コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ

狂気孕みし、風林火山

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匿名ユーザー

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『サトシ。私、旅に出て本当に良かった。あなたは、私の目標よ。次、逢うまでに、もっともっと魅力的な女性になるから』

別れの際、彼女は、それまで共に旅していた彼に告げた。
思い返せば、彼女が旅に出たのは、テレビの中継で彼を見つけたのが、きっかけだった。
幼き頃、カントー地方で行われたポケモンキャンプで怪我をした自分を助けてくれた彼。
再会して、一緒に旅をしていても、彼はやはり幼き頃の彼のままで、常に前を向き、夢へと向かって突き進んでいた。

『サトシ、最後に1ついい?』

彼に背を見せて、エスカレーターで下る中、彼女は、意を決すると、逆方向へと駆け上がった。
そして、憧れの彼に秘めていた想いを、行動を以って伝えた。

『ありがとう!』

“それ”を行った後、顔から湯気が立つほど真っ赤になりながらも、彼女は彼に感謝の言葉を告げて、自らの夢を追うために、旅立った。

いつかまた、彼に肩を並べるほどの女性になって、彼と再会することを心待ちにしながら―――。


なのに―――。


「どうして……こんな……、サトシ……」

セレナは、月日が照らす山林の茂みの中で蹲り、独りで震えていた。
既に殺し合いが始まってから、数刻が経過しているが、彼女はスタート地点であるこの場所から一歩も動けずにいた。
それも無理はない。
目の前で自分と年端の変わらぬ少年が、無残に殺されたのだ。

セレナとて、争いとは無縁だったわけではない。
アサメタウンを飛び出してから、幾多のポケモンバトルを経験してきたし、他人のポケモンを狙う悪い連中とも、何度も対峙してきた。
直近でも、人類とポケモンの間引きを企てていたフラダリら、フレア団との死闘が記憶に新しい。

しかし、最初の会場で見た、人間の首がまるでゴミのように吹き飛んだ様は、人の死に慣れていない少女にとってはあまりも凄惨でショッキングな光景であった。

「うっ……!」

思い出すと吐き気に襲われ、慌てて口元を抑える。
セレナの首元には、少年の命を奪ったものと同じ首輪が、冷やりとした感触と共に嵌められている。
その事実もまた、彼女の心を追い詰めていた。

「……サトシ……」

ホウエン地方に旅立つ際に、笑顔で見送ってくれた彼の姿を思い浮かべ、嗚咽交じりに彼の名前を呟くが、彼が現れることはない。

彼だけではない。
シトロンも、ユリーカも、テールナーも、ヤンチャムも、ニンフィアも傍にはいない。
夜の蟲の鳴き声と風の音に晒されながら、セレナはただ独りで、膝を抱えて震えていた。

「あの―――」
「ひっ!?」

不意に背後から声を掛けられたのは、その時だった。
心臓が止まるような驚きを覚えつつ振り返ると、そこには黒髪のおかっぱ頭の少年が、怪訝そうな表情を浮かべて佇んでいた。





「――そうか……。お互い災難だったよね……」

雷小幽にとって、この殺し合いで最初に出会った少女セレナから齎された情報は、彼の頭を混乱させるのに十分なものだった。

(ポケモン……? パフォーマー……?
さっきから、こいつは何を言っているんだ?)

セレナの話に適当に相槌を打ちつつも、小幽にとって聞き慣れない単語が、当たり前のように彼女の口から次々飛び出してくるため、理解が追いつけていなかった。

「ううん……でも、ありがとう……。
小幽と話せたおかげで、私も少しだけ落ち着けたよ」

紙切れのように薄っぺらい、小幽の気遣いの言葉。
建前だけの気遣いに、無理やりに作ったような笑顔で応えてみせるセレナ。

「……。」

そんな彼女の様子を、両眼に見据えて、小幽は思考する。

――ゲームか何かと現実の区別が出来ないほど思慮が浅いようには見えないし、馴染みのない単語を除けば、問題なく会話は成立する。
――なら、この違和感の正体はなんだ……?
――拷問でもして、隠していることがないか吐き出させてみるか……?
――いや、そもそも、こいつを生かしておいて何か得があるのか……?
――いっそのこと、ここで殺しておくべきか……?

(よし、殺そう)

小幽としては、一刻も早く、主人である呂算の元へと帰還するのが最優先事項となる。
優勝を目指すか、脱出を目指すかは未だ決めあぐねてはいるが、どちらにせよ、眼前の少女は、時間を割くほどの価値はないように見受けられる。


セレナへの処遇について決断を下し、小幽が、行動を起こそうとしたまさにその時――。

「わーい、ようやく人が見つかった!! しかも二人もいる!!」

突如として響き渡る、場違いなまでに明るい声色。

「えっ!?」
「……?」

二人が振り向いた先に立っていたのは、片手に大きな軍配を掲げた、銀色の髪の少女だった。
見るからに幼げな風貌で、ここが殺し合いの場であることを微塵も感じさせないほど無邪気な笑みを浮かべている。

ゾ ク リ

あまりにも緊張感に欠ける少女を目の当たりにして、背筋を駆け巡る嫌な感覚が、小幽の中を駆け巡った。
警戒心を露にして、睨むようにして見つめ返す小幽。
そんな小幽とは対照的に、セレナは突然現れた少女の登場に驚きながらも、話しかけようとする。

「えっと、あなたは―――」

瞬間、少女が両腕を振り下ろしたかと思うと―――

豪ッ!!!と、少女が両腕を振り下ろしたかと思うと、凄まじい突風が二人に飛来。

「なっ!?」

小幽は、咄嵯に身を翻して回避する。
しかし、セレナの方はというと、まともに反応すること叶わず、直撃を受け、彼女の華奢な身体は、テニスボールのように勢いよく吹き飛ばされてしまう。

「きゃああぁあっ!」

突風に運ばれるがまま、幾つもの茂みを突き破っていくと、やがて、大樹に激突。
そのまま意識を失うと同時に、力無く腐葉土の上へと崩れ落ちてしまった。

「あれれ、軽くやったつもりだったんだけど……。
そっちの子は弱っちいんだね」

倒れ伏せ動かなくなるセレナを見て、少し落胆したような表情を見せる銀髪の少女。
しかし、すぐにまた無垢な笑顔を取り戻すと、今度は小幽に向かって語りかける。

「でも、こっちのお子様は、中々楽しませてくれそうだね!!
ねぇ君、これから一緒に遊ぼうよ!!」
「お前、何者だ……」

倒れ伏せるセレナに見向きもせずに、小幽は前屈みになり、臨戦態勢を取る。

―――この娘は危険だ。

彼の中の『黒雷』の血が警鐘を上げる中、少女は朗らかに口を開いた。

「あははっ、我こそは甲斐武田家十九代当主、武田信玄だよ!
さあ、存分殺し合おうよ!」



冥界における武田信玄は、無邪気に他者との『力比べ』を望んでいた。
しかし、魔王となった織田信長によって、その魂は改竄され、『力比べ』ではなく、『殺し合い』を所望するように書き換えられてしまった。
そして、彼女は改竄された状態のまま、この殺し合いに招かれてしまった。

「あははっ、どうしたの?
避けてばっかりじゃ、信玄ちゃん、つまんないよ!」

故に、彼女は改竄された本能のままに、暴れ回る。
全てを殺しつくす、狂戦士として。
眼前の少年に、疾風の如く突進を幾度も仕掛け、その命を摘まんとする。

「……くっ!」

対する小幽は、その攻撃を避けるだけ。
苦々しい表情で、紙一重の回避に徹していた。
幼少の頃から、黒雷の暗殺術を叩き込まれ、卓越した身体能力を有する小幽ですら、信玄の弾丸のような突貫には、脅威を抱かざるを得なかった。

(まさか、これ程の使い手も参加しているなんて……!)

世の中には、黒雷本家の面々や、『阿牙倉』など、自身よりも格上の者が存在していることを、小幽は認識していた。
しかし、それはほんの一握りであり、この殺し合いとやらの会場で、そう易々と出会うことはないと決めつけていた。
恐らく、最初に出会ったのが、セレナという非力な少女であったことも油断に繋がっていたのだろう。

しかし――。

「あまり調子に――」

小幽とて、四乃山の警護を司る者。
心酔する呂算の元に帰還するために、ここで殺される訳にはいかない。

「乗るなよ、お子様が!!」

何度目か分からない信玄の突貫を躱すと、宙で身を翻す。
間髪入れずに、手元から銀の刃を複数取り出すと、信玄の顔面目掛けて投擲し、反撃を試みる。

「あははっ、良いねぇ。
信玄ちゃん、楽しくなってきたよ!」

あどけない顔面に、真っ直ぐと差し迫る銀色の凶器。
しかし、信玄は笑顔を崩すことはない。
すかさず軍配を振るうと、それらは地面に叩き落とされる。
そして上機嫌のまま、信玄は軍配を振りかざすと――。

「よーし、それじゃあ、信玄ちゃんも、ちょっと本気出しちゃうぞ!
君に、この技は躱せるかなぁ?」

その場でくるりくるりと身体を複数回転。
と同時に、風が渦巻いていき、竜巻が形成されていく。

「――なっ!?」
「疾きこと風の如く!」

目を見開く小幽に向けて、竜巻が一直線に解き放たれる。
木々を軽々と薙ぎ倒しながら迫り来るそれは、言うなれば災害。
小幽は慌てて飛び退き、どうにかして暴風圏外へと逃れるも――

「侵掠すること火の如く!」

信玄が攻撃の手を緩めることはない。
団扇を仰ぐように、軍配を振り下ろすと、灼熱を帯びた業炎が津波のように押し寄せてくる。
小幽は、咄嵯に指を伸長し、近くの樹木の枝を掴むと、それをバネに上空へと跳躍し、炎波から逃れる。
炎は山林に着火し、至る所に火の手が上がる。

「……化け物め……」

上空からその惨状を目の当たりにして、小幽は悪態をつく。
だが、地上の様相に気を取られている場合ではない。
引力とともに落下する最中、すぐさま視線をこの災害の根源へと戻し、警戒を強めようとするが――

「あははっ、余所見しているなんて、やっぱりお子様だね!」
「……っ!?」

信玄は、既に眼前に迫っていた。
小幽が目を離した隙に、ロケットの打ち上げのように飛翔し、一気に彼に肉薄。
勢いそのまま、軍配を彼の腹部に叩き込んだ。

「ごふぅッ!!」

小幽の小さな身体がくの字に折れ曲がると同時、彼は口から血反吐を吐き出した。

「あははっ、まだまだいくよ!」

空中で身を捻りながら、信玄は再び小幽に向けて、軍配を振るわんとする。

だが――。

「あれっ!?」

ここでようやく信玄は、自身の身に異変が起きていることに気付く。
自身の腰に纏わりつく、複数の黒く細長い影。
そして、その正体は、眼下の小幽の手から伸びている指であることも。

「ようやく、捕まえたぞ、化け物」

小幽はニヤリと口角を吊り上げる。

刹那--。

バチバチバチバチ!!

「痛ぁあああああっ!?」

弾けるような音と共に、伸長した指を伝い、信玄の全身に電撃が駆け巡った。
さしもの彼女は堪らず悲鳴を上げ、苦悶の表情を浮かべる。
小幽は地面に着地すると、尚も電撃を浴びせながら、伸長した指を振り回す。

「お前、さっきから僕の事を『お子様』だと言っていたけど――」

指に縛られた信玄は、身体が痺れるため、なす術がなく。
されるがまま、振り回される。

「僕はもう19歳だ」

そう言い放ち、小幽は信玄の拘束を解くと、遠心力を伴った彼女の身体は勢いよく、空高く放り出される。
二人が相争っていた山林の近くには中々の高さの崖が存在しており、信玄はそちら目掛けて、投げ飛ばされたのである。

「じゃあな」

落ちゆく信玄に対して、暗殺者は冷酷にそう告げる。

「~~~~っ!!」

信玄はそんな彼に対して、何かを叫ばんとするが、舌が痺れて上手く喋ることは出来ず、そのまま、崖下の森の闇の中へと吸い込まれていった。




武田信玄という脅威が去った後の、山林地帯は再び静寂に包まれていた。
しかし、完全に元通りになったという訳ではなく、竜巻で薙ぎ倒された木々や、一帯に拡がる火の手が、先の戦闘の激しさを物語っていた。

「ったく…随分と派手に暴れてくれたよな……」

小幽は、信玄の転落確認後、直ぐに踵を返し、戦場から去ろうとしていた。
山火事はまだまだ燃え広がる余地があるし、一応撃退には成功したものの、あれであの化け物が死ぬとは到底思えない。つまりは、また此処に戻ってくる可能性もある。

「あっ」

とここで、倒れ伏せるセレナを視界に収めると、ようやく彼女の存在を思い出す。
どうやら先程の戦闘の余波を喰らう事はなく、無事だったらしい。

「呼吸はまだあるか…。
やれやれ、悪運だけは強いな、コイツ」

脈拍を確認して、まだ生きている事を認識すると、ぐったりとする彼女を背負って、歩き出す。

「……ん……。サトシ……」

気絶している筈なのに、彼女は無意識に、仲間の名前を口にする。
だが、小幽は特にそこに思うところはなく、淡々と歩を進めていく。

元々彼女のことは始末する予定であったが、信玄という化け物との邂逅で考えを改めた。
恐らく主催には、殺し合いを円滑に進行させる意図があるのだろう―――このゲームとやらには、あの信玄のように、小幽ですら手を焼く危険人物が、他にも招かれている可能性が高い。
そういった過大な戦力と、一対一で相手取るのは非常に骨が折れる。
であれば、ゲームの序盤は、殺し合いを是としない集団と手を結び、それらの脅威に対処した方が、効率が良い。
そういった集団に潜り込むに当たっても、気絶している少女を介抱しているというこの構図は、心象的に悪くない筈だ。
故に、小幽はセレナを利用すべく、彼女を連れて行くことにしたのだ。

(まぁ、邪魔にしかならなくなったら、殺すけど……)

そんな黒い思考を胸に秘めながら、暗殺者はフィールドを彷徨うのであった。


【雷小幽@デッドマウント・デスプレイ】
[状態]:健康、疲労(中)、腹部打撲(中)
[服装]:普段着
[装備]:投げナイフ(本数不明)@現実
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考]
基本方針:お館様の元に帰還する。手段は問わない。
1:信玄のような強敵を想定し、暫くは対主催として、行動する
2:セレナは暫く利用するつもりだが、利用価値を見出せたくなったら、始末する
3:武田信玄を警戒。
4:状況次第では、本格的に殺し合いに乗ることも視野に入れる
※ 小夜と共にポルカ達の元に来る前からの参戦となります。

【セレナ@アニメポケットモンスター】
[状態]:健康、頭部打撲、気絶中
[服装]:普段着
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~3
[思考]
基本方針:殺し合いなんか出来ない。殺し合いから脱出する
0:(気絶中)
1:サトシに会いたい
※ XY&Z 47話でサトシ達と別れて、ホウエン地方に旅立った後からの参戦です。
※ 小幽を同世代の男の子と認識しております。



「ふぅ…ようやく痺れが取れてきたよぉ」

小幽に突き落とされてから、数刻が経過し、信玄はようやく全身の痺れから解放され、自力で起き上がることが出来るようになった。
周囲を見渡すも、辺り一面はひたすらの闇。
生い茂る木々や茂み以外のものは見当たらない。

「それにしても、さっきのお子様……じゃなくて、お兄ちゃんとの殺し合い、楽しかったなぁ。また殺し合いたいなぁ」

信玄は名残惜しそうに崖の上を見上げる。
あれから、時間も経過したことだし、この崖を登ったとしても、恐らく彼はもうそこにはいないだろう。

「まぁいいや、また逢えるかもしれないし。
今度逢ったときは、どちらかが死ぬまで、殺し合いたいな!」

パンパンと自らの頬を叩くと、信玄は気を取り直して歩き出す。
これから待ち受けるであろう、楽しい楽しい殺し合いに、想いを馳せながら――。

【武田信玄@SAMURAI MAIDEN -サムライメイデン-】
[状態]:健康、魂の改竄、疲労(小)、全身打撲(小)
[服装]:普段着
[装備]:軍配@SAMURAI MAIDEN -サムライメイデン-
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考]
基本方針: よーし、信玄ちゃんが皆殺しちゃうぞ!!
1:いっぱい人がいそうなところに行こう!!
2:さっきのお兄ちゃん(小幽)とは、また殺し合いたいなぁ!!
※ 織田信長から魂の改変を受けた直後からの参戦です。

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