コンペロリショタバトルロワイアル@ ウィキ
死ヲ運ブ白キ風
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朝陽が、登る。
それを目にするのは、このバトル・ロワイアルで二度目の放送までを乗り切った勝者だ。
木ノ葉隠れの里の下忍、うずまきナルトもその一人。
だが、そんな彼が今何をしているかと問われれば。
それを目にするのは、このバトル・ロワイアルで二度目の放送までを乗り切った勝者だ。
木ノ葉隠れの里の下忍、うずまきナルトもその一人。
だが、そんな彼が今何をしているかと問われれば。
「あっきれた!そのおにぎり頭を探して、朝になるまでこんな所ほっつき歩いてたの?
闘えないセリムを連れて?」
「め、面目ねぇってばよ……」
闘えないセリムを連れて?」
「め、面目ねぇってばよ……」
女の子に正座させられていた。
理由は単純、戦えないセリムを連れて、危険な殺し合いの会場を彷徨っていたからである。
その理由がまた情けない。
五歳ほどのナルトよりもずっと小さな男の子と逸れ、見つけられていないというのだから。
本来ナルトの身体能力なら直ぐに追いかけていれば容易に追いつけたのだろうが。
マサオからかけられた言葉により少し追跡に時間が空いてしまったのが痛手だった。
そして、ナルトは追跡術の類があまり得意ではなく。
加えてセリムが秘密裏に光源を確保できるルートへ誘導し、進んだが故の迷走であった。
つまり、この数時間エリス出会うまで彼は無為に時間を過ごしていたという事になる。
理由は単純、戦えないセリムを連れて、危険な殺し合いの会場を彷徨っていたからである。
その理由がまた情けない。
五歳ほどのナルトよりもずっと小さな男の子と逸れ、見つけられていないというのだから。
本来ナルトの身体能力なら直ぐに追いかけていれば容易に追いつけたのだろうが。
マサオからかけられた言葉により少し追跡に時間が空いてしまったのが痛手だった。
そして、ナルトは追跡術の類があまり得意ではなく。
加えてセリムが秘密裏に光源を確保できるルートへ誘導し、進んだが故の迷走であった。
つまり、この数時間エリス出会うまで彼は無為に時間を過ごしていたという事になる。
「きっとルーデウスだったらそんな事にはならなかったわ!
私が誘拐された時だってね、ルーデウスは────」
「エリスちゃん。今はそれよりも重要な事があるだろ?」
「そんな事、アンタに言われなくても分かってるわよ!」
私が誘拐された時だってね、ルーデウスは────」
「エリスちゃん。今はそれよりも重要な事があるだろ?」
「そんな事、アンタに言われなくても分かってるわよ!」
がるる、と猛犬の様に同行者の羽蛾に叫ぶエリス。
何かあったのかは知らないが、気が立っている様子だ。
機嫌が悪い時のサクラちゃんと同じ匂いがするってばよ。
ナルトはそう思った。
何かあったのかは知らないが、気が立っている様子だ。
機嫌が悪い時のサクラちゃんと同じ匂いがするってばよ。
ナルトはそう思った。
「あの、エリスさん。ナルトさんは悪くありませんよ。
今までずっと、僕の事を気にかけて護衛してくれていましたから」
今までずっと、僕の事を気にかけて護衛してくれていましたから」
このままルーデウスの賛美会になっては話が進まない。
その運びとなる事を予感したセリムはさりげなくナルトに対するフォローを入れた。
擦り傷一つないセリムの姿を検分し、エリスはふんと鼻を鳴らす。
どうやら、護衛に関してはナルトはここまでしっかりと役目を果たしたらしい。
その運びとなる事を予感したセリムはさりげなくナルトに対するフォローを入れた。
擦り傷一つないセリムの姿を検分し、エリスはふんと鼻を鳴らす。
どうやら、護衛に関してはナルトはここまでしっかりと役目を果たしたらしい。
「…まぁ、私達がさっき戦ったみたいな厄介な奴に出会わなかっただけみたいだけど」
とは言えそこは狂犬エリス。
しっかりと歯に衣着せぬ物言いは忘れない。
その言葉に言い返せず、ぐぬぬぬと悔し気にナルトは呻きを漏らした。
しっかりと歯に衣着せぬ物言いは忘れない。
その言葉に言い返せず、ぐぬぬぬと悔し気にナルトは呻きを漏らした。
(見た所、こいつも頭の弱い馬鹿みたいぴょ。
隣のセリムも育ちがいいだけでただのガキみたいだし、良く生き残れたもんだ)
隣のセリムも育ちがいいだけでただのガキみたいだし、良く生き残れたもんだ)
この場に集った者達を、インセクター羽蛾はそう評した。
まぁ馬鹿は扱いやすいし乗せやすい。肉の壁としては使えるだろう。
下種の考えを巡らせつつも、知り合いと、危険人物の周知は行っておく。
エリスはルーデウスの事を(エリスの熱弁を途中で話を打ち切るのに五分の時を要した)。
羽蛾はモクバの事を。と言っても頭のおかしい社長の、態度のでかい弟という情報位だが
それを受けて、知り合いがいないという話だったセリムの話はそこそこに、ナルトも見知った名前について話す。
奈良シカマルと、我愛羅についての情報を。
そんな時だった。話を聞く二人の反応に変化が現れたのは。
うっすらと剣呑な雰囲気を醸し出す二人に、ナルトがそうなった真意を尋ねてみると、
返って来たのはナルトにとってやはりか、という思いと。
そうなって欲しくなかったという、二つの感情が湧いてくる話が帰って来た。
まぁ馬鹿は扱いやすいし乗せやすい。肉の壁としては使えるだろう。
下種の考えを巡らせつつも、知り合いと、危険人物の周知は行っておく。
エリスはルーデウスの事を(エリスの熱弁を途中で話を打ち切るのに五分の時を要した)。
羽蛾はモクバの事を。と言っても頭のおかしい社長の、態度のでかい弟という情報位だが
それを受けて、知り合いがいないという話だったセリムの話はそこそこに、ナルトも見知った名前について話す。
奈良シカマルと、我愛羅についての情報を。
そんな時だった。話を聞く二人の反応に変化が現れたのは。
うっすらと剣呑な雰囲気を醸し出す二人に、ナルトがそうなった真意を尋ねてみると、
返って来たのはナルトにとってやはりか、という思いと。
そうなって欲しくなかったという、二つの感情が湧いてくる話が帰って来た。
「……何だと!?」
「うげぇッ!?い、いきなり何するん……」
「うるせェ!本当にそりゃ我愛羅だったのか!!」
「うげぇッ!?い、いきなり何するん……」
「うるせェ!本当にそりゃ我愛羅だったのか!!」
羽蛾からしてみれば業務連絡染みた軽い気持ちで行った話だったが。
それを聞いたナルトは目を剥いた。
羽蛾に掴みかかり、本当に自分と同年代かと思う力で締め上げてくる。
そして、凄い剣幕で全て話せと羽蛾に迫った。
それを聞いたナルトは目を剥いた。
羽蛾に掴みかかり、本当に自分と同年代かと思う力で締め上げてくる。
そして、凄い剣幕で全て話せと羽蛾に迫った。
「ちょっと、やめなさい!」
他人が行う暴力には否定的なのか、エリスが止めに入る。
オレンジの服の袖を掴まれてようやく、ナルトは不承不承と言った様相で羽蛾を降ろす。
だが、本当に絞め殺しにかかって来るのではないかという迫力はそのままだった。
馬鹿だと見下していた相手の威圧に気圧されて、羽蛾も珍しく煽る事無く語った。
エリスも合間合間に言葉を挟み、ボレアス邸での戦いの顛末がナルトへと伝わる。
オレンジの服の袖を掴まれてようやく、ナルトは不承不承と言った様相で羽蛾を降ろす。
だが、本当に絞め殺しにかかって来るのではないかという迫力はそのままだった。
馬鹿だと見下していた相手の威圧に気圧されて、羽蛾も珍しく煽る事無く語った。
エリスも合間合間に言葉を挟み、ボレアス邸での戦いの顛末がナルトへと伝わる。
「間違いねぇ、我愛羅だ……」
紅い短髪、額の愛の文字、目の周囲の隈取、背中に背負った瓢箪。
ここまで材料が揃えば、もう間違いようがない。
間違いなく、ナルトが戦った砂瀑の我愛羅の特徴そのものだった。
我愛羅も此処に連れてこられ、殺し合いを強制されている。
マーダーとして、殺戮を行おうとしている。木の葉崩しの時の様に。
その事実は、ナルトに俄かに衝撃を与えた。
ここまで材料が揃えば、もう間違いようがない。
間違いなく、ナルトが戦った砂瀑の我愛羅の特徴そのものだった。
我愛羅も此処に連れてこられ、殺し合いを強制されている。
マーダーとして、殺戮を行おうとしている。木の葉崩しの時の様に。
その事実は、ナルトに俄かに衝撃を与えた。
「……すまねぇ、エリス。ちょっとセリムを見てやってくれねーか」
そして、猪突猛進を絵に描いた様なナルトが、話を聞かされて黙っていられる筈もない。
暫しの沈黙の後、セリムをエリス達に預け、我愛羅のいるらしい場所に向かおうとする。
暫しの沈黙の後、セリムをエリス達に預け、我愛羅のいるらしい場所に向かおうとする。
「バカ言ってんじゃないわよ。私が勝てない相手にアンタが勝てる訳ないじゃない」
「俺もそう思うなぁ。犬死にするのはおすすめしないぜ。忍者くん」
「俺もそう思うなぁ。犬死にするのはおすすめしないぜ。忍者くん」
そんなナルトに対して、エリス達の反応は冷淡だった。
無理も無いだろう、如何にも頭の軽そうなナルトでは、我愛羅に勝てるとは思えない。
顔見知りで手の内は知っている様だが、一人で行った所で玉砕するのが目に見えている。
……この殺し合いに招かれる少し前。
うずまきナルトが、単騎にて我愛羅を打倒しているといっても、彼女等は信じないだろう。
だが、そんな事はナルトには知った事ではない。
無理も無いだろう、如何にも頭の軽そうなナルトでは、我愛羅に勝てるとは思えない。
顔見知りで手の内は知っている様だが、一人で行った所で玉砕するのが目に見えている。
……この殺し合いに招かれる少し前。
うずまきナルトが、単騎にて我愛羅を打倒しているといっても、彼女等は信じないだろう。
だが、そんな事はナルトには知った事ではない。
「でも……俺はあいつに言ったんだ」
「あん?そんなぼそぼそ言われても聞こえないヒョ……」
「俺が彼奴を止めるって言ったんだよ!!!」
「なぁッ!?」
「あん?そんなぼそぼそ言われても聞こえないヒョ……」
「俺が彼奴を止めるって言ったんだよ!!!」
「なぁッ!?」
人が変わった様に、鋭い怒号で、羽蛾の襟首を再び締め上げにかかるナルト。
無理も無いだろう。彼にとって、一番の友がうちはサスケであっても。
同じ苦しみを知っている人柱力である我愛羅が殺し合いに巻き込まれていると認識すれば、
心穏やかに受け入れられる筈も無かった。
殺し合いに乗ったのなら、手足の骨をへし折ってでも止めて見せる。
日本チャンピオンである羽蛾すら竦ませる、病的ともいえる決意を、今のナルトは纏っていた。
そんな彼の背後で、ちゃきりと音が鳴る。
無理も無いだろう。彼にとって、一番の友がうちはサスケであっても。
同じ苦しみを知っている人柱力である我愛羅が殺し合いに巻き込まれていると認識すれば、
心穏やかに受け入れられる筈も無かった。
殺し合いに乗ったのなら、手足の骨をへし折ってでも止めて見せる。
日本チャンピオンである羽蛾すら竦ませる、病的ともいえる決意を、今のナルトは纏っていた。
そんな彼の背後で、ちゃきりと音が鳴る。
「そこまでよ、ナルト。それ以上やるなら私がアンタを斬るわ」
わざと分かりやすく腰の和道一文字に手をかけ、エリスが警告する。
如何にナルトが殺気立っていても、エリスがそれに畏怖されることは無い。
彼女もまた、筋金の通った狂犬なのだから。
必然的に訪れるのは、この場に集った全員が表向きは対主催であるにも関わらずの、一触即発の雰囲気だ。
如何にナルトが殺気立っていても、エリスがそれに畏怖されることは無い。
彼女もまた、筋金の通った狂犬なのだから。
必然的に訪れるのは、この場に集った全員が表向きは対主催であるにも関わらずの、一触即発の雰囲気だ。
(……さて、どうしますか。ナルトさんは話を聞きそうにない。となると……
ここは僕がエリスさん達と動向を申し出て、エリスさんが譲る方向に話を誘導しますか)
ここは僕がエリスさん達と動向を申し出て、エリスさんが譲る方向に話を誘導しますか)
そんな中で、冷静に場の状況を俯瞰している者がいた。
始まりの人造人間、プライド/セリム・ブラッドレイだった。
現在、現在の彼のスタンスは未だ保留のままだ。
人柱である鋼の錬金術師がこの場にいれば、迷うことなく対主催に傾いたのだが……
開示された名簿にエドワード・エルリックの名前は記載されておらず。
結果的に、今後どう動くべきか決めかねている段階だった。
本領を発揮できる朝を迎えたとは言え、考えなしに殺しまわる訳にもいかない。
夜に戦闘能力を著しく制限されるのは、以前彼の大きな課題として横たわっているのだ。
そこで一先ず、まだナルトを隠れ蓑に行動を共にする事にしていた…のだが。
始まりの人造人間、プライド/セリム・ブラッドレイだった。
現在、現在の彼のスタンスは未だ保留のままだ。
人柱である鋼の錬金術師がこの場にいれば、迷うことなく対主催に傾いたのだが……
開示された名簿にエドワード・エルリックの名前は記載されておらず。
結果的に、今後どう動くべきか決めかねている段階だった。
本領を発揮できる朝を迎えたとは言え、考えなしに殺しまわる訳にもいかない。
夜に戦闘能力を著しく制限されるのは、以前彼の大きな課題として横たわっているのだ。
そこで一先ず、まだナルトを隠れ蓑に行動を共にする事にしていた…のだが。
最早今のナルトは、此方の話に聞く耳を持たないだろう。
対するエリスもまた聞き分けのない娘だが、今回のケースではまだこちらの方が説得しやすい、そう判断した。
我愛羅というマーダーがどれほど強いかは知らないが、ナルトが数時間前に見せた力を用いれば少なくとも死にはしないはず。
仮に死んでしまえばあの謎の力を解明できず、惜しい気持ちはあるものの、
エリス達と一緒に居られるならセリムにとって殊更状況は悪化しない。
それに夜明けを迎えているため、いざとなれば自分のホムンクルスとしての力が振るえる。
そうなれば自衛はできるし、夜までにまた新たな庇護者を探せばいい。
そう考えて、戦いに赴こうとするナルトに援護射撃を行おうとした、その時の事だった。
対するエリスもまた聞き分けのない娘だが、今回のケースではまだこちらの方が説得しやすい、そう判断した。
我愛羅というマーダーがどれほど強いかは知らないが、ナルトが数時間前に見せた力を用いれば少なくとも死にはしないはず。
仮に死んでしまえばあの謎の力を解明できず、惜しい気持ちはあるものの、
エリス達と一緒に居られるならセリムにとって殊更状況は悪化しない。
それに夜明けを迎えているため、いざとなれば自分のホムンクルスとしての力が振るえる。
そうなれば自衛はできるし、夜までにまた新たな庇護者を探せばいい。
そう考えて、戦いに赴こうとするナルトに援護射撃を行おうとした、その時の事だった。
「そうだよ、そんな奴の相手をするより───」
一瞬。
本当に、刹那の事だった。
喜色に満ちた、その声が響くと同時に、四人全員が言葉を失う。
本能が、けたたましく警鐘を鳴らす。
死が、すぐそこまで迫っている。今すぐ逃げろ、と。
だが、全員が本能に突き動かされ、行動を開始するよりも早く。
ずん、と腹の奥まで響く音を立てて。
死の予感の元凶がエリス達の前に降り立った。
本当に、刹那の事だった。
喜色に満ちた、その声が響くと同時に、四人全員が言葉を失う。
本能が、けたたましく警鐘を鳴らす。
死が、すぐそこまで迫っている。今すぐ逃げろ、と。
だが、全員が本能に突き動かされ、行動を開始するよりも早く。
ずん、と腹の奥まで響く音を立てて。
死の予感の元凶がエリス達の前に降り立った。
「────餓えて死んじゃいそうな、僕の相手をしてくれるかい?」
言葉と共に。
白色の餓狼が、姿を現す。
少女の様に整った顔と言うキャンパスに、溢れんばかりの殺人欲求を漲らせて。
一瞥しただけで、死の予感が確信へと変わる。
これを退けねば、全員が死ぬ。
言葉などいらない。確定した未来として、全員がそれを共有する。
白色の餓狼が、姿を現す。
少女の様に整った顔と言うキャンパスに、溢れんばかりの殺人欲求を漲らせて。
一瞥しただけで、死の予感が確信へと変わる。
これを退けねば、全員が死ぬ。
言葉などいらない。確定した未来として、全員がそれを共有する。
「な、何だってばよ、お前………」
乾いた誰何の声をナルトがあげる。
平時の大雑把で、自信に満ちた態度は、今の彼にはなかった。
特大の爆弾を前にしている様な、緊迫した面持ちだった。
そんな彼の問いかけに、問われた少年はくすくすと笑って。
平時の大雑把で、自信に満ちた態度は、今の彼にはなかった。
特大の爆弾を前にしている様な、緊迫した面持ちだった。
そんな彼の問いかけに、問われた少年はくすくすと笑って。
「あぁ、そうだね。殆ど意味がないとは思うけど、一応名乗っておこうか。
僕はウォルフガング・シュライバー、君“たち”の様な怪物を殺す───」
僕はウォルフガング・シュライバー、君“たち”の様な怪物を殺す───」
英雄さ。
侮蔑と嘲弄を含んだ態度で、彼はそう宣言した。
怪物、その二文字にナルトの顔が俄かに歪む。
その脳裏には、おにぎり頭の少年から投げつけられた言葉が蘇っていた。
目の前の少年は、強い。間違いなく自分よりもずっと強い。
だから、自分の中にいる九尾を見抜いてもおかしくはない。
そう思わせるだけの凄味を、目の前のシュライバーは纏っていた。
だが、解せない点が一つ。
何故、彼は、君たちと形容した?
侮蔑と嘲弄を含んだ態度で、彼はそう宣言した。
怪物、その二文字にナルトの顔が俄かに歪む。
その脳裏には、おにぎり頭の少年から投げつけられた言葉が蘇っていた。
目の前の少年は、強い。間違いなく自分よりもずっと強い。
だから、自分の中にいる九尾を見抜いてもおかしくはない。
そう思わせるだけの凄味を、目の前のシュライバーは纏っていた。
だが、解せない点が一つ。
何故、彼は、君たちと形容した?
「あれ?君たち、もしかして気づいてないの?
そこの二人……特にその子は人じゃないよ」
そこの二人……特にその子は人じゃないよ」
そんなナルトの抱いた疑問を読んだかのように。
問われる前から、シュライバーは指を指しながらナルト達三人に告げた。
その指の先には、ナルトの傍らに立つ……セリムがいた。
問われる前から、シュライバーは指を指しながらナルト達三人に告げた。
その指の先には、ナルトの傍らに立つ……セリムがいた。
「セリム、お前………」
「……………」
「……………」
シュライバーが告げたのは、荒唐無稽ともいえる内容だった。
だが、セリムは否定しない。否定しないまま押し黙っている。
そして、その表情は先ほどまでの無邪気な少年然としたものでは無かった。
冷たく、貼り付けたような無表情を浮かべていた。
後方で、羽蛾が「子供のフリした化け物ばっかりかぴょ、ここは」と呟きを漏らす。
だが、セリムは否定しない。否定しないまま押し黙っている。
そして、その表情は先ほどまでの無邪気な少年然としたものでは無かった。
冷たく、貼り付けたような無表情を浮かべていた。
後方で、羽蛾が「子供のフリした化け物ばっかりかぴょ、ここは」と呟きを漏らす。
「おっと、喧嘩なんかしないでくれよ?知らなくてもここまで仲良くしてきたんだろ?
今君たちは仲間割れ何て犬も食わない真似をしてる暇はないんだから」
「それはつまり……私達とやり合うつもり、アンタ」
今君たちは仲間割れ何て犬も食わない真似をしてる暇はないんだから」
「それはつまり……私達とやり合うつもり、アンタ」
問わずとも、シュライバーが現れた時から分かり切った事だった。
だが、それを承知の上でなお、問う事をエリスは避けられなかった。
巨大な亀裂の入った堤防を見て、決壊までの時間を少しでも伸ばそうとするかのように。
どれだけ無為で涙ぐましい行いかは分かっていたけれど、それでも止められなかった。
彼女以外の三人も、エリスの意思確認を咎める事も、無駄な努力だと嘲笑する事も。
シュライバーを除く全員ができなかった。羽蛾ですら、だ。
だが、それを承知の上でなお、問う事をエリスは避けられなかった。
巨大な亀裂の入った堤防を見て、決壊までの時間を少しでも伸ばそうとするかのように。
どれだけ無為で涙ぐましい行いかは分かっていたけれど、それでも止められなかった。
彼女以外の三人も、エリスの意思確認を咎める事も、無駄な努力だと嘲笑する事も。
シュライバーを除く全員ができなかった。羽蛾ですら、だ。
「あぁ殺すよ。何しろ僕、恥ずかしい事に最初の放送からこっち、誰も殺せてなくてね。
これじゃあハイドリヒ卿に顔向けができない。だから君たちには全員──僕の轍になってもらう」
これじゃあハイドリヒ卿に顔向けができない。だから君たちには全員──僕の轍になってもらう」
誰も殺せていない。
字面だけで言えば、見掛け倒しの弱卒かと見紛うセリフだ。
事実それを聞いた時、羽蛾だけは少し安堵したような表情を浮かべていた。
だが、残りの三人は即座にシュライバーが見掛け倒しの弱者である可能性を否定する。
彼の総身に満ちる覇気は怪物だ。紛れもなく。
そして、そんな彼が吐いた言葉は、ナルト達にとって死刑宣告に等しい発言だった。
それの意味する所は、皆殺しにするまでお前たちは絶対に逃がしはしない。
そう言った旨の宣言だったのだから。
どうする。どうすればいい。
打開策を必死で考えるモノの、妙案は誰の頭にも浮かんでこないまま、時は進む。
字面だけで言えば、見掛け倒しの弱卒かと見紛うセリフだ。
事実それを聞いた時、羽蛾だけは少し安堵したような表情を浮かべていた。
だが、残りの三人は即座にシュライバーが見掛け倒しの弱者である可能性を否定する。
彼の総身に満ちる覇気は怪物だ。紛れもなく。
そして、そんな彼が吐いた言葉は、ナルト達にとって死刑宣告に等しい発言だった。
それの意味する所は、皆殺しにするまでお前たちは絶対に逃がしはしない。
そう言った旨の宣言だったのだから。
どうする。どうすればいい。
打開策を必死で考えるモノの、妙案は誰の頭にも浮かんでこないまま、時は進む。
「最後に一つ聞いておきたいんだけど。人探しをしていてね。
そこの君に似た髪の長い赤毛の子…アンナ、いやルサルカって名乗ってる子を知らないかい?」
そこの君に似た髪の長い赤毛の子…アンナ、いやルサルカって名乗ってる子を知らないかい?」
その手に何処からともなく出した、白銀の銃を握り締めて。
無邪気な子供の表情で、シュライバーは尋ねた。
その場に一瞬、ほんの数秒沈黙が満ちる。
無邪気な子供の表情で、シュライバーは尋ねた。
その場に一瞬、ほんの数秒沈黙が満ちる。
「あ、あぁ~~!そう言えばその子、さっき見かけた様な気がするな~~!!」
口に出したのは、羽蛾だった。
何時もの調子で口八丁、シュライバーをやり込めにかかる。
羽蛾もシュライバーがただ者ではない事は見抜いていた。
先の発言で少し警戒を引き下げたが、それでも交戦を避けたい相手だという認識は保っている。
だからこうして、ルサルカなる少女の情報を餌に、少なくとも自分だけは見逃すように立ち回ろうとした。
しかし。
何時もの調子で口八丁、シュライバーをやり込めにかかる。
羽蛾もシュライバーがただ者ではない事は見抜いていた。
先の発言で少し警戒を引き下げたが、それでも交戦を避けたい相手だという認識は保っている。
だからこうして、ルサルカなる少女の情報を餌に、少なくとも自分だけは見逃すように立ち回ろうとした。
しかし。
「あぁ、嘘だね。そっかぁ、全員知らないのか
アンナは相変わらず隠れるのが上手だねぇ」
アンナは相変わらず隠れるのが上手だねぇ」
シュライバーはそんな羽蛾の計算を一瞬で見破り、切り捨てた。
羽蛾が何故、と問う暇もなく。
にっこりと美貌に微笑みを浮かべた少年はその手の二丁拳銃を此方に向ける。
そして、それが合図となった。
エリスはデイパックから取り出していたインクルシオの帝具を掲げ。
ナルトは術を行使するためのチャクラを練り。
セリムは音もなく自身の影(プライド)を展開する。
羽蛾が何故、と問う暇もなく。
にっこりと美貌に微笑みを浮かべた少年はその手の二丁拳銃を此方に向ける。
そして、それが合図となった。
エリスはデイパックから取り出していたインクルシオの帝具を掲げ。
ナルトは術を行使するためのチャクラを練り。
セリムは音もなく自身の影(プライド)を展開する。
「まぁ、一人残らず逃がさないから。頑張りなよ劣等───」
獣の笑みを浮かべて、魔人は開戦の火蓋を斬る。
「この朝陽が、君たちの取るに足らない人生の終着点だ」
■
「インクルシオッッッ!!!」
帝具インクルシオ。
超級危険種タイラントを素材として作られた融合装着型の帝具。
その性能は帝国の中でも最強と謳われる将軍エスデスにも届きうる性能を有している。
エリスは北条沙都子から譲渡されたそのカードを、初手から切る事を選んだ。
でなければ死ぬ。理性ではなく本能がそう断じていた。
超級危険種タイラントを素材として作られた融合装着型の帝具。
その性能は帝国の中でも最強と謳われる将軍エスデスにも届きうる性能を有している。
エリスは北条沙都子から譲渡されたそのカードを、初手から切る事を選んだ。
でなければ死ぬ。理性ではなく本能がそう断じていた。
「へぇ、エイヴィヒカイトは施されていないみたいだけど……
それなりに優秀そうな聖遺物だね。少しは楽しめそうだ」
それなりに優秀そうな聖遺物だね。少しは楽しめそうだ」
対するシュライバーは、堅牢そうな鎧を展開されても嬉し気な表情を浮かべるばかり。
舐められている、見下されている。
エリスはそれを敏感に感じ取った。
しかし、その思考は冷静だ。
自分とシュライバーの間に途方もない規模の力量差があるのは彼女も理解している。
それを認識するだけの成長を、魔大陸での冒険は彼女にもたらしていた。
故に、怒りに任せて突っ込む様な愚行はしない。
敵が握っているのは恐らく羽蛾が数時間前に自分に披露した武器と同じものだろう。
つまり、攻撃の軌道はまず間違いなく直線的なものとなる。
であれば発射のタイミングを読み、フットワークを駆使すれば接近できない事は無いはず。
急ごしらえであったが悪くはない読みの元、彼女は先手を取って駆けだす。
舐められている、見下されている。
エリスはそれを敏感に感じ取った。
しかし、その思考は冷静だ。
自分とシュライバーの間に途方もない規模の力量差があるのは彼女も理解している。
それを認識するだけの成長を、魔大陸での冒険は彼女にもたらしていた。
故に、怒りに任せて突っ込む様な愚行はしない。
敵が握っているのは恐らく羽蛾が数時間前に自分に披露した武器と同じものだろう。
つまり、攻撃の軌道はまず間違いなく直線的なものとなる。
であれば発射のタイミングを読み、フットワークを駆使すれば接近できない事は無いはず。
急ごしらえであったが悪くはない読みの元、彼女は先手を取って駆けだす。
「はぁああああああああッッッ!!」
裂帛の気合は、銃撃を誘う見せ札。
さぁ撃って見せるがいい。初手をやり過ごしたのち、一気に距離を詰めてやる。
そんなエリスの戦意に満ちた思考は、如何に格上とて揺るぎはしない。
だが、しかし、彼女は一つ思い違いをしていた。
さぁ撃って見せるがいい。初手をやり過ごしたのち、一気に距離を詰めてやる。
そんなエリスの戦意に満ちた思考は、如何に格上とて揺るぎはしない。
だが、しかし、彼女は一つ思い違いをしていた。
「……え?」
羽蛾の撃って来たそれと、シュライバーが扱う二丁拳銃が同一のものであると思った事だ。
一秒後、彼女の眼前に数百発の鋼鉄の弾丸が放たれていた。
一秒後、彼女の眼前に数百発の鋼鉄の弾丸が放たれていた。
(えっ…嘘、こんな、多すぎ……)
思考が停止する。
重機関銃を遥かに超える弾幕は、現在のエリスが対応できる領域を遥かに越えた物だった。
あの怒涛を受けてこの鎧は耐えられるだろうか、鎧は耐えられたとしても、私自身は?
数百倍に希釈された時間の中で、何処か他人事の様な考えが脳裏を過り。
彼女の視界が黒く染まった。
重機関銃を遥かに超える弾幕は、現在のエリスが対応できる領域を遥かに越えた物だった。
あの怒涛を受けてこの鎧は耐えられるだろうか、鎧は耐えられたとしても、私自身は?
数百倍に希釈された時間の中で、何処か他人事の様な考えが脳裏を過り。
彼女の視界が黒く染まった。
───そして着弾の時は訪れる。
本当にあの手に収まる武器から奏でられたのか、信じがたい程の轟音が耳を打つ。
エリスの身体に痛みは、無かった。
凄まじい衝撃はあったが鎧のお陰で影響は軽微、軽い痺れを覚えるがそれだけだ。
それは、鎧で防御力が上がっていただけでは説明がつかない程の軽傷だ。
鎧で守れたのは衝撃だけ、銃弾本体を防御できたとは思えない。
その結果を導いた手品のタネは、エリスと銃弾の間に展開されたあるものが原因だった。
エリスの身体に痛みは、無かった。
凄まじい衝撃はあったが鎧のお陰で影響は軽微、軽い痺れを覚えるがそれだけだ。
それは、鎧で防御力が上がっていただけでは説明がつかない程の軽傷だ。
鎧で守れたのは衝撃だけ、銃弾本体を防御できたとは思えない。
その結果を導いた手品のタネは、エリスと銃弾の間に展開されたあるものが原因だった。
「………影か。アンナのエイヴィヒカイトとそっくりだね」
エリスと死の鉄雨の間に立ち塞がったモノの正体。
黒色のそれは、影だった。
影が変幻自在の触手の様に自由自在に動き、エリスを守ったのだ。
自身を守った先端部から、何処から伸びているか、視線だけで彼女は探る。
視線の先に立っていたのは、先ほどのシュライバーの発言を裏付ける人物だった。
黒色のそれは、影だった。
影が変幻自在の触手の様に自由自在に動き、エリスを守ったのだ。
自身を守った先端部から、何処から伸びているか、視線だけで彼女は探る。
視線の先に立っていたのは、先ほどのシュライバーの発言を裏付ける人物だった。
「アンタ……セリム……」
意識をシュライバーに集中させたまま、エリスは伸びてきた影の大本を辿る。
そこに立っていたのは、つい数分前まで普通の子供然としていたはずの、セリム・ブラッドレイだった。
彼の足元より伸びる影が、エリスを凶弾より救ったのだった。
そこに立っていたのは、つい数分前まで普通の子供然としていたはずの、セリム・ブラッドレイだった。
彼の足元より伸びる影が、エリスを凶弾より救ったのだった。
「……私の正体を気にかけている場合ではないでしょう」
望まぬ形で正体が露見にしたにも関わらず、セリムは努めて冷静だった。
冷静に、現在進行形で襲い来る掃射を影で防ぎつつ、エリスらに婉曲に告げる。
今自分を排斥していれば、全滅は避けられないぞ、と。
そしてそれは、セリム自身にも適用される事実だった。
始まりの人造人間、傲慢(プライド)をして、単騎では逃げる事すらままならない。
全員と連携して隙を作ってようやく、逃走が叶う可能性が生まれる。
魔人ウォルフガング・シュライバーはそう言う相手だった。
彼の鉄面皮の様な無表情に、一筋冷たい汗が流れる。
兎に角、信用は出来ずとも、ここで共闘してもらわなければ全てが終わる。
その為に自分の力を示した、エリス達も拒絶する事は出来ないだろう。その目算だった。
だが、返って来たエリスの返答は、傲慢(プライド)の予測と僅かに外れていた。
冷静に、現在進行形で襲い来る掃射を影で防ぎつつ、エリスらに婉曲に告げる。
今自分を排斥していれば、全滅は避けられないぞ、と。
そしてそれは、セリム自身にも適用される事実だった。
始まりの人造人間、傲慢(プライド)をして、単騎では逃げる事すらままならない。
全員と連携して隙を作ってようやく、逃走が叶う可能性が生まれる。
魔人ウォルフガング・シュライバーはそう言う相手だった。
彼の鉄面皮の様な無表情に、一筋冷たい汗が流れる。
兎に角、信用は出来ずとも、ここで共闘してもらわなければ全てが終わる。
その為に自分の力を示した、エリス達も拒絶する事は出来ないだろう。その目算だった。
だが、返って来たエリスの返答は、傲慢(プライド)の予測と僅かに外れていた。
「───ありがと、セリム!」
「………!?」
「………!?」
弾丸の雨を駆け抜けつつ、エリスが放ったのは感謝の言葉だった。
セリムの表情に、ほんの僅かに動揺の色が浮かび、二秒後には消える。
呉越同舟とは言え、感謝されるなど彼には全く予期していない事だったからだ。
セリムの表情に、ほんの僅かに動揺の色が浮かび、二秒後には消える。
呉越同舟とは言え、感謝されるなど彼には全く予期していない事だったからだ。
「アンタのお陰で───」
エリスは直情的だが、素直な少女だ。受けた恩を即座に忘れる恩知らずではない。
加えて、排斥され恐れられていたスペルド族のルイジェルドと仲間として過ごした時間が、
彼女の価値観に変化をもたらしていた。
人間であろうと、なかろうと、風評では判断しない。
人間であっても敵対するなら叩きのめすし叩き斬る。
逆に言えば人外であっても敵対の意志が無ければ、剣は向けない。
恩を受ければ礼を言う。それだけの話だった。
加えて、排斥され恐れられていたスペルド族のルイジェルドと仲間として過ごした時間が、
彼女の価値観に変化をもたらしていた。
人間であろうと、なかろうと、風評では判断しない。
人間であっても敵対するなら叩きのめすし叩き斬る。
逆に言えば人外であっても敵対の意志が無ければ、剣は向けない。
恩を受ければ礼を言う。それだけの話だった。
「助かっ」
「助かってないよ」
「助かってないよ」
エリスのセリムへの感謝の言葉が最後まで紡がれることは無かった。
それよりも早く、正しく風の様にシュライバーが彼女に肉薄していたから。
セリム達が危険を告げる暇すらない、純白の手袋に包まれた握りこぶしが振り被られる。
彼女の顔面を凄まじい衝撃が襲ったのは、直後の事だった。
間違いなく、インクルシオを纏っていなければ即死だっただろう。
そう確信するだけの威力を受けて──エリスは地面にぶつかりながら吹っ飛んでいく。
それよりも早く、正しく風の様にシュライバーが彼女に肉薄していたから。
セリム達が危険を告げる暇すらない、純白の手袋に包まれた握りこぶしが振り被られる。
彼女の顔面を凄まじい衝撃が襲ったのは、直後の事だった。
間違いなく、インクルシオを纏っていなければ即死だっただろう。
そう確信するだけの威力を受けて──エリスは地面にぶつかりながら吹っ飛んでいく。
(……役に立たない!)
セリムは、思わず毒を吐いた。これなら排斥された方がまだマシだったかもしれない。
とは言え目の前の敵手の理外の速度を考えればやむなし。
最速の人造人間、怠惰(スロウス)の速度と、少なくとも同等以上の速さは、
プライドにとっても決死の応戦を要求される相手だった。
そして、その速さは最前線のエリスが脱落した事により必然的にセリムが次のターゲットとなる。
とは言え目の前の敵手の理外の速度を考えればやむなし。
最速の人造人間、怠惰(スロウス)の速度と、少なくとも同等以上の速さは、
プライドにとっても決死の応戦を要求される相手だった。
そして、その速さは最前線のエリスが脱落した事により必然的にセリムが次のターゲットとなる。
(───早すぎる!)
お父様と呼ばれる人造人間(ホムンクルス)が生み落とした人造人間達の中でも。
無形にして変幻自在、鋼すら易々切り裂く影を操るプライドは屈指の実力を誇る。
彼に迫る戦闘能力はそれこそ最強の目を持つ憤怒のラースくらいのものだ。
だが、最強の目を持つラースですらシュライバーを相手にすれば捉えられるかどうか。
限界まで加速させた影の怒涛の攻勢を軽やかに躱す姿など眩暈すら覚える。
影による面攻撃で何とか距離を保っているが、時間の問題だ。
そんな彼の考えは、エリスが吹き飛ばされて数秒で現実のものとなる。
無形にして変幻自在、鋼すら易々切り裂く影を操るプライドは屈指の実力を誇る。
彼に迫る戦闘能力はそれこそ最強の目を持つ憤怒のラースくらいのものだ。
だが、最強の目を持つラースですらシュライバーを相手にすれば捉えられるかどうか。
限界まで加速させた影の怒涛の攻勢を軽やかに躱す姿など眩暈すら覚える。
影による面攻撃で何とか距離を保っているが、時間の問題だ。
そんな彼の考えは、エリスが吹き飛ばされて数秒で現実のものとなる。
「あはははははははははははァ────!!!」
満面の狂笑を浮かべて、シュライバーが影を躱しつつ突っ込んでくる。
不味い。本当に不味すぎる。
一度殺された程度ではプライドは死なない。だが、あのシュライバーならば。
死に切るまで、きっと自分を殺し続ける事が可能だ。
肉薄されれば未来はない。
そう確信するものの、より出力を上げて影を殺到させる事しかできない。
あの速さの前には、どんな攻撃も無意味である──それは分かっているのに。
不味い。本当に不味すぎる。
一度殺された程度ではプライドは死なない。だが、あのシュライバーならば。
死に切るまで、きっと自分を殺し続ける事が可能だ。
肉薄されれば未来はない。
そう確信するものの、より出力を上げて影を殺到させる事しかできない。
あの速さの前には、どんな攻撃も無意味である──それは分かっているのに。
「温いなぁ。その影の能力、アンナの方が多分上だよ」
(くそ、突破される───)
(くそ、突破される───)
セリムの魂に死の予感が走る。
それとほとんど同時だった。
これまでセリムを護衛してきた者の声が響いたのは。
それとほとんど同時だった。
これまでセリムを護衛してきた者の声が響いたのは。
「影分身の術!!」
良く通る声が戦場に響くと共に、セリムの眼前に人の城塞が出来上がる。
見慣れたオレンジの背中。
忍者を自称するうずまきナルトの背中だった。
尋常ではない数の彼の背中が、セリムの眼前に並んでいた。
人、人、人……数で言えば優に百人は超え、千に届いているだろう。
突如出現した大量の障害物を前に、一旦シュライバーも後方へと飛びのく。
まるで、ぶつかるのを厭うたように。
見慣れたオレンジの背中。
忍者を自称するうずまきナルトの背中だった。
尋常ではない数の彼の背中が、セリムの眼前に並んでいた。
人、人、人……数で言えば優に百人は超え、千に届いているだろう。
突如出現した大量の障害物を前に、一旦シュライバーも後方へと飛びのく。
まるで、ぶつかるのを厭うたように。
「大丈夫か、セリム」
「……うずまきナルト、貴方は…」
「安心しろ、忍者ってのはな、一度受けた依頼は簡単には投げ出さないんねーんだよ」
「……うずまきナルト、貴方は…」
「安心しろ、忍者ってのはな、一度受けた依頼は簡単には投げ出さないんねーんだよ」
確かにうずまきナルトはセリムを護衛すると数時間前に言ったが。
別に正式な依頼であるわけではない。
そも火の国とアメストリスに国交はないのだから。
だから、突き詰めればナルトが今しがた人外だと判明したセリムを守る義理は無い。
しかし、それでもナルトははっきりとお前を守ると、セリムに宣言した。
セリムの肩に、ポンと手が添えられる。
彼の隣で、ナルトは畏怖と決意がない交ぜになった顔でシュライバーを睨んでいた。
別に正式な依頼であるわけではない。
そも火の国とアメストリスに国交はないのだから。
だから、突き詰めればナルトが今しがた人外だと判明したセリムを守る義理は無い。
しかし、それでもナルトははっきりとお前を守ると、セリムに宣言した。
セリムの肩に、ポンと手が添えられる。
彼の隣で、ナルトは畏怖と決意がない交ぜになった顔でシュライバーを睨んでいた。
「やいテメー!降伏するなら今の内だぞ!
お前が相手にしてんのは、未来の火影だ!!」
お前が相手にしてんのは、未来の火影だ!!」
この島に連れてこられた人数の優に十倍以上の人数で作った人の壁。
居丈高にシュライバーを威嚇するナルトだが、その言葉には少なからず願望が籠められていた。
チャクラの大半を使ってこしらえた影分身だ。頼むからこれを見て退いてくれ、と。
だが、現実はそんな彼の願いを裏切る残酷な物となった。
居丈高にシュライバーを威嚇するナルトだが、その言葉には少なからず願望が籠められていた。
チャクラの大半を使ってこしらえた影分身だ。頼むからこれを見て退いてくれ、と。
だが、現実はそんな彼の願いを裏切る残酷な物となった。
「火影だかトカゲだか知らないけど───」
シュライバーは止まらない。
一騎当千の英雄が、たかが凡夫千人を前にして止まる筈がない。
本来千の軍勢を相手にするには余りにも心もとないはずの二つの銃口を指向する。
一騎当千の英雄が、たかが凡夫千人を前にして止まる筈がない。
本来千の軍勢を相手にするには余りにも心もとないはずの二つの銃口を指向する。
「「「「「うぉおおおおおらあああああああああッッッ!!!!」」」」」
弾けるようにナルト達も駆け出す。
始めから防御は捨てている。数を頼みに十人でもシュライバーに到達できればそれでいい。
そんなナルトの決死の吶喊を、シュライバーは嘲笑った。
始めから防御は捨てている。数を頼みに十人でもシュライバーに到達できればそれでいい。
そんなナルトの決死の吶喊を、シュライバーは嘲笑った。
「その程度の人数で僕を止められると思っているなら温すぎる。
身の程を知れよ劣等。僕を止めたいならその千倍は持ってこい」
身の程を知れよ劣等。僕を止めたいならその千倍は持ってこい」
銃口が火を噴く。
響き渡る音色は最早銃声ではなく爆発音と言った方が正しいだろう。
シュライバーが引き金を引くたびに、十人近いナルトの影分身が吹き飛んでいく。
化け物にもほどがあるだろ、ナルトは思わず心中で毒づいた。
このままでは一分かからず影分身たちは殲滅されてしまうだろう。
響き渡る音色は最早銃声ではなく爆発音と言った方が正しいだろう。
シュライバーが引き金を引くたびに、十人近いナルトの影分身が吹き飛んでいく。
化け物にもほどがあるだろ、ナルトは思わず心中で毒づいた。
このままでは一分かからず影分身たちは殲滅されてしまうだろう。
「うずまきナルト!私の影の動きに合わせなさい!」
そんなナルト達に助け船を出したのがセリムだった。
影分身たちの前面に、伸ばした影を展開し、即席の盾とする。
これにより被弾率は大きく下落し、影分身が消滅するスピードが幾ばくか落ちる。
だが、落ちただけだ。セリムの影の防御を加味しても数分も保たないだろう。
影分身たちの前面に、伸ばした影を展開し、即席の盾とする。
これにより被弾率は大きく下落し、影分身が消滅するスピードが幾ばくか落ちる。
だが、落ちただけだ。セリムの影の防御を加味しても数分も保たないだろう。
「そぉら踊れ踊れ劣等ォッ!鴨撃ちの時間だ!あははははははは!!!」
ナルトとセリムの連携もまるでシュライバーは意に介さない。
鉄の豪雨で以て、影分身たちの特攻を迎え撃つ。
セリムがどれだけ影を伸ばし捕えようとしても、風の様にすり抜け掠る事すらしない。
影分身の数は、そのままナルト達の命の残量だ。
尽きた瞬間、王手を獲られる。
にも拘らず、ナルト達はシュライバーの影すら踏めない状況に陥っていた。
このままではジリ貧だ。
鉄の豪雨で以て、影分身たちの特攻を迎え撃つ。
セリムがどれだけ影を伸ばし捕えようとしても、風の様にすり抜け掠る事すらしない。
影分身の数は、そのままナルト達の命の残量だ。
尽きた瞬間、王手を獲られる。
にも拘らず、ナルト達はシュライバーの影すら踏めない状況に陥っていた。
このままではジリ貧だ。
「クソッ!あの野郎出鱈目だ!」
「飛び出さないで下さいうずまきナルト、今あなたが殺されればすべて終わりです」
「飛び出さないで下さいうずまきナルト、今あなたが殺されればすべて終わりです」
放って置いたら自棄になってシュライバーに突っ込んでいきかねないナルトを宥めつつ、
セリムは思考を必死に巡らせる。
恐らく後三分ほどが考えられるリミット。
それを過ぎれば、シュライバーの対処に全てのリソースを割かなければならない。
だが、この戦力差で三分以内に命を繋ぐ策を練る?
ほとんど不可能と同義だと、思わずにはいられなかった。
セリムは思考を必死に巡らせる。
恐らく後三分ほどが考えられるリミット。
それを過ぎれば、シュライバーの対処に全てのリソースを割かなければならない。
だが、この戦力差で三分以内に命を繋ぐ策を練る?
ほとんど不可能と同義だと、思わずにはいられなかった。
(一応、発動さえできれば勝ち目が存在する一手はある。しかし……)
自身に支給された支給品。
人間相手に過多すぎる火力だと確認当初は思ったが、使うに相応しい相手はいるものだ。
だが、それを使うには準備がいる。最低でも数分間は。
その数分と言う時間を埋めるのは、現時点のセリムにとって絶望的な試みだった。
どうする。どうすればいい。
湧き上がる焦燥を必死に堪え、新しい手札を求めるように周囲を睥睨する。
エリスは…ダメだった。まだ膝を付いて戦闘を再開できるようには見えない。
そして、もう一人───姿が無かった。
人間相手に過多すぎる火力だと確認当初は思ったが、使うに相応しい相手はいるものだ。
だが、それを使うには準備がいる。最低でも数分間は。
その数分と言う時間を埋めるのは、現時点のセリムにとって絶望的な試みだった。
どうする。どうすればいい。
湧き上がる焦燥を必死に堪え、新しい手札を求めるように周囲を睥睨する。
エリスは…ダメだった。まだ膝を付いて戦闘を再開できるようには見えない。
そして、もう一人───姿が無かった。
「あっ!羽蛾の野郎どこいきやがった!彼奴一人で逃げやがったなぁ!!」
羽蛾の姿がない。それに気づいたナルトが声を挙げる。
対するセリムは、少し前から羽蛾が逃げようとしている事に気づいていた。
くん、とグラトニーから奪った嗅覚を駆使し、匂いを辿る。
彼の匂いは既にセリム達の後方五百メートル程後方から感じ取る事が出来た。
セリム達三人が戦っているどさくさの間に、逃げ出したのだ。
成程、抜け目のない賢い選択であるだろう。
対するセリムは、少し前から羽蛾が逃げようとしている事に気づいていた。
くん、とグラトニーから奪った嗅覚を駆使し、匂いを辿る。
彼の匂いは既にセリム達の後方五百メートル程後方から感じ取る事が出来た。
セリム達三人が戦っているどさくさの間に、逃げ出したのだ。
成程、抜け目のない賢い選択であるだろう。
「さて────そろそろかな」
相手が、血に飢えた凶獣でさえなければ。
そもそも逃げる事が可能であったなら。
そしてシュライバーは、さっき一人残らず逃がさない、と言った。
言葉と共に、一旦銃撃がやんで。
シュライバーの姿が掻き消える。
これで数十秒ほどは時間を稼げるだろう。
羽蛾の姑息さに感謝しながら、セリムは嘆息した。
そもそも逃げる事が可能であったなら。
そしてシュライバーは、さっき一人残らず逃がさない、と言った。
言葉と共に、一旦銃撃がやんで。
シュライバーの姿が掻き消える。
これで数十秒ほどは時間を稼げるだろう。
羽蛾の姑息さに感謝しながら、セリムは嘆息した。
■
あんな化け物と戦ってられるか。
勝てもしない相手と戦うのは脳筋の馬鹿共だけでやっていればいい。
俺は一足先にお暇させてもらう。
何時だって、上手く狡く。勝つためならどんな努力だってする。
それが彼の在り方であった。
弱虫と呼びたければ呼ぶがいい。
だがその代わり、自分はそう呼んだ奴らより長生きさせてもらう。
長生きして、死んでいった勇敢な奴らを嘲笑ってやる。
勝てもしない相手と戦うのは脳筋の馬鹿共だけでやっていればいい。
俺は一足先にお暇させてもらう。
何時だって、上手く狡く。勝つためならどんな努力だってする。
それが彼の在り方であった。
弱虫と呼びたければ呼ぶがいい。
だがその代わり、自分はそう呼んだ奴らより長生きさせてもらう。
長生きして、死んでいった勇敢な奴らを嘲笑ってやる。
「ヒョヒョ~!ジル、もっと早く頼むピョ~」
「ホーチェ!」
「ホーチェ!」
だまして手に入れたフェローチェに抱えられて。
羽蛾はそそくさと戦場を後にする。
元より彼にはエリス達と力を合わせて戦うつもりなど無かった。
先の我愛羅の様なまだ勝負になるレベルの相手なら戦ったかもしれないが。
シュライバーはダメだ。
実力は元より、これまで出会ってきた参加者の中でも輪をかけて狂人だ。
話し合いの余地など皆無であることを彼は見抜いていた。
同時に、その狂気の方向性が戦闘欲求に向いている事も見抜いていた。
羽蛾はそそくさと戦場を後にする。
元より彼にはエリス達と力を合わせて戦うつもりなど無かった。
先の我愛羅の様なまだ勝負になるレベルの相手なら戦ったかもしれないが。
シュライバーはダメだ。
実力は元より、これまで出会ってきた参加者の中でも輪をかけて狂人だ。
話し合いの余地など皆無であることを彼は見抜いていた。
同時に、その狂気の方向性が戦闘欲求に向いている事も見抜いていた。
「エリスちゃん達が殺されるまでに逃げないとな~ヒョヒョ!
折角うずまきの馬鹿が時間稼ぎにうってつけのオカルトを披露してくれたんだから」
折角うずまきの馬鹿が時間稼ぎにうってつけのオカルトを披露してくれたんだから」
戦闘欲求が頭抜けているという事は、逃げる敵よりも、立ち向かう敵を優先するはず。
間抜け共に囮になっている間に、安全な場所まで離脱するつもりだった。
何度でも言おう。あんな、正真正銘の化け物に立ち向かうなんて馬鹿のする事だ。
馬鹿と俺は違う。俺は、元とは言え日本チャンピオンの決闘者なのだから。
この殺し合いでだってそうだ。
支給品がガラクタで、魔女なんてオカルト女と出会っても切り抜けた。
サトシの馬鹿からジルを奪い。エリスから銃を奪い。沙都子から武器を奪った。
全ては口八丁。手玉にとれない相手はいなかった。例え俺よりも強いとしても。
だから、今回も大丈夫だ。
そう、大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫
大丈夫。
間抜け共に囮になっている間に、安全な場所まで離脱するつもりだった。
何度でも言おう。あんな、正真正銘の化け物に立ち向かうなんて馬鹿のする事だ。
馬鹿と俺は違う。俺は、元とは言え日本チャンピオンの決闘者なのだから。
この殺し合いでだってそうだ。
支給品がガラクタで、魔女なんてオカルト女と出会っても切り抜けた。
サトシの馬鹿からジルを奪い。エリスから銃を奪い。沙都子から武器を奪った。
全ては口八丁。手玉にとれない相手はいなかった。例え俺よりも強いとしても。
だから、今回も大丈夫だ。
そう、大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫。
大丈夫
大丈夫。
………どさっ。
鈍い音を立てて、抱えられていた羽蛾の身体が落下する。
そして、強かに地面とキスをした。
かけていた眼鏡が割れて、視界がぼやける。
そして、強かに地面とキスをした。
かけていた眼鏡が割れて、視界がぼやける。
「っ!?ぎょえええええええ~~!!な、何だよジル!しっかり持って───!」
抗議の声をあげるものの、ジルには届いていない様子だった。
カタカタと震えて、羽蛾の方には一瞥もせず。
ただ立ち尽くしていた。
ポケモンともいえど獣、彼女は理解していたからだ。
目の前の相手が“死”そのものである事に。
カタカタと震えて、羽蛾の方には一瞥もせず。
ただ立ち尽くしていた。
ポケモンともいえど獣、彼女は理解していたからだ。
目の前の相手が“死”そのものである事に。
「やぁ、何処へ行くんだい?」
実に親しみ溢れる、にこやかな笑みを浮かべて。
ウォルフガング・シュライバーは羽蛾たちの前へと立っていた。
ほんの数秒前まで、ナルト達の人垣の向こう側にいたはずであるにも関わらず。
ウォルフガング・シュライバーは羽蛾たちの前へと立っていた。
ほんの数秒前まで、ナルト達の人垣の向こう側にいたはずであるにも関わらず。
「な…何で」
乾いた声が漏れる。
喉がカラカラで、息をするのも苦しい。
漏れ出た言葉には、様々な意味が籠められていた。
何故、ナルト達を放置して戦意のない自分の方に来たのか。
何故、肉の壁であるナルト達がいたにも関わらず此処まで来れたのか。
何故、何故、何故────
喉がカラカラで、息をするのも苦しい。
漏れ出た言葉には、様々な意味が籠められていた。
何故、ナルト達を放置して戦意のない自分の方に来たのか。
何故、肉の壁であるナルト達がいたにも関わらず此処まで来れたのか。
何故、何故、何故────
「何故って顔をしているけど、僕、あらかじめ言っていた筈だけど?」
羽蛾の表情から、心を読んだかのように。
シュライバーはあらかじめ宣言していた、絶望を突き付ける。
シュライバーはあらかじめ宣言していた、絶望を突き付ける。
「君みたいな敗北主義者の劣等も、一人も逃がすつもりは無い、ってね」
未だ地に尻もちをついたままの羽蛾を見下ろして。
輝くような笑顔で、事実上の死刑宣告を告げる。
そう、羽蛾は一つ、大きな誤算をしていた。
シュライバーは彼の見立て通り、確かに戦闘狂である。だが、それだけではない。
赤子も女も老人も等しく殺し、黄金の君主に捧ぐ───殺人狂でもあったのだ。
輝くような笑顔で、事実上の死刑宣告を告げる。
そう、羽蛾は一つ、大きな誤算をしていた。
シュライバーは彼の見立て通り、確かに戦闘狂である。だが、それだけではない。
赤子も女も老人も等しく殺し、黄金の君主に捧ぐ───殺人狂でもあったのだ。
「あぁ、もしかして君の相手をしている内に皆逃げちゃうんじゃないかと思ってる?
それはないね。僕が殺すと言った以上、君たちの死は絶対だ」
それはないね。僕が殺すと言った以上、君たちの死は絶対だ」
不味い。殺される。
一歩シュライバーが前進するとともに、羽蛾は確信めいた死の予感を感じ取った。
このままでは、間違いなく死ぬ。
ナルト達が救援に来る気配はない。役にたたない奴らだ。
だから──僕自身が、何とかするほかない。
一歩シュライバーが前進するとともに、羽蛾は確信めいた死の予感を感じ取った。
このままでは、間違いなく死ぬ。
ナルト達が救援に来る気配はない。役にたたない奴らだ。
だから──僕自身が、何とかするほかない。
「ジル!さきど───」
「遅いよ劣等」
「遅いよ劣等」
ドン!と。轟音が迸った。
ジルが技を発動する暇もなく、放たれる夥しい数の魔弾。
断末魔の叫びをあげる暇すらなく、フェローチェの全身に風穴が空いた。
その終幕として、最後に頭部に当たる部分が銃弾によって吹き飛ばされる。
頭部を失ったえんびポケモンは、よろよろと不格好なダンスを踊って崩れ落ちた。
ジルが技を発動する暇もなく、放たれる夥しい数の魔弾。
断末魔の叫びをあげる暇すらなく、フェローチェの全身に風穴が空いた。
その終幕として、最後に頭部に当たる部分が銃弾によって吹き飛ばされる。
頭部を失ったえんびポケモンは、よろよろと不格好なダンスを踊って崩れ落ちた。
「君たち敗北主義者はいつもそうだ。手遅れになってから自棄で挑んでくる。
破れかぶれで振るった剣で英雄を討ちとれるとでも?余り笑わせるなよ、虫けら」
破れかぶれで振るった剣で英雄を討ちとれるとでも?余り笑わせるなよ、虫けら」
単純な理屈だった。
虫如きが餓えた狼に歯向かえば、引き裂かれるのは当然の帰結でしかなかった。
もし、先ほどナルト達の援護に徹していれば。
フェローチェは今も命を繋いでいたかもしれないが、詮無い話だ。
ポケモンは、主を選べないのだから。
虫如きが餓えた狼に歯向かえば、引き裂かれるのは当然の帰結でしかなかった。
もし、先ほどナルト達の援護に徹していれば。
フェローチェは今も命を繋いでいたかもしれないが、詮無い話だ。
ポケモンは、主を選べないのだから。
「さて……次は君だね」
フェローチェをハチの巣にして、喜色満面に銃口を向けてくるシュライバー。
がくがくと膝が笑って立つことすらままならない。
だが、立つべきだ。立たなければならない。
頭脳をフル回転させろ。自分の頭脳ならこんな殺ししか能がない狂人手玉にとれる。
そう、少なくともこの殺し合いの島に来てから手玉にとれなかった奴はいなかった。
がくがくと膝が笑って立つことすらままならない。
だが、立つべきだ。立たなければならない。
頭脳をフル回転させろ。自分の頭脳ならこんな殺ししか能がない狂人手玉にとれる。
そう、少なくともこの殺し合いの島に来てから手玉にとれなかった奴はいなかった。
「い…いやー君凄いね!いや本当に凄いよ!どうだろう、僕を君の手下にしてよ!!」
がばりと立ち上がり、必死になって言葉を紡ぐ。
破綻した論理だと、口に出した瞬間理解していた。
だが、今の羽蛾には余りにも時間と言う物が無かった。
僅か数秒にも満たない時間で、打開策など浮かぶべくもない。
咄嗟に口に出た言葉が、媚びへつらい、部下にしてくれと頼む事だった。
分かっている。こんな事を言っても、次の瞬間には撃たれているであろうことなど。
だが、フェローチェが倒された今、自分にはこれしか打つ手がない。
破綻した論理だと、口に出した瞬間理解していた。
だが、今の羽蛾には余りにも時間と言う物が無かった。
僅か数秒にも満たない時間で、打開策など浮かぶべくもない。
咄嗟に口に出た言葉が、媚びへつらい、部下にしてくれと頼む事だった。
分かっている。こんな事を言っても、次の瞬間には撃たれているであろうことなど。
だが、フェローチェが倒された今、自分にはこれしか打つ手がない。
「僕も君と同じく優勝を狙っていてね。こう見えても頭の回転には自信があるんだよ。
きっと、役に立てると思うんだけど、どうかなぁ?」
きっと、役に立てると思うんだけど、どうかなぁ?」
心臓が五月蠅い位に早鐘を撃つ。
エリス達は何をやっているんだ、早く助けに来い。
口を全力で回転させながら、羽蛾は心中でそう強く強く願った。
そうしている間に、シュライバーが口を開く。
その表情は、今迄と同じ笑顔で。
しかし語る内容は羽蛾の予想とは全く違うモノだった。
エリス達は何をやっているんだ、早く助けに来い。
口を全力で回転させながら、羽蛾は心中でそう強く強く願った。
そうしている間に、シュライバーが口を開く。
その表情は、今迄と同じ笑顔で。
しかし語る内容は羽蛾の予想とは全く違うモノだった。
「───いいよ!」
「………ヒョ?」
「………ヒョ?」
その言葉を聞いた時、意味を理解するまでに数秒の時を要した。
まさか受け入れられるなど、思ってもみなかったからだ。
呆けた反応を示す羽蛾に、何を不思議そうな顔をしているのかとシュライバーは尋ねる。
まさか受け入れられるなど、思ってもみなかったからだ。
呆けた反応を示す羽蛾に、何を不思議そうな顔をしているのかとシュライバーは尋ねる。
「い、いやァ~~だって…ねぇ?で……でも助かるピョ~~!!
きっと後悔はさせないって約束するよ!さぁ俺と一緒にエリスって凶暴な女からまず──」
きっと後悔はさせないって約束するよ!さぁ俺と一緒にエリスって凶暴な女からまず──」
分かっている。
彼にだって分かっているのだ。全て。
でも、自分から破滅の引き金を引きに行くような真似は出来ない。
それが訪れるまでに、都合よく誰かが救いに来ることを祈る事しかできない。
だけど。
彼にだって分かっているのだ。全て。
でも、自分から破滅の引き金を引きに行くような真似は出来ない。
それが訪れるまでに、都合よく誰かが救いに来ることを祈る事しかできない。
だけど。
「あぁ、でも手を組む前にやっておかないといけない事があるんだよね」
「や、やっておかないといけない事?」
「や、やっておかないといけない事?」
破滅と言う物は、希望が完全に尽きた時にやって来るのは稀だ。
大抵、コンマ1パーセントほど残っている時にやって来るもの。
それを証明するように。
大抵、コンマ1パーセントほど残っている時にやって来るもの。
それを証明するように。
「………え?」
ボキリ、と。
何かがへし折れた響く。
その後に襲ってくるのは、凄まじい熱。そして、鋭い痛み。
恐る恐る視線を熱を持っている場所に動かして見る。
───そこには、右腕がある場所だった。
デュエルディスクを付けるための右腕が、あらぬ方向を向いていた。
何かがへし折れた響く。
その後に襲ってくるのは、凄まじい熱。そして、鋭い痛み。
恐る恐る視線を熱を持っている場所に動かして見る。
───そこには、右腕がある場所だった。
デュエルディスクを付けるための右腕が、あらぬ方向を向いていた。
「あっ……はぁ……っ……ぁ……っ」
直後に到来するのは。
気が狂うのではないかと思う程の、激痛。
激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛───、
気が狂うのではないかと思う程の、激痛。
激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛激痛───、
「ぎ、ィ……!?いぎ、がああああああああああああああああッッッッ!!!!!」
喉が割れるのではないかと思う程、絶叫した。
痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い───
皮膚を突き破って骨が飛び出しているのか、血がドロドロと流れ出してくる。
痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い───
皮膚を突き破って骨が飛び出しているのか、血がドロドロと流れ出してくる。
「はっ……はっ……がぁあああいいいいいいいッ!!!!!」
「くく───ふ。あははははははははははははははははは!!!」
「くく───ふ。あははははははははははははははははは!!!」
必死に血が流れて行かない様に残った方の腕で押さえて。
その痛みに再び絶叫を漏らす。
その様を見て、狂った大爆笑をシュライバーは堪えきれなかった。
ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ。
呵々大笑。腹を抱えて、地獄の痛みに藻掻く一匹の蟲を踏み躙る。
その痛みに再び絶叫を漏らす。
その様を見て、狂った大爆笑をシュライバーは堪えきれなかった。
ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ。
呵々大笑。腹を抱えて、地獄の痛みに藻掻く一匹の蟲を踏み躙る。
「これでも僕、沢山殺してきたんだよね。その中には君みたいな人間もまぁ沢山いたよ。
周りの人間を見下してる。小賢しさと叡智って物をはき違えた人種が」
周りの人間を見下してる。小賢しさと叡智って物をはき違えた人種が」
痛みのせいで他の全てが曖昧なのに。
最も聞きたくない白騎士(アルベド)の声だけは嫌になるほど鮮明だった。
最も聞きたくない白騎士(アルベド)の声だけは嫌になるほど鮮明だった。
「そう言う奴は決まって手足の一本も弾いたら、皆決まって何故?って顔をするんだよね。
何故賢いはずの自分がこうなってる?って。君も例に漏れず、そんな顔だった」
何故賢いはずの自分がこうなってる?って。君も例に漏れず、そんな顔だった」
黙れ。
俺は日本チャンピオンなんだ。
城之内にだって、遊戯にだって、計画通りに行けば勝てていた筈なんだ。
あぁそれなのに。それなのに乃亜のせいでこんな殺し合いに連れてこられて。
俺は日本チャンピオンなんだ。
城之内にだって、遊戯にだって、計画通りに行けば勝てていた筈なんだ。
あぁそれなのに。それなのに乃亜のせいでこんな殺し合いに連れてこられて。
────この弱虫野郎!
五月蠅い。笑うな。俺を見下すな。
俺よりもずっと馬鹿なお前なんかが、俺を見下していいはずがないんだ。
いい筈がないのに──どうしてこうなった?何を間違えた。
俺よりもずっと馬鹿なお前なんかが、俺を見下していいはずがないんだ。
いい筈がないのに──どうしてこうなった?何を間違えた。
「そんな君に良いことを教えてあげるよ」
本当に楽しそうな語り口。
無邪気な子供が、解答者が分からなかったなぞなぞの答えを発表するような。
侮蔑と嫌悪と嘲笑がない交ぜになった声で。
狂人、ウォルフガング・シュライバーは羽蛾に告げる。
無邪気な子供が、解答者が分からなかったなぞなぞの答えを発表するような。
侮蔑と嫌悪と嘲笑がない交ぜになった声で。
狂人、ウォルフガング・シュライバーは羽蛾に告げる。
────君が思ってるより、君ってずっと馬鹿だから。
それが、羽蛾の意識が途絶える前の、最後に聞いたセリフとなった。
【フェローチェ@ポケットモンスター 死亡】