どうしてこうなった。
そう思いながらゴブリンは必死に逃げていた。
背後からは仲間の悲鳴と、肉を斬り裂くような音が絶え間なく聞こえてくる。
最初に獲物を発見した時はは運が良いと喜んだ。
蜂蜜色の髪を二つに括り、端正な顔立ちをした年頃の娘。
しかも服装はボロ布を体に巻き付けているだけであり、布越しに浮き上がる豊かな胸や尻がゴブリン達の劣情を煽ぐ。
そんな娘が一人でトボトボと歩いてきたのだから、それはもう喜んだものだ。
蜂蜜色の髪を二つに括り、端正な顔立ちをした年頃の娘。
しかも服装はボロ布を体に巻き付けているだけであり、布越しに浮き上がる豊かな胸や尻がゴブリン達の劣情を煽ぐ。
そんな娘が一人でトボトボと歩いてきたのだから、それはもう喜んだものだ。
あの娘を初めに見つけたのは自分だ。
だからまず先に自分が楽しむ権利がある。
だからまず先に自分が楽しむ権利がある。
棍棒を振り回しながら口汚く熱弁するゴブリンを、仲間たちは鬱陶しそうに見た。
自分の主張が通ったと思い込んだのか、ゴブリンはウキウキとした足取りで娘に近づき、他の者らも後に続いた。
自分の主張が通ったと思い込んだのか、ゴブリンはウキウキとした足取りで娘に近づき、他の者らも後に続いた。
近づく気配に気づいた娘が足を止めた時には、あっという間にゴブリンの群れに囲まれていた。
ゴブリン達は卑しい笑みを浮かべながら娘の反応を待った。
怯えて泣き叫ぶか、生意気にも抵抗しようとするか。
前者ならば嗜虐性を刺激され、後者でも気取った顔が無様に泣き崩れる瞬間を見れるという楽しみが生まれる。
怯えて泣き叫ぶか、生意気にも抵抗しようとするか。
前者ならば嗜虐性を刺激され、後者でも気取った顔が無様に泣き崩れる瞬間を見れるという楽しみが生まれる。
しかし、娘はどちらでもなく、ただ人形のような無表情で突っ立っているだけだった。
これにはゴブリンも少しばかりつまらなそうにし、されど獲物を見逃す気は毛頭無く、粗末な武器を手に襲い掛かろうとし――
これにはゴブリンも少しばかりつまらなそうにし、されど獲物を見逃す気は毛頭無く、粗末な武器を手に襲い掛かろうとし――
「GOROB!?」
乾いた銃声と共にのけ反り倒れた。
見れば娘の手には何時の間にか奇妙な短銃が握られている。
それが仲間の命を奪ったのだと理解した瞬間、ゴブリン達は一斉に怒りを露わにした。
もっともそれは同胞の命を奪われたからではなく、相手が歯向かってきた事実に苛立ったという何とも身勝手なものだが。
それが仲間の命を奪ったのだと理解した瞬間、ゴブリン達は一斉に怒りを露わにした。
もっともそれは同胞の命を奪われたからではなく、相手が歯向かってきた事実に苛立ったという何とも身勝手なものだが。
一方で娘にも変化があった。
湧き立つゴブリンを前にし人形のようだった表情には憤怒の感情が現れ、両目には憎悪が宿る。
湧き立つゴブリンを前にし人形のようだった表情には憤怒の感情が現れ、両目には憎悪が宿る。
「ゴブリン……ゴブリンッ…!殺してやる……!!」
短銃を持つ手とは反対の手に握られたのはコウモリの装飾がされた小さな容器。
それを怒りのままに、叩きつけるように短銃へ差し込んだ。
それを怒りのままに、叩きつけるように短銃へ差し込んだ。
――BAT
短銃から聞こえてくる奇妙な音に困惑するゴブリン達。
だがその行動は大間違いだった。
ほんの一瞬攻撃を躊躇った事が、ゴブリン達の運命を決定づけた。
だがその行動は大間違いだった。
ほんの一瞬攻撃を躊躇った事が、ゴブリン達の運命を決定づけた。
「蒸血…!」
――MIST MATCH
――BAT…B・BAT…FIRE
――BAT…B・BAT…FIRE
短銃から吐き出された煙に包まれ、飛び散る火花と共に煙が吹き飛ばされた時、娘の姿は一変していた。
とある世界にて、‘ナイトローグ’と呼ばれた怪人が、そこに立っていた。
「OGA!?」
「GROOAB!?」
「GROOAB!?」
突如異形へと変貌した娘に混乱するゴブリンへ向け、ナイトローグがトリガーを引く。
光弾が次々にゴブリンの頭部を吹き飛ばす中、数匹のゴブリンが仲間を盾にし接近する。
ゴブリンにとってその行為に後ろめたさは微塵も無く、むしろ自分の役に立って死ぬのは当たり前だとすら思っていた。
光弾が次々にゴブリンの頭部を吹き飛ばす中、数匹のゴブリンが仲間を盾にし接近する。
ゴブリンにとってその行為に後ろめたさは微塵も無く、むしろ自分の役に立って死ぬのは当たり前だとすら思っていた。
棍棒で殴り短剣で斬りかかるが、強固なアーマーの前に全てが無意味。
アーマーの硬さに耐え切れず折れた武器が跳ね返った挙句に、自分たちに突き刺さり却って傷を負う羽目になる始末だ。
痛みに呻くゴブリン達を、ナイトローグは左手に握るバルブの付いた短剣を振り下ろし両断していく。
アーマーの硬さに耐え切れず折れた武器が跳ね返った挙句に、自分たちに突き刺さり却って傷を負う羽目になる始末だ。
痛みに呻くゴブリン達を、ナイトローグは左手に握るバルブの付いた短剣を振り下ろし両断していく。
仲間の間抜けな姿を嘲笑う余裕も失い、最初に娘を見つけたゴブリンは一目散に逃げていく。
その胸中にはどうしてこうなったという疑問が燻り続けていた。
本当ならば今頃は娘を巣穴に持ち帰り、そこで好きなだけオモチャにしていたはず。
それなのに何故。
その胸中にはどうしてこうなったという疑問が燻り続けていた。
本当ならば今頃は娘を巣穴に持ち帰り、そこで好きなだけオモチャにしていたはず。
それなのに何故。
そんな思考は唐突に右足へ走った激痛により中断された。
見れば足首から先が失われており、薄汚い血が噴き出している。
焼けるような痛みにのたうち回り涙を流すゴブリンへ、ナイトローグが近づく。
銃を撃ち足止めしたゴブリンを見下ろすバイザー越しの両目には、変わらぬ憎しみがあった。
見れば足首から先が失われており、薄汚い血が噴き出している。
焼けるような痛みにのたうち回り涙を流すゴブリンへ、ナイトローグが近づく。
銃を撃ち足止めしたゴブリンを見下ろすバイザー越しの両目には、変わらぬ憎しみがあった。
「死ね…」
振り下ろした拳はいとも簡単にゴブリンの頭蓋を砕き、肉を潰した。
「死ね、死ね、死ね…!死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね!!!あああああああああああああああっ!!」
拳を何度も振り下ろす。
最初の一撃でとっくに死んでいるにも関わらず、何度も、何度も。
ゴブリンの死体が幾つも転がる場で、延々と肉塊に拳を振るう姿は異様だった。
最初の一撃でとっくに死んでいるにも関わらず、何度も、何度も。
ゴブリンの死体が幾つも転がる場で、延々と肉塊に拳を振るう姿は異様だった。
ーーーー
変身を解いた令嬢剣士は昏い瞳で己の手にある支給品を見つめていた。
自分の知識にある短銃とは段違いの性能。
更には身体能力を底上げする鎧を纏い、奇妙な形だが剣も使う事ができる。
成程、大した武器だ。
もしもコレがもっと以前から自分の手にあれば、あんな目には遭わなかっただろう。
更には身体能力を底上げする鎧を纏い、奇妙な形だが剣も使う事ができる。
成程、大した武器だ。
もしもコレがもっと以前から自分の手にあれば、あんな目には遭わなかっただろう。
意気揚々と挑んだゴブリン退治。
全くの失敗に終わった兵糧攻めと、仲間からの責めるような冷たい視線。
吹雪の中一人ぼっちの自分を襲ったゴブリンと、仲間達の無惨な姿。
洞窟の最奥で裸に剝かれた自分に群がるゴブリン達の――。
全くの失敗に終わった兵糧攻めと、仲間からの責めるような冷たい視線。
吹雪の中一人ぼっちの自分を襲ったゴブリンと、仲間達の無惨な姿。
洞窟の最奥で裸に剝かれた自分に群がるゴブリン達の――。
そうして気が付いたら奇妙な場所で殺し合いをしろと言われ、見知らぬ廃屋に一糸纏わぬ姿で放り出されていた。
「ふふ……」
乾いた笑いが漏れる。
あの状況から助かったと思ったら今度は殺し合いと来た。
こんな運命に導くとは神様というのは随分と陰湿な性格をしているらしい。
あの状況から助かったと思ったら今度は殺し合いと来た。
こんな運命に導くとは神様というのは随分と陰湿な性格をしているらしい。
冒険者としての自信。
貴族としてのプライド。
女の純潔。
家伝の宝剣。
その全てをいっぺんに失った。
もう一本の宝剣とて手元にない以上どうなったのかは分からない。
どこまでも惨めな、それでいてありふれた冒険者の末路と言ったところか。
貴族としてのプライド。
女の純潔。
家伝の宝剣。
その全てをいっぺんに失った。
もう一本の宝剣とて手元にない以上どうなったのかは分からない。
どこまでも惨めな、それでいてありふれた冒険者の末路と言ったところか。
「…けど、失ったのなら取り戻す」
殺し合いに招いた者はどんな願いも叶えると言っていた。
その言葉が真実かは彼女には分からない。
ただ令嬢剣士はどんな手を使ってでも元居た場所に戻る必要がある。
戻って、ゴブリンどもを殺し、宝剣を取り戻す。
それだけが、今の令嬢剣士を動かす原動力だった。
その言葉が真実かは彼女には分からない。
ただ令嬢剣士はどんな手を使ってでも元居た場所に戻る必要がある。
戻って、ゴブリンどもを殺し、宝剣を取り戻す。
それだけが、今の令嬢剣士を動かす原動力だった。
「……」
デイパックから刀を取り出すと、おもむろに自身の髪に当てる。
そして躊躇する事無くリボンで括った髪を二房とも切り落とし、ざんばらに短くした。
これは決意表明のようなものだ。
ここから先に進めば、もう以前の自分には戻れない。
それに生じる迷いを断ち切る為、蜂蜜色の艶やかな髪を自ら切った。
そして躊躇する事無くリボンで括った髪を二房とも切り落とし、ざんばらに短くした。
これは決意表明のようなものだ。
ここから先に進めば、もう以前の自分には戻れない。
それに生じる迷いを断ち切る為、蜂蜜色の艶やかな髪を自ら切った。
それは本来の世界にて、少し未来の令嬢剣士が行ったのと同じ行為だった。
ゴブリン退治に同行する際の、報酬の前払い。ゴブリンへの復讐を決意した証。
動機に違いはあれど髪を切り落とした彼女は小鬼聖騎士(ゴブリンパラディン)との戦いの果て、ゴブリンスレイヤー達によって心を救われた。
ゴブリン退治に同行する際の、報酬の前払い。ゴブリンへの復讐を決意した証。
動機に違いはあれど髪を切り落とした彼女は小鬼聖騎士(ゴブリンパラディン)との戦いの果て、ゴブリンスレイヤー達によって心を救われた。
けれど今の彼女は一人だった。
同じくゴブリンを憎む男も、心の支えになろうとする少女も傍には居ない。
ここに居るのは一人ぼっちで、二度と引き返す事の出来ない道を進む、哀れな殺し合いの参加者だった。
同じくゴブリンを憎む男も、心の支えになろうとする少女も傍には居ない。
ここに居るのは一人ぼっちで、二度と引き返す事の出来ない道を進む、哀れな殺し合いの参加者だった。
彼女がどんな結末を迎えるのかは、天上で賽子を振るう神様にだって分かりはしない。
【令嬢剣士@ゴブリンスレイヤー】
[状態]:健康、ゴブリンへの強い憎悪
[装備]:トランスチームガン@仮面ライダービルド、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド、古びたカーテン
[道具]:基本支給品、ちゅんちゅん丸@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)
[思考・状況]:基本行動方針:何が何でも元居た所へ戻り、宝剣を取り返す。
1:ゴブリンは見つけ次第殺す
2:使えるものは全て利用する
3:服が欲しい
[備考]
参戦時期はゴブリンスレイヤー達に洞窟から救出される前。
廃屋で見つけたカーテンを体に巻いています。
トランスチームガンは氷室幻徳が所持していた物で、エボルトが使っていた方とは別です。
[状態]:健康、ゴブリンへの強い憎悪
[装備]:トランスチームガン@仮面ライダービルド、バットロストフルボトル@仮面ライダービルド、古びたカーテン
[道具]:基本支給品、ちゅんちゅん丸@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)
[思考・状況]:基本行動方針:何が何でも元居た所へ戻り、宝剣を取り返す。
1:ゴブリンは見つけ次第殺す
2:使えるものは全て利用する
3:服が欲しい
[備考]
参戦時期はゴブリンスレイヤー達に洞窟から救出される前。
廃屋で見つけたカーテンを体に巻いています。
トランスチームガンは氷室幻徳が所持していた物で、エボルトが使っていた方とは別です。
【トランスチームガン@仮面ライダービルド】
葛城巧が開発した拳銃型の変身ツール。
ロストフルボトルをセットする事でトランスチームシステムの怪人に変身できる。
武器としても使用可能で、エネルギー弾を発射する他、煙幕を張って撤退する、特殊なガスを散布し人間をスマッシュにする等の機能がある。
葛城巧が開発した拳銃型の変身ツール。
ロストフルボトルをセットする事でトランスチームシステムの怪人に変身できる。
武器としても使用可能で、エネルギー弾を発射する他、煙幕を張って撤退する、特殊なガスを散布し人間をスマッシュにする等の機能がある。
【バットロストフルボトル@仮面ライダービルド】
トランスチームシステムの怪人に変身する為の人口フルボトル。
これをトランスチームガンにセットしトリガーを引くとナイトローグに変身できる。
トランスチームシステムの怪人に変身する為の人口フルボトル。
これをトランスチームガンにセットしトリガーを引くとナイトローグに変身できる。
【ちゅんちゅん丸@この素晴らしい世界に祝福を!(アニメ版)】
日本刀を模して異世界で作らせたカズマの愛刀。銘はめぐみんが(勝手に)付けた。
実用性の面からすぐにサイズ変更され、脇差のような長さになっている。
日本刀を模して異世界で作らせたカズマの愛刀。銘はめぐみんが(勝手に)付けた。
実用性の面からすぐにサイズ変更され、脇差のような長さになっている。
【スチームブレード@仮面ライダービルド】
ナイトローグ、及びブラッドスタークに変身すると使える短剣型の武器。
中央部のバルブを回す事で冷気や電撃を刃に纏わせ攻撃が可能。それ以外にもネビュラガスを注入しスマッシュにする事もできる。
更にトランスチームガンと合体させればライフルモードと呼ばれる狙撃銃にもなる。
ナイトローグ、及びブラッドスタークに変身すると使える短剣型の武器。
中央部のバルブを回す事で冷気や電撃を刃に纏わせ攻撃が可能。それ以外にもネビュラガスを注入しスマッシュにする事もできる。
更にトランスチームガンと合体させればライフルモードと呼ばれる狙撃銃にもなる。
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