コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ

Anytime Anywhere

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乃亜による2回放送10分前。

「ヌゥ…全然食べられそうな物がないのぅ」

羽織ったマントが腰の辺りで螺旋状に回転する。理屈としては、ヘリコプターが飛ぶのにプロペラが必要なのと同じだろうか。
ガッシュから響く風を切る音が、さくらにそう連想させた。
木の幹を飛び越えて、葉が生い茂る枝木の前で滞空しながら、ガッシュはスーパーで商品を漁る客のように木の実の一つでもないか、物色していた。

「写影にも桃華にも、あのコナンという者にも元気になってほしいのに…美味しい果物でもと思ったのだが……全く見つからないのだ」

一番はやっぱりブリ良いのだがの! そう忘れずに付け加えながら、ガッシュはぼやく。
人が開拓した市街地もあるが、樹木も多く自然豊かな島だ。
ガッシュはそう見て、何か食べられる甘い果実位はあるだろうと、民家の裏にあったすぐ近くの樹林地帯の前で果実を探し回っていた。
しかし、もうすぐ十数分経ち、2回放送目前だというのに、収穫は未だゼロだ。
がくりと肩を落としながら、ガッシュは滑空して地面に降りる。
この島には生き物や、自生した食べ物になりそうな木の実の類がない。
これだけ自然が豊かなのに、不思議なものだとガッシュは感じた。

「ガッシュ君は、木の実に詳しいんだね」
「ウヌ! 私は人間の世界に来た時、最初は森で暮らしたからの!!」
「凄いね…サバイバル?…してたの? まだ小さいのに……」

ガッシュの素性は軽く聞いていた。人ではない魔物の男の子で、一人で人間界にやってきたという。
人と魔物の年齢の観念が同じかは分からないが、外見だけなら5歳か6歳くらいの幼い子だ。
そんな小さな子が森で生きてきたというのだから、喫驚ものだ。
人間界に来てから、魔物の力を引き出す魔本を読める人間と出会えるまで、探し続けなければならないとも言っていた。
きっと、大人の同伴者もおらず、一人で生きてきたのだろう。

「夜は怖かったが、昼は動物たちと遊んでたから寂しくなかったのだ。あっ……後、その時の話ではないが…その森で、ダルタニアンという妖精にも会ったことがあるのだ」
「妖精さん? ケロちゃんとか、スピネルさんみたいな」

イメージとしては、童話の中に出てくる可憐で、でも掌に乗ってしまうくらい小っちゃな羽を生やした女の子。
ピーターパンに出てくるティンカーベルなんかは、その最たる例だろう。
他にも、さくらの知る中だと、ケルベロスやスピネルが妖精のイメージに近い。
あまり飛行に役立つとは思えない小さな翼で、ふわふわと宙を浮く、ライオンとクロヒョウを小さくして愛々しくしたような形貌。
本人は封印の獣だと言っていたが、妖精と言われても、きっとさくらは信じる。

「さくらの身近にも、女の子が付けるブラジャーとやらを身に着けたおじさんがおるのか?」
「ほえええええええ!?」

無垢な少女の夢幻が、汚穢にまみれた現実に打ち砕かれた瞬間である。
胸が肥大化し、お腹もふっくらと肉付きが良い、とても引き締まったとは言えない肉体の、頭頂部の毛髪が薄れた中年の男性が。
脂ぎった頬を火照らせ、羽をぶおおおんと羽ばたかせながら、優雅に空を舞う。
そんな光景が、妖精というワードとリンクされてしまった。

「それ妖精さんじゃないよ! 変態さんだよぉ!!」
「し…しかしだの…は、羽が……付いて…おった……」

強く厭うさくらを見て、ガッシュもプルプルと顫動していく。
悪い者ではなかった。蛇に怯えたガッシュを、スタイリッシュに救ってくれたのだ。
しかしだ。思い出せば、やはり異様な壮年の男性だった。
ブリの着ぐるみを着たり、森の妖精と行って羽と尻尾を生やした服装をしていたり。
共通するのは、裸体の上半身をブラジャーで隠していた事。
毛深く、分厚い胸板の先のみをブラジャーが秘所のように覆い隠す。
世の全てがそうではないが、大半の男性にとって秘所にはならない部位をあえて隠しながら、肌の露出は増やすという蛮行。

この人…何か変?

「き…清麿の…父上殿の…知り合いで、大学の偉い先生みたいなのだ……ウヌ」

言い聞かせるようにガッシュは思い起こす。
あのナリだが、高い権威を持つ教授のようだった。高い頭脳を持つ清麿の父親の同僚であるようだし、社会的に立派な人物? 妖精? だろう。きっと。

「そっかぁ……大学の先生なら…お父さんも…知ってる人なのかな……」

大学の先生と言えば、さくらの父親も大学に務める講師だ。
そう言われれば、変態ではなく自分のお父さんのようにしっかりした大人のように見える。
さくらもそういった職場を見学したことがあるが、大学の職員の人達は皆普通の人だった。
本当に変態だったら、そんな場所で働く前に通報されていることだろう。

「ウヌぅ……」
「ほえぇ……」

何か解せないまま、言葉を失い二人の口から困惑だけが吐露された。

(この子達、見てて飽きないわね)

頬付きをして一姫は眠そうな目で、ぼーと二人を眺める。
こうして眺めているだけでも、中々退屈しなかった。

「一姫、お主は…よいのか?」

「何が?」
「雄二は一姫の弟なのだろう? もっと、話す事とか」

ガッシュが不思議そうに一姫の顔を覗き込む。
眺めている側から一転して、眺められる側へと変わっていた。

「…あれ以上の会話は必要ないわ。言ったでしょう? 可能な限り、歴史を変えたくないの」

最低限の会話から、雄二が殺し合いに招かれたのは、ヒース・オスロの手から解放され、まだ日下部麻子が存命でその下で指南を受けていた頃。
まだ安定している時期だったのは幸いだ。
麻子の暗示も効果があり殺人への忌避は強かった。オスロの愛玩奴隷扱いの頃よりはずっとマシである。

「雄二がいつの時系列から呼ばれたか把握したし、その上で私からの不要な干渉はいらないと判断したの。
 貴方のお兄さんのゼオンとは違うわ」

ガッシュの兄のゼオンと違い、雄二は殺し合いに否定的であり暴走の恐れもない。
だから、一姫が進んで彼女から見て過去の雄二に干渉し、タイムパラドックスを引き起こし、一姫にとって現在であり雄二にとって未来の時代を不用意に変える事は避けたい。
これはフリーレンにも確認を取り、少なくともフリーレンの世界ではタイムパラドックスはあり得ることだと賛同を受けてもいる。

「しかしだの…」
「私も……もう少し話す位…」
「あの子の未来は良い物になるの。だから……余計な事はしたくない」

理屈は分かるが、一姫と雄二の会話があまりにも二人からは端的に見えたのだろう。
納得いかない様子だった。

(天音の事だってあるし)

歴史の改変は風見姉弟だけでなく、雄二が救った少女達の歴史にも影響を及ぼす。
特に周防天音。他の少女達も雄二達でなければ救えず死活問題だが、一姫が特に肩入れしているのは彼女だ。
やはり、叶うことなら一姫の知る通り、雄二と出会って欲しい。
雄二に相応しい女、一番はどう考えても一姫自身だと自負している。
だが、その次には彼女の事も認めていた。

そして、雄二が天音と出会わないということは、高確率で美浜学園に転入しないということだ。
厄介なのが、一姫と同じバス事故に巻き込まれ死亡した坂下千秋の父…坂下啓二の急襲だ。
バス事故で生き残った天音への執着、千秋の死に対する悲しみと怒りと逆恨みは尋常じゃない。
遠からず美浜学園を見つけ出し、天音へ身勝手な報復を行いに向かうのは明白。
雄二抜きではJBを動かせず、初動は警察が出動しかねない。
後に、雄二を伴ったCIRS(サーズ)が到着しても、雄二が鍛えなかった入巣蒔菜では啓二を狙撃可能ポイントまで誘導するのは無理だ。
正史と違い、状況は悪化して手をこまねいている間に天音が傷物にされかねない。

(天音だけじゃなく、あの娘達もかなり危ないのよね)

他にも天音の因縁だけでなく、榊由美子、松嶋みちる、入巣蒔菜、小嶺幸。
彼女らの大半は、雄二が居ないと、かなり、非常に、不味い。
何人か死ぬ。場合によっては全員死ぬ。

(いっそ、未来を全部話して…美浜学園に行かせるようにする事も考えたけど…)

それでもまだ、これらは想像しうる範囲であり対応策も考えられなくもない。
厄介なのはその後だ。
ヒース・オスロ絡みまで変わった歴史を考え出すと、これらとは規模が段違いで変わる。
もう一姫でも想定しきれない混沌とした状況。

例えば、正史では雄二はヒース・オスロと決着を着けて生還した。
だが、未来の一姫が干渉した雄二は本当に同じように生還できるのか?
その時の雄二の精神状態や、モチベーションに一切の悪影響がないと断じて言えるか?

ネタ明かしされた人生を、初見時の雄二と同じように過去の雄二は必死に生き抜いていけるのか?
それによって行動を変えた雄二に影響され、ヒース・オスロやその他大勢の行動も大幅に変わり、やはり歴史が予想もつかない方向へと変わってしまうのではないか。

(やはり、迂闊には干渉出来ないわね)

天才の一姫であっても想像が付かない、結論が出せない。
そうならない、そうさせないのが、一番の最善。

『やあ、諸君。バトルロワイアルの開始から12時間が経過した』

「二人とも」

空に照射されたされた乃亜のソリッドビジョンと共に、尊大な言い回しで癪に障る口調が島中に響き渡る。嘆息を漏らし、一姫は空を仰ぎ見た。
放送を聞き終えれば、そろそろフリーレン達とも話し合う時間だ。
また、この先暫くは忙しくなるのだろう。
ガッシュとさくらは、放送を聞くのを邪魔するわけにもいかず黙り込んだ。



───



放送が終わり、ガッシュ達は再び民家の中でフリーレン達と顔を合わせる。
各々放送に思うところはあれど、ここから何をすべきか話し合わねばならない。
誰が言いだす訳でなく、予め一姫が発見したホワイトボードを大きな間取りの部屋に置いて、そこに全員があつまった。

キュッキュッとホワイトボードにマジックペンで文字が綴られる音が響く。

一姫の指示通りに、桃華が丁寧な字で、かつ迅速に情報を纏めていた。
それを、ガッシュ達とフリーレン達は黙って見つめ続けている。

(灰原…)

そのなかで、コナンは放送を聞き終え、そして哀傷に満ちた表情で悲嘆にくれる。
数々の難事件を解決に導いた天才的頭脳が、この瞬間だけは完全に停止していた。

「……」

灰原哀の名が呼ばれた。
1回放送の小嶋元太に続き、コナンの仲間が二人も死んだのだ。

(どうすれば……)

2回放送で灰原が呼ばれた順番は8番目、確証はないが死者の名が死んだ順に呼ばれるのなら、灰原は1回放送後、3時間前後は生存していた確立が高い。
1回放送で真っ先に呼ばれた元太とは違い、灰原はコナンの助けが間に合ったかもしれない。
それなのに、当のコナンがやっていたことはなんだ?
シュライバーとリンリンとの遭遇以降、それでもリンリンを死なせず罪を償わせようと決意を固めたのは良い。
だが、その後数時間、コナンは何をしていた? 何を成し遂げた? 
何もだ。何も結果を出すどころか、行動に移す事すら出来てはいない。
理想だけを語り、悲劇の場面に遅れてやってきて、ケチをつけただけだ。

(リンリンやマサオどころか、俺は灰原まで……!!)

理想を悪戯に振り撒く時間があるのなら、灰原だけでも救えたのではないか。
頭を回らしながら、意味のない後悔だけが無尽蔵に湧いてくる。

(フリーレンの判断は、間違っていない)

己の不殺という心情を鑑みなければ、フリーレンの行動は凡そ正しい。
リンリンを止める術を持たず殺めたのも、写影達の陥った窮地を思えば止むを得ない。
コナンは戦いの素人だ。殺しに長けた黒の組織の構成員を、何故か圧倒できる毛利蘭の一撃を避ける程度なら可能だが、フリーレンに比べれば素人に毛が生えた程度だろう。
その素人のコナンでも、シュライバーは飛び抜けて強い怪物だと分かった。そしてそんな怪物を前にして、傷一つ付かないリンリンもまた怪物だ。
そんな怪物を前にして、退ける事すら困難だというのに殺さずに捕えろなど無理もいいとこだ。
フリーレンは何てことないように、淡々と事実だけを述べたが、恐らくはギリギリの攻防に違いない。

また、ハンディ・ハンディを見捨て、実質死なせたのも同様だろう。

雄二はハンディの殺害に同意しつつも、それに踏み切った過程までは訝しんでいたが。
フリーレンの語る魔族の脅威に対し、実感は伴わないが情報としてコナンは飲み込めていた。
会話という意思疎通は測れても、相容れる事がない別の生物。
彼女の言う事を要約すればそういうことだ。
会話が通じ意思疎通は可能な、だが人類以上の上位種が現れたとして、彼らが人を食糧と認識したのなら例え命乞いをされようと、そんなものに耳を傾けるだろうか。
恐らくはしないのだろう。
人が牛や豚や鳥を常日頃、食事として口にするのと同様に。

人命を優先するのであれば、ハンディは真っ先に消すべき存在だ。

あれは、人の天敵である。

頭脳に長けるコナンと日下部麻子の下で軍事訓練を積んだ雄二だからこそ、軽々突破したが、ハンディが仕掛けた罠は凶悪の一言だった。
明かに、人を狩ることに手慣れた狩人のそれだ。
服についた血も返り血で浴びたようなものじゃない。
襟元にこびり付く夥しい血痕は、あれはまるで食べこぼしがひっついたような形状だった。
あの巨大な頭部と横に伸びた面長の鰐口であれば、子供一人くらいならば軽々口に放り込んで咀嚼することは可能だ。
つまるところ、そういう生態の生物なのだろう。

リンリンが力を御しきれず、触れるもの近づくもの全てを破壊する災害だとすれば。
ハンディは人を食して命を繋ぐ、人の上位種であり捕食者だ。

例え非力であろうと、人とは完全に異なる異形なのだ。
世界は違えど、鋭敏にフリーレンはそれを感知し、最低限ではあるが必要な確認を取った上で写影達の命と天秤に乗せ、誰を優先するか瞬時に判断し実行した。
命の価値を測るやり方はコナンにとっては快諾しかねないが、それでも彼女は二人の少年と少女を助け出す事には成功したのだ。

誰も救えずに死なせ続けたコナンと、全員ではなくとも命を守り結果を出しているフリーレン。

正しいと言えるのは、きっとフリーレンだ。

(どうすりゃいい…)

フリーレンどころか、殆どコナンと同一の世界から来ているであろう写影ですら、必要な場面では他人を殺めるべきと認識している。
初めから、そうした悟りを抱いているわけではないのだろう。ここまで生き延びた中で、見つめてきた地獄から、そう諦観している。
コナンに諭しながらも、写影はそんな自分自身に嫌忌の念すら抱いていた様子だった。

(警察が機能しない世界で、探偵はここまで無力なのかよ)

難事件を解決に導く頭脳と、いかな凶悪犯罪であっても被害者以外の死者はほぼ出さなかったのは、コナンの功績であり実力だ。
しかし、そこまでだ。捕らえた罪人を留置する枷と檻、そして裁きという名の断罪を執行するのは社会によって構築された法というシステムによるもの。
コナンが人を殺めずに済んでいたのも、その世界にあった個人では抗えぬ法が力を保持し、取り締まっているからこそ。


「一姫さんに言われた通りに、纏めましたわ」


桃華がホワイトボードに一通りの情報を書き終える。

「……!」

コナンが省察に没頭している間、桃華が何人もの人名を書き連ねていた。
慌てて、コナンはホワイトボードに目をやり、数分の後れを取り戻さんとその才知を発揮し脳にインプットしていく。

「信用できそうなお方は、モクバさん、ニケさんで…水銀燈さんとおじゃる丸君は…放送で呼ばれていますわ」

桃華は二人の名前に横線を引く。

(ニケは大丈夫なのか)

雄二は数時間前に出会ったニケだけが呼ばれず、水銀燈達二人の名前が呼ばれていることが引っかかる。
やむなく、分断されたか別行動したのなら良いが。
ニケだけ生きながらに捕らえられ、拷問でもされているのではないか。
疑惧は止まないが、今はその無事を信じて祈るしかない。

「対主催らしいのがフランさん、ネモさん、悟空さん…」

コナンが出会ったフランからの情報だが、当のフランを信じられるか微妙だった。
だから、モクバのように対主催と断言しきれない。

「危険人物の方はリンリン、ハンディは死亡…これは乃亜の放送でも確認出来たわね。
 あとは、シュライバー、ガムテープの男の子、リーゼロッテ、沙都子、メリュジーヌ、砂を操る男、シャルティア、マジシャン風の男、ゼオン、ジャック、遺体を食べる女、ドロテア…そして孫悟空」

危険人物の一覧へ一姫は指を差す。
一目見て分かるのは、対主催の悟空とマーダーの悟空が二人いることだ。
両方本人なのか、さもなくばどちらかが偽物か。

「リーゼロッテには気を付けた方が良い。
 幻覚魔法が厄介だ。本調子じゃなさそうだし、連発は出来そうになかったけど」

「キャンチョメのシンポルクみたいだの…」

人の五感を操作する能力は非常に凶悪だ。
フリーレンの話を聞いて、ガッシュは仲間のキャンチョメを思い出していた。
模擬戦とはいえ一度ガッシュはキャンチョメに敗れている。
リーゼロッテと相まみえるかはは分からないが。何か、対策を講じなければならないだろう。

「悟空という男は、ネモという対主催と同行しているらしい。
 フランの言うことが、何処まで信じられるかだが…。
 そのネモも首輪の解析を進めているようだが」

まず先に雄二は悟空がマーダーであるという情報に待ったを掛ける。
直接の面識はないが、彼が対主催であるという話を聞いていたからだ。

「私とガッシュが遭遇した孫悟空と、ネモと同行している孫悟空、どちらかが偽物なのか、それとも同一人物なのか…。
 桃華、これも書いておいて」

「ええ」

言われるがまま桃華は悟空の欄の横に、偽物が居るかもと補足を付け足す。

「サトシと梨花を殺害したのはメリュジーヌ…らしいのだけれど」

「ピカピッカピカチュウ ピカピッカピカぴかピッカ ピカピッカピカ!!ピー ピカピッカピカ!!ちゅ ピカピッカピカ!!チユ ピカピッカピカう? ピカピッカピカカァッ! ピカピッカピカッ!ッ! ピカピッカピカウピカ ピカピッカピカ」

顔をぐにゃぐにゃと前足でこねくり回し、ピカチュウはメリュジーヌの顔へと限りなく近づけた。

「この者は恐らく、メリュジーヌだと言っておると思うぞ!」

「ピカピッカピカチユっ! ピカピッカピカチュウ ピカピッカピカウピカ ピカピッカピカ」

ほぼ間違いなく、メリュジーヌが襲ったと伝えたいのは分かるのだが。

「……すまない。正直、彼?の言っていることだけでメリュジーヌがサトシという人と梨花を殺したとは」

写影と桃華から見て、どうしても動物の鳴き声にしか聞こえないピカチュウのそれは証言としては弱い。
ガッシュもピカチュウの言っていることを何となく察して信憑性を伝えようとするが。
元々、ウマゴンのような言葉を話せないが高度な知能を持つ魔物と接して慣れていたガッシュと違って、写影達はどうしてもただの動物という偏見がある。
そもそもガッシュもウマゴンの本名がシュナイダーという訴えをまるで理解していない。

「まあ、こうなるとは思っていたわ」

一姫もピカチュウの伝えたいことは分かる。ガッシュ越しだが、一姫個人としては信じても良いだろうとも感じている。
ただ、それを鵜呑みにして話を進めるには、やはり種族と言語の壁がある。

「ピカチュカァ!!ピー ピカピッカピカチユ? ピカピッカピカウウ ピカウゥカーッ! ピカチユカァチユピッカ ピカピッカピカウちゅ ピカピッカピカぴかピッカ ピカピッカピカウピカ」

ピカチュウもこんな時にニャースさえ居ればと思う。
サトシにだって、たまに伝えたいことが通じず困る事があったのだから。
普段は見掛けたら、即10万ボルトだがこの時だけはニャースが居てくれればと心底思う。
誰かに支給されていないか。
ああ、いやでも…流石にニャースでも殺し合いに放り込まれるのは可哀想か。
水葬する寸前で蘇生して、惜しいと感じる事もあったが。流石に殺し合いをやらせるのは気が引ける。
とにかく、思考がぐちゃぐちゃになりながら、ピカチュウは必死に訴えかける。

「沙都子の話は梨花から聞いていたけど、あの時…僕達を助けてくれたんだ」

「ええ…リンリンさんに襲われた私達を守る為に」

写影達もピカチュウの言いたいことを信じていない訳ではないが、一度助けてもらった恩を無下にもできない。

「ヌぅ…しかしのう……」

「……大丈夫だよ、ガッシュ。
 僕らもメリュジーヌと沙都子を信じてる訳じゃない。ただ…」

助けて貰ったが、その前の沙都子の殺意は気のせいではなかった。
リンリンがあの後に介入しなければ、あの時殺されていたのは写影達だったと確信めいた予感がある。

「他の人達に話すとしたら、ピカチュウの言っていることは説得力に欠けちまう、ってことだろ?」

コナンがそう続けた。
普段なら、コナンも動物の言うことなど絶対にあてにしないが、ピカチュウのそれは普通の動物の知能じゃない。
明かに感情を持っているし、今も必死に晒しているメリュジーヌに似せた顔芸も故意的だ。
信じ難いが、本当に人の言っていることも理解している。
だが、それは明確な証拠にはならない。
コナンもほぼ信じられる証言だとは思うが、論戦においてはやはり人の言語を操れない動物は弱い。
話を聞く限り、沙都子という女は狡猾だ。その一点突破で全て言い包めてくる。

「ピカ……」

ピカチュウはがくりと肩を落とした。
サトシに頼まれた、皆を助けるという願いを叶える為に何とかメリュジーヌがマーダーだと伝えたかったのに。

「落ち込むことはないのだ。
 ここに居る者達の中で、お主を疑う者は居らぬ。私はお主を信じるぞ」

ピカチュウの頭を撫でてガッシュは励ますように言う。

「…話を戻すけど、マジシャンも、あれでは多分…生きていないと思う」

ガッシュを横目に写影は修正を促す。
夥しい数の棘を生やした鈍器のような大剣で幾度となく殴られようと、再生を繰り返していたあのマジシャンも、ゼオンの電撃で焼かれ続けていては助からない。
桃華はそれを聞いて、同時にあの時の映画館での光景を思い起こし、その字面に重ねて線を二つ横に引く。

「…ゼオン」

ガッシュは複雑そうな面持ちで俯いていた。
既に一度グレイラット邸で聞かされたことだが、後から来たコナン達やさくらと情報を擦り合わせるには必要な行程だった。

「砂の人は私も会いました。なんか、鳥みたいな生き物がいて…」

「ピカピッカピカウちゅ ピカピッカピカぴかピッカ ピカピッカピカウピカ ピカピッカピカウピッカ ピカピッカピカウウ!!?」

「え、えっとね…うん、そう…そんな感じの顔で」

さくらにピカチュウが食いつき、顔を前足で変形させてピジョットのものへと近づける。
やはり、間違いない。
同個体かは分からないが、ここにはピジョットも居る。
そして、ピカチュウがここに居るのなら、それは同じくサトシのピジョットのはずだ。

「ピカピッカピカウぴか ピカピッカピカチュウ ピカピッカピカチユゥ ピカピッカピカウウ……ピカァ!!」

───どうしてだ。

どうして、サトシが絶体絶命のピンチの時に来てくれなかったんだ。

トキワの森で、僕がロケット団に捕まった時。
サトシがピンチの時に、君は来てくれた。
今回だって、この島に居るのなら。君さえ来てくれれば、結末は絶対に変わっていたんだ。
サトシはここに居て、生きて話をまだしていたかもしれないのに!

「ピ、カァ…!!!」

───もしも、もしもあの僕が知るピジョットなら、一体何をしているんだ……。

「落ち着くのだ、ピカチュウ…!」

「ピカピカピカ……」

申し訳ないと、ピカチュウは頭を下げた後、ずっと打ちひしがれていた。
サトシを守れなかった不甲斐ないのは自分なのに。
ピジョットに八つ当たりのような憤怒を抱いてしまっていた。
まだ、それがサトシの手持ちの個体かも分からないのに。仮にそうでも事情があるかもしれないのに。



「ドロテアも、モクバという子と手を組んで対主催側に居るわ。
 こちらから何かしない限り、向こうから手を出す事はないと思いたいけど」

「……乃亜の、追加した新ルールがなければ、だろ?」

一姫に続けて、コナンが言う。
先の放送で提示された報酬システムは、参加者を殺す事でその殺害者が有利になるように考案されたルールだ。

「そういうことね。
 殺し合いで優勝する気はなくても、それしか方法がなくて私達対主催に価値を見いだせなくなった時、裏切られる可能性は上がってしまったわ」

ドロテアは写影達を狙って、解析のサンプルとして首輪を入手しようとする冷酷な人格だ。
もし、優勝以外に生還の目途が立たないのであれば、状況が許せば即刻対主催側を裏切るだろう。
この島で長く共にいたモクバだろうと、それは例外ではない。

「これに関しては、あまり考えても仕方がないわ。追加されてしまったものは、参加者側からは消せないもの。
 警戒をしろ、としか言えないわね」

ドロテアの危険度は上がったが、今すぐに何か対処出来ることも一姫達にはない。
またドロテア視点からも、すぐに行動に移す程のメリットもない。
純粋なキルスコアでは、シュライバーやメリュジーヌ等の参加者と競っても旨味はないからだ。
とてもじゃないが、上位3名に数えられるマーダー達とキルスコアを競い、ドミノを貯めるのは現実的ではない。
裏切るとすれば、参加者の減少からキルスコアが上がり辛くなった終盤、僅かな殺害数でもトップマーダーに連ねる事が現実味を浴びてくる頃合いだろう。
まだ、ドロテアが優勝に向けて本格的に始動することは、恐らくはない。優先してドロテアを処理する必要性も下がる。

「これからの方針として私から提案したいのが、ネモと合流するか、モクバと合流するかね。
 ネモとモクバ、私達の知る中で首輪の解析に近いのはこの二人よ」

一姫の目配せを見て、桃華が青のペンでネモとモクバの名前を丸で囲う。

「ただし、ネモについては名前だけ、顔も知らないわ。首輪の解析をしているというのも、何処まで信じていいのか見当も付かない」

ネモはフランの証言を信じればだが。
だが、一姫はおろかフランと直接会話をしたコナン達ですら、ネモの顔すら知らない。
信じるには、あまりにも情報がない。
もう一人の悟空と共に行動しているというのも、かなり妖しい。
一姫とガッシュが交戦した悟空との繫がりがあって、ネモが騙されている可能性もあり、またネモが共犯の可能性もある。

「モクバは信用に値するけれど…もっとも、彼も何処まで解析を進めているのやら」

モクバは一姫が直接会話をして、短い時間だがそれなりの人間性も伺い知れた。

信用は出来る。

海馬という姓から海馬乃亜に近い人物で、スキルもある。
首輪の解析を急いで、海馬コーポレーションへ向かっていったが。その内の同行者である、磯野カツオの死亡が先の放送で確定した。
ドロテアが逸らなければ、マーダーに襲撃を受けたと考えるのが妥当だ。
まだモクバの名前が呼ばれていないのは幸いだが、東のエリア帯に頼れる対主催が居らず、モクバが孤立していれば脱落は時間の問題になる。
モクバも馬鹿ではない。むしろ、頭は相当にキレるがマーダーとの戦闘に巻き込まれているのなら、とても首輪の解析が順調だとは思えない。
ドロテアの手綱も何処まで握れているか。また握って乗りこなせた所で、それがメリュジーヌやシュライバーのようなマーダーに何処まで通用するか。

「だがネモはフランを信じれば、だが…爆弾や機械の扱いにも明るい」

その胸の内にある所懐を抑えながら、コナンが続けた。

「ネモは北に向かっている。島の端で、参加者もそう集まる場所じゃない。
 マーダーとの接触を避け、何処かで隠れながら首輪の解析を優先していることも考えられる。
 強力なボディーガードが付いてるなら、襲われ辛いし返り討ちにもしやすいだろ。
 マーダーに邪魔されずに、モクバよりは解析が進んでるかもしれねえ」

理屈としては、分かる。
この殺し合いの参加者の大半は子供だ。子供に首輪の解析を行えると考えるのは、通常ならば無理だ。
ネモが自分以外に首輪は外せない、他の参加者と接触したところでただの子供では、とてもじゃないが殺し合いを脱する力にはならない。
そう判断しても無理はない。
だから、ネモが首輪を外すのを優先して、また本物の悟空が善良であったとして、そのみなを話してから、自分の護衛として説得し島の端で今も解析を続けている。
結局、どれだけの子供達を守り保護しようと首輪を外さなければ、根本の解決にならない。
少なくない犠牲を強いたとしても、首輪をなくし乃亜を打倒すればその時に残った子供達は無事に済む。

もし、悟空が対主催で本当にフランの言うように、この島で最強であるのなら。
どれだけの命が救えたのだと。
そう怒りをぶつけたくなる気持ちもあったが、やはりその判断にもフリーレンと同じく間違いはない。

間違ってはいないが、やはり正しいとも言いたくない。

「気持ち悪いくらい、貴方と考えが合うわね。ええ、そうよ」

モクバは非情な判断を下し辛い。
カツオが沙都子の無罪を証明する為に悟飯と接触すると話した時、モクバが付き合う必要などなかった。
根が常識人で相応に真っ当であるがゆえに、首輪の解析だけを優先するという事はない。
目の前に救える命、助けを求める者がいれば手を差し伸べてしまう。
だが、ネモであればそういった非情な判断も可能やもしれない。
ネモの人となりすら知らず、状況証拠からの不確かな憶測でしかないが。

「この後、ネモとの接触班とモクバへの合流班に別れる。それがあんたの考えだな?」

「私達が掴んだ手掛かりはこの二つしかないもの。
 藁にも縋る思いだわ」

明確な手段が必要だ。
どうこの殺し合いを破綻させるか。

「これから、私達で首輪解析を1からするよりは現実的だね」

淡々とフリーレンが頷く。
マサオの件で一姫達がその探索に時間を浪費した事と、また待機していたフリーレン達がそこで足止めをされ続けた事がまずい。
一姫もフリーレンも暗黙の了解では1回放送後に合流し、その時のマサオの安否がどうであれ、次の行動に移る予定であった。
しかし一姫とガッシュはシュライバーと遭遇し、フリーレンはマーダーの襲撃を立て続けに受け合流どころの話ではなくなり。
6時間遅れでようやく、顔を合わせられた始末だ。
この半日間、一姫もフリーレンも何の進捗もないのだ。
殺し合いの進行ペースも異常だ。
既に、半数近くが脱落している。このペースなら1日で殺し合いも終わりかねない。
もしそうれば、残り半日で首輪解除の手掛かりを見付け、その解除を決行するというのは実現性に乏しい。

「ここからが難しい話なのだけれど、ネモとモクバ…どちらに誰が向かうか…それを決めないと」

剣呑な言い方で、一姫は重々しく口を開く。

「……ガッシュとフリーレンは別れること。
 これは、異論はないわね?」

「ウヌ」

「うん、何もないよ」

人数を分散する以上、ガッシュとフリーレンという2大戦力もまた公平に別れる必要がある。
フリーレンとガッシュは共に居過ぎない方が良い。そんな配慮もあるが、それぞれの班にマーダーに対抗し得る強さを持つ参加者を同行させなければ、生存率は著しく下がる。

「そして、雄二と私も別行動。
 だから…私はガッシュについていくから、貴方はフリーレンと行きなさい」

感情を読ませない平坦な声色で一姫はその決定を口にする。

「フリーレン、お願いできるわね?」

「…良いけど」

事情はある程度、一姫から聞いている。過去の時代から来た雄二との接触で引き起こされるタイムパラドックスについての所感と意見も述べているし、一姫の時代への影響を及ぼす恐れがあるのなら、二人は別れた方が良い。
それに、魔法使い見習いよりは、麻子の下で修練を積んだ雄二を連れて歩く方が気も楽だ。
最初は暗殺者としての技量を見抜き、あまり近寄りたくはなかったが暗示の影響でそれを抑えている事も確認できている。
頼もしいとまでは言えないが、戦闘面では少し楽も出来そうだ。
やはり、望むべきは前衛を張れる戦士が欲しいが。

フリーレンとしても、一姫のその決定に異論はない。

「悪いけど、安全は保証しないよ」

それでも念を押してフリーレンは確認を取る。
これに限っては、ガッシュと行こうがフリーレンと行こうが、安全性は変わらない。


「良いわ。仮に雄二が死んでも貴女に非はない」

一姫はまるで動じず、意見を揺らげない。
ここまで徹底して感情を排して怜悧でいられるのは、フリーレンから見ても人間味を感じさせない。
普通は身内は身内の手元に置いて、自分の手で守りたくなるものだろう。

「……なら、雄二を預かる代わりに私から一つ条件がある」
「なに?」

「雄二と少しで良い。二人だけで、話をすること」

理屈に沿わぬ言動をしたと、フリーレンは思っていた。

「…?」

一姫も同じようで眠たげで気だるそうな表情に僅かに驚嘆の色が伺えた。

「君は私みたいに不器用じゃない筈だ」

それでも、にっこりとフリーレンは確信染みた笑みを浮かべる。
感情という物に支配され、一姫の合理的な行動に支障を来すものであるとも考えた。
でも、不思議とフリーレンは自分の行いが間違っているとは思えなかった。




───




粗方のことはもう話し終えた。

だから、あとは雄二と一姫を待って、それで各々のすべきことを行うだけだ。
民家の玄関ドアの前で、フリーレン達は二人を待って、暫しの暇な時間を過ごしていることだろう。
この部屋の中にいるのは雄二と一姫だけだった。

「……」

多くは話せない。

雄二に話したいことは多々あるが、それが過去に影響を与えてしまう事を考慮すると不用意に話せない。

「分かってるよ。…姉ちゃんにも事情があるってことは」

昔読んだSF本か何かで、雄二もタイムパラドックスの概念は知っている。
過去を改変し、現代が変わってしまうというのは定番ネタだ。
それが本当に起き得ることか怪訝でもあるが。
天才の一姫であろうと、自分達の世界にタイムマシンが開発されていない以上、立証は不可能で。
想定の及ばぬ未知の領域であれば、触れないのが最良の選択なのは理解している。

「姉ちゃんに会った時さ…顔を叩いてやろうと思ってたんだ」

「……良いわよ」

「やめとくよ。それは、こっちの一姫に取っておく」

どれだけ心配したか、言いたいことは沢山あったが。
それら嬉しさも、ずっと黙っていた憎らしさも、ずっと積み重ねていた悲しみも。
全てを集約したそれは、ここにいる一姫にぶつけることではない。
いずれ出会うだろう、雄二の時代の一姫に思い切りぶつけてやるとする。

「雄二、貴方は…」

「俺は乃亜を倒して、麻子の元へ帰る」

どうしたいと口にする前に雄二はその決意を言い放つ。

「そう…予想出来ていたけれど」

考えてはいた。
雄二だけを生還させる方法も、その手段も。
もしも、雄二がそれを望むのなら。
一姫は沙都子やシュライバーなど比にならない程に冷酷になる覚悟もあった。

仲間と言える人物達に裏切り者と揶揄されようとも。
憎しみの籠った目で、呪われようとも。
例え、最終的にフリーレンを…そして共に戦ったガッシュすらも、この島の全てを敵に回しても。
一生、雄二だけは守り抜く覚悟をしていた。

雄二の呼ばれた時系列から、決してそんな答えを雄二は出さないと分かっていたが。
仮に、そんな答えを出そうものなら、きっとあらゆる手段を講じて聞かないようにしようとしていただろうが。

「俺から、一つ姉ちゃんにお願いしても良いか」

「何?」

「もし、俺が死んでも…コナンや皆の力になってやってくれ」

これも予測していた。

「……仕方、ないわね」


他ならぬ雄二本人の頼みとあらば、それは一姫が聞かない理由にならないからだ。
もう、僅かな希望に縋り乃亜の奇跡を目当てに、優勝するという選択肢は完全に消え失せた。

ここで、約束してしまったから。
皆の力になると。
それが、弟の望む願いなら。姉の風見一姫が叶えないわけにはいかない。

雄二が死んだとしても、一姫は雄二を蘇生させる為には動けない。

ああ、本当に思い通りにならない。
背丈は自分の知る頃のままだが、もう雄二は自分を追い越していた。
子供の成長は早いものだ。

こうなると、分かっていた事だが。

「雄二」

両腕を広げて、雄二を迎え入れるように構える。

やはり、多くは語れないが。

それならば話さなければよい。

抱き締めて抱擁するだけであれば、過去に及ぼす影響など微小だろう。
フリーレンの言う通りだ。器用にやればいいいのだ。

「……、っ…」

膝を折って、一姫の胸元で雄二は声を押し殺しながら泣いていた。
いい歳をして姉に甘えるだなんて、そんなことを考える余裕もなかった。
ここまで、ずっと一杯一杯だった。
最初に出会ったマヤを守れずに死なせてしまった。
死んでいたと思っていた姉が生きていて、何が何だか訳が分からなくて、考えることがぐちゃぐちゃだ。

「安心しなさい、貴方には良い未来が待っているわ」

一姫はその頭を優しく撫でる。
その手付きは、風見雄二の姉である風見一姫の優しい温もりに溢れている。
時間にして一分も満たぬ間に、注げられるだけの愛情を一姫は雄二に与えていた。
色んな感情が溢れ出すなかで、この愛情だけは雄二は確かに一姫のものだと確信できていた。

『未来で、天音をよろしくね』

口を動かすだけで、声として発しないが。
いずれ出会うだろう、親友の名を紡ぐ。
それは、雄二がいずれ救うであろう5人の内の一人だ。

この殺し合いというイレギュラーの影響が微小であり、もしあるのならそれが良い方向へ傾いて欲しい。
仮に天音が雄二と出会わなくなったとしても、別の方法であの娘にも救いがあらんことを。

願わくば、過去の時代とはいえ。
最も愛する弟と、そして唯一の親友の安否と救いを祈った。




【F-4 民家/一日目/日中】

【美山写影@とある科学の超電磁砲】
[状態]精神疲労(大)、疲労(大)、能力の副作用(小)、あちこちに擦り傷や切り傷(小)
[装備]五視万能『スペクテッド』
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
1:ドロテアの様な危険人物との対峙は避けつつ、脱出の方法を探す。
2:桃華を守る。…そう言いきれれば良かったんだけどね。
3:……あの赤ちゃん、どうにも怪しいけれど…死んでしまったのか。
4:桃華には助けられてばかりだ…。
5:沙都子とメリュジーヌを強く警戒。
[備考]
※参戦時期はペロを救出してから。
※マサオ達がどこに落下したかを知りません。
※フリーレンから魔法の知識をある程度知りました。

【櫻井桃華@アイドルマスター シンデレラガールズ U149(アニメ版)】
[状態]疲労(中)、精神疲労(大)
[装備]ウェザー・リポートのスタンドDISC
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]
基本方針:ゲームから脱出する。
1:写影さんや他の方と協力して、誰も犠牲にならなくていい方法を探しますわ。
2:写影さんを守る。
3:この場所でも、アイドルの桜井桃華として。
[備考]
※参戦時期は少なくとも四話以降。
※失意の庭を通してウェザー・リポートの記憶を追体験しました。それによりスタンドの熟練度が向上しています。

※写影、桃華、フリーレン世界の基本知識と危険人物の情報を交換しています。


【フリーレン@葬送のフリーレン】
[状態]魔力消費(中)、疲労(中)、ダメージ(小)
[装備]王杖@金色のガッシュ!
[道具]基本支給品×5、モンスター・リプレイス(シフトチェンジ)&墓荒らし&魔法解除&不明カード×6枚(マサオの分も含む)@遊戯王デュエルモンスターズ&遊戯王5D's、
ランダム支給品1~4(フリーレン、ハンディ、ハーマイオニー、エスターの分)、グルメテーブルかけ@ドラえもん(故障寸前)、戦士の1kgハンバーグ、封魔鉱@葬送のフリーレン、
レナの鉈@ひぐらしのなく頃に業、首輪探知機@オリジナル、スミス&ウェッソン M36@現実、思いきりハサミ@ドラえもん、ハーマイオニー、リンリン、マサオの首輪。
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:首輪の解析に必要なサンプル、機材、情報を集めに向かう。
2:ガッシュについては、自分の世界とは別の別世界の魔族と認識はしたが……。
3:シャルティア、我愛羅は次に会ったら恐らく殺すことになる。
4:北条沙都子をシャルティアと同レベルで強く警戒、話がすべて本当なら、精神が既に人類の物ではないと推測。
5:リーゼロッテは必ず止める。ヒンメルなら、必ずそうするから。
[備考]
※断頭台のアウラ討伐後より参戦です
※一部の魔法が制限により使用不能となっています。
※風見一姫、美山写影目線での、科学の知識をある程度知りました。

【風見雄二@グリザイアの果実シリーズ(アニメ版)】
[状態]:疲労(大)、精神的なダメージ(極大)、リンリンに対しての共感
[装備]:浪漫砲台パンプキン@アカメが斬る!、グロック17@現実
[道具]:基本支給品×2、斬月@BLEACH(破面編以前の始解を常時維持)、マヤのランダム支給品0~2、マヤの首輪
[思考・状況]基本方針:5人救い、ここを抜け出す
1:可能であればマーダーも無力化で済ませたいが、リンリンのような強者相手では……。
2:悟空やネモという対主催にも協力を要請したい。
[備考]
※参戦時期は迷宮~楽園の少年時代からです
※割戦隊の五人はマーダー同士の衝突で死亡したと考えてます
※卍解は使えません。虚化を始めとする一護の能力も使用不可です。
※斬月は重すぎて、思うように振うことが出来ません。一応、凄い集中して膨大な体力を消費して、刀を振り下ろす事が出来れば、月牙天衝は撃てます。



【江戸川コナン@名探偵コナン】
[状態]:疲労(大)、人喰いの少女(魔神王)に恐怖(大)と警戒、迷い(極大)
[装備]:キック力増強シューズ@名探偵コナン、伸縮サスペンダー@名探偵コナン
[道具]:基本支給品、真実の鏡@ロードス島伝説
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止め、乃亜を捕まえる
1:灰原を探す。
2:乃亜や、首輪の情報を集める。(首輪のベースはプラーミャの作成した爆弾だと推測)
3:魔神王について、他参加者に警戒を呼び掛ける。
4:他のマーダー連中を止める方法を探し、誰も死なせない。
5:フランに協力を取りつけたかったが……。
6:元太……。
7:俺は、どうすればいい……。
[備考]
※ハロウィンの花嫁は経験済みです。
※真実の鏡は一時間使用不能です。
※魔神王の能力を、脳を食べてその記憶を読む事であると推測しました。


【ガッシュ・ベル@金色のガッシュ!】
[状態]疲労(中)、全身にダメージ(中)、シュライバーへの怒り(大)
[装備]赤の魔本
[道具]基本支給品、ランダム支給品0~2、サトシのピカチュウ&サトシの帽子@アニメポケットモンスター、首輪×2(ヘンゼルとルーデウス)
[思考・状況]基本方針:殺し合いを止める。
1:戦えぬ者達を守る。
2:シャルティアとゼオン、シュライバーは、必ず止める。
3:絶望王(ブラック)とメリュジーヌと沙都子も強く警戒。
4:エリスという者を見付け、必ず守る。
[備考]
※クリア・ノートとの最終決戦直前より参戦です。
※魔本がなくとも呪文を唱えられますが、パートナーとなる人間が唱えた方が威力は向上します。
※魔本を燃やしても魔界へ強制送還はできません。


【風見一姫@グリザイアの果実シリーズ(アニメ版)】
[状態]:疲労(大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3、首輪(サトシと梨花)×2
[思考・状況]基本方針:殺し合いから抜け出し、一姫の時代の雄二の元へ帰る。
1:首輪のサンプルの確保もする。解析に使えそうな物も探す。
2:北条沙都子を強く警戒。殺し合いに乗っている証拠も掴みたい。場合によっては、殺害もやむを得ない。
3:過去の雄二と天音の事が気掛かりだけど……。
[備考]
※参戦時期は楽園、終了後です。
※梨花視点でのひぐらし卒までの世界観を把握しました。
※フリーレンから魔法の知識をある程度知りました。
※絶対違うなと思いつつも沙都子が、皆殺し編のカケラから呼ばれている可能性も考慮はしています。

【木之本桜@カードキャプターさくら】
[状態]:疲労(中)、封印されたカードのバトルコスチューム、我愛羅に対する恐怖と困惑(大)、ヘンゼルの血塗れ、ヘンゼルとルーデウスの死へのショック(極大)、シュライバーへの恐怖(極大)
[装備]:星の杖&さくらカード×8枚(「風」「翔」「跳」「剣」「盾」「樹」「闘」は確定)@カードキャプターさくら
[道具]:基本支給品一式、ランダム品1~3(さくらカードなし)、さくらの私服
[思考・状況]
基本方針:殺し合いはしたくない
1:紗寿叶さんにはもう一度、魔法少女を好きになって欲しい。その時にちゃんと仲良しになりたい。
2:ロキシーって人、たしか……。
3:ルーデウスさん……
[備考]
※さくらカード編終了後からの参戦です。



【全員の共通補足】

※危険人物、友好的な人物の情報共有を済ませてあります。

※今後の方針として、二手に分かれ首輪解析に明るそうなネモとモクバと合流するのを目的としています。
 ガッシュと一姫、フリーレンと雄二がそれぞれ別れるのだけは確定です。
 それ以外がどんなチーム分けになるかは、後続の方にお任せします。

※また、他のことも色々話し合っているかもしれません。



116:セイラム魔女裁判 投下順に読む 118:シークレットゲーム ー有耶無耶な儘廻る世界ー
時系列順に読む
105:おくれてきた名探偵 美山写影 134:幸運を。死にゆく者より敬礼を。
櫻井桃華
フリーレン
風見雄二
江戸川コナン 124:新世界の神となる
ガッシュ・ベル
風見一姫
木之本桜

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