撃しろォ―――ッ!!!」
何してるんだ!早くコイツを攻撃しろォ―――ッ!!!」
「分かってるぜぇ旦那ァ!
チッ!必要以上にスタンドを出しとくんじゃあなかったぜ!」
チッ!必要以上にスタンドを出しとくんじゃあなかったぜ!」
回され続けるハサミは覚束ない口調で、呆然とするパートナーに命令をする。
監視中、長時間のスタンド行使で疲労が蓄積しているホル・ホースだが
相棒のピンチを救うべく、自身のスタンド皇帝(エンペラー)を再度召喚。
ハサミを掴むジェイソンの両腕を撃ち抜き、複数の穴を開けた。
監視中、長時間のスタンド行使で疲労が蓄積しているホル・ホースだが
相棒のピンチを救うべく、自身のスタンド皇帝(エンペラー)を再度召喚。
ハサミを掴むジェイソンの両腕を撃ち抜き、複数の穴を開けた。
疲弊した状態で尚かつ回転中の相手に一発も外さないテクニック。
プロのガンマンの名が伊達ではない事の証明だ。
しかし、手首を撃ち抜かれたにも関わらず、ジェイソンはハサミを手放さない。
まるでジェイソンとハサミ、二人が元より一つであったかのように
その持ち手が揺らぐことは無かった。
プロのガンマンの名が伊達ではない事の証明だ。
しかし、手首を撃ち抜かれたにも関わらず、ジェイソンはハサミを手放さない。
まるでジェイソンとハサミ、二人が元より一つであったかのように
その持ち手が揺らぐことは無かった。
「ナニィ〜〜ッ!?どうなってやがんだコイツの体はぁ〜!
そんだけ撃ち抜かれて持ってられるわけねーだろうが普通はよぉ!」
そんだけ撃ち抜かれて持ってられるわけねーだろうが普通はよぉ!」
「ふざけるなよ、この役立たず!何の為のコンビだと思ってんのさ!」
そうこうしているうちに回転は加速度的に勢いを増していく。
もはや呑気に実況観戦していた頃の余裕はどこにもない。
呆然とするホル・ホースにハサミは憤りの罵倒を飛ばす。
だが、決してホル・ホースを責める事は出来ないだろう。
銃撃が無意味な存在がいるなんて想像できるはずがないのだから。
もはや呑気に実況観戦していた頃の余裕はどこにもない。
呆然とするホル・ホースにハサミは憤りの罵倒を飛ばす。
だが、決してホル・ホースを責める事は出来ないだろう。
銃撃が無意味な存在がいるなんて想像できるはずがないのだから。
二人の必死の抵抗をものともせずジェイソンの回転運動は続く。
そして、運動エネルギーは極限まで高まり、解放の刻がやってきた。
そして、運動エネルギーは極限まで高まり、解放の刻がやってきた。
「うわああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……………」
手から放されたハサミは凄まじい勢いでジェイソンから飛んでゆく。
進行方向の樹木が巨躯に激突し、盛大な音を立てながら叩き割れる。
しかし、一つや二つではその勢いを止める事は叶わない
直線上にある全てをなぎ倒しながらハサミは遥か彼方に消えていった。
進行方向の樹木が巨躯に激突し、盛大な音を立てながら叩き割れる。
しかし、一つや二つではその勢いを止める事は叶わない
直線上にある全てをなぎ倒しながらハサミは遥か彼方に消えていった。
■
「ハサミの旦那ァーーーーーッ!?」
相棒の離脱に叫はずにはいられないホル・ホース
つい飛ばされていった方角を目で追ってしまうがすぐに目線をジェイソンに戻す。
回転で酔った様子を少しも見せない怪物は
突き立てた剣を引き抜き、こちらへ向かってきていた。
つい飛ばされていった方角を目で追ってしまうがすぐに目線をジェイソンに戻す。
回転で酔った様子を少しも見せない怪物は
突き立てた剣を引き抜き、こちらへ向かってきていた。
「次は俺の番ってか!?クソッタレ!」
ホル・ホースは残った精神力を必死にかき集めスタンドを維持。
疲れを無視して再び銃弾を数発、ジェイソンへと放った。
彼は向かってくる弾丸を一切避けることなくその身に全て浴びる。
しかし、与えた影響はほんの僅かなノックバックのみ。進行を止めるには至らない。
疲れを無視して再び銃弾を数発、ジェイソンへと放った。
彼は向かってくる弾丸を一切避けることなくその身に全て浴びる。
しかし、与えた影響はほんの僅かなノックバックのみ。進行を止めるには至らない。
(ああ、知ってたぜ。テメェがこんなもんじゃ、何も意に介さないってことはよぉ〜)
だが、止まらないのはホル・ホースも想定内。
ふらついた足取りでなんとか接近する相手から距離を保ち時間を稼ぐ。
その間に体を貫通し飛んで行ったはずの弾丸が宙を旋回。
後方からジェイソンを襲う。その全てが狙う先はただ一つ
ふらついた足取りでなんとか接近する相手から距離を保ち時間を稼ぐ。
その間に体を貫通し飛んで行ったはずの弾丸が宙を旋回。
後方からジェイソンを襲う。その全てが狙う先はただ一つ
「脳漿ぶちまけやがれ!このデカブツがァ!」
狙いは人体の司令塔である脳。
返ってきた弾は寸分狂わず、ジェイソンの後頭部へと叩きこまれた。
衝撃が脳を襲った彼は動きを停止し、沈黙。ぐらりと体を正面に傾ける。
握っていた剣を取り落とし、巨体を地面へと倒れ伏した。
返ってきた弾は寸分狂わず、ジェイソンの後頭部へと叩きこまれた。
衝撃が脳を襲った彼は動きを停止し、沈黙。ぐらりと体を正面に傾ける。
握っていた剣を取り落とし、巨体を地面へと倒れ伏した。
「ふぅ〜…一時はどうなる事かと思ったが流石に仕留められたか。
そりゃそうだ、脳みそ吹っ飛んで生きてるなんざあのDIOでもあり得ねぇ。」
そりゃそうだ、脳みそ吹っ飛んで生きてるなんざあのDIOでもあり得ねぇ。」
怪物の撃破に一息つくホル・ホース。
どれだけ体が頑丈であろうとも脳を破壊されれば耐えられまい。
例え自分の雇い主である吸血鬼、DIOであったとしても起き上がる事は出来ないだろう。
実際はあの悪のカリスマがあっさりと弾丸を喰らうはずもないのだが
どれだけ体が頑丈であろうとも脳を破壊されれば耐えられまい。
例え自分の雇い主である吸血鬼、DIOであったとしても起き上がる事は出来ないだろう。
実際はあの悪のカリスマがあっさりと弾丸を喰らうはずもないのだが
「だが、念には念を入れておかねぇとな」
そう言ってうつ伏せに倒れるジェイソンの脳へ向けて、三度発砲を繰り返す。
仕留めたと思っていた相手が「実は生きていたんだよォ〜!オロローン!」
なんて復活劇を果たす事はあり得ない話ではない。
絶対的な安心獲得の為には不必要に思える体力消費も必要経費だ。
仕留めたと思っていた相手が「実は生きていたんだよォ〜!オロローン!」
なんて復活劇を果たす事はあり得ない話ではない。
絶対的な安心獲得の為には不必要に思える体力消費も必要経費だ。
「さてと、飛ばされてったハサミの旦那を探すのもいいが、
果たしてあれで生きてんのかどうか…
それに、生きてたにしてもカンカンに怒ってるだろうしよぉ〜」
果たしてあれで生きてんのかどうか…
それに、生きてたにしてもカンカンに怒ってるだろうしよぉ〜」
確認を終えたホル・ホースは飛ばされていった相棒、ハサミについて思案し始める。
前回の個人的事情による失態に加えて今回の一件。
結果としてハサミを放り投げた張本人を仕留めた戦果を挙げられたが、
最後のご立腹な様子では協調を取るのは難しいだろう。
前回の個人的事情による失態に加えて今回の一件。
結果としてハサミを放り投げた張本人を仕留めた戦果を挙げられたが、
最後のご立腹な様子では協調を取るのは難しいだろう。
「ま、ここらが縁の切り時ってとこだな。ハサミだけによ。
早く新しいパートナーを見つちまわねぇと…
体力も使い切っちまったし、何処か腰を落ち着けられるとこは…」
早く新しいパートナーを見つちまわねぇと…
体力も使い切っちまったし、何処か腰を落ち着けられるとこは…」
長年培ってきた弁舌で切り抜ける自信もあるにはあるが
万が一、決裂した後の事を考えると解散した方が身のため。
“元”相棒には悪いが、素早い損切の判断が出来るのが一流というものだ。
一刻も新しいパートナーを早く探したいが今は体力の消耗が激しすぎる。
周辺にはまだ敵対的なNPC達がうろついてる可能性もあるのだ。
急いで場を離れ休憩を取るべき、と疲れ切った体に鞭打ち動き始めた。
万が一、決裂した後の事を考えると解散した方が身のため。
“元”相棒には悪いが、素早い損切の判断が出来るのが一流というものだ。
一刻も新しいパートナーを早く探したいが今は体力の消耗が激しすぎる。
周辺にはまだ敵対的なNPC達がうろついてる可能性もあるのだ。
急いで場を離れ休憩を取るべき、と疲れ切った体に鞭打ち動き始めた。
ベキリ─────と
突然奇妙な音が下から聞こえた。
下半身に謎の違和感を覚えたホル・ホースは恐る恐る音の方向に目線を下げる。
全身から嫌な汗が噴き出す。嘘だ、ありえない!ありえてはならない!
視線の先では足があらぬ方向に曲がり肉の間からは骨が顔を覗かせる。
もう動かぬはずの死体の巨腕が己の右足をへし折っていたのだ。
「ギニャアアアアアアアッーーーーー!!」
残酷な現実を目で捉え、ようやく痛みが追いかけてきた。
余りもの激痛に思わず情けない悲鳴を上げてしまう。
砕けた足で立っていられるはずもなく
振り返った勢いでそのまま背中から地面に倒れるホル・ホース
足から手を離したジェイソンはゆっくりと立ち上がり、弱り切った標的へと近づく。
余りもの激痛に思わず情けない悲鳴を上げてしまう。
砕けた足で立っていられるはずもなく
振り返った勢いでそのまま背中から地面に倒れるホル・ホース
足から手を離したジェイソンはゆっくりと立ち上がり、弱り切った標的へと近づく。
ホル・ホースにもはやスタンドを出す体力は残されていなかった。
元々、実は生きていたといった現在のような状況を回避する為に
限界ギリギリまでスタンドを行使してでも死亡確認をしたのだ。
元々、実は生きていたといった現在のような状況を回避する為に
限界ギリギリまでスタンドを行使してでも死亡確認をしたのだ。
なのに、男は平然と起き上がり、元気に自分の足を折り曲げている。
殺人ゲームに吸血鬼すら超越した不死性を持った者がいるなんて理不尽が過ぎる。
こんな化け物を招いた主催に不平不満を言いたくて仕方がなかった。
殺人ゲームに吸血鬼すら超越した不死性を持った者がいるなんて理不尽が過ぎる。
こんな化け物を招いた主催に不平不満を言いたくて仕方がなかった。
抵抗する体力も逃げる機動力も失ったホル・ホースは
やがて両手を強引に捕まれ、菓子を潰すかのように容易く粉砕された。
ガンマンの命さえもが破壊され、もはや苦痛の叫びは声にならない。
やがて両手を強引に捕まれ、菓子を潰すかのように容易く粉砕された。
ガンマンの命さえもが破壊され、もはや苦痛の叫びは声にならない。
(あ…ああ…あんときだ。あん時に言っときゃあよかったんだ…!
得体の知れねぇ輩には関わるべきじゃあねぇってよぉ……)
得体の知れねぇ輩には関わるべきじゃあねぇってよぉ……)
彼の人生哲学は一番よりもNo.2
だが、それは決して言われたままに従うイエスマンになることではない。
相棒が間違った方向に進もうとしたら進言し、
愚行を諫めることが出来る補佐役の役割と言うものだ。
だが、それは決して言われたままに従うイエスマンになることではない。
相棒が間違った方向に進もうとしたら進言し、
愚行を諫めることが出来る補佐役の役割と言うものだ。
しかし、ハサミが目の前の化け物に手駒をけしかけようとしたのが運命の分かれ道
自分は嫌な雰囲気を感じ取っていたにも関わらず、
既に険悪だった相棒の心評が悪くなることを恐れ、強く言い切れなかった。
つまり、彼は『躊躇』してしまっていたのだ。
自分は嫌な雰囲気を感じ取っていたにも関わらず、
既に険悪だった相棒の心評が悪くなることを恐れ、強く言い切れなかった。
つまり、彼は『躊躇』してしまっていたのだ。
この催しに巻き込まれてからホル・ホースはとある少女にこう忠告した
「躊躇一つで戦況が変わる」と。
だが、躊躇しない事の大切さは何も戦闘だけの話ではない。
殺し合い全体においても重要性は変わらないのだ。
「躊躇一つで戦況が変わる」と。
だが、躊躇しない事の大切さは何も戦闘だけの話ではない。
殺し合い全体においても重要性は変わらないのだ。
不和を起こさない為にしたたった一つの躊躇。
それが回避可能なはずの死への一本道に、
自分を招き入れたんだとホル・ホースは強く後悔する。
それが回避可能なはずの死への一本道に、
自分を招き入れたんだとホル・ホースは強く後悔する。
だが─────全てはもう後の祭りだ。
ジェイソンの両腕が今にも消えそうな命を刈り取らんと彼の元へと迫る。
ジェイソンの両腕が今にも消えそうな命を刈り取らんと彼の元へと迫る。
(ちき…しょう………最期くらい可愛らしいレデ───)
死に際を美しい女性に看取られる細やかな夢。
その夢想が最後まで許されることはなかった。
首根っこをガシリと捕まれ、一気に体から頭部が引きちぎられる。
出来上がった生首は興味がないと言わんばかりにストンと手から離され、
血だまり広がる地面に転がり落ちた。
ホル・ホースの眼には先ほどまで繋がっていた胴体と返り血に濡れる怪物。
己の死を実感させる光景を最期に彼の視界は何も映さない闇へ染まった。
その夢想が最後まで許されることはなかった。
首根っこをガシリと捕まれ、一気に体から頭部が引きちぎられる。
出来上がった生首は興味がないと言わんばかりにストンと手から離され、
血だまり広がる地面に転がり落ちた。
ホル・ホースの眼には先ほどまで繋がっていた胴体と返り血に濡れる怪物。
己の死を実感させる光景を最期に彼の視界は何も映さない闇へ染まった。
【ホル・ホース@ジョジョの奇妙な冒険 死亡】
【残り97名】
【残り97名】
■
初の参加者殺害を終えた不死身の殺人鬼、ジェイソンは自分の後頭部へと手を伸ばす。
本来なら頭蓋の硬い感触があるはずの後頭部から伝わる不愉快な感触。
離してみると脳の一部と思しき固体がベッタリ付いていた。
本来なら頭蓋の硬い感触があるはずの後頭部から伝わる不愉快な感触。
離してみると脳の一部と思しき固体がベッタリ付いていた。
自分は一体どうなっているのか。
脳は銃弾によって破壊しつくされた。何故動ける?何故思考が出来ている?
湧いて当然の疑問を一瞬浮かべ、ジェイソンはすぐに思考を打ち切った。
何故今更要らぬ事を考えてしまったのだろう。
自らが異常である事など墓場から蘇ったあの時から
いや、生まれた時から既に分かり切っていたはずなのに─────
脳は銃弾によって破壊しつくされた。何故動ける?何故思考が出来ている?
湧いて当然の疑問を一瞬浮かべ、ジェイソンはすぐに思考を打ち切った。
何故今更要らぬ事を考えてしまったのだろう。
自らが異常である事など墓場から蘇ったあの時から
いや、生まれた時から既に分かり切っていたはずなのに─────
■
殺人鬼ジェイソン・ボーヒーズ、その復讐劇の歴史は長い。
幼い頃から奇形である事を理由に差別を受け、挙句の果てに殺されかける。
それでも持ち前の生命力でなんとか辛うじて生き延びていたジェイソンだったが
精神異常で人格分裂を起こし、復讐鬼と化してしまった
愛する母 パメラが標的に返り討ちに合い、殺害される現場を目撃してしまう。
幼い頃から奇形である事を理由に差別を受け、挙句の果てに殺されかける。
それでも持ち前の生命力でなんとか辛うじて生き延びていたジェイソンだったが
精神異常で人格分裂を起こし、復讐鬼と化してしまった
愛する母 パメラが標的に返り討ちに合い、殺害される現場を目撃してしまう。
それから彼は目の前で殺害された彼女の意志を継ぎ、
因縁の地 クリスタルレイクで殺人者としての日々を過ごし始める。
自身と母の復讐の為に繰り返す殺戮。時に敗北することもあったが、
致命傷を負っては驚異的な自然治癒力で復活を遂げ、人々に恐怖を齎し続けた。
死体の山を築き上げた復讐もやがては一人の青年の手により終わりを告げる。
因縁の地 クリスタルレイクで殺人者としての日々を過ごし始める。
自身と母の復讐の為に繰り返す殺戮。時に敗北することもあったが、
致命傷を負っては驚異的な自然治癒力で復活を遂げ、人々に恐怖を齎し続けた。
死体の山を築き上げた復讐もやがては一人の青年の手により終わりを告げる。
だが、彼と言う存在を生み出した創造主たちは死と言う名の安らぎを許さなかった。
火葬の為に遺体を掘り起こされた時に発生した一つの落雷
それが、彼に二度目、いや永遠の生を与えてしまった。
『不死身の肉体』と『超常的な能力』を得た怪物としての生き地獄が始まったのだ。
火葬の為に遺体を掘り起こされた時に発生した一つの落雷
それが、彼に二度目、いや永遠の生を与えてしまった。
『不死身の肉体』と『超常的な能力』を得た怪物としての生き地獄が始まったのだ。
ジェイソンが一瞬の内にハサミ達の元へ移動していた理由も
彼が死後に得た力の一つに起因する。
狙った標的の元へ移動する瞬間移動能力、モーフ
この力はジェイソンに物理的には実現不可能な追跡や先回りを可能にさせた。
ニューヨークやエルム街、遥か未来の宇宙船での惨劇に利用した彼は
殺人鬼から逃れ安堵する被害者たちを再びの絶望のどん底へと叩き落した。
彼が死後に得た力の一つに起因する。
狙った標的の元へ移動する瞬間移動能力、モーフ
この力はジェイソンに物理的には実現不可能な追跡や先回りを可能にさせた。
ニューヨークやエルム街、遥か未来の宇宙船での惨劇に利用した彼は
殺人鬼から逃れ安堵する被害者たちを再びの絶望のどん底へと叩き落した。
何故超能力を取得するに至ったのか、要因は不明である。
前述通り最初に蘇生した際に不死の肉体と共に備わったのか。
あるいは超能力少女との戦いの中で呼応し合い、覚醒したのかもしれない。
だが、一つ言えることがあるならば
もはやジェイソン・ボーヒーズと言う存在は彼自身は勿論、
彼を創り出した神ですらその全てを把握するなど出来やしないという事だ。
前述通り最初に蘇生した際に不死の肉体と共に備わったのか。
あるいは超能力少女との戦いの中で呼応し合い、覚醒したのかもしれない。
だが、一つ言えることがあるならば
もはやジェイソン・ボーヒーズと言う存在は彼自身は勿論、
彼を創り出した神ですらその全てを把握するなど出来やしないという事だ。
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何も分からなくてもそれでいい。
自分と母を虐げ見放した人々へ、世界への復讐
それが出来るのであればこの身がどうなろうと構わない。
例え脳どころか体がバラバラに四散し、心臓一つとなったとしても殺し続ける。
殺人だけが悪魔と化した自分に出来るただ一つの親孝行なのだから────
自分と母を虐げ見放した人々へ、世界への復讐
それが出来るのであればこの身がどうなろうと構わない。
例え脳どころか体がバラバラに四散し、心臓一つとなったとしても殺し続ける。
殺人だけが悪魔と化した自分に出来るただ一つの親孝行なのだから────
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ジェイソンは辺りに転がっていたデイバックから支給品を回収し始める。
奇怪な支給品の数々はどういう仕組みをしているのか皆目見当も付かないが、
使える物ならばすべて利用すると片っ端から自分のバックへ詰めていく。
最後に取り落とした剣を拾いあげた悲哀の殺人鬼は
緩慢な足取りで更なる殺戮への進撃を再開したのだった
奇怪な支給品の数々はどういう仕組みをしているのか皆目見当も付かないが、
使える物ならばすべて利用すると片っ端から自分のバックへ詰めていく。
最後に取り落とした剣を拾いあげた悲哀の殺人鬼は
緩慢な足取りで更なる殺戮への進撃を再開したのだった