H-4の森の中をあてもなく彷徨っていたパワーだったが、しばらくすると森を抜けていた。
彼女自身も把握していないが、気づけば南下していたのだ。
そしてそのまま特に誰とも遭遇することなく、同じエリアの名も無き街のような地帯に辿り着くのだが――
彼女自身も把握していないが、気づけば南下していたのだ。
そしてそのまま特に誰とも遭遇することなく、同じエリアの名も無き街のような地帯に辿り着くのだが――
「飽きたのじゃ!!」
パワーは思わず叫んでいた。
何せ、彼女は殺し合いに乗っていて、なおかつ特に葛藤もなく殺しに乗り気である。
そんな彼女がただ森を彷徨うだけで時間を使うことを好むだろうか。
当然好みはしない。
更に言うなら、彼女が令嬢剣士から奪い取ったトランスチームガンとバットロストフルボトルを使おうとしたものの、使い方が分からず結局デイパックに放り込んだ一幕があった。
使い方を示す説明書きはあるものの、それは令嬢剣士のデイパックに眠ったままなのだから、仕方ないといえば仕方ないのだが。
何せ、彼女は殺し合いに乗っていて、なおかつ特に葛藤もなく殺しに乗り気である。
そんな彼女がただ森を彷徨うだけで時間を使うことを好むだろうか。
当然好みはしない。
更に言うなら、彼女が令嬢剣士から奪い取ったトランスチームガンとバットロストフルボトルを使おうとしたものの、使い方が分からず結局デイパックに放り込んだ一幕があった。
使い方を示す説明書きはあるものの、それは令嬢剣士のデイパックに眠ったままなのだから、仕方ないといえば仕方ないのだが。
「ん。そうじゃ!」
ここでパワーはあることを思いつく。
それは彼女が持っているデイパックだ。
最初適当にデイパックに手を突っ込むと出てきたのがアヌビス神で、彼女と気が合いそのまま話を進めていたが、ここで改めて調べておくのも悪くないと考えたのだ。
それは彼女が持っているデイパックだ。
最初適当にデイパックに手を突っ込むと出てきたのがアヌビス神で、彼女と気が合いそのまま話を進めていたが、ここで改めて調べておくのも悪くないと考えたのだ。
「ワシはIQが100あるからのう! 当然覚えておったのじゃ!!」
誰に言っているのか分からない言い訳じみた言動をしながら、パワーはデイパックに手を突っ込み、最初に触ったものを適当に引っ張り出す。
するとそれはデイパックよりはるかに大きいのか、徐々に表れつつパワーの視界を覆う。
やがて完全に出ると、そこには一台の車があった。
知る人が見れば二代目フィアット500、ルパン三世の愛車で有名な車だと気づくだろう。
するとそれはデイパックよりはるかに大きいのか、徐々に表れつつパワーの視界を覆う。
やがて完全に出ると、そこには一台の車があった。
知る人が見れば二代目フィアット500、ルパン三世の愛車で有名な車だと気づくだろう。
「何じゃこの車は?」
パワーが疑問に思っていると、手には車に関する説明書きを持っていた。
どうやら車と一緒に出てきたようで、彼女は特に躊躇することなく読み始める。
そこにはこう書かれていた。
どうやら車と一緒に出てきたようで、彼女は特に躊躇することなく読み始める。
そこにはこう書かれていた。
『東山コベニの愛車』
「コベニ……? 誰じゃったか……?」
「コベニ……? 誰じゃったか……?」
説明書きに書かれている名前を見て、聞き覚えがある名前だが誰だったか思い出せず頭を捻るパワー。
ちなみに東山コベニとはパワーと同じ公安対魔特異課の一員であり、彼女とも面識はある。
だがすぐに思い出せるほど深い仲ではない。
しかしパワーは時間がかかりつつも思い出した。
ちなみに東山コベニとはパワーと同じ公安対魔特異課の一員であり、彼女とも面識はある。
だがすぐに思い出せるほど深い仲ではない。
しかしパワーは時間がかかりつつも思い出した。
「おお、トンガリを刺した奴じゃな!!
おのれ……! あやつ、ワシに隠れてこんな車を持っておったとは、許せんのじゃ!!」
おのれ……! あやつ、ワシに隠れてこんな車を持っておったとは、許せんのじゃ!!」
物凄く理不尽な怒りをコベニに向けるパワーだが、車の持ち主はこの場にはおろか殺し合いにすらいない。
そして怒っている当人はすぐにその怒りを忘れ、とりあえず車に乗り込み、発進させようする。
しかし彼女は、車を運転するための知識がなかった。
そして怒っている当人はすぐにその怒りを忘れ、とりあえず車に乗り込み、発進させようする。
しかし彼女は、車を運転するための知識がなかった。
「ミルドラースとかいう人間はなぜこんなに使いにくいものを支給したのじゃ……やはり人間は嫌いじゃ……」
ミルドラースが人間ではないということを知らないせいで、とんだ飛び火を人間に浴びせるパワー。
しかしこの車は殺し合いの為に主催者が支給した物。
免許を持たない子供や車が存在しない世界の参加者もいる中、使えない物体だと思われないための工夫も当然ある。
具体的には、説明書きに車の動かし方が書いてある。
パワーはそれに気づき、早速読み始めた。
そして数分後――
しかしこの車は殺し合いの為に主催者が支給した物。
免許を持たない子供や車が存在しない世界の参加者もいる中、使えない物体だと思われないための工夫も当然ある。
具体的には、説明書きに車の動かし方が書いてある。
パワーはそれに気づき、早速読み始めた。
そして数分後――
「ハハハハハハ! やはりワシは天才じゃ!!」
そこには元気に車を疾走させるパワーの姿が。
こうして彼女は進み始めた。
特に目的地を定めないまま。
こうして彼女は進み始めた。
特に目的地を定めないまま。
◆
ブースカとシャドウ茜の追いかけっこは一進一退みえて、その実ブースカに圧倒的な不利がかかっていた。
理由は二つ。ブースカの疲労とシャドウ茜の速攻にある。
彼女に遠目とはいえ離れたはずなのに即座に見つかり、更に彼女にはバイクが支給され、猛スピードで追ってくるなどブースカ達からすれば予想外もいい所。
ロクに回復する時間もなく、おまけにいくらラーメンを食べたからと言って、元々大食漢であるブースカにとっては焼け石に水。
更に付け加えるなら、制限によりブースカニウムの消費が増えている今となっては、最早逃げることすら辛くなっていく。
理由は二つ。ブースカの疲労とシャドウ茜の速攻にある。
彼女に遠目とはいえ離れたはずなのに即座に見つかり、更に彼女にはバイクが支給され、猛スピードで追ってくるなどブースカ達からすれば予想外もいい所。
ロクに回復する時間もなく、おまけにいくらラーメンを食べたからと言って、元々大食漢であるブースカにとっては焼け石に水。
更に付け加えるなら、制限によりブースカニウムの消費が増えている今となっては、最早逃げることすら辛くなっていく。
一心不乱なブースカの悪あがきも長くはもたない。
結局、隣のエリアH-5の中でブースカは力尽きかけ、飛ぶことすらままならなくなっていく。
結局、隣のエリアH-5の中でブースカは力尽きかけ、飛ぶことすらままならなくなっていく。
そして――
バッ!!
突如現れた車にブースカは轢かれ、運ばれていた日和と共に宙をあらぬ方向へ舞い、やがてそれぞれ地面を転がっていく。
ゴッ
幸いなのか、ブースカは無事だった。
撥ねられ地面を転がされ、力が制限されている今ではさすがのブースカもダメージが0とはいかないが、とにもかくにも生きてはいた。
撥ねられ地面を転がされ、力が制限されている今ではさすがのブースカもダメージが0とはいかないが、とにもかくにも生きてはいた。
「うう……ひーちゃん、大丈夫?」
自らの痛みに呻きつつも、日和を心配するブースカ。
しかしその心配は無に帰す。
しかしその心配は無に帰す。
「……え?」
ここでブースカ達を追ってきていたシャドウ茜が追いつき、バイクから降りて目の前の光景に呆然となっている。
遅ればせながらブースカも気付く。
日和は血まみれで倒れていた。
それも元々流していた肩からの血ではなく、頭からだ。
近くには血の付いた石が。
これだけあれば、誰でもここで起きたことに見当がつく。
遅ればせながらブースカも気付く。
日和は血まみれで倒れていた。
それも元々流していた肩からの血ではなく、頭からだ。
近くには血の付いた石が。
これだけあれば、誰でもここで起きたことに見当がつく。
日和は車に轢かれ飛ばされた衝撃で地面を転がり、その時に頭を打ったのだ。
「……ひーちゃん?」
ブースカが心配気に日和に呼びかけるも、返事はない。
それどころか、息をしているようには見えない。
血は止まらず、顔色はどんどん悪くなるばかり。
肌の色もどんどん冷たくなる。
それどころか、息をしているようには見えない。
血は止まらず、顔色はどんどん悪くなるばかり。
肌の色もどんどん冷たくなる。
「ひーちゃん!!」
「やめるんじゃ!!」
「やめるんじゃ!!」
なおも必死になって日和に呼びかけるブースカを、ここまで何も言えなかった目玉おやじが止める。
否、本当は分かっているのだ。
ブースカの知能は小学校五年生並である。
それだけあれば、目の前の光景がどういうものか理解できる。
だが、感情がそれを受け入れられないだけなのだ。
否、本当は分かっているのだ。
ブースカの知能は小学校五年生並である。
それだけあれば、目の前の光景がどういうものか理解できる。
だが、感情がそれを受け入れられないだけなのだ。
誤魔化す必要もない。はっきり言おう。
鳥月日和はもう死んでいる。
この殺し合いの中で華々しく散った沖田総司や、悲劇と絶望の中で潰れた西片ような物語性など無く。
暴走する車に轢かれ頭を打って死ぬという、まるでテレビのニュースに映し出されたありふれた事件のような一幕で。
シャドウ茜に『改心』させられることもなく、あるいは逆に本当の意味で改心させることも無く、何一つ言葉すら残すことなく、彼女の生はここで終わった。
鳥月日和はもう死んでいる。
この殺し合いの中で華々しく散った沖田総司や、悲劇と絶望の中で潰れた西片ような物語性など無く。
暴走する車に轢かれ頭を打って死ぬという、まるでテレビのニュースに映し出されたありふれた事件のような一幕で。
シャドウ茜に『改心』させられることもなく、あるいは逆に本当の意味で改心させることも無く、何一つ言葉すら残すことなく、彼女の生はここで終わった。
【鳥月日和@妖怪の飼育員さん 死亡】
【残り87人】
【残り87人】
「この……『悪党』め!!」
目の前の日和の死に激昂したのはブースカではなく、シャドウ茜だった。
自分が殺そうとした相手の死を見て怒るという矛盾に目玉おやじは疑問を抱くが、彼が何をするよりも先にバイクを運転していたクイーンからスカルに切り替え、持っていた鉄パイプを振るってパワーが乗っている車のフロントガラスを叩き割り、中の運転手を外に引きずり出した。
自分が殺そうとした相手の死を見て怒るという矛盾に目玉おやじは疑問を抱くが、彼が何をするよりも先にバイクを運転していたクイーンからスカルに切り替え、持っていた鉄パイプを振るってパワーが乗っている車のフロントガラスを叩き割り、中の運転手を外に引きずり出した。
「な、何をするのじゃ!!」
「うるさい!!」
「うるさい!!」
いきなり引きずり出されたことに憤るパワーだが、シャドウ茜がそれ以上の怒りで封殺する。
彼女の激昂には理由がある。
彼女にとって『交通事故』は少々特別だ。
彼女の激昂には理由がある。
彼女にとって『交通事故』は少々特別だ。
そもそもシャドウ茜が正義を志し、悪党を改心させようとしたのは、母親が轢き逃げで亡くなったのがきっかけである。
彼女はその車の運転手を目撃していたが、その運転手は国会議員の大和田だった。
当然彼女はそれを証言したが、警察は聞いてくれなかった。
それどころか大和田の秘書が犯人ということになっていた。
どういう経緯でそうなったのか彼女には分からないが、大和田が何かして秘書に責任を押し付けたに違いない。
秘書は自殺し、家族は今も周りからの誹謗中傷に苦しんでいる。
彼女はその車の運転手を目撃していたが、その運転手は国会議員の大和田だった。
当然彼女はそれを証言したが、警察は聞いてくれなかった。
それどころか大和田の秘書が犯人ということになっていた。
どういう経緯でそうなったのか彼女には分からないが、大和田が何かして秘書に責任を押し付けたに違いない。
秘書は自殺し、家族は今も周りからの誹謗中傷に苦しんでいる。
茜は大和田を許せない。
自身の母を殺しながら、何の裁きも受けずのうのうとしていることを。
そして警察も許せない。
正義の味方のはずなのに悪を見過ごし、罪なき別の誰かが苦しんでいるのを救おうともしない。
自身の母を殺しながら、何の裁きも受けずのうのうとしていることを。
そして警察も許せない。
正義の味方のはずなのに悪を見過ごし、罪なき別の誰かが苦しんでいるのを救おうともしない。
だからだろう。
茜には、今目の前にいるパワーが許せない。
人を轢き殺しておいて何の罪悪感も抱いていないであろう態度が、どこか大和田を思い起こさせるからだ。
茜には、今目の前にいるパワーが許せない。
人を轢き殺しておいて何の罪悪感も抱いていないであろう態度が、どこか大和田を思い起こさせるからだ。
一方、パワーはそんな茜の事情など一切知らないが、とにかく目の前の少女が自分を責めていることだけは読み取れた。
しかしそんなもので怯むパワーではない。
彼女は理論武装を掲げ、自分が悪くないと心から信じ反論する。
しかしそんなもので怯むパワーではない。
彼女は理論武装を掲げ、自分が悪くないと心から信じ反論する。
「ワシが悪いのではない。ウヌのせいじゃ」
「何を……!!」
「何を……!!」
まさか自分のせいにしてくるとは思わなかった茜が動揺するが、パワーは構わず言葉を続ける。
「ウヌがあの女とあの悪魔を追い回さなければ、ワシはあやつらを轢かずに済んだ」
「なっ!?」
「何じゃその態度は……まさかワシのせいにするつもりか?」
この……人殺しがぁ!!」
「違う!!」
「なっ!?」
「何じゃその態度は……まさかワシのせいにするつもりか?」
この……人殺しがぁ!!」
「違う!!」
パワーの余りにも詭弁の過ぎる言い分に怒る茜。
だがここには、それ以上の怒りを携えたものがいる。
だがここには、それ以上の怒りを携えたものがいる。
「プリプリのキリリンコ、カッカッカ!!!」
ブースカだ。
今までは日和の死をただ悲しんでいたが、パワーと茜の責任を押し付け合うような会話に我慢ができなかった。
故にブースカはどっちも許さない。
日和を直接轢いたパワーも、その前に日和を刺したシャドウ茜も。
今までは日和の死をただ悲しんでいたが、パワーと茜の責任を押し付け合うような会話に我慢ができなかった。
故にブースカはどっちも許さない。
日和を直接轢いたパワーも、その前に日和を刺したシャドウ茜も。
「待て、落ち着くんじゃ! 日和との約束を忘れるな!!」
目玉おやじはその様子を危うく思い、必死に引き留めるが当のブースカは最早聞こえていなかった。
ただ怒りのままに、まずはシャドウ茜へと拳を振り回しながら疾走する。
ブースカの超能力の一つ、怪力なら彼女にも対抗自体は十二分に可能だろう。
その攻撃が当たればの話だが。
ただ怒りのままに、まずはシャドウ茜へと拳を振り回しながら疾走する。
ブースカの超能力の一つ、怪力なら彼女にも対抗自体は十二分に可能だろう。
その攻撃が当たればの話だが。
BANG!
ブースカがシャドウ茜へと向かっていく最中、パワーを未だ抑えているスカルの手元には銃口から煙を吹く散弾銃が。
スカルはブースカの足を見事打ち抜き、そのまま転ばせた。
スカルはブースカの足を見事打ち抜き、そのまま転ばせた。
「うわああああああああああああああ!!」
転んだブースカの元にシャドウ茜とスカルが一気に詰め寄り、互いに手に持つ武器を全身全霊で振り下ろす。
アサシンタガーが、鉄パイプがブースカの体を幾度も蹂躙する。
彼女はただ恐ろしかった。
人ではないものの純粋な怒りと、それがもたらすであろう暴力を。
そこに正義などない。
死を恐れるがゆえに、原因を取り除こうとする、あまりにも原始的な欲求でしかない。
アサシンタガーが、鉄パイプがブースカの体を幾度も蹂躙する。
彼女はただ恐ろしかった。
人ではないものの純粋な怒りと、それがもたらすであろう暴力を。
そこに正義などない。
死を恐れるがゆえに、原因を取り除こうとする、あまりにも原始的な欲求でしかない。
だがここまでなら、ブースカはこれを振り払えたかもしれなった。
彼はいくつもの超能力を持ち、その中の一つには怪力がある。
それを使えれば、シャドウ茜とスカルを振り払い、まだ戦いという概念に持ち込めるだろう。
彼はいくつもの超能力を持ち、その中の一つには怪力がある。
それを使えれば、シャドウ茜とスカルを振り払い、まだ戦いという概念に持ち込めるだろう。
カランコロン
しかし現実はそうはいかない。
ブースカの頭にある王冠が地面に落ちてしまった以上は。
スカルの殴打が偶然にも王冠を叩き落としたのだ。
ブースカの頭にある王冠が地面に落ちてしまった以上は。
スカルの殴打が偶然にも王冠を叩き落としたのだ。
ブースカの王冠はブー冠といい、彼が使う超能力はここから発生するエネルギーブースカニウムを消費して使用する。
それゆえ、ブー冠がブースカから離れると、彼は超能力が使えなくなってしまうのだ。
だからここからはただの蹂躙だ。
それゆえ、ブー冠がブースカから離れると、彼は超能力が使えなくなってしまうのだ。
だからここからはただの蹂躙だ。
「いたい、よぉ……」
ブースカには、最早呻くことが精一杯だ。
それでも震え、抵抗しようとするが、何にもならず、やがて彼も日和と同じく動きを止める。
シャドウ茜とスカルの暴力に晒され、力尽きることしか出来なかった。
それでも震え、抵抗しようとするが、何にもならず、やがて彼も日和と同じく動きを止める。
シャドウ茜とスカルの暴力に晒され、力尽きることしか出来なかった。
【ブースカ@快獣ブースカ 死亡】
【残り86人】
【残り86人】
「ハァ……ハァ……」
動かなくなったブースカを見ながら息を整えるシャドウ茜。
止めを刺したのは彼女のアサシンダガーだったが、そんなことに意味はない。
そもそもスカルも所詮は彼女が作り出したものなのだから、どうあっても彼女が殺したのと同じことだ。
止めを刺したのは彼女のアサシンダガーだったが、そんなことに意味はない。
そもそもスカルも所詮は彼女が作り出したものなのだから、どうあっても彼女が殺したのと同じことだ。
「……違う」
シャドウ茜は必死に否定する。
何をと問われれば、己の行動の意味を。
断じて、ブースカを殺したのは恐怖にかられたからではないのだと。
何をと問われれば、己の行動の意味を。
断じて、ブースカを殺したのは恐怖にかられたからではないのだと。
「違う! 違う違う!!
私は正義で! こいつも、あの女も、『悪党』だから改心させなきゃいけなかったから!!」
私は正義で! こいつも、あの女も、『悪党』だから改心させなきゃいけなかったから!!」
ただ一人必死に否定するシャドウ茜。
傍らのスカルが何やら声をかけているが、それすら聞こえない。
自分は正義だと、必死に叫ばなければ壊れてしまいそうで。
傍らのスカルが何やら声をかけているが、それすら聞こえない。
自分は正義だと、必死に叫ばなければ壊れてしまいそうで。
日和とブースカの死体という、かつて命だった二つの物体が、責め立てているように感じる。
これがお前の正義か。
こんなものがお前の言う改心なのか、と。
これがお前の正義か。
こんなものがお前の言う改心なのか、と。
「そうよ!! これが、正義よ!!」
必死に訴えていたシャドウ茜だが、ここで彼女はようやっと気づく。
この場にいたはずのもう一人の登場人物、パワーの姿がない。
乗って来た車と共に、既にこの場を去っていることに。
この場にいたはずのもう一人の登場人物、パワーの姿がない。
乗って来た車と共に、既にこの場を去っていることに。
「……絶対に許さない」
新たな悪を見つけ、改心を誓うシャドウ茜。
それが義憤か逃避か、判断してくれるものは誰もいない。
それが義憤か逃避か、判断してくれるものは誰もいない。
◆
「なんという野蛮な人間どもじゃ!!」
スカルの拘束が解けた瞬間にコベニの愛車に乗り込み、あの場から逃げ出したパワー。
彼女はあからさまにシャドウ茜の行動を侮蔑しつつ、二対一は不利という考えから逃走を選択した。
彼女はあからさまにシャドウ茜の行動を侮蔑しつつ、二対一は不利という考えから逃走を選択した。
「じゃがそもそもこの殺し合いに優勝できるのは一人だけ。
どうせあやつらもいずれは仲間割れするに決まっておる。そうなればワシの勝ちじゃ」
どうせあやつらもいずれは仲間割れするに決まっておる。そうなればワシの勝ちじゃ」
そしてパワーは勘違いしていた。
スカルもまたこの殺し合いの参加者の一人と思い、殺し合いに乗っている者同士が一時的に手を組んでいると考えていたのだ。
だからいずれコンビも解消されると彼女は推測した。
スカルもまたこの殺し合いの参加者の一人と思い、殺し合いに乗っている者同士が一時的に手を組んでいると考えていたのだ。
だからいずれコンビも解消されると彼女は推測した。
だがスカルは参加者ではなく、シャドウ茜が作り出したものでしかない。
そもそも首輪がついていないのだから参加者でないと気づくことは難しくないのだが、パワーはあの状況でそこまで見ることはできなかった。
そもそも首輪がついていないのだから参加者でないと気づくことは難しくないのだが、パワーはあの状況でそこまで見ることはできなかった。
「まあしばらくは離れておくとするかのう! せっかく車も手に入ったのじゃしな!!」
ハハハハと高笑いするパワー。
彼女は何も変わらない。ただ理性ある魔人としての振る舞いをするのみ。
そして彼女は気付いていない。
この車に乗っているのは彼女だけではないことを。
彼女は何も変わらない。ただ理性ある魔人としての振る舞いをするのみ。
そして彼女は気付いていない。
この車に乗っているのは彼女だけではないことを。
(すまぬ! すまぬ! すまぬ!)
車内のパワーから見えない位置に、目玉おやじが隠れ潜んでいた。
彼はパワーが逃げ出すのを見て、咄嗟にここで残っても無駄死ににしかならないと判断し、彼女の車に乗り込んだのだ。
しかし彼の心中はあまりにも暗闇に飲み込まれていた。
彼はパワーが逃げ出すのを見て、咄嗟にここで残っても無駄死ににしかならないと判断し、彼女の車に乗り込んだのだ。
しかし彼の心中はあまりにも暗闇に飲み込まれていた。
いくら仕方ないと理由を付けることはできても、心を通わせた仲間をむざむざ見捨てて逃げたことは、彼の中で大きな傷となっていた。
そして更に傷を広げるであろう決意を、彼は掲げる。
そして更に傷を広げるであろう決意を、彼は掲げる。
(すまない日和。わしはお前さんの願いを叶えられん)
日和はシャドウ茜を説得し、仲間にしたがっていたが目玉おやじはできるとはもう思っていない。
彼女は死亡し、ブースカも後を追うように逝ってしまっただろう。
だから彼は決意する。日和の想いを無下にする決意を。
彼女は死亡し、ブースカも後を追うように逝ってしまっただろう。
だから彼は決意する。日和の想いを無下にする決意を。
(わしはあの女を殺す)
弔いなどではない。ただ目玉おやじの決意としてシャドウ茜を殺すと決めた。
(そしてこの女もじゃ)
そしてもう一人、パワーも同様だ。
目玉おやじは運転手をこっそりと睨む。
かつて妖怪の王だった彼にも分からない異世界の存在だが、そんなことは関係ない。
目玉おやじは運転手をこっそりと睨む。
かつて妖怪の王だった彼にも分からない異世界の存在だが、そんなことは関係ない。
この場には物として持ち込まれたが、ここに在るのは意思ある命。
ただ一匹の妖怪として、彼は化物討伐を心に誓う。
ただ一匹の妖怪として、彼は化物討伐を心に誓う。
【H-5/早朝】
【シャドウ茜@ペルソナ5 スクランブル ザ ファントム ストライカーズ】
[状態]:健康、精神的動揺(大) 『マイ・ディア・スカル』の顕現
[装備]:アサシンダガー@ドラゴンクエスト3
[道具]:基本支給品、岸部露伴のバイク@ジョジョの奇妙な冒険、ランダム支給品0~1
[思考・状況]:基本行動方針:『悪党』を全員殺す。
1.逃げた悪党を追いかけ、改心させる
2.あの女(パワー)は絶対に改心させる。
3.本物の怪盗団は、私を裏切らない……。
4.どうせ皆、悪党なんでしょ………………そうに決まってる! そうじゃなきゃ……
[備考]
心の怪盗団を京都ジェイルに誘い込むまで待っている時からの参戦です。
認知の怪盗団は、複数体同時に顕現させることはできません。
彼らは支給品とは別に茜がそれぞれ連想した武器を所持しています。
(例:マイ・ディア・ジョーカーの場合、初期装備のアタックナイフとトカチェフ)
怪盗団が所有しているペルソナ能力を把握していないのでペルソナは使用できません。
[状態]:健康、精神的動揺(大) 『マイ・ディア・スカル』の顕現
[装備]:アサシンダガー@ドラゴンクエスト3
[道具]:基本支給品、岸部露伴のバイク@ジョジョの奇妙な冒険、ランダム支給品0~1
[思考・状況]:基本行動方針:『悪党』を全員殺す。
1.逃げた悪党を追いかけ、改心させる
2.あの女(パワー)は絶対に改心させる。
3.本物の怪盗団は、私を裏切らない……。
4.どうせ皆、悪党なんでしょ………………そうに決まってる! そうじゃなきゃ……
[備考]
心の怪盗団を京都ジェイルに誘い込むまで待っている時からの参戦です。
認知の怪盗団は、複数体同時に顕現させることはできません。
彼らは支給品とは別に茜がそれぞれ連想した武器を所持しています。
(例:マイ・ディア・ジョーカーの場合、初期装備のアタックナイフとトカチェフ)
怪盗団が所有しているペルソナ能力を把握していないのでペルソナは使用できません。
【パワー@チェンソーマン】
[状態]:腹に打撲、令嬢剣士の返り血で汚れている、コベニの愛車運転中
[装備]:血の剣@チェンソーマン、コベニの愛車@チェンソーマン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1、トランスチームガン@仮面ライダービルド、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド
[思考・状況]基本行動方針:やはりワシは最強じゃ!!
1:強そうな奴からは逃げる。
2:弱そうなのは殺す。
3:新しい武器を調達するのじゃ!!
[備考]
時間軸は永遠の悪魔の後。
トランスチームガン@仮面ライダービルド、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド の使い方が分かりません。
スカルを参加者と思っています。
車の中の目玉おやじに気付いていません。
どの方向に逃げたかは次の書き手氏にお任せします。
[状態]:腹に打撲、令嬢剣士の返り血で汚れている、コベニの愛車運転中
[装備]:血の剣@チェンソーマン、コベニの愛車@チェンソーマン
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×1、トランスチームガン@仮面ライダービルド、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド
[思考・状況]基本行動方針:やはりワシは最強じゃ!!
1:強そうな奴からは逃げる。
2:弱そうなのは殺す。
3:新しい武器を調達するのじゃ!!
[備考]
時間軸は永遠の悪魔の後。
トランスチームガン@仮面ライダービルド、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド の使い方が分かりません。
スカルを参加者と思っています。
車の中の目玉おやじに気付いていません。
どの方向に逃げたかは次の書き手氏にお任せします。
※G-5 東部にて以下のものが放置されています。
鳥月日和、ブースカの遺体。
鳥月日和のデイパック(基本支給品(カップ麺全滅)、アリアドネの糸(1本)@世界樹の迷宮シリーズ、ちいさなDIYさぎょうだい@あつまれ どうぶつの森)、ブースカのデイパック(基本支給品(食糧は全滅)、アリアドネの糸(2本)@世界樹の迷宮シリーズ)。
※コベニの愛車@チェンソーマン の内部に目玉おやじ@ゲゲゲの鬼太郎 が乗り込んでいます。
鳥月日和、ブースカの遺体。
鳥月日和のデイパック(基本支給品(カップ麺全滅)、アリアドネの糸(1本)@世界樹の迷宮シリーズ、ちいさなDIYさぎょうだい@あつまれ どうぶつの森)、ブースカのデイパック(基本支給品(食糧は全滅)、アリアドネの糸(2本)@世界樹の迷宮シリーズ)。
※コベニの愛車@チェンソーマン の内部に目玉おやじ@ゲゲゲの鬼太郎 が乗り込んでいます。
【コベニの愛車@チェンソーマン】
パワーに支給。
デンジとパワーの同僚、東山コベニが給料を貯めて買った車。
本来ならコベニは家族の送り迎え用にするつもりだったが、結果としては味方ごと敵の暗殺者を轢く、落ちてきた味方のクッションになる、敵へのトドメを刺す武器として扱われるなど散々である。
第一回人気投票七位。
パワーに支給。
デンジとパワーの同僚、東山コベニが給料を貯めて買った車。
本来ならコベニは家族の送り迎え用にするつもりだったが、結果としては味方ごと敵の暗殺者を轢く、落ちてきた味方のクッションになる、敵へのトドメを刺す武器として扱われるなど散々である。
第一回人気投票七位。
本ロワでは支給品の説明書きに車の動かし方が書かれている。
これさえ読めば物理的に乗り込めない、もしくはハンドルやペダルに手足が届かない、とかでもない限り誰でも使えるようになるだろう。
これさえ読めば物理的に乗り込めない、もしくはハンドルやペダルに手足が届かない、とかでもない限り誰でも使えるようになるだろう。
091:三者三様 | 投下順 | 093:メッセージは唐突に |
075:少年少女、前を向け(前編) | 鳥月日和 | GAME OVER |
ブースカ | ||
シャドウ茜 | ||
057:ある修羅の結末 | パワー |